摩訶不思議探偵局〜事河真実殺人事件〜
容疑者リスト
事河 謎(ことがわ めい)…【事河家長女】
事河 真実(ことがわ まさみ)…【メイの妹】
事河 剣斗(ことがわ けんと)…【メイの兄】
事河 賢太郎(ことがわ けんたろう)…【メイの父】
事河 登代子(ことがわ とよこ)…【メイの母】
はしがき;謎事の想い人、メイちゃんの命運やいかに!? あなたの推理は、どうでしたか?

摩訶不思議探偵局〜事河真実殺人事件〜真相編
真解「・・・・・・・・・。 見えた…」
 真解はニヤリと笑って言った。
謎事「見えたって真解…わかったのか!? 真相!」
真解「ああ」
真実「誰!? 真犯人は…」
謎「………」
 真実たちが騒ぐ中、メイだけはなんだか浮かない顔をしていた。自分が犯人か…そうでなければ、家族の誰かが妹を殺したと言うことだ。
真解「全く…メイ…お前がこんな簡単なことで、5年も悩んでたなんてな…。相談してくれりゃ良かったのに。 …まぁ、家族の誰かが犯人になっちゃうことに、変わりはないけど…」
謎「……それで?」
 メイは冷めた声で聞いた。
真解「メイ…。お前は犯人じゃない」
謎「え…? 本当に…? 慰めようとしてるんじゃないでしょうね?」
真解「違う。本当にお前は犯人じゃない。無実だ」
 真解はキッと見据えて言った。
謎「何故?」
真解「お前は、ダーツを放り投げた、と言ったよな?」
謎「ええ」
真解「力を込めて投げたのならともかく、放り投げたぐらいで…咽喉に、刺さるか?」
謎「!」
 メイは、ハッと気付いたようだ。確かに…刺さらないかもしれない。
真解「だが…真犯人は、ボクからは言わない。 …誰が犯人だろうと、お前が悲しむだけだからな…。それでもいいなら…聞け」
 メイは……考え込んだ。どうすればいいのだろう? 家族の誰が妹を殺したのか…知りたいが、知るとかならず悲しむことになる…。
 だが、意を決してメイは口を開いた。
謎「教えてください。誰が…誰が真実を殺したんですか?」
真解「………お前の兄、事河剣斗だ」
謎「えっ………。 お兄…ちゃん…?」
真解「ああ。ボクの推理が正しければ…彼が犯人だ」
謎「そんな……」
真解「どうする? 剣斗さんのところに行くか? そして…いつもの推理ショーみたいに、彼の前で推理を披露するか?」
 メイはまた考え込んだ。 まさか…まさかあの優しかったお兄ちゃんが…?
 だが、真相を確かめないわけにはいかない。
謎「…行きましょう。お兄ちゃんの家に」
真解「そうか…。だが、その前に警察に寄ろう。証拠が必要だろう?」
謎「………ええ」

警視庁
 兜警部は何気に警視庁の警部。警察の中では案外上の方だ。
兜「いきなりこんなところまでやってきたと思ったら…5年前の事件を調べてくれだなんて…」
真解「いやぁ、すみません。忙しそうなのに…」
兜「『そう』じゃなくて、忙しいんだ。警察ってなぁ、仕事がない方が良いとよく言うが…警察の仕事がない日なんて、ないんだ」
 兜は文句を言いながら、資料室をあさっている。
兜「えっと…これか? 『事河真実殺害事件』。5年前の4月14日だ。 …そういえば、この事件の担当だったな、オレは。 …確かメイ嬢の…」
謎「ええ。わたしの妹が殺された事件です」
兜「未解決だったんだよな…。で、これのなにが欲しいんだ?」
真解「えっと…凶器となったダーツ、調べてないそうですね?」
兜「ああ。大した調べはしていない。指紋すら取らなかったな」
真解「そのダーツ…調べてください」
兜「ダーツを?」
真解「ええ。保存状態が良好なら、指紋っていつまでも残る物なんでしょ?」
兜「半永久的に残る…と聞いたことがあるな」
真解「なら、早速調べてください。おそらく……………」

事河剣斗宅
謎「お兄ちゃんはいま、妙子(たえこ)さんと結婚して、ここに住んでるんです」
 メイは恐る恐る、呼び鈴を鳴らした。
ピンポーン…
妙子「は〜い…」
 妙子はドアを開けた。
妙子「あら、メイちゃんじゃない! 久しぶりねぇ」
謎「お久しぶりです」
妙子「どうしたの? …あら? 後ろにいる子達は?」
真解「初めまして。実相真解です」
真実「真実です」
謎事「相上謎事です」
妙子「ん…? あなた達、もしかして摩訶不思議探偵団? 前に一度、メイちゃんが話してくれたけど」
真解「ええ。まぁ、そうです」
妙子「その探偵さんが…どんなご用?」
真解「…剣斗さん、います?」
妙子「いるけど?  けんとぉ!」
 妙子は奥に向かって叫んだ。
 奥から、剣斗がでてきた。どことなく、「いま時の若者」みたいな風貌だ。
剣斗「誰が来たんだ? …あ、メイじゃないか。どうした? 久しぶりだな」
謎「お久しぶりです」
剣斗「? その後ろにいる子達は…?」
 真解達は、もう一度自己紹介した。
剣斗「ふぅん…あの探偵が…俺になんか用なのか?」
真解「ええ。重大な用事が…。 …剣斗さん、5年前の4月14日の事件、覚えてますか?」
剣斗「!?」
 剣斗の顔が、一瞬強張った。
剣斗「あ…ああ、もちろん覚えている。忘れるわけがないだろう」
真解「ボクら…その事件の真相を、推理していたんです。 そしたら…1つの結論にたどり着いたんです」
剣斗「………ほぅ。なんだ?」
真解「剣斗さん……メイの妹、真実を殺害したのは、あなたですね?」
 重苦しい、空気が流れた。
 いままでなんども「犯人はあなただ」と言ってきたが、こんな重苦しい空気が流れたのは初めてだ。なにしろ、何も知らない妙子や、いま告発している人の妹、メイがすぐ側にいるのだから…。
妙子「剣斗…殺害したって…どういうこと…?」
剣斗「………っ。 キミらが、どんな推理をしたか知らないが…俺はそんな事はしていない。 …ここで立ち話するのもなんだ。中に入りたまえ」
 剣斗は奥に戻って行った。

剣斗「で…どんな推理をしたんだ?」
 剣斗はソファーに深く越しかけて、聞いた。完全に落ち着き払っている。
 真解はメイから聞いた話を、剣斗にした。
真解「それで…問題はただ1つ。『犯人はどうやって暗がりで物を見たか?』です」
剣斗「確かに、そうだな」
真解「でも…なにも難しいことはありませんでした。何故なら…犯人、つまりあなたは、『赤外線ライト機能』を搭載したビデオカメラで撮影していたのですから」
剣斗「赤外線ライト機能を搭載? ……フッ。なにを根拠に…」
真解「根拠は簡単です。撮影する現場を考えてもらえばわかります。 事河家の誕生日パーティーでは、風習的にローソクに火を灯したときだけは、電気を消していたそうじゃないですか? そのとき、普通のビデオカメラで撮影すると薄暗い映像しか残らない…。しかし、赤外線カメラを使えば、はっきりと映像が撮れます。 あの時、カメラもフィルムも特注品だったそうですね? 赤外線機能を搭載していたんじゃないんですか? そして、フィルムも、それ専用の物ではなければ、赤外線で撮影することはできません」
剣斗「フッ…フフッ…」
 剣斗は鼻で笑い飛ばした。
剣斗「確かに…あながち間違いじゃなさそうな推理だが…根拠としては、弱くないか?」
真解「確かにそうかもしれませんね。 …でも、証拠ははっきりと、あなたを示すハズですよ?」
剣斗「どういうことだ?」
真解「凶器となったのはダーツですが…ダーツは通常投げるとき、親指でダーツを支え、後の4本は添えるような感じで持ちます。 そして的から抜くときは…当然、逆手に持つはずです。こんな感じに」
 真解はジェスチャーをした。
真解「しかし、利き手である右手にビデオカメラを持っていたあなたは…」
♪〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜
 そのとき、真実の携帯電話が鳴った。最近の流行歌だ。
ピッ
真実「もしもし……あ、兜警部…」
 真実が二言三言、話した。そして、電話を切ってから、言った。
真実「お兄ちゃん…お兄ちゃんの推理通り、ダーツからたった一人分の順手で握った指紋が出てきたって。剣斗さんの左手の」
 真解はニヤリと笑った。
真解「そう。あなたはダーツを思わず順手で握った。利き手ではない左手だった上に、拾い上げたのだからなお更だ。 …諦めてください」
剣斗「っ……………・・・・・・まさか、今ごろになって解かれるとはな…。フッ…その通りだ。俺が殺した」
妙子「剣斗…?」
謎「なんで!? なんでよ、お兄ちゃん!」
剣斗「…そうか。メイ、お前も知らないんだったな」
謎「な…なにを?」
剣斗「メイ…お前と真実は、養子なんだよ」
謎「えっ…? 養子…?」
 真解、真実、謎事の視線が、メイに注がれた。メイが養子だったとは…。
剣斗「ああ。まぁ、小さかったから覚えていなかったんだろうな。 お前と真実が事河家に養子としてやってきたのは、10年前だ。 当時、俺は行方不明になっていたんだ。これは、お前も知ってるだろ?」
謎「………」
 メイは黙ってうなずいた。
剣斗「キャンプで悪ふざけをしていたら谷だったかに落ちてな…詳しいことは覚えてはいない。 親父とお袋は、俺を必死に探した。しかし見つからず、もう死んだものとして扱ったらしい。それで、お前ら2人を養子として引き取り…悲しみを癒したんだ」
謎「ウソ…」
剣斗「俺はその1年後、ほとんど衰弱状態で発見された。そこら辺の木の実や葉っぱ、虫なんかを食べて生きてたんだろうな。
 俺は…お前達が憎かった。『俺の代わりに』養子として親父らに気にいられたお前らが憎かった。俺を忘れてお前らを引き取った親父もお袋も憎かった…。俺は、憎しみを晴らそうと、いつも考えていた…。そして5年前。ほとんど衝動で、やったんだ」
 剣斗は冷淡に言った。後悔もしたのかもしれない。悲しんだのかもしれない。しかし、いまはそんな物の形は見えない。
謎「そんな…。お兄ちゃん、わたし達に優しくしてくれたじゃない! いつも遊んでくれたじゃない! あれは…あれはなんだったの!?」
剣斗「…フッ……演技だな。事実、俺はいまでもお前が憎いんだ」
謎「そんな…でも…」
 メイは剣斗を説得しようとしていた。いつも真解が犯人に向かって言っているように。
謎「でも、お母さんもお父さんも、わたし達と変わりなくお兄ちゃんに愛情注いでたじゃない! お兄ちゃんが見つかった時だって、お母さん達、泣いて喜んでたじゃない! 確かに一時は『代わり』だったかもしれないけど、お兄ちゃんが見つかってからは5人で仲良くやってたじゃない! 同じように愛情を注がれてたじゃない! 同じ、家族だったじゃない…!」
 メイは、そこで止めた。
 剣斗の目に、薄っすらと涙が見えた。
剣斗「…………フッ…フフッ…フ…。今ごろ言ったって…遅いさ…もう……殺してしまったんだから………」
 それきり、剣斗は何も言わなかった。

真解「まぁ…メイにとってはつらかったかもしれないが……ともかく、キミの罪が晴れたんだ」
真実「少しは、笑顔の練習もしなきゃね!」
謎「そうね」
謎事「そうそう、メイちゃん、笑うと可愛いんだから」
謎「そう。ありがとう」
 メイは真解の方を向いて、言った。
謎「実相君…」
真解「なんだ?」
謎「…ありがとう」
 メイはそう言うと、スッと近付き…抱き付いた。
 真解は固まった。
 いままで何度も真実に抱き付かれたが…真実以外の人から抱き付かれるのは、はっきり言って初めてだ。完全に動揺した。慌てふためいた。
真解「メ…メイ・・?」
真実「メ…メイちゃ…」
 謎事は声すら出ていない。
 だが、メイはすぐにはなれた。どうやら、「お礼」の以外の意味は全くなかったようだ。
 そして、放心状態の真実に近付き、耳元で囁いた。
謎「大丈夫。別に真解のことは好きってわけじゃないから」
 しかし、真実は放心状態でも気付いた。
 いつも「実相君」と言っているメイが、真解のことを…。

Finish and Countinue

〜舞台裏〜
最後のシーンを書くとき、恥ずかしくて10秒ぐらいキーボードをうてなかったキグロです。
今回のゲストは、抱き付かれた実相真解君です。
真解「ども…」
どうでした? 感想は?
真解「感想はって…てめぇっ!」
いや、ボクも恥ずかしかったよ。そう言った感じの描写は1、2行しかなかったのに、うつのにいつもの倍以上の時間かかったもん。「抱き付いた」だけなのに。見直しも恥ずかしかったし。
謎事「って言うかキグロ…オレには!?」
……………愛は、求める物じゃないよ。
真解「どうしたんだ? キグロ…」
いや、ちょっと言ってみたかっただけ。
※;上の謎事の直後の文ですら、ちょっと恥ずかしかったです。なら書くなって突っ込みは無しです。

さて、では正解者の発表!
トリックが解った方>竜の子さん、れおんさん
全て解った方>銀治さん、27さん、祐さん
え〜、この「全て解った方」のみが、次回の事件に「容疑者として」登場する権利を得れます。
真解「容疑者…なんだな?」
ええ。ちなみに、殺す殺さないはランダムです。
まぁ、詳細はメールにて送ります。
真解「いいのか? 殺して…」
………いや、良くない。
真解〔じゃあやるなよ!!〕

いやぁ、しかし、タダでさえメイちゃんが謎事のこと嫌いなような素振りをしている上に、「もしかして真解のことが好き!?」疑惑がでてきましたね。クックックッ…。
真解「お前が出したんだろ。疑惑」
まぁね。 (前にも言ったかもしれないけど、)女性の方は、メイちゃんの気持ちを推理しても面白いかも?? 既に、2名の友人から推理をいただいてますがね。
真解「どうだったんだ?」
1人は「好き」、1人は「嫌い」と真っ二つ。
真解「愛情の裏返しか、はたまた本当に嫌ってるのか…?」
でも本当に好きだったら、好きな人の目の前で別な人に抱きつくかなぁ??
真解「それで、愛を確かめた…とか? でも、謎事が相手なら確かめるまでも無いと思うんだがなぁ…」
……真解。言ってて恥ずかしくないか?
真解「………恥ずかしいかもしれない」

さて、ついに魔探も10話目を迎えました!
真解「もう2桁か…」
要した時間は8ヶ月ちょい。早いねぇ…。ま、投稿がいつになるかわからないけど。
真解「ものすごいスピードで書いてるんだな」
うん。一時期なんか、1日で1編とか…。
真解「……丁寧に書けよ」
大丈夫だって。 …これからも、魔探をよろしくお願いします!
(結局、投稿は約1年目となりました。これからも、どうぞよろしくお願いします)

〜次回予告〜
「あ、謎事兄ちゃん! 本当に来てくれたんだ!」
ある日、突然謎事が言ったとんでもない告白。
「実は、オレの従姉妹(いとこ)なんだ」
「ホントにぃ?」
なんと、謎事の従姉妹がアイドルだった。
「ダメだ…死んでる」
そして、会いに行ったコンサートホールで、事件は起こった。
「わたしは、犯人を知っているわ」
「あいつが、そんなことをやるとは思えない!」
「大至急、マスターキーを持って来い!」
次回、新レギュラー陣が登場する『コンサートホール殺人事件』をお楽しみに!

当初の設定秘話;当初、今回のトリックは「メイの兄がサングラスをかけていて云々」と言う物だった。

作;黄黒真直

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