摩訶不思議探偵局〜幽霊屋敷殺人事件〜
容疑者リスト
江戸川乱歩(えどがわらんぽ)…【ジャーナリスト】
橋口尚子(はしぐちなおこ)…【江戸川乱歩の友人】
橋口徹(はしぐちとおる)…【橋口尚子の夫】
島川涼子(しまがわりょうこ)…【江戸川乱歩の友人&被害者の妻】
はしがき;お化け屋敷での殺人事件…これは…話題性充分だ。

摩訶不思議探偵局〜幽霊屋敷殺人事件〜真相編

真解「あとは、鑑識の結果を待つだけだ」
 真解が言うと、真実が言った。
真実「さっすがぁ!やっぱりお兄ちゃんすごい!」
謎事「え?いや、オレがヒントは??」
真実「え?ヒント?なんのこと?」
謎事「ひ…ひでぇ……」
真解(やれやれ……)
謎「でも…何を調べてもらってるの?よく聞こえなかったけど……」
真解「指紋だよ」
謎「指紋…?」
真実「え?でも凶器の指紋なら、とっくに調べてるんじゃない?」
真解「凶器の指紋はね」
謎事「どういうことだ…?」
真解「警察が、そして犯人すらも気が付かなかったところに、犯人である証拠を示す指紋が残っているはずなんだよ。それも2ヶ所も」
真実「どこ…??」
 真解は黙って、ニヤリを笑った。

 しばらく話し込んでいると、小鳥遊がやって来た。
小鳥遊「真解君。見つかったよ。指紋」
真解「本当ですか!?」
小鳥遊「ああ。君が言った、2ヶ所から、真新しいあの人の指紋が」
真解「ありがとうございます」
「見えた…」と真解は小さく呟いた。
真解「兜警部に言って、全員を集合させてください。これから、推理を披露しますよ」
小鳥遊「わかった」
 小鳥遊は、兜警部を呼びに行った。

 全員が集まったところで、真解が話し出した。
真解「さてと……じゃあ、いまから、この事件の真相を明かします」
徹「え?」
 メガネを無理矢理外されて、ちょっと不機嫌になっている徹が言った。
徹「事件の…真相?解ったのか!?」
真解「ええ。何もかも」
 江戸川がいつの間にかに手にテープレコーダーを持っている。
真解(ジャーナリスト魂ってやつか??素早いな…)
 ちょっと照れくさい感じもしたが、真解は続けた。
真解「じゃあ、始めましょうか。推理ショーを」
涼子「誰なの?犯人は……」
真解「まぁ、落ち着いて。まず、今回の事件、俊男さんの死体が横から転倒して来たわけですが、あの死体、鑑識の解剖結果によると、どうも斜めに立て掛けていたんだそうです。ですよね?小鳥遊さん」
小鳥遊「ん?ああ」
真解「知っての通り、あの幽霊屋敷内は無風です。まぁ、演出としてちょっとは生暖かい風が吹いてるけど…そんなもんじゃ、死体は転倒しません。転倒させるには、糸かなんかで引っ張らなきゃいけません」
尚子「そうでしょうね」
真解「で、先ほどの荷物検査は、その糸を見つける為に行わせて貰いました」
徹「でも出なかったと?」
 やはり、どこか不機嫌そうに徹が言った。
真解「ええ。身体検査でもね。いま、一生懸命警察が幽霊屋敷の中を探索して、糸を探しています。つまり、まだ糸は見つかっていません」
徹「それが?」
真解「見つかっていなくても、跡から細い糸だってことはわかります。が、しかし、それが釣り糸かピアノ線かは解りません。そのどちらかではないか、とは言われてますけどね。でも、そんな状況の中で、はっきりと『その釣り糸』って言った人がいるんです」
江戸川「え…??」
 全員の視線が、そのセリフを言った人物に向けられた。
真解「あの状況で、そんなことが言えるのは、犯人しかいない。そう、島川俊男さんを殺した人物…この事件の犯人は、涼子さん、あなたです!」
涼子「なっ!?」
 真解が睨み付けた。
涼子「なんでそうなるのよ。確かにわたしはそう言ったけど…でも、それだけじゃぁ」
真解「もちろん、こんなのは証拠にはなりません。でも、もちろんこれだけじゃありませんよ」
涼子「え…」
尚子「じゃぁ、証拠はなによ?」
真解「証拠は…指紋ですよ」
涼子「指紋…?」
尚子「凶器の指紋なんて、もうとっくに警察が調べたんじゃないの?」
真解「凶器の指紋はね」
徹「どういうことだ?」
真解「みなさん…細い糸が俊男さんの足に絡み付いていた事は知っていますよね?」
尚子「ええ…」
真解「その糸を引っ張って、俊男さんの死体を転倒させたわけですが……これの死体転倒、実は人の力でやったんじゃないんですね」
尚子「な…なんでわかるのよ?」
 まるで、尚子が犯人のように、尚子が動揺しながら聞いた。
真解「だって、重いじゃないですか。実際にやってみないとわからないけど、徹さんみたいな男性が引っ張るならまだしも、並みの女性に死体を転倒させるなんてかなり難しいことです」
尚子「あ…」
真解「だから、涼子さんは、糸の先をろくろ首の頭にも絡ませたんですよ」
徹「なに!?」
尚子「なんでそんなことがわかるのよ!?」
 涼子は一言も喋らず、尚子と徹が聞いた。
真解「調べたところ、なんとろくろ首の頭や、首回りから、真新しい涼子さんの指紋が発見されたんですよ。それに……俊男さんの足に糸を絡ませたときに足に付いた指紋もね」
涼子「えっ…」
尚子「で、でも、靴下の指紋なら、別に怪しく無いんじゃないの?妻なんだし」
真解「いえ…俊男さんは靴下を履いてませんでした。いくら妻だからって、足に指紋が付いている事は無いでしょう?」
涼子「……」
真解「どうなんです?」
 何となく証拠が少ないような気がしつつも、涼子は話し出した。
涼子「そう…そうみたいね」
江戸川「え…?涼子……?」
涼子「『本当なの?』って?本当よ。とくれば、『なんで?』ね…。俊男は……わたしの恋人を殺したのよ」
江戸川「え?恋人って……」
涼子「わたしがあの男と結婚する前、わたしは別の男性と付き合ってたの。で…婚約したところだったのよ、ちょうど。あの人が、殺されたのは…」
尚子「うそ…」
涼子「あの男の普段の性格からじゃ、とても想像できないけどね。本当なのよ。もっとも、あの人が殺されたとき、わたしは殺された事に気が付かなかった。事故死に見えたのよ。不幸な…ね。どうも俊男はわたしのことが好きだったみたいで…。あの人を殺した直後にわたしのところに来てこう言ったわ。『おれがついているから、悲しむな』って。落ち込んでいる女ほど口説き易い…とでも言うのかしら?わたしはあっさりと婚約、結婚したわ…」
 涼子は淡々と話し続けた。
涼子「でも…ある日見つけたの。俊男の部屋を掃除していたときに、あの人を殺すための計画がびっしりと書かれたノートを…」
尚子「あの…俊男さんが…殺人計画を…?」
涼子「そう。あのノートをいつまでもとっといたのは、単なるバカね。よっぽどいい案だと思ったから、また誰かを殺そうとでも考えていたのかしら?真意は、今となっては知りようがないけど…」
 涼子の話がいつまで続くかわからないので、兜が切り出した。
兜「ところで…ちょっと聞きたいのだが…」
涼子「なに?」
兜「その………釣り糸はどこにあるんだ?」
涼子「………さぁ?まだろくろ首に絡まってるんじゃないかしら?」
兜「なんだって!?」
小鳥遊「え??さっき見たときは無かったけど…」
涼子「じゃあ、近くに落ちてるわよ」
兜「猫山!探せ!今すぐにだ!!」
猫山「ヘイ!」
 猫山は慌てて幽霊屋敷に飛び込んだ。
真解「でも……なんで俊男さんを殺したんですか?」
 真解が涼子に向かって言った。
真解「俊男さんを殺したところで、あなたの恋人は帰ってこないんですよ?浮かばれない人が、また1人増えただけで…」
涼子「フ……そのぐらい、百も承知よ」
真解「じゃぁ、何故…?」
涼子「わたしは…どうしてもあの人に会いたかった。でも、あの人は絶対に帰ってこない…。だったら、わたしがあの人のところに行けばいい…」
真解「え?」
涼子「でも、このまま何もせずに行くのは、いや…あの男を始末してからでないと、死んでも死にきれない…。だから、今回の殺人計画を思いついたのよ。だから、ばれようがばれなかろうが、どうでも良かったの…」
真解「え?まさか……」
 涼子はポケットからカプセルを取り出した。
真実「それは…薬?」
涼子「薬じゃないわ。毒よ」
謎事「ドク!?」
 謎事が叫ぶや否や、涼子はカプセルを袋から取り出し、一気に飲み込んだ。
兜「わっ!?おい、猫山…はいないんだった、おい、小鳥遊!!急いで救急車だ!!」
小鳥遊「ヘイ!!」
真解「な……ちょっと…え…??」
 真解は動揺した。いままで色々な事件に遭遇したが、こんな事態は初めてだ。
 涼子は苦しみながらも話した。
涼子「いい…探偵君達…よく聞くのよ……。相手のことを本当に好きだったら…その人の恋を素直に応援しなさい…。わかった?」
 涼子はそう言うと、目をつぶった。
江戸川「涼子!!」


「ん…あ……はっ!」
 涼子はガバッと起き上がった。
尚子「キャッ!?あ、涼子!!よかったぁ!!」
 尚子は泣き出した。
涼子「な…尚子!?あ…わたしは…一体……??」
兜「助かったな」
 兜が言った。
兜「あんた、毒の分量を間違っていたんだ。致死量をギリギリで下回っていた。あんた、1週間近くも眠ってたんだぞ」
 涼子は辺りを見渡した。病院だった。
涼子「病院…?助かった……?わたしは…死ななかったの??」
兜「ま、そういうことだ。釣り糸も見付かったしな」
涼子「そんな……なんで……死ななかったの……?死なせて……」
尚子「な…何を言うのよ!?」
涼子「だって……あの人のところに……」
真解「行けませんよ」
 真解が言った。
真解「あなた…あの時あのまま死んでいたとしても、その恋人さんのところには、行けませんよ」
涼子「な…何故?」
真解「わからないんですか?あなたは、俊男さんを殺した…。確かに俊男さんは悪人ですよ。でも、悪人を殺しても、人を殺した事には変わりありません。あなたはあのまま死んでいたら、地獄行きですよ?でも、恋人さんは天国…」
涼子「あ」
真解「死ななかったのは、当然です。恋人が死んだら、悲しむのは誰だって一緒です。例え、幽霊でもね。あなたの恋人さんは、あなたに死んでほしくなかったんですよ。だから…死なせなかった」
涼子「…………‥‥‥・」
 涼子は泣き出した。
江戸川「全く…死ぬだなんて言うんだもん。驚かさないでよね?」
 涼子は泣き続けていた。

真解「やれやれ……結局遊園地、映画しか見れなかったな…」
 真解はそうつぶやきながら、病院から出て来た。
謎「相上君なんて、映画すら見てないんじゃなかったっけ?」
江戸川「それはそれは……」
 江戸川がふと気がついて言った。
江戸川「あれ、そう言えば、今回みたいに、偶然出会う事件も、いままでにあったの?」
真実「いままでにあったのも何も、最初の事件は偶然出会ったんですよ」
江戸川「ああ、そう言えばそうね」
 と、江戸川がつぶやいた。
江戸川「悪縁契り深し…摩訶不思議探偵団の行くところ、事件あり」
謎事「ん?」
江戸川「これからも、よろしくね」
真解「え?」
 江戸川はすっとサングラスをかけた。

Finish and Countinue

〜あとがき(舞台裏)〜
こんにちは、キグロです!今回のゲストは、相上謎事君です!!
謎事「どうも!謎事です。なあ、キグロ」
はい?
謎事「いきなりでなんだが、よくオレ達が通りかかったときにろくろ首が伸びたな」
……………運が良かったんだよ。きっと。ほら、毒の量も少なかったし。
謎事「前回も運使ってなかったか?運使いすぎだぞ」
いやぁ…ボク自身、いままで運と勘だけで生き長らえてきたから。
謎事「どういうことだ?」
以前にね、家から何キロも離れたところで迷子になって、「たぶんこっちだ!」と思う方向にがむしゃらに進んでたら、偶然返ってこれたんだよね。あの時死ななかったのは、強靭的な運のおかげだと信じたい。
謎事「よく生きてかえってこれたな」
まぁ、たった数キロだから。でも、これ、1回じゃなくて2、3回おこったんだよね。同じ事が。
謎事「2、3回……」
ついでに言うと、テストもほとんど運と勘だ。
謎事「テストも?」
そ。テスト勉強を少ししかやんなかったのに、その少しの部分が出てね。いやぁ、あれはラッキーだった。
謎事「すげぇ…」
国語は「ボクならこの場合こう考えるから、これでいいや」ってやって、数学はその場で勝手に新しい数式作り出して、理科は「こんな名前の薬品があったような気がする…」で書いて、英語は「こんな単語があったようななかったような…まぁ、いいや、なんか書いときゃ当たるだろ」で書いて、社会は「こんな感じの人がいたようないなかったような…」で書いて、体育は「技の名前って大抵英語なんだよね。これは確か英語でああ言うから、たぶんこれだろ」で書いて、家庭科は「あの料理はあんな味がするから、たぶんこれだろう」で書いて………。
謎事「それで、やったのか?」
うん。ほとんど。でも、いままで運と勘だけで生きてきただけに、受験と恋愛の壁は、とても巨大で、とても堅い……。運と勘で受験受かんないかなぁ…。
真解「運と勘だけで受験をパスできたら、誰も苦労しねぇよ」
……………。
謎事「…………なんだ?いまの」
……さぁ?

さて、謎事君は、謎ちゃんが好きと言う設定で、ワタクシが書く小説としては珍しく、恋愛要素が含まれました。
謎事「オレ、初?」
初であり、そうでなくもあり。真実がいるから。
謎事「ああ、そうか。真実がいるのか」
ええ。その通り。

そうそう、この小説を書くに当たって、3つの悩みがあるんだよね。
謎事「なんだ?」
一つは、ネタ。特にトリックね。
謎事「ふ〜ん。後の2つは?」
謎事…きみの告白シーン。
謎事「えっ!?な…なに!?え…と…??なんだ…オレがどう告るか?」
いや、そんな物は簡単だ。今すぐにでも考え付く。問題は、その後。
謎事「その後??」
謎の返事だ。
謎事「え゛…?どういうことだ?まさか、謎ちゃんがオレの事を好きかどうかって…考えてないのか!?」
うん…実は…。本当は連載前に考えたかったんだけど、どうしてもね。
謎事「な……」
で、最後は、破らせたあと、又は実らせた後の展開だ。普段通りやらせるか…。
謎事「なんだよ…おい……。せめて謎ちゃんの気持ちぐらい考えていてくれても……」
う〜ん…そうなんだけどねぇ……。あ、お暇な方は、謎が謎事の事をどう思っているか、推理してもいいかも。でも、考えてないから、もしかしたら矛盾する点が出てくるかもしれない……。
謎事「そんなぁ……」

では、正解者発表!!
犯人が解った方(謎が全て解けた方)>R.Hさん

〜次回予告〜
「ようこそ!宇宙の旅へ!」
ある日、真実が買って来た宇宙の旅が当たると言う抽選券。
言うまでもなく、真解は無関心だが、何とそれが当たってしまった!
真実は大興奮し、真解、謎事、そして謎を引き連れ、宇宙の旅へ出かける事になった。
だが、そこで、新たな殺人事件が起こった…。
次回『近未来体験ツアー殺人事件』をお楽しみに!

おまけの名句珍言集(謎)「ああ。”恋人”みたいだよな」
解説;真実が真解に抱き付いたとき、謎事が言った言葉。この言葉の裏には、「オレも謎ちゃんにああされて見たい」と言う欲求が隠れていたりする。

作;黄黒真直

本を閉じる inserted by FC2 system