摩訶不思議探偵局〜密室内ダイヤ怪盗事件〜
主な登場人物( )内は読み、【 】内は役
実相 真解(みあい まさと)…【主人公・探偵】
実相 真実(みあい まさみ)…【探偵】
相上 謎事(あいうえ めいじ)…【探偵】
事河 謎(ことがわ めい)…【探偵】
Adoleine=Able(あどれーぬ・えいぶる)…【私立探偵】
武中 義純(たけなか よしずみ)…【依頼人】
山中 椿(やまなか つばき)…【武中の家政婦】
中林 龍(なかばやし りゅう)…【美術雑誌記者】
尾上 敬一(おのうえ けいいち)…【美術評論家】
京谷 征野(きょうたに せいや)…【美術雑誌編集者】
楠魔=M=Trans(くすま・えむ・とらんす)…【怪盗MASK】
???…【怪盗アシスト】
はしがき;さて、今回はいよいよVS.MASKの第2弾です。どうぞ、ごゆっくり…。

摩訶不思議探偵局〜密室内ダイヤ怪盗事件〜依頼編

なんとしてでも、貴方にギャフンと言わせてみせるわ!

真実「最近、MASKの事件がどんどん増えてるわねぇ」
 真実は部屋のパソコンでニュースを見ながら、言った。
 ここは真解と真実の部屋兼摩訶不思議探偵局。今日はまだ、謎事もメイも来ていない。だから、真実はパソコンをいじくっているのだ。真解はその横の2段ベッドの下段に寝そべっている。
真実「でも、わたし達に依頼が来たことは、まだないわよねぇ…なんでかしら? ねぇ、お兄ちゃん」
 真実は、こちらに足を向けて寝そべっている真解に向かって、言った。
真解「さぁなぁ…」
「興味ないよ」と言わんばかりの口調で、真解が答えた。真実は顔を膨らませ、パソコンの画面に戻った。
 そのとき、玄関のチャイムがした。やっと謎事たちが来たらしい。
真実「あ、来た来た! じゃ、迎えに行ってくるね!」
 真実はパソコンの電源を入れたまま、下に下りていった。その間真解は、別に6年前の事件を思い出すでもなく、目を閉じた。瞬間、なんだかものすごくイヤな予感がした。何故か、自分の所にMASKがらみの依頼が来そうな、そんな予感が…。真解は今まで、予感を外したことが無い。いい予感も悪い予感も、だ(もっとも、いい予感がすることは滅多に無いのだが)。
 ドタドタドタと言うすごい足音と共に、真実が階段を駆け上ってきて、ドアを思いっきり開けた。
真実「お兄ちゃん! すごいヒトが来た!!」
真解「すごいヒト…?」
 真解はムックリと起き上がった。真実の後ろから、誰かが階段を上ってきた。女だ。20歳ぐらいの女性が、真実の後ろから上ってきた。髪は黒っぽいが、顔はいかにも「外国人」と言わんばかりの顔だ。だが、どこの国のヒトかは真解にはわからない。その女性の後ろから、謎事とメイも現れた。驚いたような表情をしている。
真解「………どなた‥ですか?」
 真解はベッドから降りて、聞いた。女はフッと微笑み、胸に手を当てながら言った。
???「Happy to meet you.初めまして。Adoleine=Able(あどれーぬ・えいぶる)…探偵です」
 そう言って、アドレーヌはスッと手を伸ばした。シェイクハンド…握手だ。
真解「た…探偵…?」
 真解はアドレーヌの手を握りながら、聞き返す。
謎「どうやら、知らないみたいですね、真解も」
 メイが、アドレーヌの後ろから言った。
謎「彼女は、イギリスの探偵です。あちらでは…21世紀のホームズとか、現代のシャーロックとかと呼ばれているそうです」
アド「そういうこと。残念ながら、ロンドンに住んだことも無いし、ワトスンもいないけどね。でも、ヴァイオリンなら少しは出来るわよ」
 なるほど、確かに外国人特有のなまりが入ってるし、カタカナ語は完璧に英語的な発音になっている。
真解「…それで…? そんな探偵さんが、ボクに何の用ですか?」
 それを聞くと、アドレーヌはカードのような物を真解につきつけた。
アド「Look.これを見なさい」
 真解はそのカードを取って、読んだ。
真解「………これは…予告状…?」
アド「Right(その通り)」
 それを聞くと、真実と謎事が真解の後ろに回りこんで、カードを読んだ。
真実「どれどれ…『来週の水曜日…』」
『来週の水曜日の深夜12時 “水色の涙”を頂きに参上する。
 その際、我がライバル摩訶不思議探偵団を呼んで頂きたい。
 怪盗MASKの“優秀な部下” 怪盗アシスト』
 …読み終わって、全員黙りこくった。
アド「Why are you silent? どうしたの?」
真解「いえ…突込みどころが多すぎて…。まず、この“水色の涙”と言うのは…?」
アド「ダイヤモンドよ。特大のね」
謎事「それよりも、『摩訶不思議探偵団を呼んで頂きたい』って…」
真解「……『怪盗MASKの“優秀な部下”』…か」
 真解は、フッと、MASKのあの言葉を思い出した。
――フフッ…またいつか、あなたと勝負が出来る日を楽しみにしてるわ――
 なるほど…。あまりにボクと出会わないんで、ついに呼び出しってわけか。
謎事「でもよ、今度はMASKじゃなくて、アシストだぜ?」
真解「だが…MASKの一味であることには変わりない…」
 そう言って顔を上げると、真解の目の前に指がつきつけられた。子どもが鉄砲のマネをする時のように、人差し指がまっすぐこちらを指し、親指もピンと伸ばされている。“鉄砲”との違いは、手の甲が上を向いているところか。よく見ると、それはアドレーヌの左手だ。アドレーヌは腕をまっすぐ水平に伸ばし、真解の目の前に“鉄砲”をつきつけていた。そして、言った。
アド「ミアイ マサト…お互いの名誉をかけて、いざ、推理勝負よ!」
真解「しょ…しょうぶ…?」

アド「今回、この予告状が送られたのは武中さん…武中 義純(たけなか よしずみ)」
 真解たちは、アドレーヌの運転する車の中にいた。
アド「彼は別に大富豪と言うわけじゃないんだけれど、予告状に書いてある『水色の涙』って言うダイヤモンドを持っているのよ。今回行くのは、彼の別荘。そこにそのダイヤモンドがおいてあるわけ」
 余談だが、ダイヤモンドをダイヤと略すのは、日本だけらしい。ちなみに、宝石とダイヤの違いだが、宝石と言うのは天然の非金属鉱物で、産出量が少なく、硬質で色が美しく光沢に富むものをいい、ダイヤはその中の1つである。つまり、宝石は総称、ダイヤは固有名詞と言うわけだ。なお、たまに間違われるが、真珠は宝石ではない。
真実「え〜、別荘持ってるんだったら、十分富豪なんじゃないんですか?」
アド「『土地が安かったから、そこまで…』と本人は言ってたわ」
真解〔どこにあるんだよ…別荘…〕
謎「避暑地とか、そういう所ではない…ということですね」
真解〔なんで…ボクの心……〕
 はぁ…と真解はため息をついた。
アド「今度の水曜日…つまり今日だけど、今日はお客さんを呼ぶ日なんだそうよ」
真解「そこで…客に混ざって、犯行に及ぼう、と」
アド「そう考えるのが、普通ね」
真解「その客は…みんな、会うのは初めてなんですか?」
アド「らしいわ」
真解「ふぅん…」
 ってことは、変装もしやすい、と言うことか…。真解は1人腕組みした。
真解「…あれ? でも、そういえば何故アドレーヌさんはボクらのこと知ってたんですか…?」
アド「エドガー・アラン・ポーに名前が似てる女性から聞いたわ。Well...」
真実「江戸川 乱歩…?」
アド「Yes! エドさんだわ、思い出した」
真解〔忘れるなよ…〕
 余談だが、エドガー・アラン・ポーはアメリカの小説家、江戸川 乱歩は日本の小説家である。何故この2人がこんなに名前が似ているかと言うと、江戸川 乱歩(本名・平井 太郎)がエドガー・アラン・ポーの名前をもじったからだそうだ。ちょっと前まで、キグロがこの2人を同一人物だと思っていたことは、誰にも言えない永遠の秘密だ。って言うか、ちょっと考えれば同一人物じゃないことぐらいわかるだろ、オレ。
真解「あれ? でも、江戸川さんなら、事件に出遭ったら連絡してくれって言いませんでした?」
アド「言われたわ。でも、今は別の事件を調査してるらしいわ」
真解「ああ、なるほど…」

 しばらくすると、車はなにやら辺ぴなところにやって来た。
真実「どこにあるんですか? その別荘は…」
 いい加減、飽きてきたらしく、真実が聞いた。
アド「もう少し行ったところの山の上」
真解〔や…やま…?〕
アド「もう少しで、山の入り口の目印である小屋が出てくるはずなんだけど…」
 と、なにやらボロッちくみすぼらしい小屋が現れた。どうやら、あれがそうらしい。アドレーヌはそのすぐわきの細い道に車を入れた。舗装がされてなく、かなり揺れる。
謎事「あの小屋は、なんなんスか?」
アド「I don't know.わたしは知らないわ。武中さんも知らないみたいね。前からあるみたいなんだけど、誰か別な人のものみたいよ」
真実「ふぅん…」
 ボロッちい小屋の横を通り過ぎ、車が坂道を登った。

 10分ほど走ると、車が山頂についた。そしてそこには同時に、ちょっとした家が建っていた。
アド「ここが、彼…武中さんの別荘よ」
真解〔普通の家…より、ちょっと豪華、だな…〕
真実「いくら土地が安くったって、こんなの建てたらかなりお金かかるでしょ。何が『富豪じゃない』よ…」
 ブツブツ言いながら、真実たちはドアの呼び鈴を鳴らした。すると、すぐに女性が現れた。特に美しいというわけではないが、女らしさを感じる。
???「ようこそいらっしゃいました。アドレーヌ様、摩訶不思議探偵団様。わたしは義純様の家政婦、山中 椿(やまなか つばき)と申します」
真解〔探偵団…様?〕
山中「本日はわざわざ赴きありがとうございます。では、どうぞ、こちらへ…」
 真解たちは山中に案内されるまま、中へと入っていった。
 奥には、リビングのような広い部屋があり、大きなテーブルが置いてあった。その上に食事が既に用意されていて、その横に、50歳ぐらいの男が立っていた。
武中「ようこそいらっしゃいました、エイボー探偵と摩訶不思議探偵団の皆さん…」
アド「ですから武中さん。わたしの名前は『エイブル』だと…」
 武中は全く聞く耳を持たず、
武中「本日皆様をお呼びしたのは、他でもありません。あの大怪盗、MASKとその部下、アシストから予告状が届いたのです!」
真解「そのダイヤは…どこにあるんですか?」
 真解が聞くと、「こちらです」と武中がすぐ後ろのドアを指差した。
武中「この中に、しまってあります」
謎事「その部屋は…?」
武中「この部屋は、完璧な密室です」
真実「密室…?」
武中「さよう。窓はあれど、全て内側から鍵が掛かっており、開きません。つまり、出入り口はこのドアしかないわけです。が、本日はお客様をお招きしています。…他でもない、ドアの目の前の、この部屋に…」
真解「つまり、その部屋に入るためにはどうしても、ボクらの目の前を通る…というわけですね?」
武中「その通りでございます」
「I see...」と呟き、アドレーヌが聞いた。
アド「Well...その"お客様"と言うのは?」
山中「もうじき、いらっしゃるはずです…」
 そのとき、ドアの呼び鈴が鳴った。
山中「どうやら、いらっしゃったようですね」
 山中はリビングを出て行った。
武中「さ、さ、まぁ皆さん、ヤツが予告した犯行時刻は今晩12時です。それまでまだあと…8時間もあります。どうぞ、料理でも食べてお待ち下さい。お口に合うかどうかはわかりませんが…」
山中「義純様。お客様3名、いま到着いたしました」
武中「おお、ご苦労だった。皆様、どうぞ、お入り下さい」
 武中が呼びかけると、3人の男が入ってきた。1人目は30歳ぐらいの男で、どうしたのか知らないが、左目に眼帯をつけている。2人目は50歳ぐらいの男で、分厚いメガネをかけたうえ、眉間にシワを寄せている。おまけに着物まで着て、さながら典型的な頑固親父だ。最後の1人はかなり若い。20歳ぐらいの青年で、スーツをビシッと着込んでいる。特に特徴は見当たらない。
???「武中様、本日はお招き、どうもありがとうございます」
 "眼帯"男が言った。男の名前は中林 龍(なかばやし りゅう)。某美術雑誌の記者と言うことだった。
???「わたしは前からあの青いダイヤモンド…"水色の涙"を見てみたくてねぇ…。本当に、ありがとうございます」
 今度は"頑固親父"が言った。名前は尾上 敬一(おのうえ けいいち)。かなりの実績を持つ、美術評論家らしい。言われてみればなるほど、と言う風貌だ。
???「わたしも、入社してすぐに、こんなすごい作品を見せてもらえるなんて…! 感激です!」
 最後の男が言った。京谷 征野(きょうたに せいや)…某美術雑誌の編集者と言うことだった。
中林「おや? 武中さん、そちらの子ども達は…?」
武中「ああ、この子達ですか? 実は…まことに言い辛いのですが…実は、あの"水色の涙"が、かの有名な怪盗MASKに狙われていまして…」
京谷「! ど、どういうことですかっ!?」
武中「その〜…こんな予告状が届きましてね…」
 武中は予告状を見せた。
武中「それで、警察は信用ならないので、この子達を雇ったわけです。警察なんかよりも抜群に信頼できる、探偵達を」
尾上「たん…てい…?」
 尾上が信じられないような顔で、真解たちを見た。そして、明らかにいやらしい顔で、アドレーヌを見た。
アド「……なんですか?」
尾上「あっ、いやっ、なんだ、なんでもない」
 すぐに真顔に戻って、尾上は武中に聞いた。
尾上「それでは…ダイヤは?」
武中「それはご安心を。完璧な防御体勢をしていますので…。それを、これから皆さんにお見せしましょう」
 武中は、あの"密室"のドアを開けた。

Countinue

〜舞台裏〜
はい、と言うわけで今回はVS.MASK第2弾です! ってなわけで、ゲストはアドレーヌさん!
アド「Me?」
はい、そうです。
アド「そういえば、わたしってこのままレギュラー陣になるの?」
う〜ん…どうでしょうねぇ?? 探偵が犯人ってのは、よくあるテですからね…。
アド「……What? なんですって?」

そんなわけで、ワタクシがこの「摩探」を書き始める以前に書いていた「カービィ探偵団!」を読んでいた方は、非常に気になることでしょう。“彼女”について。
アド「そんなカッコよく書かなくてもいいんじゃないの…? わたしでしょ、わたし」
ええ、そう。実は「摩探」を始めた際、「カービィ探偵団!」と「摩探」に何らかの関連性を持たせようと思ってたんですよね。例えば、劇中でメイちゃんが「カービィ探偵団!」の中の事件をチラリと話すとか…そんな感じで。
でもちょっと無理あるかなぁと思って、やめたわけ。アドレーヌが出てきたのは、その名残。
アド「無理と言えばキグロ。なんで、わたしの名前は『アドレーヌ』なのに、セリフの前に来る時は『アド』なの?」
いや、初めは「アドレーヌ」だったんですけどね。でもほら、日本人で5文字って言ったら、フルネーム書けちゃいますよ。
アド「それが長かったからって事?」
そう。

ただ、今回はいろいろと悩むところが多いね。
アド「Why? 何故?」
だって、ほら、怪盗ってカッコイイじゃない。だから、負けるとカッコつかないけど…探偵も怪盗に勝たなきゃ、カッコつかないじゃない。だから、どうしようかなって。
アド「Oh,なるほどね」
あと、アドレーヌに劇中でなかなか英語を話せさせられないとか…。
アド「だから、ここではいっぱい喋ってるわけね…英語…」
ってか、なんで生粋のイギリス人なのに、英語より日本語の方が量多いんだとか、なんでほとんど1語文なんだとか、そもそもボク英語ができないよとか…。
アド「それは根本的な問題ね…」

ちなみに、英語の習いたての人たちに誤解されそうなので念のため。劇中で「Why are you silent? どうしたの?」と言うセリフが出てきましたが、「Why are you silent?」は直訳すると「何故黙っているのですか?」です。

ではまた。

作;黄黒真直

密室編を読む

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