摩訶不思議探偵局〜コンサートホール殺人事件〜
容疑者リスト
相上 育覧(あいうえ いくみ/もめん)…【アイドル歌手】
魚住 忠助(うおずみ ただすけ)…【育覧のマネージャー】
黒川 仁美(くろかわ ひとみ)…【人気女優】
安口 彩(やすぐち あや)…【人気歌手】
Holy Knight(ホーリー ナイト)…【人気歌手(グループ・Kissリーダー)】
木村 国信(きむら くにのぶ)…【人気歌手(グループ・Kissメンバー)】
銀冶(ぎんじ)…【人気歌手(グループ・Kissメンバー)】
独り言;題名が「コンサートホール…」なのに、もはや場面はホールじゃないし…。

摩訶不思議探偵局〜コンサートホール殺人事件〜ホテル編

ホテル
兜「とりあえず、しばらくの間は、みなさん、このホテルに泊まっていただきます。全員の取り調べを行いますので」
猫山「それじゃぁ、皆さん、各自の部屋へ戻っていてください」
 猫山が言うと、全員が部屋に向かった。
兜「お前らはどうする?」
 兜は真解たちの方を向いて言った。
真解「とりあえず…このホテルの中を、ふら付いてますよ。でも、今日中に帰らないとやっぱまずいですかね?」
兜「泊まるところがないからな」
真実「警察のお金で、このホテルに泊まれないんですか?」
兜「バカ。そんなことが出来るか。税金だぞ、ぜ・い・き・ん!」
謎事「金さえあれば…泊まれるんだよな?」
兜「あたりまえだ」
謎事「お、じゃあ父さんに頼んでみるわ。そうすりゃ、ここに4人が一泊するぐらいの金は出してもらえる…」
真実「あ、そうか! 謎事くん、社長令息だもんね!」
兜「なに!? そうなのか!?」
謎事「あ、あれ? 知りませんでした…?」
兜「全く。だいたいそう見えない」
謎事「なんで…どうして…」
 謎事は泣きそうだった。

 謎事が家に連絡を入れ、空き室だった2部屋に泊まることが出来るようになった。これで、調査を思う存分出来る。
真解「と言ったって、いまさらホールに戻るってのもな…」
兜「まぁ、そこら辺は小鳥遊が撮ってくる現場写真を待つんだな」
真解「そうですね…」
 真解たちは、借りた2部屋のうち、片方の部屋に入っていった。
謎事「ドアは外からは電子キーじゃないと開かない…か」
真解「まぁ、最近のホテルじゃ当たり前だろ?」
謎事「かもな。 …あ、でもオートロックじゃないんだ。戸締まりにゃ気をつけないとな」
 謎事は部屋の中に目を移した。
 部屋はそれほど広くない。2人用だし、まぁこんなもんだろう。
 部屋のほぼ中央に2人ぐらい座れそうなソファーが2つ、向かい合っておいてあり、その中央にテーブルが置いてある。ここで飯を食べろ、と言うことだろう。部屋の置くにはベッドが2つ、置いてある。
 真解がソファーに座り込むと、真実がその隣にすかさず座った。必然的に謎事とメイが隣り合って座ることになる。
 謎事はソファーに座ったが、メイは座らず部屋の奥に行って、
謎「何か飲みます?」
 と冷蔵庫を開けた。
真実「なにが入ってるの?」
謎「大した物はありませんね…。オレンジジュース、ミネラルウォーター、ビール…」
真解〔なんでビールが入ってんだよ!?〕
謎「大人の方も泊まるでしょうし…」
真解〔いや、だって炭酸が…って、なんでボクの心が…〕
 メイはそんな真解を無視して、とりあえずオレンジジュースとウーロン茶を取り出し、テーブルに置いた。そしてコップ4つを持ってきた。
 余談だが、「烏龍茶(うーろんちゃ)」とは色が烏(からす)のように黒く、 葉が龍の形のように曲がっていることから、この名がついたらしい。
 メイは謎事の隣に座って、真解に聞いた。
謎「どう、真解。解けそう?」
真解「そうだなぁ…」
 真解はちょっと考えて、
真解「小鳥遊さんの持ってくる、例の写真が来ないことには…なんとも言えないな」
 と答えた。
謎「そうですか…」
 と、ウーロン茶を飲もうとした謎事が気がついた。
謎事〔…? そういえばいまメイちゃん…真解のこと、『真解』って呼んでなかったか? 前まで『実相君』だった気がするんだが…〕
 謎事がウーロン茶を中途半端な高さまで持ち上げた状態で、メイを見た。微妙な体勢の謎事に、さすがに無視することも出来ず、メイが聞いた。
謎「どうしました? 謎事くん…そんな、微妙な体勢で…」
謎事「あ、いや、別に…」
 謎事はウーロン茶を飲んだ。
謎事〔? そういえば、いまオレのことを『謎事くん』と呼んだ気が…前まで『相上君』だったのに…?〕
 明るくなろうって言う努力の一環なのか…? でも、真解は呼び捨てでオレはくん付けってのがなぁ…。
 謎事はそんなことを思いながら、空のコップをあおった。
 突然、ガチャッとドアが開いて、兜が入ってきた。手には写真と、何故か週刊誌が握られている。
真解「あ、兜警部。写真、出来たんですか?」
兜「ああ」
 兜は無造作にテーブルの上に写真を置いた。真解はそれに見入った。
謎事「ところで兜警部…その週刊誌は?」
兜「ああ、ほれ、あの殺された板垣とか言う野郎、どっかで見たことがあったと思ってな…」
真実「そりゃ芸能人だもん。あるのは当たり前じゃない?」
兜「オレも始めはそう思ったんだが…しかし、さっきふと思い出したんだ。あの仏さん…週刊誌の記事で見たんだ」
謎「週刊誌…?」
兜「ああ」
 兜は手に持っていた週刊誌を開いた。
兜「ほら、ここだ。読んでみろ」
真実「どれどれ…?」
 真実が記事を覗き込んだ。真解も写真から目を離し、ちょっと覗いてみた。
真実「え〜っと、『スクープ! 板垣 光に恋人!?』」
謎事「ああ、よくあるやつか」
 謎事はあまりこういうことには関心が無いらしい。冷めた反応しかしない。
 真実が記事を読んだ。
 内容は大した物ではない。板垣が女性と腕を組んで自分の家へと入っていく写真が掲載されていて、それが「恋人だ!」と大々的に書かれているだけだ。板垣は独身ゆえに、恋人とスクープされたのだろう。おまけに女性は後姿しか写っていない。いろいろと推測をあおるには、もってこいなのだろう。
真解「なんだ、そんなもんか」
 真解も冷めた反応で、写真に目を戻した。
謎「でも、この女性…どっかで見たような気が…」
真実「メイちゃんも? わたしもするのよね…」
謎事「え? どこでだ?」
真実「さぁ…? 思い出せないけど、どっかで……」
兜「思い出せないか? もしかしたら、この女が犯人なのかもしれない」
真実「え? なんでですか?」
兜「長年のカンだ。ああ言うモテ男が殺された場合、たいていホシはそのときの交際相手の誰かなんだ」
真解「でも待ってください、兜警部」
 真解が写真から目を離した。
真解「でも、それだったら犯人は、なんらかのトリックでアリバイを手に入れたことになりますよ?」
兜「え?」
真解「だってそうでしょう。アリバイの無い人は、全員男性なんですから」
兜「…いや、1人だけ、女がいる…」
謎事「育覧…?」
兜「そうだ」
真実「え? でもこの写真、どう見ても大人の人だけど…?」
兜「普通に交際していたら、殺しはしない。たいてい、相手が浮気しているから殺すんだ。つまり、あの育覧とか言う娘は、板垣がこの女と付き合っていることをしり、殺害した」
謎事「え? じゃぁ、板垣さんは、ロリ…」
真解「兜警部! 変な方向に話を持っていかないでください!!」
 真解が怒鳴った。
兜「いや、悪い悪い…長年刑事をやってると、どうしてもな…」
 兜はタバコを取り出した。真解は深いため息をついた。
謎事「…あ…」
 突然、謎事が呟いた。
謎「どうしました?」
謎事「もしかしたらこの女の人…黒川さんじゃないか?」
兜「なに?」
謎事「別に似てるってわけじゃないけど…でも、オレらが探偵だって明かしたとき、黒川さん、1人だけ渋い顔してたから…もしかしたら、探偵イコール浮気調査って連想したんじゃないか? それで…」
真解「誰かと板垣さんの二股が、バレるかもしれない…そう思ったわけか」
謎事「可能性はあるだろ? それで、板垣さんに浮気がばれたか、或いは浮気相手と交際するのに板垣さんが邪魔になり、殺害したか…」
 ふぅん…と真解はうつむいた。そしてソファーから立ち上がった。
真実「どこ行くの?」
真解「事情聴取。 どこでやってます?」
兜「…連れて行こう」
 2人は外へ出て行った。残った3人も、ついていった。

Countinue

〜舞台裏〜
「コンサートホール…」も、はや3編目です。
今回のゲストは猫山さんです。
猫山「お久しぶり」
いやぁ、猫山さんをゲストに迎えるのは、ホント久しぶりですねぇ。最後に出たの、いつです?
猫山「いつだったかなぁ…?」
真実「『遺産相続…』の事件・推理編が最後ね」
うわ、懐かしい名前…。

さて、今回はあまり推理は出ず。
猫山「確かに」
本格的な推理は、次回から。
猫山「事情聴取から、か」
うん。そ。

ってか、事件名「コンサートホール…」なのに、もうホールじゃないしね。
猫山「う〜ん…今回のネーミングは、失敗だね」
まだまだ未熟なのかなぁ?

ではまた次回。

おまけの名句珍言集(謎)「高く麗しい辺りに咲く細い華。まさに、わたしをそのまま表した名前ね」
解説;澪菜初登場のとき、謎事に「うまのあたり…?(駒辺)」と聞かれて澪菜が言い返した言葉。この一言で己の性格を暴露した。

作;黄黒真直

事情聴取編を読む

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