摩訶不思議探偵局〜2つの事件〜
主な登場人物( )内は読み、【 】内は役
実相 真解(みあい まさと)…【主人公・探偵】
実相 真実(みあい まさみ)…【探偵】
相上 謎事(あいうえ めいじ)…【探偵】
事河 謎(ことがわ めい)…【探偵】
実相 美登理(みあい みどり)…【真解たちの母】
実相 解実(みあい とみ)…【真解たちの父】
はしがき;今回は、いつもと違います。

摩訶不思議探偵局〜2つの事件〜プロローグ

…オ‥オレ…実は…メイちゃんの…事が……

美登理「そうそう、重大なお知らせがあるわよ」
 ここは、真解と真実の部屋兼摩訶不思議探偵局…の下の階、つまり1階の「実相家」のリビング。家族4人、そろって仲良く夕ご飯を食べているとき、母・美登理が言った。
真実「え、なになに?」
美登理「実は…来週の月曜、旅行に行くわよ!」
真実「え!? 旅行!?」
解実「ああ、そうだ」
 真解と真実の父、解実(とみ)が言った。やけに奇怪な名前だが、これで「真解」と言う奇異な漢字の説明がつく。
解実「行き先は避暑地、たてしな。三泊四日の家族旅行だ」
真実「やったぁ! 旅行だ、旅行だぁ!」
真解〔その間、探偵局も休み…か。ま、平和が一番だな〕
真実「じゃ、明日メイちゃん達にも教えないとね」
真解「そうだな」
 真解は冷めた口調で言った。

謎事「へぇ、旅行か。いいなぁ」
 次の日、真実は謎事たちが来るや否や、旅行のことを伝えた。
謎事「オレ、社長令息なのに一回も旅行行ったことねぇんだよなぁ」
謎「仕事が忙しいからなのでは?」
謎事「さぁ…わかんねぇけど…」
真解「ま、そんなわけだから、来週の月曜日から木曜日まで、探偵局は休みだ」
謎事「来週の月曜って言うと…今日が金曜日だから、明々後日か」
謎「その間に依頼が来たら、どうするのですか?」
真実「そうねぇ…メイちゃんちに回すとか」
謎事「なんだ? 回すって」
真実「うちに電話が来たら、自動的にメイちゃんちに繋げるの」
謎事「へぇ。そんなことが出来るのか」
真解「…機材、あるのか?」
真実「あ、ないや」
真解〔おい…〕
真実「しょうがない、諦めるわ」
真解〔まぁ、依頼なんて来ないと思うけどな…〕
 念のため、留守電でもつけておけ、と言うことか。

 そしてまた次の日の夕方。明日から、実相家は家族旅行に出かける。謎事とメイは、帰ろうとしていた。
謎事「それじゃぁ…えっと…何日後だ?」
 3人が、ガックリと頭を垂らした。メイがずれたメガネを戻しながら、
謎「6日後ですよ。このぐらい、計算できてください…」
謎事「あ、そうか。ハハハ…」
 謎事は思わず、苦笑いをした。
真実「それじゃぁ、5日後ね」
 そう言って真実は手を振った。
謎事「おぅ。じゃな」
 謎事とメイは、帰った。

 謎事とメイ、2人の家は、そんなに離れていない。歩いて数分のところだ。探偵局からも、お互いの家も。しかし、それでも帰る途中で分かれ道は出てくる。謎事とメイは、その分かれ道についた。
謎「それでは、わたし達も5日後、と言う事で。さようなら」
謎事「あ、ああ、じゃな…」
 謎事が軽く手を振った。メイがクルリと背を向けた。その背に向かって、謎事が言った。
謎事「め、メイちゃん、ちょっと待ってくれ!」
 メイが立ち止まって、振り返った。
謎「なんですか?」
謎事「そ…そのさ、真解たちが旅行行ってる間、オレら、暇…だろ?」
謎「まぁ、暇と言えば暇ですね。…それが?」
謎事「その…2人でどっか、出掛け…ないか…? 映画、とか…」
 謎事にとって、この一言は素晴らしい一歩だ。メイに対して、デートの申し込み…しかも、2人きりで! 謎事にとっては、告白する以上に恥ずかしい事だろう。メイは少し考えて、
謎「まぁ…別に、構いませんよ」
 と言った。謎事の顔が、一瞬輝いた。
謎事「!? ほ、本当に…?」
謎「ええ。特に予定もありませんし。…いつにします?」
謎事「じゃ、じゃぁ…明日、とか…。明日の昼過ぎに…メイちゃんちの近くに待ち合わせ…で、いいか?」
謎「はい、わかりました。明日昼過ぎ、わたしの家の近く…ですね?」
謎事「あ、ああ」
 冷静に考えてみれば、かなりアバウトな待ち合わせだ。だが、今の謎事にはそんなことわからなかった。
 余談だが、天下の『広辞苑』には「ん」の項があり、そこには用例として「んち」と載っていたりする。ちなみに、「ん」を引くと「五十音図及び『いろは歌』に出ない仮名。昔は「はね仮名」「はね字」などといった。前舌面を軟口蓋前部に押し当て、または、後舌面を軟口蓋前部に押し当てて、有声の気息を鼻から洩らして発する鼻音。(パソコンで出せない発音記号が続くので、後略)」と載っている。
謎「それでは、明日…」
謎事「あ、ああ。じゃぁ…明日」
 メイは背を向け、普段と全く変わらず、普段通りのテンポで歩いて行った。謎事は中途半端に片手を挙げて、それを見送っていた。そして、数十メートル先の曲がり角でメイが曲がった。 …数秒後、謎事がガッツポーズを作り、声に成らない歓声を上げていた。
 余談だが、「ガッツポーズ」の語源は、ボクサー・ガッツ石松が勝利したときあのポーズをとったところかららしい。


5日後
 摩訶不思議探偵局に、チャイムが鳴った。謎事とメイがやって来た、と言うことだ。
真実「あ、来た来た!」
 真実はドタドタドタと階段を駆け下り、玄関を開けた。そして2人を招き入れ、またドタドタドタと階段を駆け上った。
真実「お兄ちゃん、来たよ!」
 真解は、別に何と言うこともなくたてしなで買ってきたお菓子を食べ続ける。そこに謎事たちがやって来た。
謎事「よぅ、真解。久しぶり」
真解「ああ、久しぶり。ほら、お土産買ってきたぞ」
 真解は横に置いてあった2人分の包みを取り出し、2人に渡した。
謎事「お、サンキュ」
謎「ありがとうございます」
 メイはそれを自分の横に置いて、
謎「いかがでした? 旅行は」
 と聞いた。
 余談だが、アメリカではお土産等は貰ったら相手の目の前で開け、その時の喜び、ありがたみを表現するんだと言う。アメリカ人から物を貰うときは、十分に注意しよう。
真実「すっごいのよ! わたし達、なんと向こうで殺人事件に出遭ったの!!」
真解「ああ、運命的にな」
謎事「へぇ、すごいな」
 と、謎事はいつもより冷めた反応を返した。
真実「あれ…? なんか、いつもより暗くない?」
謎事「いや…実はな…」
 謎事は、真解のマネなのか、ニヤリと笑った。
謎事「オレらも、殺人事件に出遭ったんだ」
真実「え…うっそおおぉ〜っ!?」
 真実は、予想通りの反応だ。うるさ過ぎる。
真実「え〜、え〜、すごい偶然じゃん!!」
 真実の興奮は続く。と、真解が気付いた。
真解「…? “オレら”…? ってことは、謎事とメイ…お前ら、2人でどっか行ったのか?」
真実「!」
 それを聞いて、真実が更に大声を上げた。
真実「えっ!? って事は、デートッ!? いつの間にそんなにラブラブになったの!?」
謎事「い、いや、別にデートってわけじゃぁ…」
 謎事が慌てて両手を振った。顔が微妙に赤い。
謎「でも…偶然にしてはすごいですね。双方とも事件に遭うとは…」
真解「あまり、嬉しくない偶然だな」
真実「え、でも、解決できたの??」
謎事「出来たよ」
謎「そちらは当然…?」
真実「あったり前! こっちにはお兄ちゃんがいるんだよ!?」
謎「こっちは2人でオロオロしてましたけどね」
謎事「まぁな。あの時ほど、真解に頼りたかった事は無いぜ」
真解「こっちも、『謎事がいれば』と思ったな…」
真実「妙な事件だったもんねぇ」
謎「こちらも、わかってしまえば簡単でしたけど、厄介な事件ではありましたね」
真実「で、で、どんな事件だったの!?」
 真実が、身を乗り出した。
謎事「え? オレらから話すのか?」
真実「あ、そっか」
 真実がちょっと考えて、
真実「やっぱり、こっちから話すね」
 と言った。そして、たてしなで出遭った、なんとも奇妙な事件の話を始めた。

Countinue

〜舞台裏〜
はい、と言うわけでプロローグ終了です。
今回のゲストは初登場、実相 美登理さん。
美登理「あら、わたし? どうもこんにちは」
こんにちは。今回は家族旅行と言うことで。でもしっかり事件を起こさせてもらいました。
美登理「でも、楽しかったわよ」
………。
美登理「あら、どうしたの?」
いえ、事件を楽しいと言う人は、江戸川さんぐらいだと思っていたので…。
江戸川「人聞きの悪いこと、言わないでくれる…?」

さて、今回はプロローグ。しかし、若干いつもと違う雰囲気をかもし出しているかと。
美登理「今回は2組に分かれちゃうのねぇ」
ええ、そうです。予告編見て「最終的に、この2つの事件が1つにまとまるんだな」と思った方もいると思いますが、外れです。
美登理「あ、わたしもそれ思った。たいていそうでしょ?」
う〜ん…ボクにはまだ、そこまでの技術は無い…。
美登理「真解の活躍が減っちゃうじゃない、それじゃぁ」
ま、まぁ、今回は謎事くんを活躍させるのがある意味目的だったし。
美登理「そのために、邪魔な真解を排除した…」
その通り。クックックッ………い、いえ、冗談ですけど。

そういえば美登利さん、あなた真実の行動、どう思ってるんですか?
美登理「真実の?」
そう、特に真解に対する。きっと、読者全員が同じ疑問を持っていると思うんですけど…?
美登理「別に…。妹が兄に憧れるのは、当然の理でしょ? お兄ちゃん子って感じで、微笑ましくていいじゃない」
……………。
美登理「……どうしたの?」
キグロ〔どうやら、この人は究極の天然らしいな…〕

では、また次回…。

おまけの名句珍言集(謎)「面白いじゃないか。あの6つの不思議を解いてみせる…絶対に…」
解説;「7つ目の惨劇」で、真解が真実に大量の持ち物を言って、真実から「お、やる気だね」と言われて返した言葉。真解はある意味、好奇心旺盛。このセリフに、それが込められている。

「摩探公式HP」⇒【http://page.freett.com/kiguro/makahusigi/index.html

作;黄黒真直

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