摩訶不思議探偵局〜巨大真珠紛失事件〜
容疑者リスト
金城 一郎(かねしろ いちろう)…【大富豪】
金城 達子(かねしろ たつこ)…【一郎の妻】
金城 高一(かねしろ こういち)…【一郎の長男】
金城 美紀子(かねしろ みきこ)…【一郎の長女】
白鳥 慶奈(しらとり けいな)…【金城家のメイド】
宝塚 和津子(たからづか わつこ)…【金城家のメイド】
理 味太郎(ことわり みたろう)…【金城家のコック】
ミーナ(みーな)…【達子の愛猫】
はしがき;さぁ、どんどんアリバイが鉄壁になって行きますよ。

摩訶不思議探偵局〜巨大真珠紛失事件〜推理編
 真解がレシートを見ていると、パッと兜がそれを取った。
兜「よし、猫山。小鳥遊に連絡してこれの裏付け調査を行わせろ」
猫山「ヘイッ。わかりやした!」
真解〔取られた…〕
兜「ま、気にするな」
真解〔頼む…ボクの心を読まないでくれ…〕
 真解は泣きそうだった。
兜「では…そうだな…。一郎さん達が午前8時ごろ、本当に寝ていたかどうか…」
一郎「証明できるわけないでしょう」
兜「ま、それもそうですな」
謎事「ダメじゃん」
 謎事に言われると、むっとして兜が言い返した。
兜「ともかく一度は聞いておかないと、もしかしたら証明できるかもしれないだろう。牛乳」
謎事「ぎゅっ…!」
真解〔なんか、久しぶりに聞いたな…それ〕
 真解は半ば呆れながら、謎事を押さえ込んだ。
謎事「※∞∀∂ЦΛΘ!」
真実〔…あれ? これって…〕
 なんだかわかったら、メールでもなんでもどうぞ。
真解〔証明できないのなら、アリバイは鉄壁とはいえない…か〕
 真解がそう思ったとき、一郎が言った。
一郎「しかし、午前8時半ごろまで寝ていたと言う証明はできないが、『午前8時半ごろまで部屋から出なかったこと』は証明できるぞ」
兜「なに?」
真解「どういうことですか!?」
高一「ああ、できるな。確かに俺らも」
 真解達が訳のわからぬ顔をしているので、達子が説明を始めた。
達子「この家、だいぶガタが来ておりまして…」
兜「はぁ」
達子「わたし達金城家の者の寝室は、全て同じ廊下に面していて、その廊下、歩くとうるさいんですのよ」
謎事「ギシギシッって?」
達子「ええ。まぁ。どんなに静かに歩いても、音が出てしまうんです」
真解「それが部屋の中まで…聞こえると?」
達子「ええ」
兜「………まぁ、実際に検討してみましょう」

金城一族の寝室前廊下
 その廊下は、綺麗な直線の廊下だった。
 天井には普通の電気が…それも裸電球が取り付けられていた。スイッチもなんか古めかしい、この豪華な屋敷にはとてもじゃないが似合わない物だ。
 部屋は左右に3つずつ。しかし現在の金城一族は4名なので、2つ開いている。
 向かって右側の手前から達子、一郎、向かって左側の手前から美紀子、高一となっている。単純な作りだ。
 ちなみに、ドアも単純な物だ。
 兜が先頭になって廊下を進んだ。確かに、ギシギシと音がする。
真実「おもしろ〜い! なんか、修学旅行であったよね。なんだっけ? メジロじゃなくて、スズメじゃなくて…えっと・・」
謎「もしかして、うぐいすばり(歩くと『キュッキュッ』と音が出る廊下。これで敵襲をいち早く察知した)のことですか」
真実「そうそう、それそれ!」
 真実はギシギシと何度も鳴らしている(ちなみに、修学旅行でも飛び跳ねて、住職に怒られた)。
 そんな真実を、屋敷の者達は不安そうに見た。
 しかし、探偵団の中で記憶を司っている真実が、うぐいすばりを覚えていなくてどうするんだ。 …などと突っ込みを入れる人がいないことを願う。
 真解は真実を放っておいて、謎事と兜と一緒にいろんな歩き方を試してみた。
兜「どうだ? 真解」
真解「う〜ん…」
謎事「静かに歩くのは難しいんじゃないのか? いろんなところがかなり傷んでるぜ」
 謎事はついでに建物の検証までしている。
真解「お前は大工にでもなるつもりか。この社長令息」
謎事「まぁ……癖ってことで」
真解「まぁいいや。もう少し、試してみるか…」
 真解はまた2、3歩歩いた。
真解「……………真実」
真実「なに?」
真解「うるさい」
真実「〜〜〜っ!」
 単刀直入に言われて、真実は少しふくれた。が、まぁ、恋人(?)の注意は素直に受け入れるようだ。
真解「ここでギシギシ鳴らしててもしょうがない。謎事、ボクが部屋に入るから、歩いてみてくれ。 ……入って、いいですよね?」
 真解が遠慮がちに聞くと、高一が快く許可した。
真解「じゃあ、失礼…」
 真解がドアを開けると、「ギイイィ〜〜」と音がした。
真解「…………建て替えたほうが良いんじゃないですか?」
一郎「…ほら、よく言うだろ? 金持ちはケチなんだ」
真解〔この音も…廊下には響きそうだな…〕

部屋の中
 高一の部屋は、いかにも「高校男児」と言わんばかりの部屋だった。
 真解がザッとみただけでも、スポーツ関係の物や、アイドルの写真などが貼ってある。
謎事「真解、行くぞ」
真解「おぅ」
 返事をすると、ギシギシと音がしだした。
 音は綺麗に聞こえる。寝ていても聞こえそうだ。
謎事「次は静かに歩くぞ」
 次は…少し小さいが、十分聞こえる。寝ていたら聞こえるかどうかはわからないが…浅い眠りだったなら、気がついても良さそうだ。事件は明け方。きっと気付いたことだろう。
 とそのとき、外でざわめきが起こった。
真解「どうした?」
 真解がドアを開けた。建てつけが悪いので、開けるのに体力がいる。
謎事「音のしない歩き方が!」
真解「なに?」
謎事「猫なら音がしない!」
 よくみると、真解の足元をミーナが歩いている。なるほど、確かに音はしない。
ミーナ「ニー」
真解「……って、アホか?」
謎事「やっぱ、ダメか?」
真解「…そういえば、ミーナはどこで寝させてるんですか?」
達子「ミーナ用の部屋がありますから」
真解〔金持ちはケチなんじゃなかったのか!?〕
 この世の不条理さに、真解はなんとなく苛立ちを覚えた。
真解「まぁ、そんなことはどうでもいい。ともかく…部屋の中にまで確かにちゃんと音は聞こえた。寝ていても起きそうなぐらいな」
真実「そんなに大きいの?」
真解「浅い眠りなら起きるだろう。後は…理さん、あなただけ」
 と言ったとき、兜の無線がなった。
無線≪兜警部、兜警部≫
兜「ん…? 小鳥遊か? 裏付け調査の報告か?」
小鳥遊≪ヘイ、そうです。いま現在、金城家の屋敷の前にいるのですが…≫
真解〔なら、チャイム鳴らせよ〕
小鳥遊≪確かに、防犯カメラには10時45分に理さんの姿が映ってますし、そのスーパーからここまでは、確かに20分かかりました≫
兜「そうか。ご苦労。えっと…誰か、開けてきてやってください」
 白鳥が玄関へと走った。
理「と言うわけで……わたしのアリバイも、証明できましたね?」
 理が意地悪げにニヤッと笑った。勝ち誇っているかのようにも見える。
兜「確かに…全員のアリバイはほぼ確実…と言わざるを得ないでしょうな。そうなると、外部犯か…」
一郎「しかし、ここは念のため塀が高く、門だってこの家の者でないと開かないようになっている。外から誰かが入ってくることは不可能だ!」
江戸川「と言うことは…」
 いままで黙ってテープレコーダーを回しつつ、メモを取っていた江戸川が言った。
江戸川「何らかのアリバイトリックを使った犯人が、この中にいる…と言うこと?」
真解「ですね」
「う〜む…」と全員がうなった。
「みゃ〜」とミーナがうなった(?)。
真解「兜警部。もう一度、あの部屋見せてください」
兜「あの部屋?」
真解「ええ…。あの…」

事件現場
 ここに来て、思うことはただ1つだろう。
謎事「せめぇなぁ…ホントに」
謎「まぁ、真珠を置くだけですから、そんなに広くある必要はないのでしょう」
江戸川「ここに来ると、どうしてもアレを歌いたくなるわね」
真解「また歌う気ですか!?」
江戸川「いやなの?」
真解「別にいやなわけじゃないですけど…」
 止めるのも無理なようなので、放っておいた(途端に歌いだした)。
謎「見たところ、この部屋から庭に出る最短のルートは、この部屋を出て右へ曲がり、突き当たりの窓から外に出る…ですね」
謎事「だな」
 真実が部屋のドアから顔を出して、窓を見た。
 なんで廊下に面しているだけの窓なのに、こんなに大きいのか…といいたくなるほど大きい。床から天井まである。
 窓が微妙に開いているのか、心地よい風が吹き込んでくる。
真実「なんで窓開いてるんだろうね?」
小鳥遊「あれは…建てつけが悪いだけでは?」
真実「あれ? そうなの?」
真解〔この屋敷って…建てつけ悪すぎだろう…。やっぱ建てなおせ〕
謎事「ほら、金かかるしさ」
真解〔………〕
謎事「どうした?」
真解「いや…」
 真解はもはや、諦めた様子だ。
真解「まぁ、いい。なんか手がかりを探すしかないだろう」
 探偵団は(江戸川の歌うBGMの中)部屋の中をくまなく探し始めた。
 余談だが、BGMとはバッグ・グラゥンド・ミュージック【Background Music】の略である。
 もう既に警察がとことん調べたのだろうが、ともかく探した。天井から壁から床まで、探した。
 いま天井を見上げて始めて気付いたが、この部屋の明かりは廊下にもあった裸電球のようだ。どことなく、古めかしい。壁ばっかり豪華で、その他の配慮が行き届いていないようだ。
 よく見てみると、天井や壁には、シミのような汚れが結構ついている。掃除をあまりしていないようだ。メイドが何のためにいるのかわからない。もしかしたら、コレクションが壊されないように、一郎がわざと掃除するなと言っているのかもしれない。
謎事「う〜ん…ん?」
真解「どうした? なにを見つけた?」
謎事「いや…毛を…」
真解「毛?」
真実「誰かの髪の毛?」
謎事「さぁ…?」
 どれどれ…と探偵団と兜が覗きこんだ。
 それは、真珠が置かれた台のすぐ横…何故かカーペットが円形に少しへこんだところのすぐ隣にあった。
兜「これは…茶髪?」
江戸川「茶髪って言ったら、あの高一って言う子じゃない?」
謎事「あの人が…?」
真解「でも、動機はなんだ?」
謎事「う〜ん…彼女へのプレゼントとか?」
真解「お前じゃないんだから」
謎事「ど…どう言う意味だよ?」
真解「恋人のためならなんでもする…と褒めたんだ」
謎事「そ、そうか…」
 謎事がチラリとメイを見たが…メイは目が合うと同時にソッポを向いた。
謎事〔オレって…〕
小鳥遊「なにはともあれ、とりあえず調べて見ます。もしかしたら、警官の髪かも知れませんし…」
真実「え〜。でも、わたし達が見たときは茶髪の警官なんていなかったよ?」
兜「ああ。そんな奴はいない」
江戸川「じゃあ、あの子が犯人…?」
真解「だが…アリバイは完璧だ」
謎事「そうかぁ? あの音ぐらいなら消せそうだけど…」
真解「例えば?」
謎事「例えば……あれだ。あの裸電球にぶら下がってホイホイと…」
真解「サルじゃないんだから」
真実「だいたい、電球1個1個の距離がありすぎよ。人間の腕の長さじゃ不可能だわ」
謎事「やっぱそうか…」
江戸川「まぁ、小鳥遊さんがあれを調べれば、なにかわかるでしょう」
真解「そうだな…。あれは『この推理』の確かな証拠となりそうだ…」
 真解が言った。
 全員の動きが止まった。
真実「お兄ちゃん…わかったの!?」
 真解がニヤリと笑った。
真解「ああ…。見えた…」

Countinue

〜舞台裏〜
なんか、微妙に失敗したキグロです。
今回のゲストは久々に兜警部です。
兜「お、そうか。よろしく」
はい、よろしくお願いします。
兜「ところで、『失敗した』ってのは…?」
まず第一。真解に決めゼリフである『絶対に』を言わせられなかったこと。
兜「おお、そういえば言ってないな…」
第二。ヒントが少なすぎること。
兜「でも、一応解けるだけ出てるんだろ? ならいいだろう」
そうなんだけど…第三。推理小説の常識として必ずどこかに配置する偽の手がかり、「ミスディレクション」をどこにも配置できなかったこと。
兜「なに?」
だから今回、いつもより混乱が少ないと思います。結構簡単かも…。
真実「毎回『簡単』って言ってる気がするんだけど…」
ま、それは謙遜ってことで。

さて、では今回は推理を募集します。募集内容は
「犯人は誰か?」と「鉄壁のアリバイを手に入れたトリック」
の2つです。
それと、できるだけ推理も一緒に書いてください。
兜「推理は全てメールで。掲示板等には絶対に書かないでください」
メールアドレスは[kiguro2@yahoo.co.jp]です。

あと、ヒントを1つ。
ヒント;部屋の内部構造をよく読んでみましょう。
これだけです。
ではまた次回。

おまけの当初の設定秘話;当初、「兜剣」は「兜剣」が苗字だったらしい(しかし、名前がどうしても考えつかなかったので「兜 剣」と分けたらしい)。

作;黄黒真直

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