摩訶不思議探偵局〜実相真実誘拐事件〜
今回、容疑者リストははぶきます。
はしがき;さて、容疑者はワタクシの小説の中では最多数の14名! 犯人わかりましたか??

摩訶不思議探偵局〜実相真実誘拐事件〜真相編
真実「犯人が…解ったの…?」
真解「ああ。解ったさ」
謎事「そ、それじゃあ、早く犯人の所に行ってとっ捕まえようぜ!」
謎「その前に警察に…」
真解「その必要はない」
 右往左往している謎事達を落ち着かせるためか、真解が言った。だが、その口調からは落ち着かせようとしている心情は伝わってこない。
真解「警察に連絡する必要も、犯人の所に行ってとっ捕まえる必要もない」
謎事「な、なんでだ…? 誰なんだ、その犯人は……」
真解「犯人は………この中にいる」
真実「えっ!?」
 3人が顔を見合わせた。「この中にいる」…と言うことは、謎事かメイのどちらかが犯人だと言うことだ。
謎事「ふざけるな真解!! どういうことだ!?」
謎「そうよ! なんでわたし達が…?」
 普段あまり声を張り上げないメイも声を張り上げた。
真解「落ち着いて聞け。ボクはキミらが真実を誘拐し、33万円を脅迫して奪おうとするなんて、微塵も思っちゃいない」
謎事「え…?」
真実「どういう意味…?」
 3人はわけがわからないようだ。しかし、真解にとってそれは「わけがわからないふり」をしているように見えた。
真解「今回の誘拐事件は、謎事、メイ…そして真実! お前ら3人で仕組んだ、狂言誘拐だったんだ!!」
謎事「なっ!?」
真実「な、なんで!? お兄ちゃん…!」
謎事「あんまりだぞ? 真解…」
真解「いいから落ち着いて聞け。まずは証拠……とは行かなくても、根拠が欲しいところだろう。まず第一に、犯人が言ってきた33万円だ」
謎「33万円が、わたし達を意味してるってこと…?」
謎事「まさか、『33』だからオレら3人だ、なんていうんじゃないだろうな?」
真解「それだったら3万円か3円だろう。33万円を日本語に変換するんだ」
真実「変換…?」
真解「最初の『3』は『み』と読み、次の『3』は『さ』と読む…。そして『万』は『ま』と読むんだ。逆から読むと…?」
謎事「マサミ……」
真解「そう、マサミ……。つまり、お前の名前が出て来るんだよ。真実!!」
真実「なっ…」
真解「次はメイの番だ」
謎「わたし…?」
真解「ボクは犯人に導かれ、『マヨイガワ』に辿りついた。『マヨイガワ』……漢字で書くと『迷河』だ。『迷』は『メイ』と読めるし、さらにメイの苗字に含まれる『河』の字まである……。事河謎…キミのことを指すには、これだけで十分だ」
謎「………」
「そして…」と言って、真解は謎事を睨みつけた。
真解「最後はお前だ、謎事。オレは犯人の指示で川を上流へと上った。上ったところに寺があった…。もうわかるだろ? 寺の名前は『迷河寺(まよいがわでら)』…そんときは、ふざけた名前だぐらいにしか思わなかった。だが、ここから『河』の字を抜くと『迷寺』…両方とも音読みをすればなんになる?」
謎事「えっ…?」
謎「メイジ……」
「音読み」の意味がわからなかった謎事の代わりに、メイが思わず言った。
真解「そう、メイジ……つまり『謎事』だよ。この3つの手がかりは、全てお前らを指してるんだ! それこそまさに、ゲームのようなばかげた暗号でな!!」
 真解が言うと、3人は黙りこけた。だが、まだ観念した様子はない。時々目配せをしている。どうやら、真解がこういう推理をすることをあらかじめ解っていたようだ。
「早く、あれを言え」
 そんな会話をしているように見える。
 メイが口を開いた。
謎「でも、ちょっと待ってください。わかっているとは思いますが…それだけじゃあ、証拠はもちろん、根拠としてもかなり成り立ちにくいですよ?」
真解「そのぐらい、わかってるさ。だが、根拠になりそうなことなら、2つある…」
謎「なに?」
真解「さっきのメイのセリフだ」
謎「え? わたしの…?」
 急に言われて、すっとんきょうな声でメイが言った。メイがこんな声を出すのは珍しい。
「そんなの、計画にあったっけ?」
 そんな雰囲気が感じ取れる。
真解「どうやら、演技ではなく思わずこぼしてしまったセリフなようだな…。オレの推理では、犯人は複数だ」
真実「なんでわかったの? って言うか、メイちゃんが言ったセリフってなによ」
真解「まぁ、順を追って説明するから待て。まず、犯人が複数だとわかったのは、電話の声だ」
謎事「声…? 声質が違ったとか?」
真解「いや、耳で聞いたぐらいでわかるような違いはなかった。ただ、1人称や語尾が微妙に違っていたんだ」
謎「え…?」
真解「これを聞いてくれ」
 真解は真実の携帯電話の再生ボタンを押した。
《キミノ妹ハ預カッタ。返シテホシケレバ、オレノ要求ニシタガエ》
真解「これは、犯人が最初に電話をかけてきて『ミアイ マサトクンカナ?』と言う奴の次に言った言葉だ。そして次が…」
 と言って、真解はまた携帯電話をいじくった。
《マァマァ、ソンナサケンダッテハジマリマセンヨ。トリアエズ、ワタシノハナシヲキイテクダサイ》
真解「これは、オレの目の前が一瞬真っ白になって、次に犯人が言った言葉だ。最初の奴は1人称が『オレ』なのに対し、こっちでは『ワタシ』。さらに語尾も『シタガエ』と命令口調だったのが『クダサイ』と丁寧な言い方に変わっている…。妙だと思わないか?」
謎事「確かに…同じ人が話していたら、普通はそういう風にならないかもな…」
真解「ああ。そうだ。オレは確かにさっきこれに気付いた。だが、お前ら3人には話していなかった」
真実「ええ…」
真解「だが、さっきメイはこう言った。『なんでわたし達が』ってね…」
謎「あっ…」
真解「わかったか? この時点では、犯人が単数か複数かどちらかまだメイは知らなかったはずなんだ。だから、少なくとも『なんでわたし達が』と言う言い回しは出来なかったはずなんだ」
謎「…た、確かにそうですけど、わたしは犯人はなんとなく複数のような気がしていたんですよ」
 苦し紛れかそれとも本音か…。メイが言い返した。
真解「そうか…。じゃあ、根拠2つ目。2つ目は真実の言葉だ」
真実「今度はわたし?」
 さっきのメイよりは落ち着いている。
真解「ああ、そうだ。真実は確か、犯人が電話をかけているとき、側にいなくて聞いてないんだったよな?」
真実「ええ。だって聞きようがないもの」
真解「だが、真実はオレが『かかってきた電話では、男口調だったぞ?』と言ったとき、『確かにそうだったけど…』って言ったよな?」
真実「!」
真解「矛盾してるんだよ。本当に聞いていなかったのなら、『確かにそうだったけど』なんて言えないし、もし聞いていたんだったら、何故オレに聞いていなかったなどと言ったんだ?」
 真解が真実を見据えた。真実は黙りこくっている。その横からメイが言った。
謎「確かに、その状況じゃあ、わたし達がかなり怪しいわね。でも、証拠はあるのかしら?」
謎事「そうだよ。証拠はあるのか? 真解!」
真解「あるさ。もちろん」
謎事「!」
 真解はまた真実の携帯電話を取り出した。
真解「この携帯電話には、犯人の声が録音されている…それは、さっきからかけている通りだ」
謎事「それが?」
真解「犯人の声は確かに機械的な声だった。だが、ちょっと機械を通したぐらいなら、特徴的な音質は変わらないんだったよな?」
 真解がメイの方を向いた。
謎「え、ええ…。確かに、現在の科学技術を持ってすれば、ちょっと機械を通したぐらいじゃあ、誤魔化せません」
 真解がニヤリと笑った。
真解「じゃあ、この携帯電話を警察に突き出して見たら、どうなる…?」
謎「でも、特徴的な音質が似ていると言うだけでは、決定的な証拠にはならないわよ? 99%ぐらいよ」
真解「そうか…。じゃあ、もう1つ99%の証拠品がある」
真実「え…?」
 真解が長いロープを取りだした。真実が木に縛られていたやつだ。
真解「これは、真実を助けたときについでに持ち帰ったロープだ。…ところで真実、犯人はどんな姿だった?」
真実「え…? 黒の帽子をかぶり、黒のサングラスをかけて、黒のスーツを着て、顔の半分を覆うような大きなマスクをしてたわ」
真解「そうか…。犯人は、その4つだけを見につけていたんだな?」
真実「え、ええ…。見える範囲では…」
 真解がニヤリと笑った。
真解「つまり、犯人は手袋はしていなかったと言うわけだ」
真実「あっ!」
真解「そう…。そして真実の話では、犯人が真実を縛り付けたあと、ロープを拭いたとは言っていない。つまり、指紋がまだハッキリと残って言うハズなんだ!!」
 真解は3人の顔をゆっくりと見渡した。
真解「さぁ、どうする? このロープを警察に突きだすか…?」
 沈黙が続いた。そして、唐突に真実が言った。
真実「さっすがお兄ちゃん☆」
 そう言って、真実は真解に抱きついた。
真解「うわっ!? だからぁ!!」
謎事「いやほんと、さすがだ。うんうん」
謎「ほんと、感心するわね」
真解「でもよかった…あってた」
謎事「『あってた』って…」
真解「いやほら、もし間違ってたらことじゃん」
謎事「確かに。即探偵団解散だな」
真解「だろ? って言うか、真実離れろ!!」
 真解が真実をはがした。
真解「だが……1つだけわからないことがある」
真実「? なに?」
真解「動機は…なんだ?」
真実「う〜んっとね…。まぁ、強化訓練だね。言ってみれば」
真解「強化訓練!?」
真実「そ。だってほら、お兄ちゃん、いつもわたしとメイちゃんと謎事君の3人と一緒になって事件解いてるじゃん」
真解「そりゃぁ、探偵団だもんなぁ…」
真実「でも、4人で解いてたんじゃあ、お兄ちゃんは半人前どころか4分の1人前。ってなわけで、わたし達がお兄ちゃんの推理力はもちろん、観察力、記憶力、知識、そしてわたしへの『愛』を試しつつ、訓練させたのよ!」
真解〔愛? 愛情じゃなくてか??〕
謎事「そして、その結果がこれ」
謎「なかなか、いい推理力、観察力、記憶力だったと思うわよ」
真解「そうか…。で…何点ぐらいだ?」
真実「う〜んっと……100点満点で80点ぐらい?」
真解「80…?」
真実「メイちゃんの計画にない失言を鋭く突いたのはすごかったけど…」
謎事「1回聞いただけで、犯人が複数だと気付かなかったのがマイナスポイントだな」
謎「犯人の言った『いままで出会った中にいる』と言うのを真に受けたのも、ちょっとマイナスポイントですね」
真実「ま、わたしへの『愛』が強かったから、よかったけどね♪」
真解〔だから、なんで愛情じゃなくて愛なんだ?〕
謎「説明する必要もないでしょう?」
真解〔だから、なんでボクの心の中が読めるんだ?〕
 しかし…と真解は考えた。
真解〔推理力、観察力、記憶力、知識を試す…か。もしかしたら今回の事件は、ボクらが探偵団を結成した時から既に始まっていたのかもしれないな…。過去に起こった小さな事件が後の大きな事件を引き起こす……。マンガや小説でよくあるが、まさかボクが出会うとは思ってもみなかった……〕
 と、真解はしみじみしていたが、ある重大なことに気が付いた。そして、3人に話しだした。
真解「なぁ、みんな…」
真実「なに?」
真解「ボクは確かに真実ほどの記憶力も、謎事ほどの観察力も、メイほどの知識も無い。だが、これだけはわかる」
謎事「なんだ?」
謎「なんですか…?」
真実「なぁに? お兄ちゃん」
真解「お前ら………………………オレの33万円、返せ」
 事件は、これからが本番のようだった。

Finish and Countinue

〜舞台裏〜
こんにちは。キグロです。
今回のゲストは、相上謎事君です!
謎事「ども」
同じ探偵団のメイに惚れつつ数年の月日が経ち……。
謎事「え? 数年なのか?」
うん。数年。とりあえず、設定としては探偵団組む前後だから。
真実「10年弱じゃん」
いいんだよ!! 数年で!!
謎事「そうなのか……」
そうなんだよ。そのうち謎事がメイに惚れこむエピソードでも書こうかな♪♪
謎事「待て」
冗談だよ。書いててこっちが恥ずかしくなってくるからな。
謎事「そうか」
そうだ。だから告白シーンも出さない。
謎事「待てぇ!!!」

さて、どうでしたか? 今回の事件は。
謎事「なんか、苦情がいっぱい来そうだな…。容疑者リストに犯人の名前が無いって…」
う〜ん……確かにそうなんだよなぁ…………。苦情は、一切お断りします。
謎事「いいのか!?」
良いことにしちゃおう!
謎事「う〜ん……」

さて、では前回に引き続き、キャストに関する秘話を。
謎事「おっ。三つ子探偵の続きだな?」
そう。三つ子探偵では、今で言う真解、真実、そして謎事の3人の予定だったんだ。
謎事「メイちゃんは…?」
その頃はいなかった。
謎事「そうだったのか…」
でも、三つ子探偵だとなんとなくかっこ悪かったから却下。そして、前作(カービィ探偵団!)は3人組みだったから、今度は4人にしよう! と言うわけで4人に決定。
謎事「これでだいぶ今の形に近づいたな」
うん。初めは四つ子あんもあったんだけど、さすがにそれは…と言うわけで却下。んで、色々考えた末、
双子2人と双子じゃないの2人、と言う現在の形にたどり着きました。
謎事「じゃあ、もう完璧だな!」
ところがそうも行かず……。
謎事「え?」
まぁ、その話はまた次回。
謎事「延ばしすぎだよ…」
いや、探偵団についての話だから良いんだよ。4回シリーズさ。
謎事「なる……」

さて、では正解者の発表!
犯人が解った方>2人ほど送ってきて、1人は外れ。もう1人は真実の自作自演とはわかったようなのですが…謎事達の名前がなかったので89点(微妙。
動機が解った方>こちらは、誰もわからなかったようです。
ではまた次回。

〜次回予告〜
「父が残した遺書に書かれた暗号を解いて欲しい」
摩訶不思議探偵局に突然かかってきた一本の電話。
それは、大富豪の息子からだった。
半年前に無くなったその大富豪は、なんと遺産の隠し場所を暗号で記したという…。
はしゃぐ真実と謎事を落ち着かせながらやって来た一行は、そこで残虐非道な殺人事件に遭遇する…。
次回、結構シリアスな内容になりそうな『遺産相続権殺人事件』をお楽しみに。

おまけの名句珍言集(謎)「肝心なときに役立たないんですね…」
解説;肝心な時に謎事がいなかったので、メイが呟いた一言。この言葉に謎事はものすごいショックを受けた。

作;黄黒真直

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