摩訶不思議探偵局〜遺産相続権殺人事件〜
主な登場人物( )内は読み、【 】内は役
実相真解(みあいまさと)…【探偵】
実相真実(みあいまさみ)…【探偵】
相上謎事(あいうえめいじ)…【探偵】
事河謎(ことがわめい)…【探偵】
兜剣(かぶとつるぎ)…【警部】
猫山剣事(ねこやまけんじ)…【警部補】
小鳥遊市医(たかなしいちい)…【鑑識】
大金金収(おおがねかねかず)…【故人・大富豪】
大金勲(おおがねいさむ)…【金収の長男】
大金豪(おおがねたけし)…【金収の次男】
大金幣(おおがねへい)…【金収の三男】
大金時子(おおがねときこ)…【勲の妻】
大金黄金(おおがねこがね)…【勲の長女】
大金富子(おおがねとみこ)…【豪の妻】
大金鉱太郎(おおがねこうたろう)…【豪の長男】
大金円華(おおがねまどか)…【幣の妻】
大金銀之助(おおがねぎんのすけ)…【幣の妻】
はしがき;今回、名前にこだわりました。見てわかるように全員、「金」関係の名前です(勲は「勲章(高そうなイメージ)」から、時子は「時は金なり」から)。

この世は全て、金で動いてるんだ。

摩訶不思議探偵局〜遺産相続殺人事件〜暗号編
Prrrrrrrr
 また、摩訶不思議探偵局の電話が鳴った。
 今日は真実がいるので、着信音は一回で切れた。
真実「はい、摩訶不思議探偵局です」
???「あ、あの、ワタクシ、大金勲(おおがねいさむ)と申します」
真実「オオガネイサムさん…漢字は?」
勲「タイキンに、勲章のクンです」
真実「あぁ、わかりました。で、どのようなご用件でしょうか?」
 真実は聞きながら、電話をスピーカーホンに切り替えた。これで全員で一緒に聞ける。
勲「実は…我々の父が残した遺書に書かれた暗号を解いて欲しいのです」
真実「暗号を…?」
 大金勲の話をまとめると、こうだった。
 大金家は、名前からわかるように大富豪の家系だ。そして、その大富豪が、莫大な遺産を残して亡くなった。
 しかし、その遺書にはとんでもないことが書かれていた。
真実「暗号が解けた人に遺産を渡す…?」
勲「ええ。実はわたしは3人兄弟の長男で、下に2人いるんです。父の遺書には、我々3人兄弟の中で、暗号が解けた者に全遺産を渡すと書いてあったんです」
真実「はぁ」
勲「はじめは3人バラバラで考えていたんですが、どうしてもわからず、3人よればなんとやら、3人で考え始めたんですが、それでもわからず……」
真実「わたし達に依頼を?」
勲「ええ。もし暗号が解けたら、遺産の半分を摩訶不思議探偵団の皆さんにお渡しします」
謎事「大富豪の遺産の半分!?」
 謎事が思わず声をあげた。
謎事「ってことは、半分の4分の1だから、元の……………えっと、」
真実「8分の1」
謎事「……なんか少ない気がする」
勲「8分の1と言いましても、父の遺産は何億円という量らしいですから」
 謎事の声が聞こえたのか、勲がとっさに言った。
謎事「億……」
真実「1億円だとしても、わたし達1人1人に1250万来るわ」
謎事「1250万……おい、1250万っていくらだ?」
真解「1250万は1250万だ。それ以外に何がある?」
謎事「いやまぁ、そりゃそうだけど……例えばなんだ?」
謎「某新聞の全国版の全面広告の料金は、約3000万円らしいですから、それの半分弱ですね」
謎事「ってことは、半面広告の料金か……」
謎「面積と料金が比例していればそうなりますね」
勲「続けていいですか…?」
真実「あ、すみません! どうぞ」
勲「…と言うわけで、来ていただきたいのですが」
真実「はい、かしこまりました!」
 真実は住所を聞いた。
真実「では、これより早速参ります」
真解「これよりぃ!?」
 驚いたのは真解だった。

 こいつら、学校行ってんのか?
 大金家の住民の中には、そんなことを考えた人物がおそらくいただろう。
 真解達が大金家についた時には、既に日が沈みかけていた。
真実「こんにちは! 摩訶不思議探偵団です!」
 真実が元気よく言った。
勲「おお、待っていました! わたしが電話をした勲です」
真実「ああ、あなたが…」
 確かに、大富豪の長男、と言った身なりだ。
真解「謎事とは大違いだな」
謎事「う、うるさいな…」
 覚えている人もいるかもしれないが、謎事は一応社長令息…富豪の息子だ。
勲「ささ、どうぞ。中へお入りください」
真実「お邪魔します」

 門をくぐると待っていたのは、広大な庭。庭師がいないのか、ほとんど野放し状態だ。いたるところに雑草が生い茂り、池らしきものには一応コイがいるが、餌がやられている様子はない(と謎事は見た)。
真解〔餌やんなくて、生きていけるのか…?〕
 現に、キグロ家のメダカは餌を一切やっていないが生きている。
 他にも、豪勢に苔むした、豪勢な庭石。立派に汚れている、立派な温室。利用機会が多いのか、それほど荒れてはいない豪華なテラス。
 そして、一歩間違えれば幽霊屋敷になりそうな、デカイお屋敷。ツル植物が所狭しと張り付いて、言われなければ木々と勘違いして通り過ぎそうだ。それでなくとも、この庭は森のようだと言うのに…。
真解〔すごい…古そうな屋敷だ…〕
謎事「何年物ですか? この家…」
勲「わたしが産まれたときにはありました」
真解〔いや、そりゃ当たり前だと思うぞ〕
 勲自身にも、いつからあるかわからないらしい。
 そんな屋敷の中に入ると、玄関のでかさに驚いた。部屋の広さに驚いた。驚きの連続だった。
 やっとこさ大広間につくと、そこには待ちくたびれた大金家の面々がいた。
勲「みんな! お待たせ! 摩訶不思議探偵団が来てくれたぞ!」
???「オオッ!! ついに来てくれたか!」
???「おおっ」
真解〔うわっ。いっぱいいるよ、おい…〕
謎事「3人兄弟全員に、妻と子どもがいるみたいだな…」
真解「ああ」
 そして、全員が自己紹介を始めた。が、人数が多いので、まとめる。
 まず、長男の勲。そしてその妻が時子(ときこ)。勲と時子の娘が、黄金(こがね)。
 大金家の次男の名が豪(たけし)。その妻が富子(とみこ)。豪と富子の息子が鉱太郎(こうたろう)。
 大金家の三男の名が幣(へい)。その妻が円華(まどか)。そして、幣と円華の息子が銀之助(ぎんのすけ)だ。
謎事「ぜ…全員金関係の名前だ…」
勲「大金家の子どもは、金関係の名前にしなきゃいけないんですよ。妻は別になんでもいいんですが……」
豪「まぁ、めぐり合わせ、ってとこだろうな」
真実「いいなぁ…わたしもああいう名前がよかった…。ねぇメイちゃん。名前って変えられないの?」
謎「家庭裁判所に申し立てれば、かなりの理由があれば変えることは不可能ではありません」
真実「かなりの理由……」
真解「……で、早速ですが、遺書を見させていただきたいのですが」
幣「ああ、そうだったね。ちょっと待ってて」
 幣が奥へと行き、すぐに戻ってきた。
幣「これが、父の遺書です」
 真解が遺書を開いた。
『遺書
 これからここに記す暗号を解いたものに、遺産相続権を授ける。
 諸注意:
 暗号の解読にあたり、誰かの協力を得るのは全く構わない。
 複数の者が解読出来た場合は、先に解読出来たほうに全財産を授ける。
 どちらが先かわからない場合は、財産を均等に分割すること。
 暗号解読権は、我が息子達、大金勲、大金豪、大金幣の3名にのみある。
 なお、言うまでもないと思うが、暗号を解くと財産の隠し場所が出てくる』
 真解は、遺書の2枚目を見た。
 暗号は、そこに書いてあった。
『暗号;
 「二羽のカニわね イカ氏の舌に飼うね 真似かつ照る(にわのかにわね いかしのしたにかうね まねかつてる)」
 ここに、財産が眠っている。
 では、健闘を祈る。
 平成○年×月△日』
謎事「なんだこりゃぁ…。ってか、カニって1羽2羽って数えるのか?」
謎「1匹2匹だと思いますけど…」
真解「ってことは、それがなにかヒントなのか…? …少なくとも『田中よ』よりは難しそうだな」
謎事「あれ3人で考えたんだぜ!?」
円華「あの…なんの話を…?」
真解「あ、いえ、気にしないでください」
豪「で…どうだ? 解けそうか?」
富子「豪、もっと丁寧に話してよ」
豪「…それもそうか。で、解けそうですか?」
真解「………まだなんとも言えませんが、必ず解いてみせます」
幣「そうか…」
 真解は、暗号をじっと見つめた。
時子「あの探偵さん達…」
真実「はい」
時子「こんなところまで来て、お腹空いたでしょう? もう日も沈んでるし、夕ご飯食べましょ?」
真実「あ、ありがとうございます」
 全員、ぞろぞろと食堂へ向かった。…いや、真解だけ突っ立っていた。
真実「お兄ちゃん! 行っちゃうよ!」
 真実が真解を引っ張って、真解は初めて気付いた。

真実「半年前に亡くなられたんですか、その大富豪の大金金収(おおがねかねかず)さん」
真解〔すごい名前だな、おい……〕
銀之助「そうです」
勲「我々は、それ以来ずっとこの暗号を考えているのですが…」
黄金「わかんないんだってさ」
真解「と言うことは、かなり難しい暗号なのか…」
鉱太郎「親父達がバカなだけだよ」
豪「なんだと?」
鉱太郎「いや、嘘嘘。空耳空耳。気のせい気のせい」
真解〔『嘘』と言っておいて、『空耳』と言うのは矛盾してないか?〕
 真解は突っ込みたかったが、失礼なので止めておいた。
 黄金、鉱太郎、銀之助の3人は、親の年齢がさほど違わないためか、3人の年齢もほとんど変わらない。そして何故か、黄金が最年少のような雰囲気である。謎事の見解では黄金20、鉱太郎22、銀之助21である。
真解〔なんでそんなに見分けられるんだ…?〕
 狂人的な観察眼だからこそなせる技である。
真解「あ、そうだ…大金金収さんについて、いろいろ教えていただけないでしょうか?」
勲「ええ、いいですよ。父は、会社は経営していませんでした」
謎事「えっ!?」
勲「株だのバクチだの、そういうので稼いでいたんです。先代から」
謎事「すげぇ…」
勲「父は、株の見方、バクチのうまいやり方などを、我々に教え込んでました。企業秘密ですけど」
真解〔なんの企業だ…〕
真解「……他には?」
勲「そうですねぇ……」
幣「旅行嫌いだったな…父は」
豪「そうだ。旅行が嫌いだったんだ! それで、大富豪の息子だと言うのに、いままで旅行に行ったことは1度もない」
真解「はぁ…。え、じゃあ大金金収さん、外国語は?」
勲「確か以前、『俺は全言語ペラペラだ!』と豪語してました」
真解「実際は?」
勲「父は、外国の営業マンとも色々取引をしていたようで、わたしが聞いただけでも、英語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ポルトガル語、中国語、韓国語…それから、専門用語なんかも詳しかったですね」
謎「すごい…」
 メイが感心している。知識人は、知識人に感心するようだ。
豪「他にも話してただろ? なんか、どこの国の言葉だかわからないようなものとか…」
幣「あとそれから、日本中の方言も話せてましたね」
真解〔つーことは、あの暗号にはそれらの知識を使いまくっている可能性がある……こりゃ大変だぞ、おい〕
真解「他には…?」
勲「そうですねぇ…。そういえば、用心深かったなぁ…。気前はいい人でしたね」
豪「気前はいいのに、『庭師に払う金がもったいない』とか言って、自分で庭の手入れをしていたんだ。確か死ぬ直前に『俺が死んでも、庭師なんか呼ぶな』って言ってたな」
真解〔ははぁ…つまり、荒地と化したあの庭は、半年前まではまともな庭だったわけか…〕
幣「それから…この家族の中で、父だけ、愛煙家だったっけ…」
真解〔ヘビースモーカーか…〕
勲「それから他には……そうそう、いろんな学問に通じてたね」
真解「学問?」
豪「おお、そうだった。医学、疫学、科学、化学、光化学、社会科学、自然科学、軍学、経済学、考古学、言語学、心理学、社会心理学、雑学、民族学、地学、哲学、美学、天文学、法学、生理学、物理学、熱学、熱力学、生物学、力学、超心理学、心霊学、機械工学、摩擦学、氷雪学それから…」
真解「も、もういいです」
豪「そうか?」
 その後も2、3、情報を引き出したが、どれをどう繋いでも、暗号解読には持ち込めなかった。

時子「今日は、ここに泊まって行くのよね?」
 時子が聞いてきた。
真実「ええ。いまから帰ったら、大変ですから」
時子「そう。じゃあ、部屋を貸すわね。こっちよ」
謎事「空き部屋があるんですか?」
時子「ええ。2つあるから大丈夫よ」
真解〔何が『大丈夫』なんだ…?〕
 なにはともあれ、真解達は案内された部屋で、暗号を考えることにした。

Countinue

〜舞台裏〜
今回、結構、力を入れた、キグロです。
今回のゲストは優等生事河謎さんです!
謎「だから、わたしは別に優等生ってわけじゃないし…それに、授業風景出てないんですけど?」
う〜ん……まぁ、そのうちだすよ。

さて、では探偵団結成秘話、最終回。
謎「あ、4人組になったあとの続きね」
そう。双子と双子じゃないのの4人組にしよう、と決まり、今度はメンバーの男女。
謎「男女…?」
そう。男2対女2にしよう、と言うのは4人組が決定した時に決めたんだけど、双子を女女、男女、男男のどれにするか迷ってね。
謎「まよったの…?」
そうなんだよねぇ。なんでかしらないけど。
謎「で、いまの形になったきっかけは?」
うん。ほら、初め金田一と美雪みたいにしよう、って話があったじゃん?
謎「ええ、ありましたね」
だから、「そうだ、兄に恋こがれる妹、と言う設定にしよう!」と言うわけで、現在の形が決定!
謎「ついに、出来たんですね」
そ。それから名前を決めて行ったわけだ。名前については、いつやろうかね……。まぁ、いつか機会があったらやるわ。

さて、どうでしょうか? 暗号の方は。
謎「解けるんですか? 今の状態で」
解こうと思えばね。
真解「やっぱり、『田中よ』より難しいか?」
う〜ん…あんまり、詳しくは言えないね。
謎「ばれてしまうから?」
そう。でもまぁ、これから徐々にヒントを出していくから。
謎「そして…殺人も?」
うん。起こるよ、殺人……久しぶりにね。
謎「そういえば、最近の3話は怪盗や未遂、誘拐でしたからね」
しかも狂言もあったし、倒叙式だったしね。でも、予定してるのでも殺人少ないんだよね。
謎「え?」
でもまぁ、元々殺人ばっかじゃなくって、他にもこう言う暗号解読だとか、そういうのもいっぱいやろうと思ってたんだよね。題名を『探偵団』じゃなくて『探偵局』にしたのはそういったところからだよ。
謎「『団』だと殺人っぽいけど、『局』ならなんでもやるって?」
そゆこと。
それじゃあ、また次回。

おまけの名句珍言集(謎)「さぁてと……あとは鑑識の結果を待つだけだ」
解説;真解が証拠になるはずの指紋の検出を、小鳥遊に依頼したあと言ったセリフ。出来るだけカッコいいセリフを考えたかったのだが、これが限界だった。

作;黄黒真直

事件編

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