摩訶不思議探偵局〜遺産相続権殺人事件〜
容疑者リスト
大金豪(おおがねたけし)…【金収の次男】
大金幣(おおがねへい)…【金収の三男】
大金時子(おおがねときこ)…【勲の妻】
大金黄金(おおがねこがね)…【勲の長女】
大金富子(おおがねとみこ)…【豪の妻】
大金鉱太郎(おおがねこうたろう)…【豪の長男】
大金円華(おおがねまどか)…【幣の妻】
大金銀之助(おおがねぎんのすけ)…【幣の長男】
独り言;こうして見ると、容疑者少なく見えるんだよなぁ…。

摩訶不思議探偵局〜遺産相続権殺人事件〜推理・殺人編
――遺言状に残された暗号。現場に残されたメッセージ。
 真解達は考え込んでいた。
真実「じゃぁさ、勲さんが犯人に脅迫されて、あのメッセージを書いたっていうの?」
謎事「それしかないだろ?」
真実「じゃあ、犯人はなんのために書いたのよ」
謎事「だから…犯人は暗号の解読法をオレらに伝えようとしてるって真解が言ったじゃん。犯人はあの暗号を解いた。だけど自分には遺産相続権が無かった。だから、暗号をオレらに解かせつつ、遺産相続権がある勲さんを殺した…」
真実「じゃあ、豪さん、幣さんも殺されるって言うの!?」
謎事「じゃねぇのか?」
真実「じゃねぇのかって、そんな簡単に…」
真解「本当に、謎事の言う通りなんだろうか?」
謎事「え? だって、真解がこう言ったんじゃん」
真解「確かにそうだけど……たったそれだけで、果たして殺すだろうか? 遺産相続のために? わざわざ殺さなくても、勲さん、豪さん、幣さんの誰かが寿命でもなんででも亡くなれば、自然と自分に来るはずなのに…?」
謎事「待てなかった、とか?」
真解「う〜ん……………」
 本当に、そうなんだろうか?
謎「でも、いまのところそれが最も可能性が高いです。念のため、豪さん、幣さんにこの事を伝えた方がいいのでは?」
真解「……………かもしれないな。よし、じゃあ行くか」
兜「もう真夜中だぞ? ってか、ヘタしたらもうすぐ朝だぞ。失礼じゃないか?」
真解「危険なんです」
 真解がそう言って部屋を出ると、4人が着いていった。

真解「豪さん、まだ起きてますか? 豪さん」
 真解は豪の部屋のドアをノックして言った。
謎事「………反応が無い。もう寝たのかな?」
真解「兄弟が殺されて、易々と寝れるだろうか?」
謎「…どういうこと?」
兜「おい、嘘だろ…?」
 真解の額から汗が流れた。
真解「豪さん!! 起きてたら返事してください! 真解です! 豪さん!」
 ドンドンドン!!
 大声を出したからだろうか。時子や鉱太郎も来た。
鉱太郎「どうしたんだ? 親父がなにか…?」
時子「豪さん…なにかあったんですか?」
幣「おい、どうしたんだ…? そんなに大声を出して」
真解「豪さんに危険が迫ってる…」
銀之助「え?」
鉱太郎「なんだと!?」
 鉱太郎が勢いよくドアを開けた。鍵は掛かっていなかったようだ。いや、それ以前にこのドアに鍵は見当たらない。
 そんな事はどうでもいい。重要なのは中に漂う異様な雰囲気……。
兜「どうした…? 人の気配がしないぞ…。誰もいないのか?」
真実〔電気、電気……〕
 真実が手探りで電気を点けた。
 パッ。
全「!?」
「う…うわあああああぁああぁ!?」
 そこには、2組の刺殺死体……変わり果てた豪と富子の姿があった。

兜「なんてこった! こっちゃまだ勲さんの司法解剖がやっと終わったってとこなのに…」
 兜はさっきからひっきりなしにガムを噛んでいる。
猫山「現場検証も、終わりましたがね…」
兜「そんな細かい事はどうだっていいんだ!!」
 兜がどなり散らしている。
兜「警官がこれだけいて殺人1件も止められんのか! 早く捜査に取りかかれ!!」
 兜は視線を警官達から大金家の者へと移した。
兜「さてと…。豪さんらの死亡推定時刻は検査するまでもありません。皆さんがあの部屋を出た3時頃から、死体発見の4時まで、どこで何をしていたか言ってください」
鉱太郎「どこで何をって…それは刑事さん、あんたが指定しただろう!?」
兜「え?」
円華「そうですよ。部屋で待機しててくれって言ったじゃないですか。あなたが」
兜「……そうでしたな。と言うことは、アリバイは…?」
銀之助「ある人とない人がいます」
兜「ある人とは?」
幣「わたしと円華だけかと…」
銀之助「他の人は全員、個室だからな…。勲さんと時子さんも別室だったな…そういえば」
真解〔と言うことは、アリバイがあるのは幣さんと円華さんのみ。無いのは時子さん、黄金さん、鉱太郎さん、銀之助さんか…〕
時子「で、でも、わたしはやってませんよ。夫を殺すはずなんてありません!」
黄金「そうよ! 自分の親や夫を殺すような人はいないわよ!」
銀之助「ちょっと待てよ。その理論じゃあ、俺ら3人の誰かが犯人ってことか!?」
黄金「そんなこと言って無いわよ」
銀之助「おんなじ事じゃないか!」
兜「まぁまぁまぁ、みなさん! 落ち着いてください!!」
 兜が割って入った。
兜「家族がどんどん殺されて、ショックなのは解りますが、罪のなすり合いはしないでください。まだ誰が犯人か、なんの手がかりも掴めて無いんですから」
時子「何の手がかりもつかめてない!? どういうことよ!」
兜「まぁまぁ…何しろ、勲さんが殺されて、まだ3時間ぐらいしか経ってないのですから……」
 ヤブ蛇だった…。
 兜は痛烈にそう思った。
真解「とにかく! 3時から4時まで、部屋で何をしていたか言ってください!! もしかしたらアリバイを証明できるかもしれませんから!」
 が、意味が無かった。
 全員、ドアには鍵が無いうえに、ドアが外開きなので、とっととベッドに入るか、どうすればドアが開かないかを試行錯誤していただけだけたらしい。幣と円華以外に、アリバイのある者は結局いなかった。
真解〔くそ…〕
兜「今度は事情聴取をする必要もなさそうですね…。みなさん、全員でバラバラになっていると危険極まりない! 全員リビングに集まっていてください! おい、そっちの下っ端! みなさんをお連れしろ」
下っ端「ヘイッ」
真解〔下っ端って…〕
 若干の緊張がほぐれた真解だった。
兜「猫山! 小鳥遊! お前らはいつも通りだ」
猫山&小鳥遊「ヘイ!」
 2人は部屋に入って言った。
兜「真解…お前らはどうする?」
真解「もちろん、現場を見させてもらいます」

 早速、検証が始まった。
 ザッと兜が見たところ、2人に争った形跡は無く、やはり犯人はあの中にいると考えて間違いなさそうだった。
 豪と富子の胸に刺さっていたのは、包丁。あとで兜が聞いたところ、この屋敷の調理場に置いてあったものらしい。鍵がかかっていると言うことも無く、持ちだそうと思えば誰でも持ちだせる。無論、指紋も全員分ついていて不思議ではない。
猫山「特にこれと言って目立った点はないですね…。犯人が返り血でも浴びてりゃいいんだけど…」
謎事「さっき見た感じでは、返り血を浴びてる奴はいなかったな」
真実「さっきの…勲さんの時みたいに、なにかメッセージは?」
猫山「あ〜………ないかな…? いや、あった」
探偵団「えっ?」
 4人が一斉に猫山に駆け寄った。
猫山「ほれ。豪さんの指先」
謎「これは…確かに文字のような…」
 そこには、血文字があった。すでに乾いてカパカパになっていた。
真解「ちょっと、読みづらいな…。『key;大金金収(おおがねかねかず)』…?」
真実「さっきと、同じじゃない!」
謎事「でも、今度は被害者自身が書いたんじゃ…?」
真解「いや、そうとも限らないぞ。犯人が豪さんの手を使って書いたのかも知れない。そのぐらい、簡単だ」
謎事「それもそうだな…」
 う〜ん…と4人が一斉にうなった。
真解「よし、ここからは2手に分かれて調査しよう」
謎「え?」
真解「真実も言ったように、もしかしたら今回の事件、暗号を解けば犯人もわかるかもしれない…。謎事、メイ、2人は暗号解読チームだ。ボクと真実で、現場検証その他を行う」
謎事「え? でも…いいのか? オレの観察眼は役立つぞ?」
真解「大丈夫だ。ついでだから、リビングでみんなを守ってろ」
謎事「…わかった」

リビング
 謎事がリビングのドアを開けると、6人と兜の視線が一気に謎事に降りかかった。
 そして、その視線はすぐに消えた。
謎事「………?」
 とりあえず、謎事とメイはソファーに座り、近くのテーブルを引き寄せて例の遺言書と現場に残っていた紙切れを置いた。
謎事「なんだと思う? メイちゃん…」
謎「二羽のカニわね イカ氏の舌に飼うね 真似かつ照る(にわかのかにわね いかしのしたにかうね まねかつてかる)…。そして、おそらく鍵が『大金金収(おおがねかねかず)』…」
幣「親父の鍵が…どうか…したのか?」
 幣が震えながら聞いてきた。かなり脅えているようだ。無理もない。仮に自分になんの後ろめたいことがなくとも、こんな状況なのだから…。
謎「いえ、そうではなく、この暗号の解読のヒントが、大金金収さんの名前なのです」
黄金「どういうことなの?」
 謎事とメイが代わる代わるいまでの推理を説明した。
黄金「それで…あなた達は、この暗号を解くと…?」
謎「ええ。実相君ほど推理力はありませんが…」
謎事「これでも、探偵団の端くれッスから。大丈夫、必ず犯人は暴きだします」
 謎事が誇らしげに胸を叩いた。その目には、闘志のようなものが見えた。

再び現場
猫山「どうだい? 真解君…なにか見つかったかい?」
真解〔あんたこそ、どうしてそんなにのん気なんだよ…〕
 真解と真実は現場を隅から隅まで重箱の隅をようじで突付くように調べていた。
 しかし、前回と違って何一つ良い物は見つからない。いや、先ほどのメッセージがあったか。
真実「もう、何もないわけ!?」
猫山「犯人は、用意周到だった…ってわけだね?」
 とそのとき、小鳥遊が帰ってきた。
小鳥遊「解剖の結果が来ました」
猫山「お、早いな」
真解〔確かに…〕
小鳥遊「あ、猫山だけか。…まぁいいや。死因から何まで、特にこれと言ったものはなかった。争った形跡もなく、爪の隙間に犯人の皮膚が残っていると言うことも一切なかった。」
猫山「つまり…?」
小鳥遊「証拠になりそうなものは無し…ってことだ」
真解〔唯一あるとしたら…争った形跡がないとこから、犯人は、いまリビングにいる6人の中にいる…と言うことだけか…〕
真実「勲さんの部屋にでも行ってみる…?」
真解「……ああ、そうだな…」
 真解と真実は、部屋を出た。
――くそっ! まだ何もわかっちゃいない…。どこかに必ずヒントがあるハズだというのに、自分はそれを見つけることができていない…。
――だが、自分の親戚を…家族を殺すなんて奴は絶対に許さない! 正体を掴んでみせる!
真解「…絶対に…!」
 こぶしを握り締めた真解の目にも、闘志のようなものが見えた。

Countinue

〜舞台裏〜
こんにちは。キグロです。
今回のゲストはもっと出番の少ない小鳥遊市医さんです!
小鳥遊「こんにちは」
当初の設定では、兜警部並みの登場率にしようと思っていたのに、リアルにしていったらどうも登場シーンが減っていってしまった…。
小鳥遊「確かに、実際には鑑識が喋るシーンは少ないらしいからね」
まぁ、中学2年生が事件解決してるって時点で、もう現実を超越してるんだけどね。
小鳥遊「確かに…」

さて、結構大きな事件にしようと思っていたのに、なんかもうすぐ終わりそうな雰囲気…。
真実「確か、わたしが誘拐されたときもそう言ってたよね?」
うん…。なんとか引き伸ばしてみるか……って、真実、お前は誘拐されちゃいない。
小鳥遊〔反応が鈍い…〕

真解はまだ何一つ証拠は掴んでませんが……。
小鳥遊「解ける…と?」
さぁ? それはどうでしょう?
小鳥遊「どうでしょうって…」
ま、気にしない、気にしない。

それと今回、おまけコーナーが変わってますが、気にしないように。気分です、気分。
まぁ、たまにはいいでしょ? 別なのも。次回どうなるかわかりませんが…。
ではまた次回。

おまけの当初の設定秘話;当初、この物語に「謎の組織」が登場する予定だったらしい(「摩訶不思議探偵局」と言う名は、実はそのときの名残らしい)。

作;黄黒真直

殺人編

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