摩訶不思議探偵局〜遺産相続権殺人事件〜
容疑者リスト
大金勲(おおがねいさむ)…【金収の長男】
大金豪(おおがねたけし)…【金収の次男】
大金幣(おおがねへい)…【金収の三男】
大金時子(おおがねときこ)…【勲の妻】
大金黄金(おおがねこがね)…【勲の長女】
大金富子(おおがねとみこ)…【豪の妻】
大金鉱太郎(おおがねこうたろう)…【豪の長男】
大金円華(おおがねまどか)…【幣の妻】
大金銀之助(おおがねぎんのすけ)…【幣の妻】
独り言;最近、遺産相続=殺人と言う方程式が成り立ってしまっている……。

摩訶不思議探偵局〜遺産相続権殺人事件〜事件編
真実「ここの人達に聞いてわかったことって言うと、大金金収(かねかず)さんは知識人だったってことぐらいね。あ、あと用心深いってことかしら?」
真解〔かなり省略しすぎじゃないか?〕
 真解達は、貸してもらった部屋に閉じこもり、話し合っていた。
謎「わたしよりもね…」
謎事「つーことは、もしあの暗号に知識をふんだんに使っていたとしたら…?」
謎「とても、わたし達じゃ解けないわね」
真実「そうなっちゃうのかぁ…」
 大富豪の遺産をみすみす見逃すことになってしまいそうで、真実は不安げに言った。が、そんな真実の不安を打ち消すように真解が言った。
真解「たぶん、知識はほとんど使われていないと思う。仮に使われていても、専門的知識ではないだろう」
真実「え? なんで?」
真解「だってそうだろう? 専門的知識で、誰にもあの暗号が解けなかったら、遺産はどうなる?」
謎事「ずっと放置されたままになってしまう……」
真解「ああそうだ。だから、そんなに知識はいらないはずなんだ」
謎「そう。じゃあ安心ね」
真解「そういった面では安心だがな……」
 真解は遺書を開いた。
『二羽のカニわね イカ氏の舌に飼うね 真似かつ照る(にわのカニわね イカしのしたにかうね まねかつてる)』
真解「いったい、なんなんだ…?」
謎事「そのまんま解釈すれば、『二羽のカニは、イカさんの舌に飼うのが一番だ。マネではあるが、光るだろう』ってなるぞ」
真解「う〜ん…確かにそうだが、それでもわけわかんない文章だな…。所々に区切れがあるのが気になるんだよな」
真実「でもこれは、句読点の代わりじゃない?」
真解「句読点の代わり……? と言うことは、ここに句読点が入るとまずいようなことでもあるのか?」
真実「さぁ?」
真解「だとすると、いったい……?」
 4人が一斉に考え込んだ時だった。
「きゃああああああぁぁぁ〜〜〜〜っ!!」
 と言う悲鳴が、屋敷中に響いた。
全「!?」
真実「なに、いまの!?」
謎事「悲鳴…? こっちだっ!!」
 謎事が部屋から飛び出した。慌てて真解達も追う。
真解〔まさか…まさかとは思うが……)
―殺人か?
 …まさか。と、真解は否定したが、内心ではほとんど確信していた。
 いままで何度も殺人事件に出会い、何度も悲鳴を聞いていた。いまの悲鳴は、死体を見たときの悲鳴だ。
謎事「くそっ。どっちだ? こっちかっ!?」
 謎事は悲鳴の聞こえた“方向”はわかったが、そこまでの道筋がわからなかった。
 走っていると、黄金と激突した。
黄金「きゃっ」
謎事「うわっ!?」
黄金「謎事君! いま、お母さんのらしき悲鳴がしたんだけど…」
謎事「たぶん、こっちです」
 謎事が走った。黄金と真解達が追った。
 そして、そこからちょっと行ったところで腰が抜けてる時子を見つけた。
黄金「お母さん!!」
時子「あ…あ……」
 時子が目の前の部屋を見ながら、絶句している。
黄金「お母さん、どうしたの!?」
時子「あ…黄金……来ない方が…」
真解「! まさかっ!?」
 真解が急いで時子の前方の部屋に踏み込んだ。
真解「!?」
 そこには、頭から血を吹き出し、横たわった大金勲の姿があった。

兜「え〜、被害者は、大金勲さん、48歳。で、第一発見者が、その妻、大金時子さん」
時子「はい…」
 兜は、いつものように冷静な口調で話した。
兜「で…なんで、真解達がこんなところにいるんだ?」
真実「わたし達、依頼を受けたんです」
猫山「依頼を受けたって、警察よりは早くこれないでっしゃろ?」
真実「あ、いえ、この依頼じゃなくって…」
 真実は遺書の話と依頼内容を話した。
兜「で、その矢先この殺人と? 2時間サスペンスのお決まりコースだな」
豪「なんの話です?」
兜「い、いや、なんでもありません」
 兜はポケットからガムを取り出し、噛みだした。
真解「あれ? タバコ止めたんですか?」
兜「ああ。阿久刀川から、タバコが原因でMASKにしてやられたって聞いてな。一緒に禁煙することになった」
真解「はぁ…」
 禁煙するに当たってガムはなかなかいいらしい。
 余談だが、ガムを噛みつづけると、その刺激が脳に伝わり、脳が活性化。頭が良くなるらしい。
小鳥遊「兜警部。司法解剖の結果が来ました」
兜「ん? どうだった?」
 小鳥遊が兜の耳元で報告した。
兜「ふむ…。わかった。さて、ではみなさん…」
 と、兜は振り返って言った。
兜「勲さんが殺されたと見える、午後9時から死体を発見した午後11時まで、どこでなにをしていたか、1人ずつ話してください」
豪「その時間なら、自室で本を読んでました」
 豪がそういうと、ほとんどの人が「自分も自室で…」と言い出した。
 ただ、円華と富子は、台所にいたという。
兜「と言うことは、アリバイがあるのは円華さんと、富子さんのみ…か。 …それじゃあ、みなさんにはこれから、事情聴取を受けてもらいます」
鉱太郎「え!? もう夜中ですよ!」
兜「我慢してください。お願いですから。記憶も記録も、早い方がいいんです」
鉱太郎「……わかりました…」
 時刻は午前1時になろうとしていたが、死体を目の当たりにして、誰が眠くなると言うだろうか? 事情聴取がないにしても、どっちにしろ眠れそうに無い。
 全員がリビングに入って行った後、真解は小鳥遊に聞いた。
真解「何か、司法解剖の結果わかったことを教えてください」
小鳥遊「わかった」
 小鳥遊が説明を始めた。
小鳥遊「え〜、死亡推定時刻は、先ほど兜警部がおっしゃった通り、午後9時頃から、死体発見の午後11時頃まで。後頭部強打による死亡だと思われます。凶器はなにか硬い物ですね…。傷口に植物の葉の欠片のような物があったので、おそらく石だと思われます」
 小鳥遊は解剖記録を読むときだけは、どうしても理事的な話し方になってしまうようだ。
小鳥遊「そして、一番奇妙なのが……」
真解「なんですか?」
小鳥遊「ダイイングメッセージらしきものが残ってるんですよ」
謎事「なんだって!?」
真実「そうこなくっちゃ!」
真解「見せてください!」
小鳥遊「ほら、これさ」
 小鳥遊が、袋を取り出した。その中には、紙切れが一枚落ちている。
真解「これが………ダイイングメッセージ?」
小鳥遊「だから、ダイイングメッセージ『らしき』ものと言ったじゃないか」
謎事「でも……もしダイイングメッセージだとしたら、妙だぞ…」
謎「ええ。普通は、ダイイングメッセージとは死ぬ直前に残すものですから、普通はこんなことはしないはず…」
 そのダイイングメッセージは、なんとワープロ(パソコン)で書かれていた。
小鳥遊「しかも、これがプリンターにおいてあるならまだしも、被害者が握っていたんだ。パソコンの電源は入ったままなものの、わざわざプリントアウトする必要があるだろうか?」
真解「そして…この、ナゾの内容……」
 紙切れには、『Key;大金金収』と書いてある。
謎事「ケーイーワイって、キーって読むんだよな?」
謎「ええ。日本語で『鍵』ですね……」
謎事「大金金収さんが、殺したって言うのか?」
真解「まさか…死人に人なんか殺せるわけが無い」
真実「じゃぁ、これはいったい…?」
真解「……………」
 ナゾだらけだ。
 真解は、じっとその紙切れを見つめた。そして、真解の頭脳はフル回転を始めた。
真解〔ってことは、暗号…になっているのか? 暗号…暗号……そういえば、あの遺産の暗号もさっぱりわからないままだ…。 …現場を少し見て見るか〕
 兜にことわりもせず、真解は現場に踏み込んだ。
 40近いであろう警部が、たかが14歳の少年探偵が勝手に現場に踏み込んでも、全くとがめるようすはない…。大金家の人々が見ていたら、大いに驚いたことだろう。
猫山「なにかわかりそうか?」
真解「いえ…まだなにも……。あ、これがダイイングメッセージを書いたワープロですか?」
猫山「おそらく」
真解〔ふぅん……。別に、普通のパソコンか……〕
 真解がワープロに触れようとしたときだ。
猫山「あ、触ったらダメだ」
真解「え?」
猫山「勲さんの奥さん…時子さんが言うには、勲さんは別に潔癖症なわけじゃないが、何故かそのパソコンだけは誰にも触らせなかった……。だから、死んでからも触らせちゃダメだ」
真解〔いつの間にそんなこと聞いたんだ…?〕
真実「それじゃあ、どうやって捜査を…?」
猫山「諦める」
真解〔いいのか!?〕
謎「まぁ、触らなくてもかなりの推理は出来るでしょう? あなたなら」
真解〔だから、なんでボクの心の中が読める……〕
 とりあえず、パソコンをじっと見つめることにした。が、普通のパソコンと何ら変わりない。
 ……いや、よく見ると、キーボードの所々に血がついている。
真解「猫山さん、この血は?」
猫山「小鳥遊が調べたところ、どうも被害者のものらしい」
謎事「ってことは、頭殴られた中であのダイイングメッセージらしきものを残したと言うことか」
真解「そうだろうか?」
謎事「え? なんでだ?」
真解「わざわざパソコンに向かうよりも、生きていたんだったらドアを開けて助けを呼ぶべきだ。と言うか、普通はそうする」
真実「ドアが開かなかった…とか?」
真解「まぁ、それなら話は別だが……」
 そう言って、真解はドアを閉めた。
真解「それだったら、ここに少なからず血が付着しているはずだ。ドアを開けようとしたんだからな。猫山さん、どうでした?」
猫山「あ〜…見た感じでは、ついてないね」
真解〔いや、そのぐらいならボクらでもわかる〕
 真解は心の中で突っ込みを入れてから
真解「ルミノール反応かなんか、見てみました?」
 と聞いた。
猫山「いや。だが、小鳥遊達鑑識アンド下っ端の警官が徹底的に調べたけど、そんなもんはどこにもなかったからな」
真解〔下っ端って……〕
 せめて巡査とかって言いなよ、と言う感じがしたが、真解は警察のことはよく知らない。とりあえず、放っといた。
真解〔この現場を見てわかることは、特に無いかな……〕
 真解がそう思い部屋を出ると、慌てて真実たちもついてきた。
真実「どう? お兄ちゃん。なんかわかった?」
真解「いや……現段階では何もわからないな…。この二つの謎も…何もかも」
 真解はそう言って、あの遺書とあの奇妙なメッセージを取り出した。
真解「いったい……」
謎事「なぁ…もしかしてこれ…」
真解「え?」
謎事「このダイイングメッセージみたいなの、最初に『key』って書いてあるぐらいなんだから、暗号の解読方法なんじゃないのか?」
真解「え…? まさか、そんな…。なんで死ぬ直前に、そんなの残すんだ? 遺産のあるところを示せばいいだけじゃないか」
謎事「それもそうだけどさ……」
謎「でも…あながち間違いじゃないかもしれませんね。このメッセージを、“本当に”被害者が残したのなら、別ですが」
真実「そっか……被害者が残したんじゃないのかもしれないんだったね」
真解〔ってことは、あの『二羽のカニわね イカ氏の舌に飼うね 真似かつ照る(にわのカニわね イカしのしたにかうね まねかつてる)』と言う暗号は、『大金金収(おおがねかねかず)』をヒントにすれば、解けるってことなのか…?〕
真実「ってことは、暗号を解けばおのずと犯人もわかるんじゃない? 犯人が残したメッセージなんだから」
真解「そうかぁ? さすがにそれはないんじゃ…」
謎「もしそうだとしても、わたし達はこの屋敷について知らなさすぎるわ。誰かに聞きましょう」
真実「じゃあ、とりあえず事情聴取をしてる…リビングに行こう」
真解「………そうだな」
 真解達は、リビングへと向かった。

Countinue

〜舞台裏〜
あぁ、なんか今回…思った以上に長くなりそうだ……と考えているキグロです。
今回のゲストは、40近い兜剣さんです!
兜「40近いとは失敬な」
いや、でもこっちの設定としては、40代なんだから、若く見られてるんだよ?
兜「なに? そうなのか?」
そうなのかって……自分の年齢ぐらい、覚えてろよ!!
兜「いや、ハハハ……」
猫山「けいぶぅ……40代が14歳に言い負かされてどうするんですかぁ…」

さて、今回不確定ながらも、暗号のヒントが出て来ました。
兜「あの推理は、正しいのか?」
さぁ? どうでしょう?? それは、推理してください。
兜「現状で、解けるのか?」
最初に出てきた時点で解けます。
兜「なにっ!?」
推理力、記憶力、観察力、知識力があれば……。
兜「摩訶不思議探偵団4人分じゃねぇか」
まぁ、4つ並べただけで、正確にどれとどれが必要かとは言えないけどね。ばれちゃうから。

う〜ん…………。
兜「どうした?」
いや、今回の舞台裏……オチがない。
兜「……………いらんわ」
ではまた次回。

おまけの名句珍言集(謎)「いい…探偵君達…よく聞くのよ……。相手のことを本当に好きだったら…その人の恋を素直に応援しなさい…(後略)」
解説;幽霊屋敷殺人事件の犯人が、毒を飲んで意識を失う直前に言った言葉。どう取るかはあなたの自由です。

作;黄黒真直

事件・推理編

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