摩訶不思議探偵局〜密室内ダイヤ怪盗事件〜
容疑者リスト
Adoleine=Able(あどれーぬ・えいぶる)…【私立探偵】
武中 義純(たけなか よしずみ)…【依頼人】
山中 椿(やまなか つばき)…【武中の家政婦】
中林 龍(なかばやし りゅう)…【美術雑誌記者】
尾上 敬一(おのうえ けいいち)…【美術評論家】
京谷 征野(きょうたに せいや)…【美術雑誌編集者】
楠魔=M=Trans(くすま・えむ・とらんす)…【怪盗MASK】
???…【怪盗アシスト】

摩訶不思議探偵局〜密室内ダイヤ怪盗事件〜密室編

 ドアは実に心地よく開いた。うち開きのそのドアを開けると、部屋の中央に台が置いてあり、その上に大きな青い石が、キラリと輝いていた。窓は正面・左右に1つずつで全部で3つある。どれも大人1人ぐらいなら通れそうな大きさだ。
尾上「う…美しい…! これが、あの、ウワサの……!」
 尾上は、感動のあまりか、固まっている。だが、あいにくそういう感動を感じることの出来ない真解は、謎事、アドレーヌと一緒に悠々と部屋の中に入り込み、部屋の調査に取り掛かった。
真解「どうだ、謎事」
謎事「う〜ん…いいんじゃねぇか、なかなか。完璧な密室になりそうだぞ」
アド「あの窓を除いて…ね。武中さん! 先ほど、『内側から鍵を…』と言っていましたが?」
 アドレーヌは窓を指差して、聞いた。
武中「ん? あ、ああ、ええ、そうです。しかも、鍵がなければ、開かないんですよ、その窓」
謎事「って言うと?」
 武中はポケットから小さな鍵を取り出した。
武中「その窓に、鍵穴がついていますでしょう? この鍵がなければ、その窓は開くことが出来ないんです」
 アドレーヌは窓をガチャガチャやって、
アド「Locked...(閉まってる…)」
 と呟いた。
真解「なるほど…確かに、そのドアを閉めれば、完璧な密室だ…。換気扇もないみたいだし…」
 真解が部屋の中を見渡していると、謎事はトコトコと部屋の中央のダイヤに近づいた。
謎事「う〜ん…でもなんでMASKはこんなのが欲しいんだ…?」
尾上「な、何を言うんだ、キミは!?」
 いきなり、尾上が怒鳴った。
謎事「ひえっ!? え? え? え?」
 謎事は驚いて飛び上がった。
尾上「それは、世界でも稀に見る大きさの、稀に見る美しさのダイヤなんだ…。どこまでも青いその色は、他では滅多に見ることはできないんだ…」
謎事「そ、そうなのか? メイ…」
謎「ええ、その通りです。正規のルートで売買しても数億円…闇ルートで売買すれば、もう笑いが止まらないほどの値段になると思いますよ」
謎事「へ…へぇ……」
 恐れおののいたのか、謎事がダイヤからあとずさった。
アド「ま、いいわ。もう出ましょう。そして、この部屋を完璧な密室にしましょう。あのダイヤモンドが、恐ろしい、怪盗MASKの魔の手に落ちないように……」
 みんな忘れているが、今回予告状をよこしたのはMASKではなくアシストである。

京谷「だいぶ、薄暗くなってきましたねぇ」
 京谷がワイン片手に窓の外を見ながら、言った。
中林「犯行予告はいつでしたっけ?」
武中「今夜12時…予告状には、そう書いてある」
尾上「だが、時間通りに決行するのか?」
真実「少なくとも、いままではそうでしたね」
武中「だが、今度もそうするとは限らないだろう!」
アド「Look here(まぁまぁ),落ち着いてください。大丈夫です。盗られる前に、わたしが阻止します。…絶対にね」
 ニヤッと笑って、アドレーヌは真解を見た。
謎事「マネされてるぞ、真解」
真解〔ってか、なんで知ってるんだ…〕
アド「エドさんから聞いたわ」
 真解は苦笑いしながら、片眉を上げた。何故…ホントに何故、心が読まれる?

京谷「もう既に…午後8時過ぎ…予告された時間まで、あと4時間ですね」
 京谷がワインを飲み干して、時計を見た。
中林「本当に来るんでしょうかね?」
武中「あの密室に怖じ気付いてやってこないとか? まぁ、それが一番いいんだがな…」
 武中もワインを飲みながら、言った。
真実「来ても来なくても、お兄ちゃんがいますから大丈夫ですよ! ね、お兄ちゃん」
 真実に言われたが、真解は黙っていた。真解はチラリとではあるが、今までのMASKの犯行方法を全て見た。全部…関係者に変装して、現れているのだ。その部下であるアシストも、同じ手口で来るに違いない。となれば、この中の誰かがアシストである可能性は高い…。だから、真解は全員の動きに注目していた。謎事も一緒だ。
謎事「でも美味いな、この料理。な、メイ」
謎「そうですね」
真解〔やる気あるのか!? 謎事!!〕
謎事「ああ、もちろん。大丈夫だ」
真解〔………何故だ?〕
 何故かは知らないが、真解は心を読まれやすい特異体質(?)のようだ。
山中「しかし、怪盗様はどうやってあれを盗む気なんでしょうね?」
 山中が、新しい料理を持って入ってきた。
尾上「ふむ…。どう思う、探偵くん」
アド「Let me see...(そうですね…)あの部屋は密室…となれば、ドアを開けざるを得ない状況に持ち込むか…」
尾上「ガラスを割る?」
アド「No.MASKの今までの犯行を見ると、ブレィカーを爆破したことはあっても、それ以外は全く物を壊していません。おそらく…そのような、手荒な行為はしないと思います」
山中「しかし、ドアを開けざるを得ない状況とは、どのような…?」
真実「ドアの隙間から、煙が出てくるとか…」
武中「なるほど。火事になれば開けざるを得ないな」
 武中は厳重に鍵を掛けられたドアを睨みつけた。
武中「しかし、先ほど皆さんが部屋に入ったときは…?」
アド「もちろん、発煙筒のようなものはありませんでしたわ」
中林「換気扇も無く、窓も完璧に閉まっていて…アリの子一匹入る隙間なし、だ」
京谷「じゃ、どうするんでしょうね?」
 京谷はさっきからワインばかり飲んでいる。この男、よほどのワイン好きらしい。しかも強い。
アド「今はまだ、ちょっとわかりませんね。どう思う? マサト」
真解「ボクですか? そうですね…」
真実「あ、こんなのどう?」
 真実が横から言った。
真実「警察に化けて入ってきて、『開けろ!』って言うの!」
真解「すぐばれるだろ、それ」
真実「じゃぁ、こんなのどう? 国税局員になりすますとか。『強制調査です!』って」
真解「テレビの見過ぎだ」
武中「第一、わたしは脱税するほどの収入を得ていない」
真実「じゃぁ、どうやって手に入れたんですか? あんな、数億もするダイヤを…」
武中「……やっぱり、得てるかもしれんな。収入」
 武中、ついに認める。
真実「やったぁ! 勝ったぁ♪ この事件、ボクらの勝利だぁ!」
 真実も真解の口癖を真似た。
真解〔って言うか、なんの勝負だ!?〕
 はぁ、とため息をついて、真解は首を振った。
謎「人気者ですね」
真解「みたいだな…」
 良い意味か、悪い意味かははかりかねるが。
謎事「残るは『見えた…』か。オレが言いたいな…」
 美味そうに料理を食べながら、謎事が言った。
謎事「言うとすれば、やっぱ、ナゾが解けたときか?」
謎「でしょうね」
真解「ナゾと言えば、謎事。どうだ? なにか、不審な人物はいるか…?」
 真解は声を小さくして聞いた。
謎事「う…それが…まだよくわかんねぇ…」
真解「そうか…」
真解〔おかしいな…。今までのMASKの犯行方法は、全て関係者に紛れ込んでいる…。今回もその手で来ると思ったんだが…アシストは、違う方法で来るのか? それとも…〕
――アシストは、とてつもなく演技が上手いのか…?
真解〔“優秀な部下”…か〕

 時計の針が、いよいよ11時半にさしかかった。あと30分だ。
中林「あと30分ですね、武中さん」
武中「おお、本当ですな。ふむ…探偵さん達」
アド「Yes?」
 アドレーヌがサッと前に出た。
武中「どうです? MASKの犯行方法はわかりましたか?」
アド「No...残念ながら、まだです。マサトは?」
真解「…いえ、まだです」
武中「そうか…」
 武中はデザートをほうばりながら、ドアを睨みつけた。
武中「あのドアの向こうは、完璧な密室だ…。盗れる物なら、盗ってみろ」
 武中は独り言のように呟いた。
真解〔完璧な密室…か〕
 真解はいままで数回、完璧な密室のナゾに挑戦したことがある。しかし、本当に完璧な密室に出会ったことがない。つまり、今回も、密室ではない可能性がある。一見、完璧に見えるこの部屋…。しかし、どこかに穴があるハズだ。怪盗アシストならすり抜けられる、小さな穴が…。
 真解は、全員に目をやった。
 ワインばかり飲んでいる京谷。心配なのか、ほとんど食べていない武中。結構モリモリ食べてる尾上。口数が少なく、黙々と食べている中林。しょっちゅう出たり入ったりを繰り返している山中。そして…名探偵、アドレーヌ。
 この中の、誰かがアシストの変装なのだ。だが、いったいダレが…?
真解〔犯行時刻までに、オレはなんとしてでも見抜いてみせる。犯行方法と、アシスト…貴様の正体を…絶対に〕
 時計が、11時50分をさした。

Countinue

〜舞台裏〜
犯行予告時刻まで、あと10分を切りました! キグロです。
当然、時間的に次回が真相編になるわけです。はい。まぁ、「推理・真相編」に近い形になるかも知れませんが…(ぉぃ。
ってか、前回も制限時間10分で真相編に入っただろ、って突っ込みは無しです。
今回のゲストは、真解くんです。
真解「どうも、真解です」
さぁ、真解くん。キミにこのナゾが解けるかな?
真解「解けなきゃ話にならないけどな」
!?
真解〔…………あれ? 終わり?〕

…と言うわけで、今回は推理を募集します。
真解「募集内容はもちろん、ダレがアシストの変装か? と…」
アシストの犯行方法。
アド「And,わたしとマサトのどちらが勝つか…」
いえ、それは募集しませんから……。
アド「……………」
いえ、ボクに左手突きつけられても困りますから…お願いですから……睨まないで…。
真解「……メールアドレスは【kiguro2@yahoo.co.jp】です。間違っても掲示板等に書かないで下さい」
ヒントは…そうですね…。“開けざるを得ない状況”とは何か? を考えれば、すぐにわかると思います。
では、推理待ってます。

それと…個人的(?)なお知らせです。
え〜と、実は、何故か「摩探」にハマりにハマり、ついに「摩探」のHPまで作ってしまいました。
アドレスは
http://page.freett.com/kiguro/makahusigi/index.html
です。
完璧趣味で構成されているので、あまり深い事は突っ込まず、考えないで下さい。
以上です。では次回。

おまけの当初の設定秘話;当初、アドレーヌの名字は「私立探偵」の「私立」を英訳した「Private(プライベイト)」にするつもりだったらしい(ちなみに、今の「Able」は「有能な」と言う意味。ただし、学校では「be able to〜」で「〜できる」と習うことが多い)。

作;黄黒真直

推理・真相編を読む

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