摩訶不思議探偵局〜遺産相続権殺人事件〜
容疑者リスト
大金豪(おおがねたけし)…【金収の次男】
大金幣(おおがねへい)…【金収の三男】
大金時子(おおがねときこ)…【勲の妻】
大金黄金(おおがねこがね)…【勲の長女】
大金富子(おおがねとみこ)…【豪の妻】
大金鉱太郎(おおがねこうたろう)…【豪の長男】
大金円華(おおがねまどか)…【幣の妻】
大金銀之助(おおがねぎんのすけ)…【幣の妻】
はしがき;今回は、犯人以外に、遺産の在処も同時に推理してもらいます。

摩訶不思議探偵局〜遺産相続権殺人事件〜事件・推理編
真解「兜警部。事情聴取終わりました?」
兜「ああ。いま終わった」
 真解がリビングに入るなり言うと、兜が聞かれるなり答えた。
兜「特に、いいことはわからんかった」
 そう言って、兜はポケットからガムを取り出し、噛み始めた。
兜「で、なんのようだ?」
真解「あ、そうだった。え〜と…」
 真解は、例のダイイングメッセージの件を言い、屋敷の見取り図を見せて欲しいと言った。
富子「いいですよ。ちょっと待ってて下さい」
 富子がリビングから出て行き、ちょっとしてすぐに戻ってきた。
富子「これです」
謎事「結構広いんだな……」
真解「社長令息がなに言ってやがる…」
謎事「き…気にするな」
 でも、確かに屋敷は広い。城と言ってもいいほどだ。
 まず、玄関からして広いし、リビングに食堂、個室が無数にあり、ホールが2、3。そしてお風呂もいくつかあり、さらには何故か大浴場まである。
 テラスや中庭なんてものは当たり前のようにいくつもあり、庭へと通じるドアも大量にある。
 建物自体は2階建てだが、1階2階と合わせて部屋がいくつあるか、とても数え切れない。
真解「…なんか、無駄に部屋多くないですか?」
黄金「そうなのよ。だから、ホコリまみれの部屋もあるわ」
真実「あれ? でもわたし達に部屋を貸してくれた時は、あと少ししか部屋が残ってないようなこと言ってたけど…?」
時子「ああ、あれは『使える部屋は』あと少しってことよ」
真解〔なんだそりゃ……〕
 夫が殺された時子だが、出来るだけ明るく振舞っている。
謎事「お手伝いさんでも雇用したらいいんじゃないですか?」
豪「それが、親父の遺言で出来ねぇんだ」
真解「そういえば、庭師も呼ぶなと…」
幣「ええ。言ってました」
真解「と言うことは……これらの使われていない部屋か、庭のどこかに遺産がある可能性が高いですね」
幣「え?」
真解「だってそうでしょう。仮に使ってない部屋に置いといて、お手伝いさんが遺産を見つけてしまったら…どうなってしまいます?」
幣「あぁ…」
豪「でも……使ってない部屋なんて、無数にあるし…それに、庭だって広いぞ?」
真解「ええ…。でも、暗号を解けば必ずわかります。わかるはずです。遺産の場所も、犯人も…」
兜「まぁ、今日はもうすぐ朝です。皆さん、部屋に戻っていいですよ。あ、でもドアが簡単に開かないようになにか工夫だけはしておいた方がいいかもしれません」
鉱太郎「…? と言うことは刑事さんは、まだ誰かが殺されると思ってるんですか?」
兜「えっ?」
真解「確かに、そういうことになりますね……。兜警部?」
兜「念のため、です。 …そうだ。真解達、お前らはここに残れ」
真解「言われなくとも。こっちも聞きたいことが山積みなんで」
 みな、ぞろぞろと部屋を出ていった。
兜「………さて…」
 全員が出ていくのを見届けてから、兜が言った。
兜「まず、最初に言わなきゃならんのが……犯人は、あの中にいる」
真実「え? それは…この家の中の人達ってことですか…?」
兜「ああ。この屋敷は、周りを高い塀で覆われていて、とても越えられやしない。やってきたときに気付いたと思うが、門も厳重にロックされている」
真解「つまり、外部犯の可能性はゼロってことですか…」
兜「そういうことだ」
謎事「じゃぁ…誰かが自分の親戚を殺したってことかよ!?」
兜「そういうことだな…。動機はわからないが」
真解「動機か……」
 真解が考え込もうとした時、兜が言った。
兜「まぁ、俺にはなんとなく想像ついているがな」
真解「え?」
兜「遺産だ」
真実「遺産…?」
兜「二羽のカニわね イカ氏の舌に飼うね 真似かつ照る(にわのかにわね いかしのしたにかうね まねかつてる)……だったっけ? 暗号なんだろ?」
真解「でも、大金金収さんが亡くなったのは、半年も前です。今ごろになって何故?」
兜「お前らが来たから、暗号が解読される…と思ったんじゃないのか?」
真解「でも、解読されなければ場所がわからないんですよ?」
兜「! …そうか…。じゃあ、こうは考えられないか?」
真解「?」
兜「犯人は、暗号を既に解いていて、こっそり遺産を取ったんだ」
真解「え…? でも、暗号を解けば遺産が手に…………あ、そうか…。遺産相続権は…」
兜「遺言状により、大金勲、大金豪、大金幣の3人しか持っていない…」
真解「すなわち、犯人は3人以外の暗号を解いた人物で…」
兜「既に遺産を手に入れていた」
真解「それがばれるとまずいから…………って、変ですよ」
兜「な、なんでだ?」
 勢いづいてきたところに水をさされ、兜は拍子抜けた。
真解「それだったら、真っ先にボクを殺すはずです」
真実「そうよねぇ…。勲さん、豪さん、幣さんを殺したって、お兄ちゃんが暗号解いたら意味ないし……」
真解「そうだ。それに、殺害現場には暗号の解読方法と思えるような、物まで残っていた。…もしかしたら、今回の事件…たまたま遺産の問題と重なっただけで、もっと奥の深い事件なんじゃないだろうか……」
――そこには、思いがけない動機があるというのだろうか?
 真解は身震いした。
 いったい、親戚を殺すような動機とは、どんなものなのだろうか……。
真解「ところで兜警部」
兜「なんだ?」
真解「『まだ誰かが殺されると思ってる』理由はなんですか?」
兜「それか…。まぁ、刑事としてのカンだな…」
真解「カン?」
兜「ワープロでダイイングメッセージに見せかけた妙なメッセージを残すんだ。こんな異常な事をする奴は、たいてい連続殺人犯だ。のん気にワープロでメッセージを残すのも、計画犯罪を思わすからな。それに、凶器も見つかっていない。石である可能性が高いとしかわかってないしな」
真解「そうか…」
 真解がいつもの考えるときのポーズを取った。
 その時、第2の殺人が行われていようとは、真解達は知るよしも無かった。

Countinue

〜舞台裏〜
こんにちは。キグロです。
今回から、舞台裏は若干短めにしようかと思ってます。長ったらしくてもアレですからね。
さて、今回のゲストは意外に出番の少ない猫山検事さんです。
猫山「出番…確かに少ない…」
なんででしょうねぇ。だんだん猫山さんの性格忘れて来たよ。
猫山「えっ!?」
ってか、元から細かい設定はしてなかったって言うか、登場させていく間にちょっとずつ構成していこうとか考えてたんですけどね…。どうもうまくいかない。
猫山「そうなのか…」
子供好きってことにはしてあるんだけどねぇ…。
猫山「そういえば、真解君達に対しては、口調が柔らかくなるような気がする…」
まぁ、子供好きだし。

さて、いかがですかな? 今回は、いつもとちょっと違った内容ですが。
猫山「暗号と殺人か…」
両方の謎が解けたら、すごいです。
真実「じゃあ、お兄ちゃんはすごいんだ!!」
いや、まだ解いてないし…。
猫山「暗号も殺人も、現段階で解けるのか?」
暗号は解けるけど、殺人は解けない…ハズ。
猫山「ハズ?」
超能力者なら、ボクの心を読めるかも。
猫山「……………それ、解くって言わないと思う」

今回はこれが3編目。今までは3回目か4回目で真相編だったんだけど……今回は、どうなる事やら。
猫山「うんと長く?」
う〜ん…長編になるかもなぁ…。思いもよらずに。
猫山「そうか…。ま、頑張れよ」
ありがと。

それでは、また次回。

おまけの名句珍言集(謎)「死ななかったのは、当然です。恋人が死んだら、悲しむのは誰だって一緒です。例え、幽霊でもね」
解説;幽霊屋敷殺人事件で、恋人の後を追い自殺を計り、未遂に終わった犯人に向かって真解が言った言葉。この後犯人は号泣する。

作;黄黒真直

推理・殺人編

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