摩訶不思議探偵局〜巨大真珠紛失事件〜
容疑者リスト
金城 一郎(かねしろ いちろう)…【大富豪】
金城 達子(かねしろ たつこ)…【一郎の妻】
金城 高一(かねしろ こういち)…【一郎の長男】
金城 美紀子(かねしろ みきこ)…【一郎の長女】
白鳥 慶奈(しらとり けいな)…【金城家のメイド】
宝塚 和津子(たからづか わつこ)…【金城家のメイド】
理 味太郎(ことわり みたろう)…【金城家のコック】
ミーナ(みーな)…【達子の愛猫】
独り言;なんか、やっぱヒントが足りなかったかもなぁ…。
摩訶不思議探偵局〜巨大真珠紛失事件〜真相編
真実「もう解いちゃったの…?」
真解「ああ」
謎事「こんな…手がかり何もない状況で?」
真解「ああ」
江戸川「で、犯人は?」
猫山「誰?」
真解「まぁ、落ち着いてください。兜警部。とりあえず、一旦全員をここに呼んでください。話はそれからです」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一郎「犯人が解ったんだって!?」
真解「ええ」
一郎「誰だね!? 誰がワシの…!」
一郎が興奮して聞いてきた。とりあえず、真解は一郎を抑えた。
真解「まぁ、落ち着いてください。まず…これだけははっきりさせなければなりません。犯人は、やはりこの中にいます」
高一「なんだと…?」
宝塚「でも、全員、確かにアリバイがちゃんとありましたよね?」
真解「ええ。『全員』、確かにアリバイがありました」
真解は何故か「全員」を強調して言った。そこになにか意味があるかのように…。
一郎「? なにか、意味ありげに今言ったが…どういうことだ?」
真解「ボクらが言う『全員』には確かに、アリバイがありました。しかし、たった1人…アリバイがない『人物』がいたんです」
理「誰です?」
真解「その『人物』とは………あんただ」
真解がスッと腕を上げて、『1人』の人物を指差した。
そこにいたのは…
達子「わ…わたし!?」
一郎「ちょっと待て、探偵坊や。何故達子があの真珠を盗まなければならないのだ? あの真珠は我が家の財産…盗んだところで得も損もないぞ」
美紀子「そうよ。それにお母さんがそんなこと…」
真解「勘違いしないでください。ボクは何も『達子さんが犯人だ』とは言ってませんよ…?」
白鳥「え…? ですが、いまちゃんと…?」
全員、わけがわからず混乱している。いったい、こいつはなにを言っているのか…?
真解「わかりませんか? ボクは『達子さんの方を指差した』だけです。犯人は達子さんではなく…達子さんの腕の中にいる、その猫ですよ」
全「え!?」
全員の視線がミーナに集中した。
ミーナ「ニ?」
ミーナがキョトンと……したのかどうかわからないが、したように見えた。
真実「ちょ…ちょっと待って…。そ、それじゃあ、犯人じゃなく、犯…犯…えっと…」
謎「ハンビョウ」
真実「犯猫だって言うの!?」
真解「ああ。そうだ」
達子「なにを言っているのですか!? ミーちゃんが、盗むわけないでしょう」
ミーナ「みゃ〜ぁ」
達子「ほら、ミーちゃんだって違うって言ってるでしょ?」
真解〔言ったのか…?〕
達子「言いました」
真解「………」
達子「ほら、黙りこくった」
真解〔いや、いまの沈黙は別の物なんだけど…まぁ、いいや〕
一郎「大体、どうやってミーナが盗んだというのだ?」
真解「簡単ですよ。みなさん、ちょっと狭いですが…ここ、見てください」
真解が台のすぐ横のカーペットの凹みを指差した。
高一「カーペットが凹んでるが…これがどうかしたのか?」
真解「この大きさ、もしかして真珠の大きさじゃありませんか?」
一郎「ん…? ………た、確かに…同じぐらいの大きさだな…」
真解「やはり、そうですか…。となれば、話は簡単です」
真解が確信を持って、話し始めた。
真解「まず白鳥さん、あなたは真珠を最後に目撃したんですよね?」
白鳥「え、ええ…」
真解「何故目撃したのです?」
白鳥「え? 何故って…?」
真解「一郎さんのコレクションがある部屋は、この屋敷には無数にあります。それを朝、1個1個わざわざ調べるよう、言いつけられているのですか?」
白鳥「いえ…」
謎事「? どういうことだ? じゃあ、なんで…?」
真解「答えは簡単。半開き状態だったからさ。そうですよね?」
白鳥「ええ。なってました。建てつけが悪いんで、閉まらないんです」
真解「やっぱりそうか…。まず、これでドアを開けると言う問題はクリア。それで、いよいよ凹みが重大なヒントになってきます」
真解は部屋の中央に歩み寄った。
真解「この台…1メートルぐらいの高さですが、猫にはわけなく上れますよね?」
達子「ええ。おそらく…」
真解「つまり、ミーナはドアから普通に入ってここまで来て…そして、この台の上に乗った」
一郎「! そんな事をしたら…」
真解「ええ。察しの通り…落ちたんですよ。真珠は」
一郎「な…」
真解「そして、そのときできたのが…」
真解はしゃがみこんで指差した。
真解「この、カーペットの凹みってことですよ」
高一「そんな…なにを根拠に?」
真解「この凹みのすぐ横に、茶色い毛が落ちてました」
高一「茶色い…?」
真解「いま、小鳥遊さん…鑑識が、調べてます。おそらく…ミーナの毛でしょう」
そう言ったとき、兜の無線がなった。
兜「はい」
小鳥遊≪兜警部。小鳥遊です≫
兜「おお、小鳥遊。どうだ? 例の毛は…」
小鳥遊≪ええ。てっきり人毛かと思っていたら…どうも、動物の毛のようです≫
兜「え…?」
いまの真解の推理を「さすがにそれはないんじゃないのか?」程度に聞いていた兜は、驚いて無線を落としそうになった。
小鳥遊≪詳しくはまだ解りませんが…おそらく、猫の毛ではないかと言っています≫
一郎「な…バカな…」
真解「一郎さん。この部屋にミーナを入れたことは?」
一郎「ない。一度たりともない」
真解「でしょうね。真珠が盗まれて慌てふためいていたあなただ。ミーナどころか、自分以外の人間はいれなかったのでは?」
一郎「あ…ああ。達子はときどき入れていたが…」
真解「やはり…。 で、あとは簡単。ミーナは真珠を転がして廊下に出て、そのまま…あの窓から外に出た」
真解は建てつけが悪く隙間風が吹き込んでくる窓を指差した。確かに、猫ぐらいなら通れそうだ。
真解「きっと、庭のどこかに真珠はあることでしょう。 兜警部」
兜「なんだ?」
真解「いままで、『人が真珠を隠しそうなところ』を探していたと思いますが、今度は『猫が真珠を運び込みそうなところ』を探させてください」
兜「わ…わかった」
数時間の調査の後、真珠は草の密集した奥地で発見された。
当然の如く、真珠はボロボロとなっていた。が、まぁ洗えばなんとか誤魔化しが効く程度だ(それでもコレクターである一郎は傷ついたらしい)。
鑑識が調べた結果、真珠についた目に見えないような小さな傷の中に、猫の爪の欠片が挟まっていたらしい。これで、ミーナが犯人ならぬ犯猫だと証明できたわけだ(あの毛も、ミーナの物と判明した。DNA鑑定で)。
そして真珠は、「猫に盗まれた真珠」と言うことで、マニアの間ではさらに希少価値が高まり、値段が10億円近くにも跳ね上がったらしい。まさに怪我の功名である。
摩訶不思議探偵局
真実「すごい事件だったわねぇ」
真解「ああ。ある意味ではいままでの中で一番な」
謎事「そうだな。一郎さんも、傷ついたり怪我の功名だと喜んだり…全く、笑わせてくれるぜ」
摩訶不思議探偵局に、笑い声が響いた。
が、メイはフフッと少し微笑んでるだけだ。
真実「ねぇ、メイちゃん…」
謎「なにかしら?」
真実「前にも聞いたけど……なんで、メイちゃん、笑わないの?」
謎「・・・・・・・・」
メイが暗い目をしてうつむいた。顔を少し強張らせている。なにか、苦悩を感じているようにも見えた。
謎事「メイちゃん…?」
メイは、つらそうな顔でうつむいたまま、黙っている。悩んでいる。なにかを。
謎「……………わかったわ」
メイが口を開いた。
謎「話すわ。なにがあったか…」
真実「話してくれるの?」
謎「ええ。でも、驚かないでね」
真解「わかった。話してみろ」
メイが重々しく話し始めた。
謎「5年前…4月15日から一週間近く、わたしが学校を休んだの、覚えてる?」
謎事「…そうだったっけ?」
真実「えっと……休んでた気がする。 …うん、休んでた。確か…忌引きだったよね?」
謎「ええ」
真解「まさか…それで、亡くなった人が忘れられなくて?」
謎「早い話がそういうことね…」
真解「でも…そんな…」
謎「普通に死んだだけなら、わたしもこんな風になってないわよ。そのとき死んだのは…わたしの妹なの」
謎事「妹…? メイちゃん、妹なんかいたのか…?」
謎「ええ…。その妹は…殺されたのよ」
真解「こっ…殺された…?」
謎「ええ。その事件は現在も未解決…このまま行けば、おそらく迷宮入りね。でも、わたしはその犯人を知っている…」
真実「え? じゃあ、なんで警察に言わないの?」
真解「…まさか…」
謎「ええ、そう…。その犯人とは……わたしなのよ」
全「!?」
謎事「そんな…メイちゃんが…殺人犯…?」
謎「当時のわたしは怖くて…とてもじゃないけど、自首なんかできなかったわ。それに、自首したところでたったの9歳。警察は相手にしないだろうし、したとしても罪は軽くて、償ったということにはとてもできないわ…。そんなの、わたしが許さない…。だから、こう…いまみたいな状態になってしまっているの…」
謎事「そんな…メイちゃん…?」
謎事は完全にパニック状態に陥っている。自分の好きな人が、自分達の仲間が、殺人犯だと…?
そんなこと、あってたまるもんか。
謎事「そんな…バカな…ウソだ…」
真実「ウソでしょ? メイちゃん…」
謎「本当よ」
真解「………話してみろ」
謎「え?」
真解がメイを、半ば睨みつけながら言った。
真解「いまのメイの言い方から察すると、お前はその妹を恨んで殺したようには思えない。過失で殺してしまったんだろ?」
謎「ええ。そうよ…」
真解「だが、オレには…オレらの仲間が、友達が、過失でも故意でも殺人を犯すとは思えない」
謎「慰めはいいわ。本当なんだから」
真解「だから言ってるんだ。話してみろ。もしかしたら…いや、確実に、お前は無実だ。殺人なんか犯しているわけがない」
謎「………」
真解「話してみろ。どんな事件だったのか。どんな状況だったのか。オレがお前の無罪を証明してみせる。絶対に」
真解が言うと、メイがふぅ、とため息をついた。
謎「どうやら…話さなきゃダメみたいね…」
Countinue
〜舞台裏〜
とうとう、メイの秘密を解き放そうとしている、キグロです。
と言うわけで、今回のゲストはメイちゃんです!
謎「わたしなのね…」
はい、それはもう…。
謎「わたしの秘密…ねぇ…。話すの?」
次回…にね。本当は、もうちょっと後にしようかとも思ったんだけど…ま、気分的に。
謎「気分……」
実は、次回、10話目なんですよね。
謎「あら、そうなんですか」
だから、本当は新レギュラー陣を登場させようと思ったんだけど…なんか、巨大真珠…の真相編が異様に短かったんで、急遽メイの秘密に変えました。
謎「長かったら、新しい人が出てきてたの?」
うん。まぁ、新レギュラー陣も11話目で登場させる予定だけど。
さて、今回のナゾが解けた方は、こちら。
犯人(猫)が解った方>いませんでした。
以上です。
さて、摩訶不思議探偵局もいよいよ次回で10話目です。
謎「やっと2桁ですね」
ええ。実は、「カービィ探偵団!」はたった10話で最終話なんだよね。
謎「へぇ…」
その10話を書くのに要した時間は約2年。摩訶不思議探偵局はこの9話目を書いている時点で、まだたったの7ヶ月程度です。
謎「あら…」
まぁ、公開がいつになるかは解らないし、10話目を書き終わるのがいつかもわからないけどね。
カービィ「ずるい! ボクらの時はたったの10回しか事件を出さなかったのに…! なんで摩訶不思議なんとかは…!」
摩訶不思議なんとかってカービィ…。って、なんでカービィ!?
謎「あなたが出しているのでは?」
……ま、気にするな。
〜次回予告〜
「そう…あれは5年前の4月14日…」
真解の説得に応じ、ついにメイが「笑わない秘密」を話し始めた。
話は5年前の4月14日にまでさかのぼった。
その日行われていたのは、メイの妹の誕生日パーティー。
メイの妹、兄、そして両親の5人の人間がそこにいた。
そこで、恐怖の殺人事件が起こった…。
ついに、メイの様々な秘密が語られる…。
次回、「事河真実殺人事件」をお楽しみに。
おまけの珍句名言集(謎)「ほとんどのクルーに『谷』の字が入ってる……」
解説;近未来体験ツアーの宇宙船員の名前を聞いたとき、謎事が発した言葉。いかにも墜落しそうな宇宙船だ。
作;黄黒真直
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