摩訶不思議探偵局〜近未来体験ツアー殺人事件〜
容疑者リスト
三谷伸也(みたみしんや)…【船長】
柴和則(しばかずのり)…【操縦者】
塩澤謙哉(しおざわけんや)…【操縦者】
水谷航介(みずたにこうすけ)…【船医】
事谷哲雄(ことたにてつお)…【乗務員】
円谷高次(つぶらやこうじ)…【乗客】
片桐神子(かたぎりみこ)…【乗客】
はしがき;さていよいよ推理編。じっくりお楽しみください。

摩訶不思議探偵局〜近未来体験ツアー殺人事件〜推理編
 真解は宇宙船内を駆け回った。
 とはいっても、無重力だから本当に駆け回ったらとんでもない事になるし、宇宙船はそれほど大きくはない。駆け回るほどの事もなく、ざっと見て回ることは出来た。
真解「なかったな…」
謎事「何でだ?」
謎「まぁ、犯人もうまい具合に凶器を隠したんでしょう」
片桐「ちょっと…早く探してよね…」
 片桐が震えながら言った。
真解〔あんたも探せよ……。って、そうか。犯人かもしれないのか〕
 真解は全員に探させたことを悔やんだ。もしかしたら、犯人が証拠を隠滅させるかもしれない。
真解〔やばい…動揺していてそれどころじゃなかった…。オレも少し冷静にならないとダメだな…〕
 それはさておき、他の乗客や船員も次々と戻ってきた。
三谷「なかったぞ。大体、そんな凶器を隠せるような場所は、この宇宙船には存在しない!」
柴「強いて言えば、機械の中ですが……そんなところ、人が入れませんからね。」
 今まで操縦をしていて全く姿を見せなかった柴が言った。柴が出てきたのだから、当然塩澤が操縦しているのだろう。塩澤の姿だけない。
円谷「もう少し、探してくるか…?」
真解「その必要はないでしょう。いま三谷さんが言った事が本当ならば、犯人はかなり巧妙なトリックを使って凶器を隠したに違いありません。ここからは、ボクらが探します。皆さんは、食堂にでも居てください」
水谷「君達だけで…?」
真実「うん。なにしろお兄ちゃんは摩訶…」
「摩訶不思議名探偵って呼ばれてるんだから」と言おうとした真実の口を塞いで
真解「まぁ、頑張れば見るかるでしょう」
柴「一番犯人じゃなさそうなのも、君達だしな…。じゃあ、頼むよ」
謎事「任せてください!」
 謎事が言った。
真実「お兄ちゃん…」
 真実が小声で聞いた。
真実「なんで摩訶不思議名探偵だってこと隠すの?」
 真解が冷静に答えた。
真解「一つ目。言ったところで状況は何も変わらない。二つ目。言うと、色々と面倒くさくなりそう。三つ目。言ったところで信じてもらえないのが落ちだ」
 真実が「そんなぁ」と言わんばかりの顔をしたが、真解は放っておいた。
真解「さて…と。じゃあ、探すとするか」
三谷「本当に見るかるだろうな?」
真解「ええ。大丈夫です。凶器を見つけて、そして犯人をも捜し当てます。絶対に」
片桐「頼むよ」
 真解達はまた探し始めた。今度はチリの一つ一つを探るかのようにして目を凝らし、探し始めた。
 10分…20分…30分とくまなく探し回った。だが船内はそんなに広くない。30分も探せば、もう船内全部見終わってしまう。
謎事「ない……。どこにあるってんだ?」
真解〔仕方がない…。凶器よりも、犯人を先に考えるか…〕
 そう考えると、真解の脳裏にある疑惑が浮かんだ。
真解〔そういえば…犯人はどうやって無線機を壊したんだ?〕
真解「三谷さん、もう一度無線室に入らせてもらっていいですか?」
三谷「ああ、いいが…そこに凶器があるのかね?」
真解「いえ、そういうわけではありません」
三谷「そうか…。まあ、来たまえ」
 三谷が先にたち、真解達は後からついて行った。

−無線室
 無線室と言っても、ここにしか無線機が置いてあるわけではない。一応、操縦席にも置いてある。だが、ここを経由して地球へ電波が届くため、ここにある機械を破壊すれば、当然無線は切れる。
謎事「しかし、何度見ても…機械って、繊細なんだなと思うな」
 無線機は、近くにある棒で叩きのめされたようだった。一部が、へこんでしまっている。どうやら、それが原因で壊れたらしい。
真実「確かに…外見はそれほど壊されたように見えないもんね」
謎「で…実相君は何を調べる気なの?」
真解「ちょっとこの棒が気になってな」
 どこから持ってきたのかわからないが、船内にあったことは確かだろう。近くに落ちている棒を拾い上げた。
真解「金属棒か……。叩いたら、相当な音がするはずだよな…。なんで誰も聞いてないんだ?」
真実「あ…そういえばそうね…」
謎事「夜だったから、みんな寝てたとか?」
三谷「いや、それは大した事ではない」
真解「え?」
 三谷が言った意味が真解には理解できなかった。
三谷「このドアは、防音扉なんだ」
真解「は?」
三谷「いや、だから、防音加工がしてあるんだよ」
真解「何のために?」
三谷「……………知らん」
真解〔あんた船長だろう!!〕
 真解が心の中で思いっきり突っ込んだが、ともかく謎は解けた。
真実「あれ…? でも、そんなこと一度も聞いてませんよ?」
三谷「そりゃぁまぁ…言って無いもんなぁ…」
真解〔なんかいいかげんな船長だなぁ…〕
 真解は半ば呆れた。
真解〔しかし…これじゃあ、何も進展していない。もう一度遺体を見たところで何も変わらないだろうし…。どうすればいい!?〕
 真解は地面を蹴って天井(?)に昇った。
 そして、天井に座った。
真実「何やってるの? お兄ちゃん…」
 真実が天井を見上げながら言った。
真解「いや…逆さまになれば何かいい推理が浮かばないかなと…」
謎「宇宙に逆さも何もあるのかしら?」
真解「………………………まぁ、宇宙船内だし」
謎事「そういえばオレ達、最初に浮かんだだけであとは浮かんでねぇな…」
 謎事はそう言って床を蹴った。
 そして空中で回りだした。
謎「酔いません? そんなことして…」
謎事「大丈夫だ。オレはサンカンキカン強いから」
真実「サンカンキカン? サンハンキハンでしょ?」
真解「サンカンキハンじゃないのか?」
謎「三半規管(さんはんきかん/半規管とも言う)です。三人とも全然違います…。それに、ぐるぐる回ると上下がわからなくなって酔うわけですから、三半規管が強い方が逆に酔っちゃうんじゃ…?」
三谷「え? そうなのか?」
謎「え? 違うんですか?」
真実「え〜。でもよく『三半規管強いから』って言うじゃん」
真解「確かにそうだな。どっちなんだ?」
謎「それ以前に、よく考えたら『三半規管が強い』ってどういう状態の事を言うんでしょうか?」
真解「謎が知らなくてどうする」
謎「そんなこと言われましても…ねぇ? 真実ちゃん」
真実「わたしに回されても…」
謎事「そんなことはどうでもいいから、早く止めてくれ…気持ち悪くなってきた……」
三谷「大丈夫か?」
 三谷が慌てて謎事を止めた。
三谷「水でも飲むか?」
謎事「うう…そうします…」
三谷「じゃあ、こっちだ」
 三谷が謎事を引き連れて外に出て行った。真解達もついて行った。事谷は食堂にいた。
三谷「お〜い事谷ぃ。水だ水」
謎事「水願います…」
事谷「いま持ってきます」
 事谷が食堂を出て行った。
謎事「あれ? 船長は持ってこれないんですか?」
三谷「本当はわたしが持ってきてもいいのだが、水が置いてある部屋の鍵は事谷が持っているんだ」
謎事「へぇ」
 その直後、事谷がよくあるチューブ付きのパックを持って戻ってきた。
謎事「あれ? コップに入ってるわけじゃないんですね」
真実「無重力なんだから、コップに入れたら水がプカプカ浮いちゃって、危険じゃない。壁にくっ付くと、表面張力の働きで水がどんどん隙間に入っていっちゃうんだから。下手したら機械の中にまで入って……」
 真実が色々と説明をはじめたが、謎事は全く聞かずに水を飲み始めた。
謎「そういえば1977年10月に打ち上げられた旧ソ連の宇宙船、ソユーズ25号が、実験用の給水装置から突然2.5リットルもの水が溢れ出すと言う事件にみまわれたらしいわね。その飛び散った水は、乗組員のワレリー・リューミンとウラジミール・コワリョーノクが口でパクパクとつかまえて飲み干したらしいわね。………聞いてる? 相上君」
謎事「ん? ああ。よく知ってんな。そんな昔のこと」
 謎事はチューブの先端を口の奥に向けて水を発射させて遊びながら言った。
真実〔好きな人の話はちゃんと聞くのね……〕
 真実は半ば呆れた。
真解〔オレは推理の続きでもしてるか…〕
 真解は無駄だと思いつつも、小島の亡骸をもう一度見てみることにした。

真解〔何度見ても、死体ってのは気味が悪いもんだな…。死んだ人には申し訳ないが…〕
 真解は今まで何度も死体を見てきたが、死体にはなれていない。推理物だと、何度も事件に出会っている探偵は死体に慣れるが、真解はそんなことはないと思っている。
真解〔特に異常は見つからないな……。首に何か残ってないかな? ……無いな。太くて軟らかいものだと、こんなに何も残んないのか? ………詳しいことは、後で謎に聞くとして…………ん?〕
 と、真解が“あること”に気が付いた。
真解〔なるほどね…これは犯人に取っても、誤算だったな…〕
 真解がニヤリと笑って言った。
真解「見えた…」

Countinue

〜あとがき〜
ほんの2時間足らずでこの推理編を書いてしまったキグロです。
今回のゲストは、検事じゃない猫山剣事さんです!
猫山「よろしくッス」
え〜…猫山さんの「ッス」と言う口癖は、既に物語始まってるのに未決定。とりあえず出すときと出さないときがあります。
猫山「ひどいッス…」
……………なんか、変だなぁ…。どうも名前と口癖がミスマッチのような気がする。
猫山「そうッスか?」
そうッス。
猫山「……………」
……………

さて今回は推理編。「前編・後編」となるかな? と思っていたら、1話で終わっちゃいました。次回は真相編になります。
猫山「決めてないッスか?」
う〜ん…ほとんど行き当たりばったりだね。この辺は。
猫山「そうだったッスか…!?」
………やっぱ、「ッス」は却下。
猫山「な、何の関係が!?」
いや、なんか性格と「ッス」が合っていないような気がして…。って言うか、小説の中ではまだ1回も「ッス」が出てないし。
猫山「そうだっけ?」
そう。………でもなんか、個性がないとつまんないか…。
猫山「じゃあ、『ッス』を入れるのか?」
いや待てよ。「ヘイ」とか「おやっさん」なんて個性になるな…。よし、却下だ。
猫山「そッスか……」
……………。
猫山「………………」

さて、お次はヒントです。
猫山「お、今回はあるか」
あります。
ヒントは2つ(Vサインを作りながら)。
1つめは「宇宙」
2つめは「殺害方法」
答えは1つだ!
真実「………某漫画のパクリじゃん」
あ? ばれた? ……って、なんで真実が?
猫山「またかい…」
それと、最後に真解が“あること”に気付いてますけど、あれは気付かなくても推理力があれば解ります。
ただ真解は……っと、これ以上言うと解っちゃいますね。
それと、推理は全てメールでお願いします。
メールアドレスは【kiguro2@yahoo.co.jp】です。
それでは、たくさんの推理、待ってます。

おまけの名句珍言集(謎)「幼稚園以来、11年間も付き合っていたのに…全く気がつかなかったな」
解説;謎事が社長令息だと知ったときの真解のセリフ。このとき少しプライドが傷ついたらしい。

作者;黄黒真直

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