摩訶不思議探偵局〜事河真実殺人事件〜
主な登場人物 ( )内は読み、【 】内は役
実相 真解(みあい まさと)…【主人公・探偵】
実相 真実(みあい まさみ)…【探偵】
相上 謎事(あいうえ めいじ)…【探偵】
事河 謎(ことがわ めい)…【探偵】
事河 真実(ことがわ まさみ)…【メイの妹】
事河 剣斗(ことがわ けんと)…【メイの兄】
事河 賢太郎(ことがわ けんたろう)…【メイの父】
事河 登代子(ことがわ とよこ)…【メイの母】
独り言;なんか最近、同じ苗字の人が同時に出ることが多いような気がする…。

同じ、家族だったじゃない…!

摩訶不思議探偵局〜事河真実殺人事件〜事件編

謎「どうやら…話さなきゃダメみたいね…」
真解「そういうことだ」
 真解が言うと、メイはまたふぅ、とため息をついた。
謎「これから言うことは、今まで一度も言ったことが無い…そして、みんなには信じられないようなことかもしれないけど…なるべく、黙って聞いてね」
 メイが、やっと話し始めた。
謎「まずは…妹について、話しましょう。 妹の名前は、事河 真実(ことがわ まさみ)…」
真実「えっ!?」
 真実が思わず声を上げた。
謎「そう。真実ちゃんと同じ名前なのよ。 だから、忘れようと思っても、忘れられなくて…」
真実「・・・・・・・・・・」
 なにを言えばいいのか解らず、真実は困惑した表情で黙りこくった。メイは構わず続けた。
謎「次は兄ね」
真解「兄?」
謎「ええ。別に隠してたわけじゃないんだけど…実はわたしには、兄がいるのよ。当時20歳。11も年が離れてたのよ。いまはもう、結婚してるけどね」
 そしてメイはついに話しだした。5年前のことを。
謎「そう…あれは5年前の4月14日…妹の誕生日パーティーでのことだったわ」

5年前の4月14日
 今日はメイの妹、事河真実の5度目の誕生日。誕生日パーティーももうすぐ行われる予定だ。
 友達も引き連れてのパーティーは既に昼間にやっていて、これからやるのは家族だけでのパーティーだ。2度もやるのだ。何故か。
 2度もパーティーをやると言うことで、真実は喜んでいた。おおはしゃぎしていた。
 余談だが、「4月14日」と言うのは2月14日のバレンタインデー、3月14日のホワイトデーに続く、「オレンジデー」と言う日なのだ。この日は、バレンタインとホワイトデーを通じてカップルになった2人が、オレンジ色のものを持って互いの家を訪問し、より一層愛を深める…と言う物らしい。 …何故か、これだけ無名なのだ。
真実「♪〜〜♪〜〜〜」
母「あんまりはしゃいでると、パーティー前に眠くなるわよ?」
 メイ達の母親である、登代子(とよこ)が言った。
兄「確か去年、途中で寝ただろ?」
 メイ達の兄、剣斗(けんと)が言った。
真実「もうそんな子どもじゃないもん!」
 真実が言い返した。
父「ああ。真実はもう5歳だもんな?」
真実「うん☆」
 父、賢太郎(けんたろう)が言うと、真実は元気よく答えた。
剣斗「その答え方は子どもだろう?」
真実「子どもじゃないもん! ね、お姉ちゃん」
謎「……子どもじゃない?」
真実「ひどぃっ! それが姉の言う言葉っ!?」
謎「だって、わたしより年下だし」
真実「いいもん。いつかお姉ちゃんより年上になるもん」
謎「その考え方が子どもよ」
 このころはまだ、メイは明るかったようだ。まぁ、当然だが。
 3兄弟が楽しくケンカしている横で、登代子と賢太郎はせっせとパーティーの準備をしていた。
 外は既に真っ暗だから、必要ないと思うが、窓に暗幕をかけた(この家では、ケーキに立てたローソクに火をつける時だけ真っ暗にする風習なのだ)。
 そして、次にテーブルの上にテーブルクロスをひき、料理を運んだ。
登代子「剣斗、手伝って」
剣斗「なんで俺だけ」
登代子「あなたは、可愛い可愛い愛すべき妹達に仕事をやらせるつもりなのですか? なんて酷い子! お母さんはあなたをそんな子に…!」
剣斗「なんかその言い方をされるとなぁ…」
謎「よろしくね。お兄ちゃん」
剣斗「てめぇ…」
 なんで11も年下の妹にこんなことを言われにゃいかんのか…。
 剣斗は渋々料理を運んだ。
 たかが誕生日、されど誕生日。料理は豪華な洋食だ。
賢太郎「おい剣斗。カメラはどうした?」
剣斗「あ、そうだ。忘れてた。母さん、俺カメラ取ってくるわ。じゃ」
登代子「あっ。 …ちっ、逃げられたか」
賢太郎〔すぐ戻ってくると思うのだがなぁ…〕
 戻ってきても、「試し撮りする」とかなんとか言って、結局手伝わないだろう。登代子には目に見えていた。
剣斗「なぁ、父さん。カメラ、俺に使わせてくれないか?」
賢太郎「ん? 別にいいが…」
剣斗「サンキュ」
 剣斗は確かにすぐに戻ってきたが、登代子が「手伝え」と言うとやはり「試し撮りする」と言い返した。
真実「あれ? カメラって言うから写真とるのかと思ったら…なに? そのカメラ。形が違うけど」
賢太郎「真実はビデオカメラも知らないのか?」
真実「びでお〜?」
謎「うちにビデオカメラなんてあったっけ?」
賢太郎「買ってきたんだ。ついこの間。高かったんだぞぅ? フィルム」
謎「フィ、フィルム…? カメラは…?」
賢太郎「まぁ、カメラも高かったけどな。特注だからなぁ。フィルムもカメラも」
真実「わたしのために?」
賢太郎「“今日”のために」
真実「??????」
 真実は混乱したらしい。
 賢太郎の言おうとするところは、「真実」だけを撮るためでなく、「誕生日パーティー」を撮るための物なので、正確には「真実」のためではなく「今日」のためだと言う、ちょっとひねくれたことだったのだが…それが真実には理解できなかったらしい。
登代子「準備できたわよ」
真実「わ〜い!」
パンッ! とクラッカーが鳴り響いた。

「♪ハッピバースデートゥーユー…」
 と言うおなじみのリズムに乗せ、家族4人が真実のために歌っていた。
 余談だが、この「ハッピーバースデー・トゥーユー」と言う歌は、元々はどっかの幼稚園教師が子ども達に早く言葉を覚えてもらおうと作った、「グットモーニング・トゥーユー」と言う歌だったらしい。それがいつの間にかに「ハッピーバースデー・トゥーユー」に変わり、いまや世界中で愛されているのだ。
 ローソクに火が灯され、部屋の電気が消えた。
 ローソクの灯りがぼんやりと灯って、なんともいいムードだ。
 真実が掛け声に合わせて一気にローソクに息を吹きかけた。真実は毎年頑張ってはいるが…子どもの肺活量では、やはり一発では消えない。ヤッキになってふぅふぅやっている。
 5、6回吹いて、やっとこさ消えた。
 パチッとまた電気が点けられた。
登代子「お誕生日、おめでと〜!」
 そして、誕生日プレゼントが真実の前に出された。
謎「おめでとう!」
賢太郎「おめでとう」
剣斗「ほら、プレゼントだ」
真実「イエイイエイ!」
 真実ははしゃぎながらプレゼントの包みのヒモに、手をかけた。
 と、その時、電気が消えた。
賢太郎「なんだ? 停電か?」
謎「な…なに?」
 メイは思わず椅子から立ち上がり…壁に張り付いた。別にスイッチを探すとか、そういう目的があったわけではなく、なんとなく張り付いた。
 無意識に手を上にあげると、なにかが手に当たった。
 円盤状の物だった。更に手をあげると…細い、なにかに当たった。
謎「…?」
 メイは無意識にそれを掴み取り、マジマジと見つめた。
 実はそれはダーツの矢だったのだが…ダーツの羽根に描かれているクモの絵が、何故かボンヤリ見えた。
謎「ヒッ!」
 幼いメイは、クモに驚いてダーツを思わず投げ飛ばした。 …と言うか、放り投げた。
 そして、そのままそこにペタンと座り込んだ。
 次の瞬間、電気が点いた。賢太郎がブレーカーを上げたのだ。
 メイはホッとした……が、それもつかの間だった。目の前の光景に目を疑った。
謎「ッ!?」
剣斗「!?」
登代子「あ…な…」
「いやああぁああぁあぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!」
賢太郎「なんだっ!? どうしたっ!?」
 賢太郎が慌てて戻ってきたが…状況を聞くまでもなかった。
 賢太郎の目に飛び込んできた光景…それは…。
 真実の死体と、その咽喉に刺さったダーツだった。

謎「もう、言うまでもないと思うけど…そのダーツは、間違いなくわたしが投げた物だったわ。
 当時、わたしの家にはダーツが6本あったわ。その全部が壁にかかっていた的に刺さっていて、わたしはその一本を引っこ抜いて投げた…。もちろん、明かりが点いたあと、的には5本しかダーツは刺さってなかったわ…。 そう…つまりわたしは…過失とは言え、自分の妹を殺してしまったのよ…」
 メイは今にも泣きそうな顔で言った。
謎「それ以来、毎日が苦痛だったわ。妹の死ですら、悲しいのに、それが自分の手によるものだったのだから…。自殺も考えたこともあったわ…。だけど…さすがに、怖かったわ…。 そして、わたしはなにかに熱中していれば、その間だけはこのことを忘れられることに気がついた。そこでわたしは本を読んだ。ジャンルを問わず、ありとあらゆる本を…。それで、これだけの知識を蓄えたのよ…」
 メイは黙り込んだ。沈黙が流れた。これ以上喋れば、もう涙が流れそうだ。
真解「……話すのはつらいだろうが…それからその先、どうなったんだ?」
謎「…覚えてないわ。あまりのショックで」
真解「そうか…」
 またも、沈黙が流れた。 …いや、真解の頭だけはフル回転をしていた。
――ボクらの仲間が、友達が、殺人を犯すなんてことはありえない。きっと、メイはなにかを見落としているんだ。絶対に、無実だ。
真解「メイ…つらいかもしれないが、真相に関係ありそうなことでもなさそうなことでもなんでもいい。事件に関するありとあらゆることを話してくれ」
謎「……わかったわ。無駄だと思うけど…。
 …あの停電の時、窓には暗幕がひかれてて、部屋は本当に真っ暗だったわ。そして…あの事件の担当刑事は、確か兜警部だったわね。警察はダーツの指紋は調べてなかったわ。家に元からある物だったから、全員の指紋がついてるだろうって…。 プレゼントはあの時、まだ開けてなかったわね。しっかり見てたわけじゃないけど…停電の直前、目を閉じたりしていた人はいなかった気がするわ。 あのときの停電は警察の調べによると完全な偶発的な物で、誰かが仕組んだ物ではなかったわ。 それから…懐中電灯の類いは、あの部屋にはなかったわね。 …こんなところかしら」
 また、沈黙が流れた。謎事も真実も、なにを言っていいのかわからず、下を向いて黙り込んでいた。
 部屋が真っ暗闇なら、メイ以外殺せた人はいないじゃないか。まさか、本当にメイが犯人なのか…?
謎事〔そんなこと、あるもんか!〕
 謎事はそう自分に言い聞かせ、真解の方をチラリと見た。
 真解は…あの、いつもの推理するときのポーズをとっていた。
 手をアゴにやり、うつむいて…考えていた。
――メイが犯人なわけないんだ。きっと、なにかのトリックを使って、真犯人は暗闇の中でも物を見ていたんだ! しかし…どうやってだ? 犯人はいったい、どうやって…?
 真解の頭はフル回転していた。
 いまメイから聞いた話を全て整理し、並べ、不要な情報を削除し、手がかりを探した。メイが無実だと言う手がかりを。真犯人を特定する手がかりを。
 …そして、いつものように言った。ニヤリと笑って。
真解「・・・・・・・・・。 見えた…」

Countinue

〜舞台裏〜
久々に…って言うか、魔探では初めて「事件編」と「真相編」の2回に分けた、キグロです。
今回のゲストは、前回に引き続き、事河謎ちゃんです!
謎「な、なんで2度も連続で…?」
特別特別。
謎「って言うかわたし…いまあんまり話したくないんだけど…」
……………。じゃあ、今日は気分を変えて1人で行きます。

さて、今回の事件は至ってシンプル。
事件解決の取っ掛かりはただ1つ。
「犯人はどうやって暗がりで物を見ることができたか?」
これがわかれば、もう犯人もわかっちゃいます。
まぁ、
「暗がりで物を見るのは不可能。よって犯人は本当にメイだ」
って言う結論付けも、もちろんありますよ。フフフフ…。

今回ももちろん、ちゃんと推理を募集します。
募集内容は2つ。
「犯人」と「暗闇で物を見たトリック」です。
もちろん、「犯人=メイ」と言う推理もOKです。
「犯人」か「トリック」のどちらかしかわからなかった場合も、その片方だけ推理を送ってもらって構いません。
まぁ、「犯人」か「トリック」のどちらかがわかれば、おのずと全部わかるんですけどね。
あと、推理は全てメールで。メールアドレスは[kiguro2@yahoo.co.jp]です。
決して、掲示板等で推理を書かないでください。
あ、それと、推理メールで「犯人」とか「トリック」しか書かない人がいますが、なるべく推理も併記してください。よろしくお願いします。
余裕がある人は、「メイが犯人ではない理由」も一緒に送ってきても構いません。どんどん、推理してください。
また、今回の事件の犯人とトリックが解った方は、次回の事件に登場する権利が得られます。
つまり、「魔探」に容疑者として、ではありますが登場できるわけです。
頑張って、推理してください! 推理メール、待っています。

当初の設定秘話;当初、今回の事件は「結婚記念パーティー」で開かれた物で、家族5人だけでなくメイの4人の祖父母も容疑者として登場していたらしい(が、人数が多過ぎたので急遽変更したらしい)。

作;黄黒真直

真相編を読む

本を閉じる inserted by FC2 system