摩訶不思議探偵局〜実相真実誘拐事件〜
今回、容疑者リストははぶきます。
独り言;『田中よ、北海道をつきっきろ』って、本当にやったら大変。

摩訶不思議探偵局〜実相真実誘拐事件〜奮闘編
真解「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ………」
 真解は息を切らしながら、自転車をこいでいた。
 目的地まであと少し。残り時間もあと少し。急がなければ、真実が殺されてしまう。
真解「ハァ…ハァ……よ、よし……こ、この辺りだろう……ハァ……」
 真解は疲れきっていた。しかし、気になって腕時計を見る。
真解〔残り時間は…あと1分強! よかった…間に合った…〕
 間に合ったとわかると、体中から力が抜けていった。
 だが、すぐに真実の携帯電話が鳴った。今度はナンバーディスプレイを見ずに電話に出た。
真解「もしもし」
???「ミアイ マサトクンカナ?」
真解「ああ、そうだ」
 真解は息切れしながら答えた。
???「ドウヤラ、マニアッタヨウデスネ。シカシ、ヨクワカリマシタネ」
真解「ああ、本当だ。『田中よ、北海道をつきっきろ』だなんてふざけた真似しやがって。
   解読は実に単純。『田中』はそのまま『田の中』。『田』と言うの中は『+』…つまり、『十(10)』だ。『北海道』は『北』を表し、『つきっきろ』は『キロメートル』を表していた。つなげると、『10キロ北へ行け』と言う意味だ」
???「ゴ名答。サスガ名探偵デスネ」
真解「さぁ、真実を返せ!」
???「オット。タシカニワタシハココヲ指定シマシタガ、ココデ身代金ヲウケトルトハ言ッテマセンヨ?」
真解「なに?」
???「デハ、サッソク第2ラウンドトイキマショウカ?」
真解「ちょっと待ててめぇ!!」
???「キミハ、ワタシニハムカエル立場カナ? コッチニハ、キミノ妹ガイルンダヨ? ソウ、人質トイウ名ノネ…」
真解「くっ…」
???「ソウカ…。確カニ、ワタシノダス問題ニ答エテバカリジャチョットツマラナイネ。ヨシジャァ、ワタシガ誰カヲ当テルヒントヲヒトツアゲヨウ」
真解「なに?」
???「ワタシハ、イママデキミガデアッタ事件ノ中ノ、ドレカデデアッテイル」
真解「なんだと!?」
 そこで真解は気がついた。
真解〔そうか…。真実がそう簡単に誘拐されるだなんてどうも妙だと思っていたんだが、いままで出会った人物だったのか…〕
 となれば、口調から相手が誰かを判断することが出来るかもしれない。真解は、一生懸命いままで出会った人物を思い出した。
???「ソロソロイイカナ?」
真解「ああ。いいぜ。次の問題を出せ」
???「次モ、1度シカイワナイヨ? ヨクキイテナイト、失敗スルヨ?」
真解「前置きはいい。早くしろ」
???「マズ、キミノイルトコロカラサラニズット北ヘイケ。ソシテツキアタッタラ右ニ曲ガル。オナジ容量デ今度ハ左。ソシテ次ノツキアタリデ東。次ノツキアタリデ右。次ノツキアタリデ西ダ。ソノママツキアタリマデイケ」
真解「な、なんだと?」
???「イッタハズダ。1度シカイワナイヨト。オレハモウコレ以上ハ言ワナイ。セイゼイガンバルコトダナ」
 電話が切れた。
真解「くそっ!!」
 真解は携帯電話としまうと、空を見上げた。あいにく真解は方位磁針を持っていない。方位を知るには空を見上げ、太陽を見るしかないのだ。
真解〔現在の時刻と太陽の位置から、大体の方位はわかるはずだ〕
 真解はそう考え、空を見上げた。天気は快晴。運良く太陽は見える。急いで北を判断し、そっちへ向かった。
真解〔突き当たりで右…だったよな? 北、右、左、東、右、西、だったハズだ!〕
 真解は走った。
 今度は時間制限は言い渡されなかったものの、急ぐ気持ちは変わらない。早くしなくては、真実の体力、精神力、共に持たない。
真解〔突き当たりだ…! ここを…右だったよな?〕
 真解は右折し、次の突き当たりを目指した。
 走りながら真解は考えた。
 いったい、犯人はどう言うつもりなのだろうか?
 こんなに自分を駆け回らせて、どうするのだろうか?
 もしも自分が失敗し、身代金を渡せなければ、元子も無いはずなのに…。
真解〔まさか、犯人の目的は身代金ではなく真実を殺すことなのか…? まさか……〕
 まさかとは思いつつも、真解はかなり焦りだした。真実を殺させるわけには行かない。
 真解は壁に突き当たり、今度は左に曲がった。これで今、北に進んでいるはずだ。次東に曲がると言うことは、右折をすればいい。
 それなら、もう時計と太陽を見る必要は無い。真解はガンガン進んだ。
 そして、最後についたところは迷河(まよいがわ)の前だった。
真解〔いまオレはまさに犯人の言った『迷路』をつたってきた……。ぴったしの名前の川だな。……これも、犯人の誘拐と言う名の“ゲーム”……冗談の1つなんだろうか?〕
 だとしたら、犯人は愉快犯なのだろうか?
 そんなことを考えていると、携帯電話がなった。
???「ミアイ マサトクンカナ?」
真解「ああ。そうだ」
???「ドウヤラ、無事ニツイタヨウダナ」
真解「ああ。…ところでこの川の名前…」
???「オ? キガツイタカ? チョットシャレテルダロウ」
真解「ああ、そうだな」
 真解は怒りたっぷりに答えた。
???「ソンナニ怒ルナ」
真解「怒ってない。いいから早く次の指示を出せ!」
???「ヨロシイ。イイダロウ。ソコカラズット上流ヘイクト、寺ガアリ、森ガアル。ソノ森ニハイレ。スルト、ツリバシガアルカラ、ソノ付近ニイロ。ソノトキ、マタ連絡スル」
ガッ…
真解〔今度は森か…〕
 真解は自転車をこぎ始めた。
 上流に上るのだ。道はなだらかな傾斜が続いている。
真解〔これが急な坂じゃなくってよかった…〕
 真解はそう思い、こぎつづけた。
 しばらくこぐと、すぐに寺も森も見つかった。
真解〔ふぅ……。ん? この寺の名前……『迷河寺』? なんか、成仏出来なさそうな寺だな、おい〕
 罰当たりな突っ込みをいれ、真解は森に入った。
真解〔つりばし、つりばし……お、あれか〕
 それもすぐに見つかった。
 真解は辺りを見渡す。
 犯人はさっき、『また連絡する』と言っていた。と言うことは、この付近にいることは確かだ。
真解〔しかし…さっき犯人はあの川の付近にいて、今度はこの森にいる……。いくらなんでも、移動スピードが速くないか? もしかして…犯人は、複数いるのか? それとも、やはりオレのどこかに発信機かなにかつけられているのか…?〕
 と、電話がなった。
真解「はい、真解です」
???「オヤ、今度ハ先手ヲトラレテシマイマシタネ」
真解「そんなことはどうでもいい。早く身代金の受け渡し方法を言え」
???「ヨロシイ。…デモソノマエニ…」
真解「?」
???「アナタ、ワタシノ正体……シリタイデショウ?」
真解「当たり前だ」
???「正直デヨロシイデスネ。コレハゲームデス。ヤラレテバカリデハツマラナイデショウ。モウヒトツ、ワタシニ関スルヒントヲ与エマショウ。ワタシハイママデノキミトノヤリトリノ中デ、多クノヒントヲ君ニサズケマシタ」
真解「な、なんだと!?」
???「イエルノハココマデデス。サテ、ジャア身代金ノウケワタシ方法ヲ教エマショウ。イマ君ノ目ノ前ニアルツリバシカラ、身代金ヲバッグゴト落トシナサイ」
真解〔そうか…この下にいたのか!〕
 真解が思わず下を見ようとしたとき、
???「下ヲ見テハイケマセン!!」
 と言われた。
真解〔ちっ。読まれたか……〕
???「ソレジャア、下ヲミズニ身代金ヲオトシテクダサイ」
真解「そうすれば…真実は返してくれるんだろうな? 生きたまま」
???「冗談ガオスキナヨウデスネ。モチロン、カエシマスヨ。ゴ安心クダサイ」
真解「そうか。わかった」
 真解は身代金の入ったバッグを、橋の下へ落とした。
???「………ヨロシイ、タシカニ。ソレジャア、君ハモウ帰ッテイイデスヨ」
真解「まて、真実は?」
???「明日ノ朝…君達ノカヨウ遊学学園ニキナサイ。明日ハヤスミダッタハズデショウ? キミノカワイイ妹ガマッテイルヨ?」
 そういうと、電話は切れた。
真解〔明日か…。明日まで、あまり安心できないな…。かといって、警察に話すわけにはいかないし…〕
 真解は悩んだが、あれこれ考えてもしょうがないと思い、家に帰ることにした。

 家に帰ると、辺りは既に真っ暗になっていた。
美登理「遅い!! どこまで行ってたの!?」
真解「い、いやぁ、ちょっとそこまで…」
美登理「ちょっとそこまででこんなに時間かかるわけないでしょう!? もうちょっとで捜索願出すところだったわよ!!」
真解「ご、ごめんなさい……」
 普段はどこかヌケている美登理、普段は冷静沈着で怖いもの無しと言った感じの真解。だが、美登理が怒ったときだけはガラリと変わるようだ。
美登理「ところで…真実も帰ってこないんだけど、どこに行ったか知ってる?」
真解「え、あ、ああ…えっと……。そ、そう、謎の家でお泊まりごっこって言うの? そういうのやってくるって。明日には帰るよ」
美登理「そう…。あの子もまだ子供なのね」
真解〔いや…どう考えても子供だと思うぞ〕
 美登理は「夕食もう出来てるわよ」と行って、食卓に戻って行った。
真解〔………帰るよな? 明日には…〕
 真解は不安でならなかった。

 その夜、布団に入ってから真解は様々なデータを処理し始めた。
真解〔まず気になるのは犯人の動機だ。いったい何故真実を誘拐したのだろうか…? 金目当てにしては、いくらなんでも金額が安すぎる…。まさか、目的は真実殺害だって言うのか? そんな馬鹿な…。
それに、真実を誘拐するとなると一般の子を誘拐するよりリスクがはるかに高い。いくら以前出会っていたからといっても、用心深い真実がそんな簡単に誘拐されるだろうか?
そして、次に気になるのが犯人がどうやってボクを監視していたかだ。犯人はボクと同じか、少なくともボクより早く目的に着いてなくてはならない。1番目と2番目は良いとして、3番目はどうやって早く移動したんだろうか? 道は見たところ、一本道だった…。と言うことは、やっぱり犯人は複数…? それとも、ボクのどこかに発信機が…? いや、それはありえないか…。
他にも気になることはいくつもある。いったい何故犯人は自らヒントを出したのだろうか? 犯人は何故ボクを引きずったのか? そして、犯人はいったい誰なのか…? まだ、何もわからない…。だが、明日になればある程度は進出するに違いない…犯人が、本当のことを言っていれば……〕
 真解は眠りに入った。

次の日の朝、真解は5時前に目が覚めた。
 こんなに早く目が覚めるのは初めてだ。だが真解は、身支度を急いで済ませ学校へ向かった。
 遊学学園へは電車で向かう。待っている間がまどろっこしかった。
 学校に着くと、時刻は5時半になっていた。
真解〔まだ…真実は連れて来られてないのか…? なら、犯人を捕まえられるかもしれない…〕
 真解のその期待は裏切られた。真実は既にいた。校庭の木の幹に縛り付けられていた。どうやら、眠っているようだ。
真解「真実!!」
 真解が叫ぶと、真実が気がついた。
真実「お兄ちゃん!!」
 真解は駆けより、真実を縛っているロープを解いた。
真実「お兄ちゃん!!」
 真実が真解に思いっきり抱きついてきた。
真解「わっ! だか……まぁ、今日はいいか…」
 真解も、今日だけは許してやった。
 いつも強がっていて、怖いもの無しといった感じの真実だが、さすがに誘拐されたのはショックだったに違いない。抱きついてきた真実の腕は、小刻みに震えていて、顔にも涙のあとがある。
真解〔真実……やっぱり、怖かったのか…。 くそっ。犯人はいったい誰なんだ!? なんの為に真実を誘拐したんだ!? 金目的ではないだろう。真実に殺意を抱いていたわけでもない。いったい、何が目的だってんだ!? まだ何もわからない…。だが、全ての謎を解いて、犯人を暴いてやる! 絶対に…!〕
 真解は自然と、真実を抱きしめた。

Countinue

〜舞台裏〜
なんか一歩間違えればラブシーンになっていた最後の部分を、書いていて自分で恥ずかしくなってきたキグロです。
え〜、今回のゲストは、最初に戻って実相真解君です!
真解「はぁ…」
ど、どうした!?
真解「いや…今回はさすがに疲れた…」
そ、そうか…。
真解「で……真実を誘拐した奴は、誰だ?」
そ、そんなにボクを睨みつけたってしょうがないでしょう。それを考えるのが君の役目だよ。
真解「ま、そうなんだよな」
どうしたんだ…真解…?
真解「ところで……いままで『あとがき(舞台裏)』だったのが、完全に『舞台裏』になってるような気がするのだが?」
き、気のせい、気のせい♪

今回、暗号解読を募集したところ、一通だけメールが来ました。
真解「お、来たか」
ええ。でも、残念ながら外れてました。次回、頑張ってください。

ここで、真解君に関する秘話を1つ。
真解「なんだ?」
実は真解、君は当初の設定では真実の弟だったんだ。
真解「な、なんだってぇ!?」
そして、性格も逆転。「金田一少年の事件簿」の金田一一と七瀬美雪みたいな性格だったんだ。前者が君で、後者が真実。
真解「なんだそりゃ…」
普段は強気で怖いもの知らずだが、真実姉には全く手も足も歯も出ない。
真解「すごい設定だな、おい…」
更に言っちゃうと、キャラクターの関係、当初は「金田一少年の事件簿」をそっくり真似た状態にしようとしてたんだよね。でもそれはさすがに…と思って、いろいろ変更。今の形になりました。…ま、そこらへんはまた今度。

さて、今回はまだ推理は募集しません。が、現段階でも犯人を特定することは不可能ではありません。
真解「え…?」
だってほら、犯人は「今までのやりとりの中で…」って言ってたじゃん。
真解「あぁ…確かにそうだが…。じゃあ、なんで募集しないんだ?」
だって、特定できなくも無いけど証拠が無いし、かなり難しいから。
真解「それで…次回に募集するのか」
そ。それに次回も含めて見れば、結構簡単に解けるかもしれないから。
真解「それじゃぁ、ダメなんじゃないのか…?」
容疑者多いからね。
真実「えっと、今まで出会った人は全部で……」
真解「真実は犯人を見たんじゃぁ…?」
ま、どうなるかは次回のお楽しみ♪
それじゃあ、また次回。

おまけの珍句名言集(謎)「お、なんだ?死体が倒れた謎が解ったか?」
解説;幽霊屋敷殺人事件で、「死体が何故倒れたか?」がどうしてもわからず悩んでいた兜に、真解が話し掛けたとき兜が言った言葉。彼はこの後、真解に冷ややかな視線で見られることになる。

作;黄黒真直

推理編

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