摩訶不思議探偵局〜謎の名画怪盗事件〜
容疑者リスト
楠魔・M・Trans…【怪盗MASK】
阿久刀川龍治…【警部】
砂糖貢…【警部補】
三ツ峰浩治…【鑑識】
江戸川乱歩(えどがわらんぽ)…【ジャーナリスト】
工藤勇(くどういさむ)…【美術館館長】
伊集院五朗(いじゅういんごろう)…【評論家】
遠藤隆子(えんどうたかこ)…【評論家】
熊沢太市(くまざわおおいち)…【美術館警備責任者】
はしがき;今回は、誰がMASK(楠魔)の変装か、見破ってください。阿久刀川達である可能性も十分にあります。油断せぬように。

摩訶不思議探偵局〜謎の名画怪盗事件〜推理編
 気合の入った謎事と真実を横に、警官が大きな四角い物を持って、美術館に入ってきた。
工藤「こ、これはなんですか? 刑事さん…」
 工藤が慌てて聞く。
阿久刀川「ああ、そうそう。言い忘れてました。この大きな四角いものの中には、偽の“夕焼け”が入っています」
遠藤「なんですって!?」
阿久刀川「そして、これらを全て張り替えるのです。そうすれば、盗みに入ったMASKは、もうどれが“夕焼け”だかわからないって寸法ですよ」
伊集院「我々までわからなくなりそうだな…」
阿久刀川「念のため、シャッフルもしておこう。…おい砂糖。本物の“夕焼け”をそっちに移しておけ」
砂糖「それはいいっすけど警部…我々までどれがどれだかわかんなくなってしまいそうっすよ…」
阿久刀川「大丈夫だ。オレが見張っているから」
砂糖「そっすか…」
 そういている間にも、警官達が一生懸命張り替えをしている。
 その間にも、真実は記憶を、謎事は観察を続けている。
真解〔あれ…? でも、ボクの推理が正しければ、犯人は既にこの中にいるわけだから、無意味なんじゃ…?〕
 しかし、一生懸命張り替えている警官を前に、どうも言い出しづらい真解だった。
阿久刀川「よし。だいたい張り替え終わったな。あとは外に警官を完全配備して、アリの子一匹入れないようにしておけば…」
 その一言で、工藤が気付いた。
工藤「あれ? そういえば刑事殿…」
阿久刀川「なんですかな?」
工藤「完全警備…ですかの?」
阿久刀川「そうですが…?」
工藤「怪盗MASKは予告状をつき付けて来たんじゃ。完全配備されることは計画済みじゃろう?」
阿久刀川「ま、そうでしょうな。だから、仮に入られたとしても、大丈夫なように…」
工藤「甘いですぞ。刑事殿」
阿久刀川「な、なんですって?」
 阿久刀川が慌てた。まさかこれに落ち度があるだなんて、夢にも思っていないような口調だ。
工藤「外は完全警備。予告状までつきつけてきた。アリの子一匹入れない。となれば、入れるのは誰じゃ?」
阿久刀川「え…? 警官と…」
工藤「いまここにいる者達じゃ」
阿久刀川「えっ!? ま、まさか…あなたは、この中にMASKがいるとでも? ま、真解君!」
 そこで真解が重い口を開いた。
真解「いやぁ…ボクも気付いてたんですけどね…気付いた直後に張り替えだしちゃったもんで…なんか言いづらくって…」
 真解が珍しく申し訳なさそうに言った。
真解「この中に犯人…MASKがいると言うことは、もうほぼ確実でしょう。だから、いまの張り替えは全くの無意味です」
阿久刀川「な…なにおぅ!?」
 阿久刀川が悲鳴(?)をあげた。
真解「ま、まぁ、張ってしまったものを剥がすのも大変でしょうから、このままにしておけば…」
阿久刀川「たっく……」
 阿久刀川はそう言って、タバコを吸い始めた。
 余談だが、タバコの煙が絵画に触れると、ニコチンやらなんやらの物質が絵にこびりつき、絵の価値が下がる可能性があるので、注意が必要だ。
遠藤「ところで…日没まであとどのぐらいかしら?」
熊沢「この部屋には窓がありませんからね。ついでに時計も」
真澄「なんで窓がないんです?」
謎「絵と言うのは、直射日光に当たると痛んでしまうんですよ。だから、美術館には窓がないものが結構ありますよ」
那由他「そうなんだ。知らなかった」
澪「って言うか、美術館自体行かないもんな」
伊集院「そういえば、歴史資料館なんかも窓がないよな?」
真実「そういえばそうねぇ。まぁ、歴史資料館なんてほとんどいかないけど」
那由他「この間調べ学習…と言うか、宿題やろうと思って行ったけど」
工藤「ワシは、歴史資料館より美術館の方が好きじゃな…」
江戸川「じゃあ、時計が無いのは何故?」
工藤「単にうっかりしていただけじゃ。今度つけるかいのぉ」
遠藤「そんなことより、あとどのぐらいで日没なんですか?」
工藤「ワシの時計じゃと、いま5時じゃ。時が経つのは早いのぅ」
謎事「はやいと言えばオレ…『早い』と『速い』の使い分けがいまだにできねぇんだよな」
 謎事がそういうと、全員の動きが止まった。
真解「お前…中2だろう?」
謎事「中2だってなんだって、できねぇもんはできねぇんだよ!!」
澪菜「わたしは時刻表(時刻・早)、時観測(時間・速)で覚えてるけど」
江戸川「それより、『速度』って単語と、『早急』っていう単語を覚えていれば、それですむんじゃないの?」
工藤「時刻表と時観測だと、ごっちゃになりそうじゃがのう…」
澪菜「そう? わたしはごっちゃにならないけど?」
 余談だが、『早急』は今はもう『ソウキュウ』と読む人がほとんどだが、本当は『サッキュウ』と読む。
那由他「それよりも、そういう語呂合わせを忘れるのって、ボクだけ? 良い国(1192年・鎌倉幕府成立)ぐらいしか覚えてないんだけど」
真解「それはもう、論外だ」
那由他「ひでぇ…」
 余談だが、鎌倉幕府成立良い国(1192年)説は、現在考古学界では少数派で、現在最も有力なのは1185年説(平氏の残党と義経追補の名目で守護・地頭が置かれたことで、武家の支配権が全国に及んだ時)らしい(もしもテストで『鎌倉幕府が成立したのは、西暦何年か?』という問いに対して、『1185年』と書きバツをもらっても当方は一切の責任を負わないのでそのつもりで)。
伊集院「そんなことよりも、日没まであと少ししかない」
熊沢「そうですね…阿久刀川警部さん」
阿久刀川「大丈夫だ。オレが絵の前に立っていれば…」
 そのとき、真解がうつむいて何かを考え始めた。
遠藤「?」
「どうしたの?」と遠藤が問いかけようとしたとき、真実が制した。
真実「大丈夫です。お兄ちゃん、推理するときにうつむく癖があるんです」
工藤「推理……」
真解「真実、謎事。なんでも良いから気付いたことを言え」
 真解が唐突に言うと、謎事が待ってましたとばかりに、
謎事「そうそう、オレなんかちょっと気になったことがあってな…」
 と意味ありげに言い出した。
真解「なんだ? 言ってみろ」
謎事「ああ。オレの推理が正しければ、“これ”は犯人を示す重要な手がかり…いや、犯人を」
真解「いいからはやく言え。ちなみにこの場合の『はやく』は『早く』だぞ?」
 謎事が少し不満気に“これ”を言った。すると、真解が小さく「見えた…」と呟いた。
真解「確かにそれは、犯人を示す重要な手がかり…いや、犯人を追い詰める、最大の証拠だ」
謎事「だろ?」
真実「じゃあまさかお兄ちゃん」
真解「ああ。誰がMASKの変装か、わかったぞ。この事件、ボクらの勝利だ!」
澪菜「すご〜い! さっすがぁ!」
 澪菜の賛美の声も聞かず、真解は阿久刀川のところへ行った。
真解「阿久刀川警部。怪盗MASKが誰か…わかりましたよ」
阿久刀川「なにっ!? 本当か?」
砂糖「誰っすか?」
真解「警部達…そんな慌てたって、奴はまだ何もやってないんですよ? 何もやってなかったら、捕まえられないんじゃないんですか?」
阿久刀川「む…そ…そうだったな…」
澪菜「え〜? 捕まえられないの?」
真澄「予告状出してきたのに?」
謎「現在の日本の法律では、言論と思想の自由が保護されてますから、路上で『殺してやる!』と叫んでも、逮捕することは出来ないんです。まぁ、それが元で大騒動にでもなれば、何らかの罪になるかもしれませんが…」
那由他「そうなんだ」
澪「じゃあどうするんだ?」
真解「MASKが動くまで、待つしかないな…」
澪「せっかく解ったのに?」
真解「ああ。だが見物じゃないか。これだけ大勢がいる前で、果たしてMASKはいったいどうやってこの“夕焼け”を盗みだすのか…」
阿久刀川「その盗む瞬間が、逮捕のチャンスだ。ちょっとでも遅れたら、後は逃げられる可能性が高い」
砂糖「完全配備なのに…っすか?」
阿久刀川「マジシャンMASKは世界的にも有名なマジシャンだ。果たして世界的にも有名な日本警察が勝つか、世界的にも有名なマジシャンが勝つか…これからが、本番だ」
 阿久刀川が刑事らしい顔になっていった。
 日没まで、あと10分もなかった。

Countinue

〜あとがき(舞台裏)〜
今回、やけに『余談』が多かったな…と感じるキグロです。
今回のゲストは我が友人2号(!?)、霧島澪さんです。
澪「よろしく」
澪さんも、ワタクシの友人の名前を拝借させてもらいました。
澪「真澄みたいに勝手に?」
いや、君のは一応許可を取ってある。ただ、ちょっとその際に漢字変換をしてくれと言われたけどね。
澪「じゃあ、僕の元の漢字は? って、それ以前に名字をとったか、名前を取ったかすら知らないんだけど」
だってねぇ。それ言っちゃぁ、プライバシーがどうのこうのってなっちゃうし。
真解「人の名前使う時点でアウトじゃないのか?」
………でも負けない。

今回は推理編。MASKは誰だかわかったでしょうか?
澪「MASKはMASKだ」
いや、そうじゃなくって……。
澪「楠魔・M・Trans」
いや、そうでもなくって……。
澪「ところでさあ、Mってなんの略?」
……………近日公開。
澪「えっ!?」

さて、お次はヒントです。
と言っても、1つだけ。
ヒント;“これ”とは、誰かのセリフ。
澪「ヒントになってなくないか?」
いやぁ、他に気の利いたヒントが思いつかなくってさ。
澪「だめだなぁ。きーちゃんは」
ここでも「きー」言うな……。でも負けない…。
澪「勝てるわけがない」
…………………。
澪「……………」
でも負けない。

それと、推理は全てメールでお願いします。メールアドレスは【kiguro2@yahoo.co.jp】です。
勘でも感想でもいいので、どんどんメールください。お願いします。
澪「僕は送ってあげたじゃん」
「霧島澪」のモデルがね。君は「小説の中の人物」なんだよ?
澪「ッ…!?」
フッ。勝った。

おまけの名句珍言集(謎)「なぁ…オレって嫌われてるのかな?」
解説;謎に冷たく当たられた謎事が真解に言ったセリフ。謎の気持ちは誰も知らない。

作;黄黒真直

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