摩訶不思議探偵局〜コンサートホール殺人事件〜
容疑者リスト
相上　育覧（あいうえ　いくみ／もめん）…【アイドル歌手】
魚住　忠助（うおずみ　ただすけ）…【育覧のマネージャー】
安口　彩（やすぐち　あや）…【人気歌手】
Ｈｏｌｙ　Ｋｎｉｇｈｔ（ホーリー　ナイト）…【人気歌手（グループ・Ｋｉｓｓリーダー）】
木村　国信（きむら　くにのぶ）…【人気歌手（グループ・Ｋｉｓｓメンバー）】
銀冶（ぎんじ）…【人気歌手（グループ・Ｋｉｓｓメンバー）】

摩訶不思議探偵局〜コンサートホール殺人事件〜疑惑編

大部屋
　集められた者の中には、明らかに不機嫌そうな者もいる。どうやら、寝ているところをたたき起こされたらしい。
兜「え〜、先ほども言いましたが、黒川さんの遺体が…他殺死体が、裏庭で発見されました。で、詳しい結果はまだ出ていませんが、殺害されたのは、おそらく昨晩のことだろうと考えられています。ですので、まずアリバイを聞きたいところですが…その前に、昨晩、黒川さんに最後に会った方は？」
魚住「ちょっと待ってください」
　魚住が急に言った。
魚住「黒川さんは裏庭で殺されたのでしょう？　ならば、外部犯の可能性も…」
兜「板垣さんのときと犯行方法がえらく類似していて、毒も同一の物だった。同一犯と考えるのが普通だ」
魚住「そうですか…」
　魚住はあっさり引き下がった。
兜「で、昨晩最後に黒川さんに会った方は？」
真解「ボク…かもしれません」
　兜が聞くと、真解が言った。兜は驚いて真解を見た。
兜「なに、真解？　いつのことだ？」
真解「事情聴取が終わった直後でしたから…４時ごろでしょうか？」
兜「４時…それ以降に、黒川さんに出会った方は？」
　兜は全員の顔を見渡したが、全員、静まり返っている。誰も会わなかったのか？
兜「と言うことは、死亡推定時刻は午後４時以降…か」
猫山「あれ？」
　猫山がふと言った。
猫山「でも、黒川さんと同室に泊まっている方、いらっしゃいましたよね？」
育覧「あ、あの…わたしと…安口さん…です」
兜「なに？」
　兜は育覧を睨みつけた。ただでさえ怪しまれていたのに、これでもっと容疑が深まった。
安口「でも！　今度はわたしも一緒ですよ！？」
　慌てて安口が育覧を弁護した。
兜「しかし…４時から戻ってこないのに、何も不審に思わなかったんですか？」
安口「思わなかったんですよねぇ」
兜「何故？」
安口「ほら、わたし疲れてましたから、４時半にベッドに横になったんですよね。これはベッドに寝そべったまま時計を見たから、間違いありません。そしたら、そのまま眠っちゃって……っ！」
　安口が慌てて口を塞いだ。
兜「眠った…？　ってことは、４時半以降に黒川さんが部屋に戻ってきても、あなたは気付かなかった。つまり、部屋には相上　育覧、ただ１人だったと考えていいわけだ。つまり、相上　育覧。お前はとことん、怪しい」
　兜が探偵にでもなったつもりか、育覧に指を突きつけていった。育覧の顔が一瞬にして青ざめた。
育覧「そ…そんな…。わ…わたしじゃありません！」
　育覧は真解を見た。真解と目があった。その目が、真解に無実を主張している。助けを求めている。
　助けて！　真解お兄ちゃん…！
真解「――」
　真解は、口を開いた。
魚住「待ってください！」
　と同時に、魚住が叫んだ。
兜「なんですか？」
魚住「あ…アリバイなら…わたしもありません！」
銀冶「ああ！　そうや！　わいもない！！」
　銀冶も叫んだ。
兜「なに？　そうなんですか？」
魚住「わ…我々の、当初の部屋割りはこうでした。ホーリーさんと木村さんが同室。銀冶さんと板垣さんが同室。黒川さん、安口さん、もめんの３人が同室で、わたしが１人だけ個室でした」
銀冶「で、板垣が殺されちまったいま、わいと魚住さんが１人…つまりアリバイなしってことや。それに…殺されたんは４時“以降”なんやろ？　それなら、夜中にこっそり部屋を抜け出すことぐらい…」
小鳥遊「あの〜…」
　と、小鳥遊が部屋のドアを開けて中に入ってきた。突然の入室で、全員の視線が集中した。
兜「どうした？」
小鳥遊「黒川さんの死亡推定時刻がわかりましたので、その報告に…」
兜「ああ、そうか。どうだった？」
小鳥遊「はい、死亡推定時刻は先日の午後３時ごろから午後５時ごろ…しかし、事情聴取が終わったのが午後４時前後ですので、死亡推定時刻は先日の午後４時ごろから午後５時ごろの１時間だと思われます」
兜「ずいぶんと細かくわかったな。そうか、わかった。戻ってろ」
小鳥遊「はい」
　小鳥遊はドアを開けてそそくさと出て行った。ドアが閉まったのを確認すると、兜は全員の方を向いた。
兜「…そういうわけです。では皆さん、改めて、午後４時以降のアリバイを聞かせてもらいましょう」

　話によると、全員が事情聴取が終わると即座に部屋に戻ったらしい。もちろん、黒川は除いて、だ。やはり、アリバイが無いのは魚住と銀冶、そして育覧の３人だった。
猫山「どうもパッとしないアリバイですねぇ。やっぱ、あのもめん少女が犯人なんじゃないんですか？」
　猫山が呟くと、真解と謎事が睨みつけた。猫山は一瞬殺気のようなものを感じて、固まった。
兜「しかし真解。現段階で一番怪しいのはあの娘だぞ？」
真解「それはわかっています。わかっていますが…しかし…」
真解＆謎事「あいつが、そんなことをやるとは思えない！」
　真解と謎事が同時に言った。驚いて、２人で顔を見合わせた。
兜「ま、いいけどな…」
　兜は首をすくめ、タバコを吸い始めた。そのうちあの娘の犯罪が立証されるんだ、と言わんばかりに。
真実「でも…謎事くんはいいとして、なんでお兄ちゃんまでそんなに根拠もなしに無実を言えるの？　会ってまだ１日にもならないのに…」
真解「いや、なんでって言われてもな…。謎事の従姉妹だから…か？」
　そういや、なんでだろうな？　いつもなら、こんな怪しい人間、徹底的に調べるのに…？
　そう思って首を傾げたとき、真実の携帯電話が鳴った。よくよく聴いてみるとこの着信メロディー、もめんの歌だ。
　真実が電話に出た。
真実「もしもし、実相真実です。・・・・・あ、江戸川さん！　ちょっと待ってください、いまお兄ちゃんに代わります」
　はい、と真実は真解に電話を渡した。真解は受け取り耳に当てた。
江戸川《真解君？　頼まれてたものだけど、面白いことがわかったわよ》
真解「！　何がわかりました？」
江戸川《黒川　瞳の交遊関係だったよね？　実は黒川　瞳には、ほとんど夫婦みたいな関係に当たる人がいるわね。そして、それとは別に、もう１人、恋人のような関係の人がいるわ…》
真解「え！？　誰ですか？」
江戸川《恋人のような関係の人が、昨日も言った、殺された板垣　光。そして、ほとんど夫婦みたいな関係にあたる人が…真解くん、もめんって言うアイドルの子、知ってる？》
真解「え？」
江戸川《もちろん、その子と夫婦みたいなんじゃなくって、その子のマネージャーの魚住　忠助って人と、夫婦みたいな関係なのよ》
真解「な…」
　真解は驚いて電話を落としそうになった。
　この調査結果が本当なら、魚住が浮気をした黒川と、その浮気相手である板垣を殺害した…そう考えても、おかしくない。
江戸川《ちなみに、黒川の魚住との付き合いはもうかれこれ１２、３年ね。で、すごいことに板垣との付き合いも１１年近く。そうなると、黒川はどちらと結婚することも、難しい…》
真解「結婚した直後、相手がストーカーと化す可能性があるから…ですか？」
江戸川《それもありうるわね。でもそれよりも、かなり貢がせてるからね。これで別な人と結婚したら、結婚詐欺になる可能性もあるわね…》
真解〔しかし、それがばれてしまい、黒川さんも板垣さんも、魚住さんに殺されることになった…？〕
江戸川《そういえば、一時黒川に妊娠疑惑が起こったわね》
真解「え？」
江戸川《彼女、これも１１年ぐらい前かしら？　７ヶ月前後、芸能活動を休んだのよ》
真解「え？　でも妊娠期間って１０ヶ月ですよね？」
江戸川《そりゃ１０ヶ月だけど…最初の３ヶ月ぐらいは、はた目にはわからないものよ。妊娠してる本人だって、気付かないことが多いわ》
真解「はぁ…」
　まぁ、子持ちの江戸川が言うのだから、間違いないだろう。となると、彼女の子どもは今どこに？
江戸川《ま、わかるのはこのぐらいね。まぁ、念のためまだ調査しておくわ》
真解「はい、ありがとうございます」
　ピッと真解は電話を切った。そして真実に電話を返した。
謎「なんの話をしていたんですか？」
真解「・・・・・・・・」
謎事「どうしたんだ？」
真解「わかった。全部話そう」
　真解は、順を追って説明を始めた。
　黒川のとんでもない告白。江戸川に頼んだ調査。そして、その結果。
真実「じゃあ、犯人は魚住さん！？」
真解「可能性は高い。動機があってアリバイが無いからな」
兜「だが、証拠は？」
真解「それはまだありませんが…ともかく、魚住さんと話してみます。　…えっと…魚住さんは、いまどこに？」
猫山「部屋に戻った。と言うか戻した」
兜「なに！？　そんな指示は出してないぞ！」
猫山「え？　あ、あれ？」
兜「たっく…」
謎事「ともかく…魚住さんの部屋に行こう」
　謎事が歩き出した。全員、それに続いた。

Ｃｏｕｎｔｉｎｕｅ

〜舞台裏〜
さて、いよいよ事件も大詰め（かな？
動機も出てきましたねぇ。続きを、お楽しみに…。
今回のゲストは気分的に真実です。
真実「こんにちは」
どうよ？　今回。
真実「長いわよねぇ。もう、６編目でしょ？　『遺産相続…』抜かすじゃん」
うん、そうなんだよ。
真実「しかも、この様子だと次回真相編じゃないしね」
うん…。でもま、もうすぐだよ。真相編も。
だけど、１編４０００〜５０００文字で区切ってるからこうなってるんであって、全部つなげたら大した長さじゃないはずだよ。
真実「全部４５００だとして、４５００×６＝２７０００。２７０００÷４００＝６７．５。　ってことは、ここまでで原稿用紙６８枚分じゃない。仮にこれが８編まで進んだら、９０枚分…。十分大した長さじゃない？」
でもほら、長編は原稿用紙２００枚だし…。
真実「２００枚行くには全１７編にしなきゃだめなのか…長いわね」
そうだよ。

ではまた次回。

当初の設定秘話；当初、相上　育覧の名前は「相上　由実（ゆみ）」だったらしい（数十年前の某人気歌手から取ったことは、言うまでもない）。

作；黄黒真直

事件・推理編を読む

本を閉じる