摩訶不思議探偵局〜7つ目の惨劇〜
主な登場人物( )内は読み、【 】内は役
実相真解(みあいまさと)…【主人公・探偵】
実相真実(みあいまさみ)…【探偵】
相上謎事(あいうえめいじ)…【探偵】
事河謎(ことがわめい)…【探偵】
霧島澪(きりしまれい)…【真解の同級生】
江戸川真澄(えどがわますみ)…【真解の同級生】
高麗辺澪菜(こまのべみおな)…【真解の同級生】
光安那由他(みつやすなゆた)…【真解の同級生】
独り言;あ゛〜…事件起こんねぇとつまんねぇ……。 誰か、消そうかな?(ぇ

摩訶不思議探偵局〜7つ目の惨劇〜彫刻編

 一行は固まっていた。
 机が動いたのだ。椅子が振動したのだ。揺れたのだ。小刻みに。確かに。
真解「おい…」
真実「な…なに…?」
真解「……もう一度、開けるぞ…」
那由他「え゛っ!?」
 真解はソロリとドアを開けた。と…
カタカタッ
 と小さな音がした。
真解「…?」
 真解はドアをさらに開けた。音は続くが、大きな音はしない。
真解〔ドアの開ける勢いに比例しているのか…?〕
 ドアを完全に開けた。
 音はなおも続いているが、かすかだ。
 真解は倉庫に踏み込んだ。
真実「お…お兄ちゃん!」
真解「安心しろ。もしも死んだら、静かなところに墓を作ってくれ」
真実「そ…そんな……」
 真解は懐中電灯の明かりをつけ、倉庫内を見渡した。
 光を当てると、そこの部分でカタカタと音がなる。どうも、ポルターガイストは光も苦手なようだ。
真解「……ん?」
謎事「ど…どうした? 真解…なにか解った?」
真解「誰か…パンかなんか、持ってないか? ポテトチップスでも何でもいい。ともかく食べ物だ」
那由他「え…? 持ってるけど…どうするの?」
真解「ちょっとくれ」
 那由他はバッグからせんべいをひとかけら取り出し、真解に渡した。
 それを真解は、倉庫の床にポトリと落とし、倉庫から出た。
真解「これで…しばらく様子を見てみよう。みんな、息を潜めてろ」
 真解の言っている意味が理解できるものはなかった。
 ポルターガイストがせんべいに釣られて出てくるとでも言うのだろうか? そんなバカな…。
 …と、またカタッと音がした。そして…山積みになった机の下から、なにやら黒い物体が飛び出し、せんべいにかぶりついた。
謎「ひっ!?」
 メイが驚いて飛びのけると、黒い物体はせんべいだけかっぱらって奥へと逃げた。
真解「あ…逃げちゃった…」
澪「そ…それよりいまのは…?」
真解「暗くてよくわからなかったかも知れないけど…ネズミだ」
澪菜「ね…ネズミ?」
真解「ああ。さっき倉庫内を見渡してるときに、机の一部にネズミが噛んだようなあとが見えたんだ。それに、机の隙間にネズミの陰らしき物も見えたしね。だから、試しにせんべいを置いてみたんだ。たぶん、大量にいるんじゃないかな? それらが驚いて走り回った時、机や椅子に頭をぶつけてあんなふうになったんだ」
真澄「な…なるほどねぇ…」
 その後、何回か試した結果、全員がそのドブネズミの姿をはっきりと捕らえる事が出来た。

真解「で、次はなんだっけ?」
那由他「美術室の彫像が、毎晩少しずつ動く…」
真解「ふぅん…。それもなんか、ポルターガイストみたいだな…」
真実「似てるけど…だいぶ違うと思うわ」
真解「まぁ、ネズミじゃないだろう」
 一行は校舎に戻った。
 そして、美術室へと向かった。
謎事「だけど…毎晩少しずつ動くっつったって、どうやって調べるんだ?」
那由他「大丈夫。ボクがこの間ペンでこっそり印をつけておいたから」
謎事「印…」
真解〔いいのか?〕
 ちなみに、落書きは立派な器物損壊罪(刑法第261条)。もしもばれれば、3年以下の懲役、又は30万円以下の罰金である。
真解「でも、授業や美術部が彫刻を使うって事はないのか?」
真澄「ここ最近は、美術部でも授業でも彫刻を使用した事はないみたいね」
真解〔なんで知ってるんだ…?〕
真澄「新聞部だし…」
真解〔いや、関係ないって。 …ってか、それ以前になんでボクの心が読めるんだ!?〕
 真解にどうしても解けない謎である。
澪「ついたよ」
 目の前は美術室。
真解「じゃ、入るか…」
 真解はドアを開けた。
 中はなんだか湿度が高い。モワッとしている。
澪菜「この部屋…なんでこんなに湿度が高いの?」
那由他「そう、ボクも前からそれ気になってんの」
謎事「メイちゃん知ってる?」
謎「いえ…さすがに知りません…」
真澄「そんな事より…彫刻ってのは……あれか」
 彫刻は美術室の後ろにあった。
謎「材料は石こう…使用された様子はないですね…」
真解「ふぅん……で、印ってのはどれだ?」
那由他「えっと…」
 那由他が恐る恐る彫刻に近づいた。全員、その後に続く。
那由他「彫刻の…横の…下の方と…台の上に…印をつけておいたんだけど………」
 恐る恐るそこを覗くと……。
那由他「・・・! ず…ずれてる…」
澪菜「え゛っ!?」
真解「見せてみろ」
 真解が慌てて覗きこんだ。
真解「た…確かに…」
 わずかではあるが、確かにずれている。
澪「やっぱり…本当に…?」
謎事「だ…誰かが動かしたんじゃねぇのか?」
真解「にしちゃぁ、今度は誤差が少なすぎる。 …これ1個以外にも、つけたのか?」
那由他「あ…ああ…。全部…」
 真解が他の彫刻も見た。そして、全て確認してから、言った。
真解「…全部ずれてる」
真澄「え゛…?」
真解「もし誰かが動かしたにしても…誰が好んで10個近くもある彫刻を動かす?」
謎「それにこれ…結構重量ありますからね…」
謎事「ってことは…?」
真解「人為的に動かされた可能性はかなり低い。そして、ネズミなどの動物が動かした可能性もかなり低い」
澪菜「人が動かしたんでも、動物が動かしたんでもないんじゃ…」
那由他「植物か!?」
澪「植物が動かせるとは思えないぞ…」
那由他「じゃあ…機械?」
真澄「それもヤダ…」
真解「おそらく、人、動物、植物、機械、虫のどれでもないと思う」
謎事「じゃあ……彫刻が勝手に…?」
真解「それはありえない」
澪菜「じゃあ…風かなにか?」
真実「で…でも…重いのよ? 風なんかで動かせる? それに、動かせるぐらいの突風だったら、他の絵とかもみんな吹っ飛ぶと思うけど…」
 確かに、彫刻以外は動いた形跡がない。
真解〔地震…はもっとありえないし…〕
 他にはなにがある?
謎事「自然が動かした…ってことか? じゃあ、地震、カミナリ、火事、オヤジ…は無いか。嵐、雨、突風、日照り、雪、なだれ…他になにがある?」
真解「まぁ、そんんだけありゃ十分だろ?」
真実「でも…そのどれでもなさそうよ?」
澪菜「雨や日照りなんかで彫刻が動く? だいたい、なだれなんて起きりゃわかるし…」
澪「まず、ありえないんじゃない?」
 う〜ん…と全員がうなった。…いや、メイだけは震えていた。
真澄「それにしても、蒸し蒸しするわね…この部屋…。考えがまとまらないじゃない!」
真解「確かにな。…………!」
真実「お…お兄ちゃん…? まさか…」
真解「なんだ、簡単なことじゃないか。やっぱ、自然が動かしたんだ」
謎事「え? どういうことだ? 地震か? 風か?」
真解「まぁ…強いて言えば雨だな」
全「雨?」
真解「正確には…この部屋のこの『蒸し蒸し』だ」
謎「水蒸気…ってことですか?」
真解「そう」
 真解は彫刻に手を掛けた。
真解「こいつは…石こうで出来てるんだってな?」
那由他「あ…ああ…」
真解「ならば話は簡単だ。理科で習ったろ? 物は水を吸収して膨らむんだ」
澪「え…? つ…つまり、その彫刻がこの部屋の水蒸気を吸って膨張したからずれた…と?」
真解「そうだ。 …真実、なんか調べる方法ないか?」
真実「う〜ん………。これでも使ってみる?」
 真実はそう言って、若干ピンクがかった青い紙束を取りだし、一番上の一枚だけをピンセットで取った。
那由他「なにそれ? リトマス紙?」
真実「塩化コバルト紙よ」
 余談だが、リトマス紙は正式には「リトマス試験紙」と言う。その語源は、材料に「リトマス」と言う植物を使うところにある。
澪菜「塩化コバルト紙って…なんだっけ?」
真実「塩化コバルト紙は、水に触れると青からピンクになるの。いまの状態だと、この部屋の水分吸ってピンクになってるみたいね…」
 真実はマッチを取り出し、塩化コバルト紙をあぶった(真実は片手でマッチがすれる)。見る見るうちに青色に戻っていった。
真実「これをくっ付けて、一瞬でピンクになれば、少なくとも表面には大量の水分が付着していることになるわ」
 真実はそれをつけた。紙は一瞬にしてピンクに変わった。
澪「変わった…な」
那由他「と言うことは、真解の推理は正しかったってことか」
謎事「さすがだな…」
真解「これであと…3つか」

真解「今度は旧校舎か…」
謎事「昼間でさえ不気味だってのに…」
那由他「しょうがない。4つ目の不思議は『旧校舎の水道水が赤くなる』だもん」
澪菜「赤くなるって…やっぱ、血なのなかな?」
謎「そんな……水道から、血が出てくるなんて…ありえません」
 メイがやはり震えながら言う。普段から口数が少ないが、今日はほとんど喋らない。
真解「赤い水もだ。何らかのトリックだろう」
真澄「どの水道から、その水が出てくるの?」
那由他「全部」
真澄「全部…?」
那由他「うん。昔、貯水槽に投身自殺した子がいたらしくてね。その子の呪いなんだって」
真解〔あ…あながちなパターン…〕
澪「あ、やっと水道があった」
 一行の前には、水道がある。学校独特の、あの水道だ。
 蛇口をひねれば水が出るはずである。現在は全く使わないとはいえ、貯水槽に水がある限り、蛇口をひねれば水が出る。問題は、貯水槽に水があるかどうかである。
真解「ともかく…ひねってみなきゃ、話にならないってわけか」
真実「ひ…ひねるの?」
真解「じゃあ、どうやって調べる?」
真実「そ…そうね…」
澪菜「でも、血が出てきたらヤだな…」
謎事「血って、独特の臭いがあるよな」
 余談だが、あの臭いは血中にある赤血球と言うものに含まれる鉄イオンのせいである。
 真解は蛇口に手をかけた。
真解「ひねるぞ」
 クイッと蛇口をひねった。ドバッと水が……出てこない。
真解「あ…あれ?」
謎「あ…しばらく使って無かったから、出なくなったのでは?」
謎事「ちょっと待て」
 謎事が水道に駆けより、耳を当てた。
謎事「いや…水の音はする…。しばらく使って無かったから、瞬時に出れないんだ。たぶん…あと、5秒ぐらいだな」
 謎事が後ずさりながら言った。
謎事「5秒前。4…3…2…1… ゼロ!」
 瞬間、水がドバッと噴き出した。
 そしてその水は、真っ赤だった。
全「!?」
キュッ!
 真解がまた慌てて閉めた。
全「・・・・・・・・・」
 いま見たものを、誰もが思い返していた。確かに赤い水だった。流しにはまだ残っている。
 水が流れていく音だけがあたりに響いた。
謎事「…? なぁ、みんな…」
真解「ど…どうした?」
謎事「なんか……臭わないか?」
 謎事が聞いた。
真解「臭い…?」
澪菜「そういえば…」
澪「そんな気が…?」
謎「これは………血の臭い?」
真解〔まさか…嘘だろ…? いまの赤い水が…血…だってのか?〕
 しかし、あの独特の血の臭いが立ちこめているのは紛れも無い事実だった。
真解「真実!」
真実「な…なに?」
真解「これが血かどうか…調べる方法はないのか? 例えば…ルミノールとか」
真実「えっと…あ、あるわ。ルミノール液。 …垂らしてみろって?」
真解「ああ」
 真実が恐る恐る近づいた。
 ちなみに、何故血にルミノール液をかけると光るかと言うと、ルミノール(C)と血中のヘモグロビンと言うタンパク質に含まれる鉄イオンが化学変化を起こすからである。
 真実はそっと、流しに残っている赤い水にルミノール液を垂らした。
 と…
真解「ひ…光った…わずかだけど…」
澪「う…ウソだろ…?」
 とは言いつつも、体は固まっている。
真澄「ってことは…本当に血ってこと!?」
 全員が、泣きそうな顔になった。

Countinue

〜舞台裏〜
こんにちは。キグロです。
今回のゲストは、久々に登場、何気に新聞部だった江戸川真澄さんです。
真澄「こんにちは」
当初の設定では別に新聞部でもなんでもなかったんだけど、某マンガの影響で、急遽新聞部にすることに決定しました。
真澄「ぼ…某マンガ?」
日本語で、螺旋。

さてさて、いかがでしょうか? 彫刻の次は血の出る水道。ナゾは解けましたか?
真澄「実は、貯水槽に本当に人の死体があって、そこから『遊学学園殺人事件』に変わる…」
いや…凄い推理だけどそれはない…。
真澄「え〜…記事としてはこれ以上の物はないのに…」
黄黒〔だ…ダメだ! こいつの性格が、モデルからどんどんかけ離れていっている…!〕

一応、今回も推理を募集します。今度は解ける材料はちゃんと用意してありますが…まぁ、ほとんどひらめきですね。でも、わかってみりゃ簡単です。
真解「推理力…じゃないのか?」
真澄「そうよねぇ?」
いや、そうよねぇっていわれてもねぇ…。
真澄「だいたい、ホントに石こうがあんな膨張するの?」
知らない。たぶん、するんじゃない?
真澄「知らないって……」

あ、そうそう。推理を送りたい方は、掲示板には決して書かないでください。全てメールでお願いします。
真澄「メールアドレスは[kiguro2@yahoo.co.jp]です」
でも、次回もすぐに出す予定だから、早く出さないと締め切っちゃいます。
真澄「頑張ってください」

ではまた次回。

おまけの名句珍言集(謎)「あ…当たってる…」
解説;近未来体験ツアーが当たった時、真実が言ったセリフ。

作;黄黒真直

トイレの花子編を読む

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