摩訶不思議探偵局〜7つ目の惨劇〜
主な登場人物( )内は読み、【 】内は役
実相真解(みあいまさと)…【主人公・探偵】
実相真実(みあいまさみ)…【探偵】
相上謎事(あいうえめいじ)…【探偵】
事河謎(ことがわめい)…【探偵】
霧島澪(きりしまれい)…【真解の同級生】
江戸川真澄(えどがわますみ)…【真解の同級生】
高麗辺澪菜(こまのべみおな)…【真解の同級生】
光安那由他(みつやすなゆた)…【真解の同級生】
独り言;いちま〜い、にま〜い、さんま〜い…(何

摩訶不思議探偵局〜7つ目の惨劇〜トイレの花子編
 全員が、泣きそうな顔で水道を見つめた。
 わずかに流しが光っている。ルミノール液によるものだ。
那由他「ねぇ…もう、帰らない…?」
 那由他が震えながら聞いた。
真解「…………いや。少なくとも、オレはここに残る。こんなのはウソに決まっている。絶対、なんかのトリックなんだ!」
 しかし、やはり震えていた。
謎「明日…明日、出直しましょう。明るい日差しの下で見れば、なにかわかるかもしれないし……」
 しかし、真解はそれを無視した。
――血…血…血…。水道から血が出てくるなんてことは、絶対にありえない。なにかのトリックだ。
――しかし、確かにルミノール液は光った。これはどう説明すればいいのか?
真解「…ん?」
 いつもなら、真解がこういうと真実が「どうしたの?」と聞いて来るが、恐怖で声が出ない。
真解「真実」
真実「ぇ…なに……?」
 震えていて、声が小さい。
真解「ルミノール液は何故光る?」
真実「ぇ…ぁ……ルミノールと血中のヘモグロビンに含まれる鉄イオンが反応するからだけど…?」
 ちなみに、この時発される光を、「ルミネセンス(冷光)」と言う。文字通り、熱が発されない。結構綺麗な光だ。
真解「…なるほどな…」
真実「え…? まさか、解いたの?」
真解「ああ」
 真解は蛇口をグイッと上向きにした。
 そして、その中に向かって懐中電灯をつけた。
真解「あ、やっぱりな」
真実「な…なにが?」
真解「これ、覗いてみろ」
真実「え゛っ!?」
澪「僕が覗く」
 澪が蛇口に近づき…中を覗きこんだ。
真解「な? わかったろ?」
澪「え…これ…? ウソだろ…?」
真解「いや、だってそれ以外に考えられないだろ? ちょうど、鉄イオンも出るだろうし…」
澪「いや、鉄は出てもイオンは出ないんじゃ…?」
真解「そうなのか? 真実」
真実「なに…? ってか、何の話を…?」
 澪と真解が同時に言った。
澪&真解「鉄のサビから鉄イオンは発生されるか?」
 この一言で、全員ナゾが解けた。
真澄「あぁ! なるほど!」
謎「え…? つまり、蛇口の中が錆びていて…」
謎事「それが水で削れて出てきたってのか!?」
那由他「あんな真っ赤になるもんなの!?」
真解「まぁ、暗かったしな…赤く見えたんだろう」
謎「やっぱり、明るい日差しの下で見れば、一瞬でナゾが解けたのかもしれませんね…」
真解「ま…まぁな」
 真解が苦笑いした。
真解「で、出るのか?」
真実「でるわよ。でなかったら血痕にルミノール液かけても光らないわよ」
真解「そうか。じゃあ、次だな」
那由他「次は…5つ目か。『夜になると1階東端の女子トイレにトイレの花子が現れる』だね」
真解「ついに来たか。トイレの花子」
澪菜「学校の怪談の定番中の定番だよね」
真実「1階って、やっぱ新校舎の?」
那由他「うん。ボクらがいつも使ってる方」
真解「よし、じゃあ行くか」
 一行は光る水道を見捨てて、外に出た。

真実「1階東端って言うと、ここだよね?」
謎事「女子トイレっつってるけど、オレら入って大丈夫なのか?」
謎「法律上は問題ありませんけど?」
謎事「なんかチュウチョするな…」
 謎事を放ったまま、全員中にズカズカと入っていた。
謎事「いや、ちょっと待てよ!」
 謎事が慌てて入った。

真解「で…トイレの花子が現れるって? どこに?」
那由他「実は…見た人はいなくって、声だけ聞かれてるんだよ」
真解「どうすりゃ聞こえるんだ?」
那由他「夜、水を流すと」
真解〔誰が好き好んで女子トイレの水を夜に流したんだ?〕
 真解は噂の出所が気になった。が、こんなものは始めからいいかげんである。
真解「じゃあ、流すぞ」
 真解はレバーを踏みつけて、水を流した。
 途端、声が……しなかった。
真解「・・・何もしないぞ?」
那由他「あ…あり?」
澪「『あり?』じゃないだろう」
澪菜「霊感は?」
澪「何も感じていない」
真解〔ってかまず、本当に当てになるのか? その霊感は…〕
 と、そのときだった。
 急に「ォオ…オ…」と言う低い声がかすかに聞こえてきた。
全「!?」
???「ォオ…オオ…オ゛オ゛…オ…」
真実「な…なに…?」
???「オ゛オ゛…オ゛……オ゛オ゛…」
 トイレの水が止まった。が、声はまだ続いていた。
???「オ゛オ゛オ゛…オ゛オ゛…オヲオ…オオ…ヲ…オォ…ォ…」
 そして止まった。
 声がしたと言うよりは、なにかがうめきながら通り過ぎて行ったと言う感じだ。
謎「なに…いまの声…」
澪菜「いまのが…花子?」
真解「ぐ…偶然だ。偶然、バイクかなんかが外を通り過ぎたんだ」
 真解はもう一度レバーを踏んづけた。
 バシャァッと音を出して水が流れた。
 そして数秒経つと、またあの声が聞こえてきた。
???「ォオオオ…オオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛…オヲ…オォ…ォ…」
澪「真解…」
真解「なんだ?」
澪「偶然は…2度起こるものかい?」
真解「……なんらかのトリックがあるらしいな。水を流すと作動する、何らかの…」
那由他「でも、昼間は声は聞こえないんだよ? 夜だけなんだよ?」
真実「そういえば…昼間は、こんな声聞こえないわね…。 って、なんであんたが知ってんのよ?」
那由他「いや…なんでっつわれても…」
真実「まさか那由他君、あんた…」
那由他「なっ、なんだよ、その目はっ!?」
 2人を放っておいて、真解は澪と話し始めた(この2人、8人の中でのまともなコンビである)。
澪「でも、トリックなのは確かなんだよな。霊感は何も感じてないし…」
真解〔いや、ってかその霊感、本当に当てになるのか?〕
澪「なるさ」
真解〔いや、だからなんで…〕
 真解にはどうしても解くことのできないナゾである
澪「どう? 解けそうかい?」
真解「う〜ん…いまのところ、なんとも言えないんだよな…。水を流した直後でなく、数秒後に声がするってのが鍵のような気がする」
澪「そうなのか?」
真解「ああ。そうだ。長年の勘だ。 …まぁ、大した長さでもないけどな」
澪「ダメじゃん」
 ちなみに、約5年である。
 まぁ、そんなことはどうでもいい。
真解〔とりあえず…まずは音の発生源を特定しない限りは、なんとも言えない…〕
真解「謎事、もう一度流すから、音がどこから出てきてるか聞きだしてくれ」
謎事「わ…わかった」
 真解はまたレバーを踏んづけた。
 バシャァッと音を出して水が流れた。
 そして数秒経つと、また不気味な声が聞こえてきた。
謎事「………………こっちの方から聞こえてくる気がするな…」
 謎事が聞こえてくる方向に歩み寄った。
謎事「この辺だと思うんだけど……」
 謎事が立っているところには、太い水道管がある。他には、特に何もない。
真解「水道管の中?」
謎事「いや…確かに水道管の近くから聞こえるけど…壁の中か、水道管の中か…どっちかだ」
真実「じゃあ、話は簡単じゃない!」
 真実が手を合わせて言った。
真実「音は、その水道管の中からよ! 水を流すと、その水が水道管の中を通るんだけど、そのときに中で反響して、あんな不気味な音を出させてたのよ!」
真解「なるほど…一理あるな…」
真実「水を流した瞬間に音がしないのは、便器から水道管までちょっと距離があるからよ」
澪菜「あ、そういえば以前テレビで似たようなの見た! 4階のトイレで声を出すと、その声が水道管を伝って1階のトイレで聞こえるっていうやつ!」
真実「それよ!」
 なぁんだ、と安堵の息がもれた。
真実「じゃ、残るナゾは…」
澪菜「那由他君が、なんで昼間声が聞こえないってこと知ってたか…」
那由他「いやほら、昼間聞こえたっていう報告がなかったし…」
真澄「でも…なんで昼間聞こえないの?」
真実「小さな音だから、昼間は聞こえないんじゃない? 昼間は雑音が多いけど、夜は静かだからトイレ中に反響して、拡大されたんじゃないかな?」
真澄「なるほどね…」
真解「じゃ、残るナゾは…」
那由他「6つ目。校庭の池で夜に写真を撮ると、そこで溺死した子の幽霊が写る、だね」

 一行は校庭にある池にやってきた。
 どういうわけか、結構大きい池だ。毎年小学生か幼稚園生が1人は落ちて大騒ぎをする(遊学学園は幼、小、中、高、大と一貫。まぁ、真解達は中学校から入ったが…)。
 なら埋め立てろよ、と言う意見も挙がってはいるが、いまだに埋めるようすはない。それどころか、何故かライトアップまでされている。
真実「この池って…夜はライトアップされてるんだ…」
真解〔何故だ!? 何のためにこんなことを!?〕
 その前に、幽霊である。
 那由他がインスタントカメラを取り出した。撮った瞬間に写真ができる、アレである。
那由他「じゃ、撮るよ…」
 言うや否や、威勢良くパシャッとシャッターを切った。
 ライトアップされているところにさらにフラッシュをたく。真昼のような写真が撮れたに違いない。
 ガーッと独特の音を出して、写真が出てきた。那由他はそれを取って何度かパタパタやる。
那由他「あ、見えてきた」
 どれどれ…とメイ以外の全員が覗きこむ。みな、だいぶ慣れたようだ。
 見ると、なんとなく中央に白っぽい影が映っているではないか。
全「!?」
 全員が後ずさった。
謎「ど…どうしたの? なにが映ってたの…?」
 メイが恐る恐る聞いた。
那由他「影が…白っぽい影が中央に……」
 那由他は写真をなるべく遠ざけようと、腕をピンと伸ばしている。
 真実がそれを取り上げ、もう一度まじまじと見てみる。
謎「真実ちゃん…?」
真実「う〜ん………この影、アレじゃない?」
「え゛?」と全員が同時に言った。
 瞬時にナゾが解けたと言うのか?
真解「まさか……ライトアップされてるから、その熱で水蒸気か湯気が大量に湧き出て、それにフラッシュとライトが重なってそうなった…なんて言わないよな?」
真実「あれ? ダメ?」
真解「…いや、正解だ。たぶん」
澪「な…そんなことかよっ!?」
 澪が思わず突っ込みを入れた。

真解「まぁ…これで、6つの不思議を全て解いたってわけだ」
真澄「そうねぇ…7つ目の不思議がちょっと気になるけど…」
 8人は校門へと歩きながらのんきに会話を交わしていた。
 と、那由他が立ち止まった。
真解「? どうした…?」
那由他「実は…ボク、知ってるんだよね…7つ目の不思議。怖くて言えなかったんだけど」
真実「え? ど…どんな不思議なの?」
 全員の顔が引きつった。メイの顔が見る見る青ざめた。
那由他「7つ目、夜中に旧校舎付近に立つとどこからともなく可愛らしい少女の笑い声が聞こえ、同時に旧校舎の2階の西端の窓に可愛らしい少女の霊が映る」
謎事「旧校舎付近っつったら…ここじゃねぇか」
真解「それはいいとして…ずいぶん詳しいな。こりゃぁ、ナゾの解きがいもあるぞ」
真実「どんなトリックなんだろうね?」
真解「さぁなぁ…実際に、体験してみないとわからないな」
???「クスクスクスクス…」
 まさに、真解が言った瞬間だった。
「じゃあ、体験してみる?」と言わんばかりに、どこからともなく可愛らしい少女の笑い声がした。
 全員の背筋に、冷たい物が走った。
 全員が恐る恐る旧校舎の2階の西端の窓を見た。
 そして、真解が呟いた。

「――そんな…バカな……」

Finish and Countinue

〜舞台裏〜
「実相真実誘拐事件」の連載中に、この事件をかき終えたキグロです。
今回のゲストは、実は霊感があった霧島澪君です!
澪「滅茶苦茶…怖かったんだけど…」
7つ目?
澪「うん…」
真解が最後に「バカな……」って言ってたけどね。どんなのが見えたかは、みなさんのご想像ってことで。
澪「もう見たくない…」
澪君の証言を元に、想像してください。

今回、6つも不思議があるから、5編目ぐらいまで行くかな? と思ってたんだよね。本当は。
澪「へぇ…。でも、結局3編までじゃん」
うん。ちょっと物足りないって言うか、スピード解決過ぎって言うか…。
謎「わたしはそっちの方がいいです…」
ま、メイちゃんはそうだろうね。お化け苦手みたいだし…。
澪「キグロもひどいだろ…」
んなこと言ったって…なぁ?

ちなみに、水道のナゾが解けた方はこちら。 解けた方>山口祐さん・りん2さん
以上です。
この2名の方には、後ほど何か商品を(メールで)お送りします。

ところで、今回落ち、ばれちゃったかな?
澪「まぁ、ありがちな終わり方だったけどね。いいんじゃない? たまにはバレたって」
よかないわ。

ではまた次回、お会いしましょう。

〜次回予告〜
「うちの真珠が…消えたんだっ!」
摩訶不思議探偵局にかかってきた1本の電話。
それは大富豪からのものだった。
なんと、時価何億円と言う巨大な真珠が盗まれたと言う。
真解達は、早速その館へと向かう事にした。
そして、その犯行は不可能犯罪だと知る…。
次回、『巨大真珠紛失事件』をお楽しみに。

おまけの当初の設定秘話;当初、「霧島澪」は「霧島怜」だったらしい。

作;黄黒真直

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