摩訶不思議探偵局〜パーティー会場殺害計画〜
主な登場人物( )内は読み、【 】内は役
ボス…【主犯】
キグロ…【副犯】
ピッチャー…【副犯】
実相真解(みあいまさと)…【探偵】
実相真実(みあいまさみ)…【探偵】
相上謎事(あいうえめいじ)…【探偵】
事河謎(ことがわめい)…【探偵】
相上社長(あいうえたかたけ)…【社長&依頼者】
はしがき;え? 最初と最後の人が気になるって? ま、それは読んでのお楽しみ♪

犯罪なんてするもんじゃない

摩訶不思議探偵局〜パーティー会場殺害計画〜短編
???「では、これより相上社長(あいうえたかたけ)殺害計画を発表する」
 男はそう言うと、なにやら色々書かれた紙を取りだした。
 男の名前……いや、コードネームは「ボス」。その名の通り、リーダー格の男である。筋肉質でがっしりしていてなかなか強そうな男だ。
???「いよいよッスか…」
 そう言って身構えたのは「ピッチャー」。どうも、名前が野球に関わっているらしいとのことからこのようなコードネームになったようだ。
???「さ、さ、ボス。早く」
 そう言って身構えているのは「キグロ」。コードネームの由来は………伏せておく。
ボス「まぁまぁ。慌てるな。いま読む」
 そう言って、ボスは紙を広げた。そして、読み出した。
ボス「相上社長殺害計画」
 この「社長」は「シャチョウ」ではなく「タカタケ」と読む。
ボス「まず、ここに用意してある脅迫状をにっくき相上に送る。そしてその後日、相上がもうすぐ開こうとしているパーティー会場に潜りこむ」
キグロ「ふむふむ…。ん? でも、脅迫状送って、パーティーが中止になるってことは…?」
ボス「脅迫状には、『なお、パーティーを中止した場合は、問答無用で殺害する』と書いた」
キグロ「おお、なるほど」
ボス「続きを読むぞ? パーティー会場で奴を殺す方法は3つ。1つ目、ピッチャーの毒殺」
ピッチャー「ワテッスか?」
ボス「そうだ。ここに青酸カリが用意してある。これをワインの中に入れ、奴に勧めろ。これは、奴と偽りの親密な関係を築きあげたからこそ出来ることだ」
ピッチャー「ラジャー」
 余談だが、青酸カリの正式名称はシアン化カリウム(KCN)。粉状だと真っ白で、水によく溶ける。致死量0.15gの猛毒。ちなみに、アーモンドの香りがし、銀・銅の電気鍍金(メッキ)や分析試薬に用いられている。
ボス「そして、それが失敗した場合。2つ目、キグロの毒殺」
キグロ「また毒殺ですか?」
ボス「同じ毒殺でも殺し方は違う。キグロは毒針で殺すんだ」
キグロ「ラジャー」
ボス「そしてこの二つとも失敗した場合。オレがナイフを奴の体に突き刺す」
ピッチャー「ボスがッスか?」
ボス「そうだ」
 ボスはそう言って、憎悪に満ちた目を光らせた。

真実「え〜っ!? 謎事君のお父さん、本当に社長だったの!?」
謎事「だからそう言っただろう?」
???「そうか謎事。お前、こんな可愛い子に信用されてないのか」
謎事「父さん……」
 謎事が泣きそうな目で「父さん」を見た。
「父さん」の名前は相上社長(あいうえたかたけ)。先ほども出て来た名前である。
真解「シャチョウと書いてタカタケ……すごい名前ですね」
相上「やっぱりそう思うか」
真解「で、どう言うご用件で?」
相上「実は、うちにこんなものが来てな」
 相上はそう言って、一通の手紙を見せた。
謎「これは……脅迫状?」
相上「そうだ。読んで見たまえ」
 真実が読み始めた。
真実「相上社長へ告ぐ。お前の命はもう少しだ。今度お前が開くパーティー会場でお前を殺す。警察には絶対連絡するな。なお、パーティーを中止した場合は、問答無用で殺害する」
相上「そうだ」
真解「それで…ボクらは何をしろと? この犯人を見つけて欲しいのですか?」
相上「いや。パーティーを開くのは明日だ。今から犯人を見つけることはさすがの君達でも難しいだろう? 実は、君達に、ボディーガードをお願いしたいのだ」
真実「ボディーガード!?」
真解「でもなんでまた、ボクら子供にボディーガードなど?」
相上「ほら、子供なら犯人もまさか探偵とは思わないだろう?」
真解「ああ、なるほど」
謎事「ま、みんな。そういうことだから。オレの父さんをよろしく」
真解「お前もやるんだよ!」
謎「でも…こんな脅迫状が送られてきたってことは、なにかうらまれるようなこと、したんですか?」
相上「う〜ん……したと言えばしたし、してないと言えばしてないし…」
謎「は?」
相上「いま不景気だから、我が社でもリストラしたんだ。そのときクビにした人にうらまれている可能性はないこともない…」
謎事「オレは会社のことよくわかんないけど、父さんが恨まれるとしたら、これしかない」
真解「なるほどね……。じゃあ、明日、パーティー会場へ向かいますので、場所を教えてください」
相上「あ、いやいや。わたしが明日、迎えに来よう」
真解「そうですか。わかりました」
 その後、相上は帰って行った。

ピッチャー「いよいよッスね。ボス」
ボス「ああ。そうだな……。これからは、コードネームで呼び合うのは危険だ。本名で呼び合おう。オレの名前、覚えてるか?」
ピッチャー「えっと…なんでしたっけ?」
ボス「田中太郎(たなかたろう)だ」
ピッチャー「ああ、そうだったッスね」
キグロ「オレの名前は山田次郎(やまだじろう)だ」
ピッチャー「わての名前は鈴木四郎(すずきしろう)ッス」
 どうやらピッチャーの名前の由来は「四郎→4→エースで4番」のようだ。
田中「しかし、よくまあこう良くある名前が集まったもんだ」
 余談だが、苗字を多い順に並べると「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」「渡辺」「伊藤」「中村」となるらしい。そして、佐藤さんは全国で200万人近くいるらしい。しかし、これらは全て推測。公的な統計は取られていないし、戸籍も一般公開してないから、本当のところはよくわからないとか。
田中「さて、では入ろうか」
 田中達はパーティー会場に入って行った。

 同時に、真解達もパーティー会場にいた。
真実「わぁ…すごい! ごちそうがいっぱい!!」
謎事「任務の方も忘れるなよ?」
真実「わっ! 任務だって! たまにはカッコいいこと言うねぇ!」
真解〔カッコいいのか?〕
 そしていよいよパーティーが始まった。
 このパーティーは飲食会のようだった。
真実「すごいねぇ。おいしい料理がいっぱい」
相上「そうかそうか。気にいってくれてありがたい。ま、わたしが作ったわけじゃないがな」
謎事「そうか。だからうまいのか」
相上「どう言う意味だ? 謎事…」
謎事「冗談冗談。ハッハッハッ…」
 他愛もない会話を交わしていると、ワインを持って鈴木がやって来た。無論、青酸カリ入りだ。
鈴木「シャチョウ! 相上シャチョウ!」
相上「お、なにかね? 鈴木君」
真解「す…鈴木君?」
相上「彼はわたしの信頼する部下の一人でね。公私問わずよく会話を交わすんだ。 …で、なにかね?」
鈴木「シャチョウ。このワイン、いかがッスか?」
相上「ワイン…?」
鈴木「珍しいでしょう? アーモンドのワインッスよ」
 確かに、アーモンドの香りがする。
相上「ふ〜む。確かに珍しい」
鈴木「でしょ?」
相上「だが、わたしはアーモンドはあまり好きではない」
鈴木「は?」
相上「悪いが、わたしはいらない。君にあげよう」
鈴木「は…はぁ…」
真実「あ、じゃあわたしが飲む!!」
 急に真実が言った。
真解「真実は未成年だろうが!!」
謎「未成年者飲酒禁止法第一条、満二十年に至らさる者は酒類を飲用することを得す!」
真実「ちぇっ。わかったわよ…」
真解〔あのなぁ……〕
 鈴木はトボトボ戻って行った。

鈴木「失敗ッス」
田中「そうか。じゃあ、キ…山田行け」
山田「ラジャー」
 山田はポケットから毒針を取り出し、相上の元へ向かった。
謎事〔また誰か来た……って、料理を取りに来ただけか?〕
 謎事はそう思ったが、その人物がお皿を持っていないことに気がついた。
謎事〔…まさか、あの人が脅迫者…?〕
 謎事は真解にこのことを話した。
真解「確かに少し怪しいな……」
謎事「だろ?」
 真解と謎事は、相上と不審人物……山田の間にさりげなく立ち、山田が近づけないようにした。
 すると、しばらくしてスタスタと戻って行った。
真解「なんだったんだろ?」
謎事「まぁ、危険は避けられた、と」
真解「いや、まだわからない。それに、ボクの推理では相手は複数犯だ」
謎事「え? なぜだ?」
真解「リストラされた元社員に恨まれている可能性がある…と言ったよな? そんな、リストラされただけの恨みなら、こんな計画を立て、こんな人の多いところで実行しないはずだ。なのに、こんな状況で行う…と言うことは、こんな状況でも行いやすい、複数である可能性がある」
謎事「そうなのか…」
 謎事は感心していた。まぁ、いつものことだが。

田中「どうした?」
山田「それが……わたしが刺そうとすると、子供が2人、その間に入るんですよ。それに、刺した瞬間倒れたら、わたしが一番怪しまれるでしょう?」
田中「そうか……それもそうだな…。よし、ちょっと待ってろ」
 田中はそう言うと、テーブルの方に走っていき、またすぐ戻ってきた。
田中「これを使え」
 それはストローだった。
田中「吹き矢の原理だ。このストローにその毒針を仕込み、一気に吹くんだ」
山田「えっ!? でもわたし、吹き矢なんてやったことないですし、もし外れて誰か別な人に当たったら……」
田中「じゃあ、出来るだけ近づいてやれ」
山田「わ、わかりました…」
 それじゃ意味がないだろう。
 しかし、そんなことにも気が付かず、山田はそっと相上に近づき、一気に吹いた! もちろん、間違えて吸ったなんてことはない。
 ヒュッと景気の良い音を出し飛んだ針は、見事相上を外れ、テーブルの下に飛び込んだ。
山田「あ……」
田中「あ……」
鈴木「あ〜あ…」
 山田がトボトボ戻ってきた。
山田「ダメでした」
田中「う〜む…針はテーブルの下か…。まさか、潜りこむわけにもいかない……。よし、オレが行く」
鈴木「えっ! ボ……田中さん! そんな…」
田中「いいんだ。オレが奴を殺す」
 田中はそう言って、ポケットから飛び出しナイフを取りだし、相上の元へと向かった。

田中「シャチョウ」
相上「ん? なにかね? え〜と…君の名前はなんだったかな…?」
田中「いやだなぁ。忘れてしまったんですか。まぁ、仕方ありませんかね。変装してるんですから」
相上「変装?」
真解「なに? ってことは…!」
 真解が気付くよりも一瞬はやく、田中は飛びだしナイフを飛びださせ、相上に襲い掛かった。
田中「死ねええぇェ〜〜!!」
謎事「くそっ!」
 謎事が取り押さえようとした。……が、一瞬遅かった。
謎事「!? 父さん…」
相上「とりゃっ!」
 なんと相上が田中のナイフを真剣白刃取りのように掴み、一瞬ひるんだ田中に一発顔面パンチ! 田中はそのまま後ろへ倒れ、気絶した。
相上「ふぅ……」
 真解達は…いや、会場にいる人物全てが、固まった。
 いったい今何が起きたかわからない者もいるが、その場の雰囲気でか、動けないでいる。
 もしかしたら、真解達も何が起きたかわからなかったかもしれない。

 数分後、警察がやって来て、田中は逮捕され、同時に山田も鈴木も自首した。
 動機は単純で、相上が予想した通り、以前クビにされた恨みだと供述した。

謎事「いやぁ、しかし父さんがあんな特技を持っていたなんて知らなかった」
相上「いや、あれはとっさにとった行動だ。父さんだって、なんであんなことが出来たのか不思議なくらいだ。ま、犯罪なんてするもんじゃない、ってことだろうな」
真解〔そうなのか…? なんか違わないか?〕
 真解は気になったが、言わないでおいた。
 今回の事件は、相上の会社が大企業だっただけあって、大ニュースとして報道された。
 しかし、相上の最後の行動がやはり大きかったのか、真解達のことはあまり報道されなかった。
真実「ちぇっ。どこのニュースもわたし達のことやってないわね。ま、謝礼金は貰ったし、別にいいか」
謎事「オレ貰ってないんだけど…?」
謎「相上君のお父さん、子供には厳しいのね」
謎事「ううう………」
 これがマンガなら、謎事の目は棒状になって、そこから涙があふれ出たことだろう。

Finish and Countinue

〜あとがき(舞台裏)〜
こんにちは。キグロです。
今回のゲストは、ナルシスト女、高麗辺澪菜さんです!
澪菜「ちょっと、なんでナルシスト女なのよ!?」
だってそうじゃん。自分は美人だとかなんだとか…。
澪菜「わたしは真実を話しているだけよ?」
それをナルシストって言うんだよ……。
澪菜「違うもん!」

さて、澪菜さんは実は当初の設定ではいませんでした。
澪菜「えっ!? いなかったの!?」
でも、我が友人「霧島澪」から、「澪菜と言う名前で誰か出せ」との指令が。そこで、「高麗辺澪菜」になりました。
澪菜「へぇ」
始めは「渡辺澪菜にしてくれ」って言われてたんだけどね。「やっぱ変えろ」と注文が来たので、某サイトで苗字を探すことに。
澪菜「某サイトって…阿久刀川警部や砂糖さんの名前を見つけたところ?」
うん。で、そのサイトで「高麗辺」と言うのを見つけて、「高麗辺澪菜……まぁ、語感的にはいいかな?」と言うわけで決定。そして、この「高麗辺」…つまり、「高く麗しい辺り」と言う苗字に決定した瞬間、ナルシストな性格も決定しました。
澪菜「だから、わたしはナルシストじゃないって言ってるでしょ!?」
自分は美しい。
澪菜「はい」
自分は素敵だ。
澪菜「はい」
自分は天才だ。
澪菜「はい」
……………。
澪菜「な、なによ。わたしは真実を言ったまでよ!?」

さて、今回は初の短編。ちょっと気合を入れすぎて、文字数制限オーバー。
澪菜「ダメじゃん」
まぁ、それはおいといて。さて、今回はちゃっかりボクも出て見ました。
澪菜「しかも犯人で……」
あ、ちなみに言っておきますけど、山田次郎ってのは別に本名じゃないですからね? 単にうけ狙いで…。
真実「まぁ、前に『真直は本名だ』って言ってたから、大丈夫でしょ」
だよね?
澪菜「あ、真実ちゃ〜ん! なんでいるの?」
もういないよ。

今回の物語。実は摩訶不思議探偵局にするかメビウスの輪にするかで悩んだんだよね。
澪菜「そうなんだ」
でもまぁ、メビウスの輪で犯罪ものは、既にやったから、いいか、と言う話になり、摩訶不思議探偵局に決定。
澪菜「真解君達が出てくるしね」
いや。メビウスの輪にする場合は、真解達を出さない予定だった。
澪菜「あれ? そうなの?」
だってそれじゃあ、完全に摩訶不思議探偵局じゃん。どっか違う点がないと…。
澪菜「それもそうね…」

では、感想待ってます。
澪菜「掲示板でも、メールでもどちらでもOKです♪ メールアドレスは【kiguro2@yahoo.co.jp】です♪」
なぜ「♪」がつく?
澪菜「身だしなみってやつ?」
なるのか? 身だしなみに…。
澪菜「だってぇ。文字だけなんだもん」
たしかに…な……。

〜次回予告〜
「キミノ妹ハ預カッタ。返シテホシケレバ、オレノ要求ニシタガエ」
摩訶不思議探偵局に突然かかってきた一本の電話。
なんと、それは真実を誘拐したと言うものだった!
警察の力はおろか、謎事や謎の力も借りず、真解は真実を救い出すことが出来るのか?
そして、犯人は果たして誰なのか…?
次回、「実相真実誘拐事件」をお楽しみに!

おまけの珍句名言集(謎)「ジャーナリストだっていってるでしょ!」
解説;兜に「江戸川リポーター」と言われたときに言い返した言葉。だが、兜はそれでも「江戸川リポーター」と呼んでいる。

作;黄黒真直

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