摩訶不思議探偵局〜7つ目の惨劇〜
主な登場人物( )内は読み、【 】内は役
実相真解(みあいまさと)…【主人公・探偵】
実相真実(みあいまさみ)…【探偵】
相上謎事(あいうえめいじ)…【探偵】
事河謎(ことがわめい)…【探偵】
霧島澪(きりしまれい)…【真解の同級生】
江戸川真澄(えどがわますみ)…【真解の同級生】
高麗辺澪菜(こまのべみおな)…【真解の同級生】
光安那由他(みつやすなゆた)…【真解の同級生】
はしがき;今回、事件は起こりません。よって、容疑者0。

摩訶不思議探偵局〜7つ目の惨劇〜笑うガイコツ編

クスクスクスクス…

那由他「ねぇ、知ってた? うちの学校にも『七不思議』があるんだって」
真解「え?」
 ここは真解達の通う遊学学園。放課後、真解達が帰ろうとしたとき、同級生の光安那由他が話し掛けてきた。MASKの1件以来、親友と化している。
 そんな那由他の目には、挑戦の意が見えた。
真実「七不思議? あるの? うちの学校にも」
那由他「そう…それも綺麗にちゃんと7つ…」
真解「七つの不思議を全て知ると、死んじゃうっていうお決まりの奴か?」
那由他「そうそう、それそれ!」
真解「で………まさかそれを解けって言うんじゃないだろうな?」
那由他「探偵だろ? 依頼人の依頼は引き受けなきゃ」
真解「依頼人っつってもなぁ…」
謎「あら、差別はよく無いわよ」
那由他「そうそう。それに…」
 那由他はクルッと後ろを向いた。
那由他「な?」
 そこには霧島澪、江戸川真澄、高麗辺澪菜の3人がいた。
澪菜「4人が依頼してるんだから、引き受けるのが当然でしょ?」
真澄「そうそう。わたしも新聞記者として興味あるし…」
澪「やってみなよ」
真解「やってみなよってなぁ……」
真実「いいじゃん、面白そうじゃん!」
謎事「そうそう、オレもお化けっての見てみたいし、どんな不思議があるのか一度も聞いたことないし…」
那由他「それともなに? 怖いの?」
真解「別に怖いってわけでもないけど…」
 ともかく、真解はこういう子供だまし染みたものはあまり好きではないのだ。
那由他「怖くないんだったら、別にいいじゃん」
真実「それにお兄ちゃん、あんまりこういうの信じてないんでしょ? だったら、その『ウソ』を暴くってのもいいんじゃない?」
 真解は断る理由を考えているが………見つからないようだ。
真解「わかったよ…引き受けるよ」
那由他「そうこなきゃ!」
真澄「これでいい記事が書ける…」
真解〔記事って………〕
 ちなみに、遊学学園には新聞部が存在する。
真解「で・・・その不思議ってのはどんな不思議なんだ?」
那由他「えっとね…。
   1つ目、理科室にあるガイコツ模型が笑う。
   2つ目、旧校舎横の倉庫内にポルターガイストが存在する。
   3つ目、美術室の彫像が、毎晩少しずつ動く。
   4つ目、旧校舎の水道水が赤くなる。
   5つ目、夜になると1階東端の女子トイレにトイレの花子が現れる。
   6つ目、校庭の池で夜に写真を撮ると、そこで溺死した子の幽霊が写る」
「ほぅ…」と真解が呟き、
真解「で、7つ目は?」
 と聞いた。
那由他「知らない」
 那由他は即答した。
真解「し…知らない?」
那由他「いやボク、結構幽霊とかお化けとか信じるほうで、死んじゃうとヤだから7つ目は知らないようにしてるんだ」
澪菜「そうそう、わたしも結構信じるのよねぇ、お化け」
真澄「わたしは半信半疑程度だけどね。新聞記者はこんぐらいが丁度いい」
澪「僕は100%信じてるけどね」
真解「え? 澪君が…? 一番信じなさそうなのに…」
澪「いやなに…」
 澪は「フッ」と鼻で笑ってから、
澪「僕…霊感があるもんで」
 と言った。
真実「霊感・・・? それってすごくない!?」
謎「本当にいるんですね…霊感がある人って・・・」
澪「まぁね」
真解〔それじゃ信じざるをえないってわけか…〕
澪「でも、この学校の不思議は信じていない」
謎事「え? 矛盾して無いか…?」
澪「……以前、夕方遅く…そう、7時頃かな? ちょっと野暮用があって学校に遅くまで残ってて、それから帰ろうと旧校舎横の倉庫の前をたまたま通りがかったんだ。そしたら、その中から『ガタッ』って音が聞こえてね」
澪菜「こわっ…」
澪「僕はその倉庫の不思議を知ってたから、もしかしたらポルターガイストか? と思ったんだよ。でも、そのとき僕の霊感は何も感じていなかった。だからきのせいだと思って通り過ぎようとしたら、また『ガタッ』って音がして…意を決して、倉庫を開けたんだ」
真解「そしたら?」
澪「僕の霊感は、何も感じていなかった。それは最後まで同じだ。なのに、倉庫の中に置いてある壊れた机や椅子が、ガタガタと鳴りだしたんだ…」
真実「え…? ウソ…。実話?」
澪「ホントにホント」
真解〔確かに…澪君がウソをつくとは思えないが…〕
澪「だけど、さっきも言ったようにそのとき僕の霊感は何も感じていなかった。だから、これは絶対何らかのトリックなんだ」
真解「だから…七不思議のナゾを解いてくれと?」
澪「その通りだ」
「ふぅん…」と真解が言った。
真解「他に、見た人はいるのか?」
 真解が聞いたが、誰もいなかった。
――たった一つではあるけど、目撃情報がある以上、あながちデマとも言い切れないってわけか…。
 なるほど…と真解は興味が湧いてきた。
 この学校にも七不思議がある。それを解いてみるのもいささか悪くない。自分自身、どんなトリックが使われているか是非とも見てみたいものだ。
 真解は知らず知らずのうちに、ニヤリと笑った。
謎事「あれ? でも、確かメイちゃん…」
 謎事がメイの方を見た。メイは完全に固まり、真実にしがみ付いている。
 そう。メイはオカルトが苦手なのだ。
謎「ええ…苦手ですよ。こういうの」
謎事「しがみ付くんだったら真実じゃなくてオレにしがみ付きゃいいのに。オレの方が力があるぜ?」
謎「結構です」
 メイが冷たく言い放った。
謎事〔オレって…嫌われてるのか…? やっぱ…〕
 同時に澪菜ら4人に謎事がメイのことを好きだと言うことをさらしめた。…と言うことに、謎事は全く気付いていない。
那由他「ま、いいや。それじゃあ、今日の夜7時に校門前ね」
 那由他がそう言って、一同は解散した。

 家に着くと、真解と真実は早速準備を始めた。
真実「さってっと…お兄ちゃん、必要そうなものってなにかな?」
真解「そうだな……ありとあらゆる薬品と試験紙、それからちょっとした実験用具を持って行け」
真実「お、やる気だね」
真解「ああ。澪君の話を聞いてだんだん興味が湧いてきた…。面白いじゃないか。あの6つの不思議を解いてみせる…絶対に…」

午後7時 遊学学園校門前
 全員が時間通りにやって来た。
那由他「ん。全員時間通りに来たんだね」
澪菜「そのようね…。なんだ、結局真解君も興味津々何じゃん」
真解「ああ。澪君の話を聞いてな。あれが澪菜の話だったらこうはならなかった」
澪菜「ちょっと…どういう意味よ?」
真解「…まぁ、気にするな。じゃあ、早速入るか…。門は閉まってる上に鍵がかかってるけど」
 8人は次々と門を乗り越えた。はたから見れば、どっかの窃盗団に見えなくもない。

那由他「まずは最初の不思議…理科室のガイコツが笑うって奴だね」
謎事「お気まりの奴だな…。 ・・そういえばメイちゃん…大丈夫か?」
謎「え…ええ…」
 メイは真実にぴったしくっ付いて震えながら言った。
真解〔今回、一番乗り気じゃなかったのはボクよりメイだったかもな…〕
謎事「オレにくっ付いた方がいいぞ?」
謎「結構です」
 そうこうしているうちに、理科室についた。
那由他「さて…ガイコツは確かこの辺に置いてあったと思うけど…………誰が見る?」
 那由他が振り返って聞いた。
澪「今回の提案者は那由他、キミだろう? キミが責任とって見るべきだ」
那由他「え゛…?」
真実「そうね。それがいいわね」
真澄「じゃ、よろしくね☆」
那由他「え…ちょっと待てよ…。ま、真解!」
真解「………7対1だ」
那由他「ガーン…。わかったよ、見りゃいいんだろ、見りゃ!」
 那由他は恐る恐る懐中電灯の明かりをガイコツへと向けた。
 ガイコツは大人ぐらいの大きさだ。しかも台の上に乗せてあるので、小柄な那由他にとっては結構大きい。足元から徐々に徐々に光を上に持っていく。
 足骨から膝蓋骨、大腿骨、骨盤、脊柱、胸郭、胸骨、鎖骨……そして、首まで来た。
 那由他はヤケになり、一気に顔全体に光をあてた。
全「!?」
 その顔は、明らかに笑っていた。
那由他「うわっ!?」
 那由他は腰が抜けた。
謎「〜〜〜〜〜〜〜〜」
 メイは完全に真実に抱きついている。
澪菜「お…お化け……」
真解「待て、落ち着け」
 真解はそう言って、自分の懐中電灯をつけ、アゴの下から光を当てた。
真解「いまのはこの原理だ」
謎事「え?」
真解「見ての通り、那由他は小柄…そして、このガイコツはでかい。つまり、ライトは自然とアゴの下から当たることになる。するとどうなるか…?」
謎「不気味になる…と?」
真解「その通り。しかもこのガイコツは『笑う』と言う噂付きだ。そう言ったことから、そう見えたんだろう…」
 真解は理科室の電気を付けた。
真解「見てみ。何ともないだろ?」
那由他「た……確かに…」
真解「そういうことだ。おそらく、他の5つもみんなこんな感じのもんだろう」
澪「そうかな…? 少なくとも、僕が見たのはそんな見間違いじゃないと思うよ」
真解「まぁ…それはこれから検討することだ。確か、2つ目の不思議だったよな?」
那由他「うん」
 一行は、外に出た。
 遊学学園には既におわかりのように新校舎と旧校舎がある。旧校舎はいまは使われておらず、いかにも「出ます」と言わんばかりだ。
 その横にある倉庫も、ほとんど使っていないも同然だ。中には、壊れた机やら椅子やら、そう言った壊れた物が放置してあるらしい。
真澄「倉庫についたわね…」
那由他「誰が開けるんだ? ボクはもうヤだよ…?」
真解「大丈夫だ。ボクが開けよう」
真実「え? お兄ちゃん?」
 真解はニヤリと笑った。どうやら、そのポルターガイストを一番手に見たいらしい。
真解「ボクはこんなもの信じないが…澪君、なんか感じるか?」
澪「え? いや…なにも」
真解「そうか…」
 真解は倉庫の取っ手に手をかけた。全員が息をのんで見守る。メイは恐怖のあまり息すら出来ていない。
真解「行くぞ…」
 ガラッ! と真解が勢いよくドアを開けた。とその瞬間
ガタガタガタガタガタッ!
 と机やら椅子やらが振動を始めた。
全「!?」
バタンッ!
 真解は勢いよくドアを閉めた。
 倉庫の中では、まだガタガタガタ…と音が続いている。
 が、その音も徐々に小さくなっていき…ついにはしなくなった。
 沈黙が流れた。
 確かに見た。全員が確認した。音まで聞いた。机は…椅子は…確かに振動していた。動いていた。揺れていた。動くはずのないものが。小刻みに。まるで生きているかのように…。
真解〔いったい…なにが起きたって言うんだ……〕

Countinue

〜舞台裏〜
こんにちは。キグロです。
今回のゲストは、お化けが苦手な事河謎ちゃんです。
謎「ねぇ…なんでわたしがお化け苦手って知ってて、こんなの…」
謎事「そうだ! メイちゃんがあんまりだ。キグロ、お前はなんて話を考えつい(強制終了
いやぁ、来ると思って身構えてたんだよね。強制終了。
謎「相上君……」
まぁ、ほら、前にも言ったじゃん。あくまで探偵『局』だからね?
謎「・・・・・」

今回の話、夏休みシーズンにやってもよかったんだけどね…遺産相続権抜かして。
謎「でも、それだったら学校休みなわけですから放課後もないのでは?」
うん。そうなる。だから止めた。
謎「うう…どうせなら中止に…」
いや…泣かれても…。

さて、今回は一応推理を募集します。が、期間は滅茶苦茶短いです。
謎「なんで…?」
別に特に理由はないけど…推理するだけの材料が提供されてないし。
謎「え?」
ま、一応言っておくけど、推理は全てメールで。アドレスは[kiguro2@yahoo.co.jp]です。掲示板には絶対に書かないでください。
謎「推理…待ってます…」
「不思議」はあと5つ残されてますが、勘が鋭ければ全てもう解けるんだよね。まぁ、ちょっと難しいけど。
謎「難しい…どころではないかと…」
まぁ、そうかもしれないけど。

ではまた次回。

おまけの当初の設定秘話;当初、「事河謎」の名前は「真上謎(しんじょうめい)」だったらしい。

作;黄黒真直

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