摩訶不思議探偵局〜始業深夜の転落死〜
今回、容疑者リストは省きます。

摩訶不思議探偵局〜始業深夜の転落死〜真相編

真解「この事件の真犯人…西花さんを突き落とした犯人は、佐々木先生、あなたです!」
 真解は、自分の指の先で、明らかに動揺している佐々木を睨みつけた。佐々木は口を金魚のようにパクパクさせている。殺人を犯したわりには、結構気の小さい奴なのかも知れない。
佐々木「な…ななな‥な、何を言って‥るるんだい?」
 やっとのことで言った。ここまで動揺するのも珍しい。
 真解は、佐々木を睨みつけたまま、腕を下ろした。
佐々木「だだ…だいたい…か、彼女は自殺じゃ…ななかったのか?」
真解「確かに、自殺現場と思われるこの屋上は、“密室”でした。しかし…天井もなければ、壁だってフェンスです」
謎事「隙間だらけなんだよな」
真解「ああ。その通りだ」
 真解は、相変わらず睨みつけたまま言った。
佐々木「ししし…しかし、みみ…密室だったのなら…どどうやって、わたしがそその密室をつつつ、作ったんだい?」
 いくらなんでも動揺しすぎだろう。真解はそう突っ込みながら、言った。
真解「とっさの思い付きだったため、仕方ないと言えば仕方ないですが…あちらこちらに、痕跡を残しすぎです。校舎の壁からも、5階の窓枠からも、そこのフェンスからも、そして西花さんの上履きからも、ワイヤーの跡が見つかってます」
佐々木「わわい…ワイヤー…??」
真解「ええ。ワイヤー」
佐々木〔しまった!! ワイヤーは跡が残るのか…!〕
 しかし、いまさらそんなことを思っても、あとの祭りだ。真解はフェンスに近づき、例の跡があったところを指差した。
真解「ここ…上履きが置いてあったすぐ近くのフェンスから、ワイヤーの擦れた跡が発見されました」
佐々木「そそ‥それで?」
真解「そうなれば当然、犯人はワイヤーを使ってカギをこの屋上に送り込んだ…と言うことになります」
佐々木「ししし…しかし、ワイヤーに結びつけたたって、おお、屋上でほどくのは無理…」
真解「そう…あなたもそう思って、考えた。ワイヤーを使って屋上にカギを送り込む方法を。そして…考えついたんです」
佐々木「どど…どんな方法を??」
真解「簡単ですよ。まず、ワイヤーを上履きを支点にして、屋上から5階まで垂らす。そしてワイヤーにカギを通す。次に、その下にカギがワイヤーから落ちない程度の、大きめの結び目を作るんです。そうすればカギは、ワイヤーから落ちずに屋上まで送れます。そして、屋上まで言ったと思ったら今度は、ワイヤーを逆方向に動かす…すると、カギはワイヤーにくくりつけられているわけではないので、屋上にそのまま残り、ワイヤーだけ回収できる…」
佐々木「な、何を根拠に、そんな…」
 真解はフェンスをもう一度指差した。
真解「兜警部の話ですと…この跡は、左から右に動かされた後、右から左に動かしているんです。そして…左側には、少し大きめの『何か』がぶつかった跡がある…」
佐々木「そ、それがワイヤーの結び目とカギだと…?」
真解「その通りです」
 真解はまた、佐々木を睨みつけた。さぁ、どうだ?
佐々木「だだだが、ししょ、証拠は? 証拠はどこに…」
真解「あなたはおそらく、衝動的な犯行で、西花さんを突き落とした…おそらく、あなたがさっき言った4階からね。そのとき、かなり動揺していたでしょう…となると、指紋が残ることを、すっからかんに忘れていたに違いありません」
佐々木「しし…指紋? し、しかし、屋上のカギに指紋がついてたって、べべ、別に不思議は…」
真解「では、西花さんの上履きについていたら…不思議じゃないですか?」
佐々木「!!」
 真解は、兜の方を振り返り、言った。
真解「兜警部。西花さんの上履きの指紋を調べてみてください。布のところには残りにくくても、裏地のゴムの部分なら残るでしょう?」
兜「あ…ああ」
 兜は携帯電話を取り出した。パカッと開いて、ボタンを押そうとしたとき、佐々木が言った。
佐々木「刑事さん…いいですよ、そんなことは…」
兜「! と言うと、罪を…?」
佐々木「ええ。認めます…認めますよ…」
 佐々木は「ハハハ…」と力なく笑った。
 …後日、西花の自室から、今回の脅迫計画を記したメモが発見された。そこには、自分が殺されることを予測して、あらゆる伏線を張っておくことまで、書いてあった。佐々木の性格からして、自殺に見せかけようとすることを見抜き、わざと化粧をせず、わざと5階ではなく4階に呼び出したのだ。そのおかげで…謎事と真解により、事件の真相が導き出された。西花の知略は、空恐ろしい物があった。
「後は署で聞こう」と、兜は佐々木に手錠をかけて、屋上から立ち去った。猫山も、その後に続き、捜査をしていた下っ端たちは、どうしていいのか困惑していたが、とりあえず兜に続いた。屋上には、真解たちだけが残された。
真解「一件落着か…」
真実「いいえ。後一つ…ナゾが残ってるわ」
真解「え? なんだ? 動機か?」
真実「チッチッ」
 と、真実は人差し指を立てて、振った。そして、澪菜の方を向いた。澪菜にビシッとその人差し指を突きつけて、言った。
真実「澪菜ちゃんの、最近出来た彼氏よ。だれ?」
 一瞬、全員がどよめいた。
真澄「あ、そうよ、忘れてたわ! だれよ、だれ?」
謎事「そういえば、始業式のあとそんな話をしてたな…」
真澄「やだ聞いてたの? サイテー」
謎事「な、なんでだよ!?」
真実「そんなことより」
 と、真実が仕切りなおした。
真実「だ・れ?」
澪菜「……」
 澪菜は、一瞬うつむき、ニヤッと笑って、言った。
澪菜「犯人は、この中にいる」
真実「えぇ!? ちょっ、だれよ!?」
 真実と真澄は一瞬で男性陣4人の顔を見た。誰だ!?
 男性陣は男性陣で、お互いの顔を見合わせている。誰だ!?
澪菜「ね、マサナオ☆」
 そう言って、澪菜は那由他の手を握った。
全「!」
真実「え!? ウソ!?」
真澄「ラブコメ!?」
 2人が思いっきり素っ頓狂な声を出した。那由他も驚いて澪菜を見た。当たり前だ。なにしろ、那由他には全く、付き合っている記憶などないのだ。
那由他「おい、ミオ…」
澪菜「なに・・・?」
 澪菜が、鬼でも泣き出しそうな顔で、那由他を睨みつけた。
那由他「!?」
 それは一瞬のことだったが、那由他を黙らせるにはそれで十分だった。
澪「へぇ、いつもいじめられた割には、実は澪菜のこと好きだったんだ」
那由他「え? あ、ああ…うん、まぁ…」
真解「ふぅん。わかんねぇもんだな」
謎事〔…わかんねぇもん…ってことは…〕
 謎事はメイをチラリと見た。
 もしかして、メイちゃんも嫌っているフリをしているだけで本当は…?

 那由他と澪菜は同じ駅で降りる。そのため、那由他は駅を出てから、澪菜に詰め寄った。
那由他「おい澪菜。どういう事だよ!? ボクは澪菜と付き合い始めた記憶なんて、全くないぞ!」
澪菜「いいじゃない。どうせ那由他、彼女いないでしょ? もてそうにもないし、好きな人もいなさそうだし」
那由他「そりゃまぁ、いないけど…って、そういう問題じゃない!!」
 いつもなら、ここで澪菜がわざとらしく高笑いするのだろう。だが、今回は違っていた。急に、澪菜が真面目な顔になった。いくらの那由他でも、その雰囲気を感じ取った。そして、澪菜が静かに言った。
澪菜「……わたしは、あなたが好きよ…」
那由他「え…? ミオナ…? ど、どういうつもりさ…ボクをからかうなら、いい加減に…」
 澪菜がスッと那由他に近づき、抱き付いた。
澪菜「これはからかってるんでも、冗談でもないわ…本当よ」
那由他「ミオ…ナ…?」
 那由他は固まった。那由他の耳に、心臓の鼓動が聞こえた。かなり、高鳴っている。しかも、それはダブって聞こえた。一つは那由他自身の。そしてもう一つは、澪菜の…?
 もしも…もしもからかっているだけなら、鼓動は高鳴るものだろうか? いや、高鳴らないだろう。それに…もしも冗談なら、あんな、みんなの前で言うはずもない。2人きりのところで、言うはずだ。それに…抱きつくのだろうか? 冗談で…。
那由他〔と言うことは、まさか…本当に…?〕
 そう結論付けた。
 どうしようか悩んだ。ちょっと悩んだが、那由他は澪菜の肩を押して、澪菜を引き剥がした。
那由他「その……ごめん。あの…別に澪菜のこと……嫌い…なわけじゃないん・・だけど……その…」
澪菜「付き合うほど好きでもない…って?」
那由他「うん…そう・・ごめん…」
 那由他はそう言って、澪菜の肩から手を離した。
「ふ〜ん…」と澪菜は、両手を後ろで組んで、クルりと半回転した。そして、言った。
澪菜「じゃぁ、那由他、みんなに『あれはウソだった』って言うんだ。『実は澪菜のこと好きだったんだ』って聞かれて、『うん』って答えたのに…?」
那由他「!?」
澪菜「だけど…あなたに、そんなことできるかしら?」
那由他「ま…まさか澪菜…」
 那由他は、澪菜に指を突きつけた。
那由他「お前…ボクにふられることを予測して、こんな…こんな回りくどい方法を!?」
 澪菜はクルりと振り返り、ニカッと笑った。
澪菜「そ・の・と・お・り☆」
 那由他には、それが悪魔の微笑みに見えた。
那由他「こ…こんの知能犯めええぇえぇ〜〜!!」
 今度こそ、澪菜のわざとらしい高笑いがした。
 しかし、そんな澪菜に悪態をつくことすら出来ない那由他。単に澪菜が怖いのか、必要以上に優しいのか、それとも実は那由他も澪菜のことを……いや、それだけはありえないか。

Finish and Countinue

〜舞台裏〜
あ〜、恥ずかしかったぁ…!
ってなわけで、今回のゲストはラブラブカップル、澪菜と那由他です。
那由他「『カップル』ではあっても『ラブ』じゃない! ってか、『カップル』でもありたくない!!」
澪菜「いいじゃない、別に。ど〜せあんた、もてないでしょ。ありがたく思いなさい」
那由他「あのなぁ…」
でも澪菜、あの告白の仕方はすごいよな…。那由他じゃなかったら、確実に絶交されてるぞ。
那由他「ボクだって絶交したいよ…」
度胸あるねぇ、いやホント。
澪菜「当たり前じゃない。『度胸』って『ど・むね』って書くのよ?」
………自分が巨乳だって言いたいのか?
澪菜「エッチ…」
な、なんでだよ!?

さてさて、今回はトリックだけの募集でしたね。と言うわけで、正解者の発表。
と言いたい所ですが、まずメールすら来ませんでした。
う〜ん…これだけメールが来ないと…まず、そもそも読まれているのか? と言う疑問がわいてきますね。
ど…どなたか、読んでます…よね……??(引きつった笑みを浮かべながら)

しかし、なんで摩探の女はみんなこんな大胆なんだ?
澪菜「真澄ちゃんはまだ何もしてないわよ?」
う…いや、あいつはほら、モデルがいるから下手なことやらせると殺される…。
那由他「いや、さすがに殺しはしないんじゃ…?」
でも、いままでみんな真解相手だったけど、今回初めて別な人間が相手だったから…一歩前進?
那由他「何がだよ!? だいたい、なんでボクなんだよ!?」
いや…実はね、ときどきボクの後輩Iが摩探の絵を描いてくれるんだけど…そのとき、澪菜と那由他の2ショットを描いてもらって…それが、妙にカッコよかったから。
那由他「そ…それだけで…?」
それだけで。
那由他「ウウウ…」
澪菜「いいじゃん別に。理由はどうあれ終わりよければ全てよし」
那由他「終わりよくない!!  …ってちょっと待て。キグロ。確かボクはキグロの分身だよな?」
え? あ、まぁ、名前は…。
那由他「で、そのボクを澪菜とくっ付けたと言うことは……キグロ。実は澪菜のこと、好きなのか?」
な、なんでだよ!? なんで自分のキャラに恋せにゃあかん!?
那由他「いいよ、あげるよ」
いらんわ!!

〜次回予告〜
「頼む。捜査協力してくれ」
ある日、兜が突然探偵局にやってきた。
「どんな事件なんです?」
「ある男が自宅で殺され、その妻が逮捕された」
摩訶不思議探偵団VS.
「あなたが…殺したんですか?」
「そう。わたしが殺したわ」
完璧なアリバイを持つ女。
「完璧な…アリバイ?」
「共犯者がいれば、アリバイなんて簡単に崩せるじゃん」
「残念だが、その可能性はゼロだ」
「解き明かして見せますよ。完璧な、アリバイトリックの真相を…」
次回、『100%のアリバイ女』をお楽しみに。

作;黄黒真直

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