摩訶不思議探偵局〜謎の名画怪盗事件〜
容疑者リスト
楠魔・M・Trans…【怪盗MASK】
阿久刀川龍治…【警部】
砂糖貢…【警部補】
三ツ峰浩治…【鑑識】
江戸川乱歩(えどがわらんぽ)…【ジャーナリスト】
工藤勇(くどういさむ)…【美術館館長】
伊集院五朗(いじゅういんごろう)…【評論家】
遠藤隆子(えんどうたかこ)…【評論家】
熊沢太市(くまざわおおいち)…【美術館警備責任者】
独り言;マジックショー、最近見ないなぁ…。

摩訶不思議探偵局〜謎の名画怪盗事件〜真相編
三ツ峰「もうそろそろ日没ですね…」
 外の警官の配備を見てきた三ツ峰が言った。
阿久刀川「あとどのぐらいか…正確にわかるか?」
三ツ峰「日が沈んだら連絡するよう、外の警官に言っておきました」
阿久刀川「そうか…」
 その後、しばらくの緊張状態が続いた。日没まであとわずか。この絵をMASKはどうやって盗むのか、そしてどうやって逃げるのか、警察はそれを阻止できるのか…?
 みんなが様々な思考をめぐらせながら、絵を睨みつけていた。
 そのとき、阿久刀川の持っていた無線がなった。
無線《阿久刀川警部! 日が沈みました!》
 その一言で、全員の顔がこわばった。
無線《まだうっすらと明るいですが…徐々に暗くなっていきます。今のところ特にこれと言った異変は認められません》
阿久刀川「よし、そのまま監視を続けろ」
無線《了解》
 ガッと言う独特の音を出して、無線が切れた。
 と同時に、「パンッ」と言うクラッカーの破裂音のようなものがして、電気が消えた!
全「!?」
???「しまった! その手かっ!!」
???「絵は大丈夫か!?」
???「なんかライトライト……」
 どれが誰の声だかわからない中、江戸川はバッグの中をまさぐった。
江戸川〔ライト…無い?〕
 そう思った瞬間、誰かが懐中電灯をつけた。工藤だ。
工藤「大丈夫ですか? みなさん…」
 工藤はそう言って、急いで絵のある場所にライトをあてた。と…
工藤「無い! 絵が無い!」
 工藤が叫ぶと同時に、阿久刀川の無線がなった。
無線《警部! 伊集院が絵を持って外に出てきました!》
阿久刀川「遅かったかっ!!」
 全員は急いで外へ向かった。

伊集院?「これはこれはみなさん…」
 伊集院…と思われている人物は、冷静に話した。腕の中には“夕焼け”がある。
真解「MASK!」
伊集院?「おや、探偵君も。君の顔を見る限りでは…どうやら、ちょっと前から気付いてたみたいだね。でももう遅いよ」
真解「どうやってここから逃げる気だ?」
伊集院?「わたしには優秀なアシスタントがいる。逃げようと思えば簡単に逃げられるが……ちょっと、君の推理を聞きたい。わかっていたんだろう? わたしだと」
真解「ああ、そうだ。いま思うと、最初に挨拶を交わした時点で気付くべきだったんだ」
伊集院?「ほぅ…」
真解「あんた、最初に挨拶を交わした時、『でもいいのかい? 修学旅行中なのに……』って言ったよな?」
伊集院?「言ったねぇ」
真解「だがな。あんたがそれを知っているはずが無いんだ。知っているのは、阿久刀川警部と、マジックショーでボクらに話し掛けたマジシャンMASK…いや、怪盗MASKしかいないんだからね!」
伊集院?「なるほど……」
真解「怪盗MASK! 観念しろ!」
 真解がそう言うと、伊集院はあごの横に手をかけ、何かを掴んで引っ張りあげた。
 すると、伊集院の顔が変形してはがれて………その下から、伊集院の顔の形をしたマスクを被った人物が出てきた。
MASK「ふぅ…ゴムマスクって、結構暑いのよね…」
 その声は、とても高く、澄んでいた。
真解「お……女?」
MASK「あら? 男女差別は良くないわよ?」
真実「ま…MASKって…男だったんじゃ…?」
MASK「あれは全て偽り…本当はわたし、女よ」
真実「な…」
謎事「そうだMASK…一つ聞きたいことがあるんだけど…」
MASK「何かしら?」
謎事「暗くなる直前、目をつぶっているような人は誰もいなかった…なのにどうして、瞬時に絵のところへ行けたんだ?」
MASK「ああ、簡単よ。あの警部さんがタバコを吸っていたから、それを目印にしたってわけ」
阿久刀川「な…」
MASK「もう他に、聞きたいことは無いかしら? なかったら、そろそろおいとましたいんだけど?」
阿久刀川「ああ、させてやるよ…刑務所にな! ひっとらえろ!」
 阿久刀川が叫ぶと同時に警官がMASKをあっさりと捕らえた。
真解「え…?」
 そしてそのままMASKは連行されて行った…。
 残された8人+警官は、ア然としていた。
真解「………?」
 後の調査で、急に電気が消えたのは、遠隔操作式の爆弾がブレーカー内で爆発したことによるものだと判明した。

数日後…。
 真解の元に、兜から連絡が来た。
 どうやら、MASKが真解に会いたがっているらしい。
 真解はついでだからと真実、謎事、謎も引き連れ、刑務所に向かった。
 余談だが、刑務所とは懲役刑の人が入るところで、判決が下されてから入る場所である。この場合、時期から考えて拘置所か留置所のどちらかが正しい。両者の違いは、拘置所が逮捕されてから起訴されるまで入るところで、留置所は裁判が終わるまで入るところである。
 だがややこしいのでここでは「刑務所」で行く。
 刑務所では、MASKはマスクを被っていなかった。その顔は、なかなかの美人だった。
真解「どうしたんです? あんなにあっさりと捕まって…」
MASK「ふふ…あれも作戦のうちよ」
真解「え?」
MASK「あそこじゃあ、ごたごたしててゆっくり話が出来なかったからね」
真解「確かに…そうですけど…」
MASK「話したいことがいっぱいありすぎてね…。まずは、感想を聞きたいわね」
真解「感想って言われても…。あっさりと捕まっちゃうんだもんなぁ…」
MASK「それもそうね」
真解「そういえば、2つほど聞きたいことが」
MASK「何かしら?」
真解「楠魔・M・Transと言うのは、偽名ですね?」
MASK「…何故そう思うの?」
真解「名字が英語で名前が日本語と言うのは、イギリス人と日本人のハーフと言うことから説明がつきます。しかし、楠魔と言う名前は明らかに妙です」
MASK「なぜかしら?」
真解「楠魔を逆から読んでみてください。マスクになりますから…」
MASK「……確かにそうね。でも、逆から読むとマスクだから、芸名をMASKにしたのかもしれないわよ?」
真解「それはありえません」
MASK「何故?」
真解「『MASK』と言うのは、あなたではなく、あなたのファン達がつけた愛称だからです。しかもその理由は『いつもマスクを被っているから』です。更にあなた、最初は芸名が『マジシャンM』でしたよね?」
MASK「あら、よくそんな昔のこと覚えていたわね」
真解「覚えていたのはボクじゃなくて、謎ですけどね。で、どうです?」
MASK「確かに…わたしの名前が偽名である可能性は高いわね…。でも、証拠は無いわ。わたしの口からはこれは『本名だ』とだけ言っておくわ。
………で、もう一つの聞きたいことってなにかしら?」
真解「優秀なアシスタント…って言ってましたけど、その人はどうなってるんです? いま…」
MASK「それは企業秘密よ」
真解「企業秘密…? ってまさかそのアシスタントに怪盗を継がせるんですか?」
MASK「違うわ。そのアシスタントと一緒にやるのよ」
真解「え?」
MASK「フフッ…またいつか、あなたと勝負が出来る日を楽しみにしてるわ。そのときは、この間みたいなボロは出さないわよ?」
真解「この間みたいなって…刑務所にいるのに…? まさか…」
 MASKは微笑んだ。
 と同時に、パンッ! と言う破裂音がして、防弾ガラスの向こう側が、真っ白い煙に覆われた。
謎事「な、なんだ!?」
 その煙が消えると、なんとMASKがそこから消え、代わりにMASKの素顔だと思われたゴムマスクが落ちていた。そして、見張り役であるはずの警官まで消えていた。
真実「き…消えた?」
謎事「あの警官がその優秀なアシスタントだったってのか!?」
謎「でも…だからと言って、そんな簡単に逃げ出せるわけじゃないでしょう? ……ともかく、誰かを呼んだほうがいいようね」
 3人が慌てふためいている中、真解は呟いた。
真解「また勝負が出来る日を楽しみにしてる…? 上等じゃねぇか。オレも楽しみに待っていてやる。そしてその時こそ、お前は、オレがこの手で捕まえてやる。絶対に」
 真解はこぶしを握り締めた。

Finish and Countinue

〜あとがき(舞台裏)〜
なんかちょっと短かった真相編。いかがでしたでしょうか?
今回は、順番から行けば澪菜か那由他ですけど、今回は特別に新米怪盗、MASKさんの登場です!
MASK「よろしくね」
MASKさん、いったい最後はどうやって逃げたんですかね?
MASK「フフッ。それは企業秘密よ。いつか、名探偵君にこの謎に挑戦してもらいたいわね」
そうですねぇ。ボクがそのトリックを考えついたらね。
MASK「……………はやく考えついてね?」
謎事「この場合の『はやく』ってどっちだ?」
『早く』だ。ってか謎事。何故ここに?
MASK「わたしの素顔を見に来たのかしら?」
毎回1人しか乱入出来ないみたいだから、もう兜らが出てくる心配はない……ですから、そのボクの顔の仮面、とってくれます? 不気味です。
MASK「あなたにも素顔は見せない…。ルパン3世の素顔は、次元も五右衛門も不二子も、誰も知らないそうよ。まぁ、わたしの場合、優秀なアシスタントにだけは見せてるけど」
はぁ……。

MASK「ところで、本当にわたしのミドルネーム。なんの略なのかしら?」
え…えっとですねぇ…。
MASK「もう、ごまかしは聞かないわよ?」
いやぁ、実は決めてなくて……ははははは…。
MASK「やっぱり…。でも、なんでM?」
いや、これは摩訶不思議探偵局の頭文字と、マスクの頭文字がちょうどMだったから、それにしたわけよ。
MASK「じゃあ、マスクってのは…?」
『MASK』って映画知ってます? コメディ映画なんだけど…。
MASK「知らないわ」
ある日、ある青年が古びた木で出来た仮面を拾うんです。その仮面は悪戯の神が宿った仮面で、その仮面をつけた青年はなんでも出来る、ある意味でのスーパーマンになってしまうんです。その映画が好きでね。
MASK「へぇ」
小説にもなっているから、興味があったら、一度読んで見たら? 盗んじゃダメだけど。

さて、今回は真相編。
MASK「どれがわたしの変装か見破ることが出来た人はいたのかしら?」
正解者の発表です。ジャン。
謎が解けた方>0人
MASK「あら、いなかったの」
ええ。まさか、事件編に答えがあったなんて、誰も思わなかったようで。
MASK「なんか、ものすごい勝利の笑みを浮かべてるわね…」

さてさて、今回最後にちょくちょく出てきた「優秀なアシスタント」。この人も、そのうち登場させる予定ですので、楽しみに待っていてください。
MASK「あ、やっぱり出るねの?」
ええ。出しますよ。そのときもまた、華麗に頼みますよ?
MASK「いいの? そんなこと言って…?」
さぁ?

〜次回予告〜
「君達に、ボディーガードをお願いしたい」
摩訶不思議探偵局に突然やって来た中年男性は、なんと大企業の社長だった!
社長さんの話によると、どうやら自分あてに脅迫状がやって来たという。
その内容は、こんど開くパーティーの会場で社長さんを殺すというもの。
そこで、摩訶不思議探偵団はパーティー会場へ出向くことになった。
そして、その裏では、綿密に練られた社長殺害計画が、ゆっくりと動いていた。
次回、初の短編、初の倒叙式推理小説、「パーティー会場殺害計画」をお楽しみに!

おまけの珍句名言集(謎)「惚れ薬ってどうやって作るんだ?」
解説;真解に「(謎に)好かれる方法」を聞いて「惚れ薬でも作れ」と言われて謎事が言ったセリフ。ってかなんか、謎事のセリフ多いなぁ。

作;黄黒真直

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