摩訶不思議探偵局〜殺人家族旅行〜
主な登場人物( )内は読み、【 】内は役
実相 真解(みあい まさと)…【主人公・探偵】
実相 真実(みあい まさみ)…【探偵】
実相 美登理(みあい みどり)…【真解たちの母】
実相 解実(みあい とみ)…【真解たちの父】
桜井 梅木(さくらい うめき)…【長野県警警視】
堺 莉遊(さかい りゆ)…【旅行客】
布川 茉莉(ぬのかわ まり)…【旅行客】
渋谷 理香子(しぶや りかこ)…【旅行客】
はしがき;今回の舞台は長野県たてしな市です。

摩訶不思議探偵局〜殺人家族旅行〜プロローグ

真実「わたし達が出遭った事件は、容疑者はたったの2人だったんだけど、そのどちらなのかが、なかなかわからなかったのよ」
謎事「へぇ。どんな事件だったんだ?」
 謎事が、真解が食べていたお菓子に手を伸ばし、食べた。
真実「わたし達が出遭ったのは、ホテルでの事件。もう、ホントにすごかったんだから…」
 そう言って、真実が話し始めた。

5日前
真実「明日はいよいよたてしなだね! 急いで準備しなきゃ♪」
真解「なんだ、結局まだやってなかったのか?」
真実「だってぇ。めんどくさいんだもん。お兄ちゃん、手伝って」
真解「ヤだよ」
 即答だ。
真実「ひど〜い!」
 そう言って、真実は1人部屋に戻った。…と言っても、いつも最終的に、真解も手伝うことになるのだが…。

次の日
 いよいよ、今日は出発だ。謎事たちがデートをしているなど知るよしも無く、実相一家は解実の借りてきたレンタカーに乗り込み、たてしなへ向けて出発した(この家には車が無い)。言うまでも無いが、真実は出発時から既にはしゃぎ、真解はいつも通り冷めていた。全くもって、いつもの事だ。考えてみれば、この2人が事件に遭うのも、全くもっていつもの事、かも知れない。

真実「それで、たてしなまで行った訳」
真解〔いや、そこは言わなくても良いと思うぞ〕
 真解は1人突っ込みながら、お菓子を食べた。なかなか好きな味らしく、どうにも止まらない。
謎事「んで、車で一気にたてしなまで行ったわけだ?」
 謎事も真解に負けじと食べている。なかなか人気らしい。
謎「それで…続きは?」
 メイも、お菓子に手を出した。
真実「んっとねぇ…」
 真実が、お菓子をつまみながら続けた。

たてしな・ホテルロビー
真実「わぁ〜! ひろ〜い! すご〜い! きれ〜!」
 実相一家がたてしなに来るのは初めてではないが、このホテルに泊まるのは初めてなのだ。もっとも、初めてじゃなくとも真実は同じような行動を取るだろうが。
 そんな真実を横目に、解実がフロントまで行き、名前を告げ、渡された用紙に何やら書き込んで、部屋のキーを受け取った。
真解「おい、真実、行くぞ!」
 ロビーに飾ってる造花をいじくっている真実に向かって、真解が言った。
真実「は〜い」
 真実は素直に真解の元に駆け寄った。すぐ目の前はエレベーターだ。既にボタンが押してある。そして、すぐ横には3人の女性が立っていた。まぁ、まず間違いなく宿泊客だろう。持ち物などからして、おそらくたったいま、真解たちより一足先にチェックインしたのだろう。会話を交わしているところからみて、1つのグループに違いない。
 エレベーターがやって来て、ドアが開く。真解たちと女性たちが一斉に乗り込んだ。どうでもいいが、エレベーターの中で、人々が必ず静かになるのは、一体何故だろうか?
 解実が4階のボタンを押そうとした瞬間、ボタンが光った。見ると、3人組のうちの1人が、4階のボタンを押している。どうやら、同じ階らしい。ドアが閉まり、箱が昇っていく。数十秒後、「4階です」と機械が言い、ドアが開いた。7人が一斉に降りる。そして、向かう方向も一緒だった。それどころか、部屋が隣同士だったのだ。
解実「ほぅ…面白いな」
 解実はそう呟き、鍵穴にカギを差し込んだ。一般家庭にも取り付けられているような普通のカギで、オートロックですらなさそうだ。カチリと音がして、ドアが開いた。真実が、勢いよく中に飛び込んだ。
真実「わぁ〜! ひろ〜い! すご〜い! きれ〜!」
真解〔さっきと同じじゃないか!!〕
 実際、まぁまぁ広かった。4人部屋なのだから、当然と言えば当然でもあるのだが。リビングやベッドルームなど、幾つかの部屋に分かれていた。
真実「あ、ねぇねぇ、金庫まであるよ!」
 真実が部屋の隅に置いてあった小型金庫の前に座り込んだ。
真実「えっと……あれ? どうやって開けるか書いてないよ」
真解〔書いてあったら意味が無いだろ〕
美登理「確かさっきフロントで紙を渡されたわよ」
真実「あ、それに書いてるの? 見せて見せて!」
 真実が美登理から紙というかカードと言うか…まぁ、そんな感じの物を貰って、金庫を開けた。真実は中を覗き込む。別に、何の変哲も無い金庫のようだ。すぐに「つまんない」と言って扉を閉めた。
真実「前の人がお金忘れてってると思ったんだけどなぁ…」
真解〔そんな都合の良いことがあるか…〕
解実「みんな、あと10分ぐらいしたらレストランに行くぞ。もう12時過ぎてるからな」
真実「は〜い」
 真解は部屋の時計を見た。12時14分。確かに、もう昼ご飯の時間だ。
美登理「ここのレストランって、どんなの?」
解実「バイキング…と書いてあったな」
美登理「あら、じゃ、好きなだけ食べられるわね」
 余談だが、外国では「バイキング」と言っても通じない。英語でバイキング【Viking】と言えば海賊の事で、日本で言うバイキング…つまりバイキング料理の事は、「スモーガスボード【smorgasbord】」と言う。どうでもいいが、バイキングで1人で全料理を食べつくしてしまったら、店側はどうするつもりなのだろうといつも思うのは、作者だけだろうか?
 10分ほど経って、全員がとりあえず一段落したようなので、一行はレストランに行くことにした。エレベーターに乗り込み、1階へと向かう。今度は、例の3人組とは鉢合わせにならなかった。
 レストランに着き、早速食べ物を取りに行く一同。全員一斉に行くと荷物が盗られる危険があるため、1人残して行くのがこの家のルール。まぁ、そんな事はどうでもいいのだが。昼時と言うのに、客は思ったより多くない。みな、既に食べ終わったのか、それとも元々このホテルに泊まっている人が少ないのか…? 原因は不明だが、チラホラとしか客は見えない。が、それでも偶然はあるもので、5分ほど後にやって来た例の女性3人組のうちの2人が、すぐ隣のテーブルに座った。もう1人は…何故か、いない。
真解〔? あの人たち、さっきの人たちだよな…? なんで2人なんだろ? ………ま、いいか、そんな事はどうだって〕
 相変わらず冷めている真解。これが真実だったら、直接聞いてでもナゾを解こうとしたに違いない。
 2人の女性も、料理を取ってきた。そして食べ始めたのだが…どうも、様子がおかしい。ソワソワしていると言うのか、なんと言うのか…。小声で、何か話している。すると、偶然そばにやって来たウェイターを呼び止め、何かを言い出した。そして、2人ともショルダーバッグを置いて、レストランから出て行った。
真解〔…?〕
真実「何かしらね? あの人たち」
 さすがに真実も気がついて、真解に言った。
真解「さぁな? …ま、あまり他人に関わってもしょうがない。とっとと食べて、観光に行くぞ」
真実「うん…でも、ショルダーバッグ置いてってるし…」
真解「それがどうした?」
真実「誰か、あれ盗らないかなぁ?」
真解「おい…妙なこと考えるなよ」
真実「だって、そしたらわたしがそいつをとっつかまえて、手柄としてあの人たちから報酬を…」
真解〔…がめつい…〕
 真解は無視して食事に戻った。
 少しして、あの2人が戻ってきた。何やら、ただならぬ形相だ。近くのウェイターに慌てた様子で何事か言っている。
真実「な、何が起こったのかしら…?」
 真実は、じっと3人の会話を聞いた。
「一体、どうなさったんですか?」
「泥棒に…泥棒に入られたのよ!!」
真実「泥棒…!?」
 真実が耳ざとく聞きつけた。3人の会話はまだ続く。
「それだけじゃないの! リユが…リユが殺されてるの!」
 真実が目を見開いた。
真実「お兄ちゃん! いまの聞いた!?」
真解「何をだよ?」
真実「いま…『殺されてる』って…!」
 さすがの真解も、驚いた。
真解「なんだって…?」
 思わず、立ち上がりかける。が、思い直した。
真実「い、行かないの?」
真解「いや…もうしばらく、様子を見よう」
 すると、2人が真解たちの隣のテーブル…つまり、自分達のテーブルに戻ってきて、ショルダーバッグを取った。そして、そのままレストランを出て行った。
真解「……………」
 真解は思わず立ち上がった。真実も思わず立ち上がり、真解と一緒にレストランを出て行った。
美登理「あ、ちょっと、真解! 真実!」
 美登理も慌てて後をついて行った。後には、解実だけが残された。
解実「…………。家族から 見放されるる 亭主かな。 …いや、一句作ってる場合でもないか」
 しかも、意味がわからない。

 真解たちは、あの2人と同時にエレベーターに乗ろうと思ったが、既に2人は昇っていってしまっていた。仕方がないので、隣に乗り込み、4階へと上がった。着くと同時にエレベーターから降り、2人の元へと向かう。一部屋だけ、ドアが開けっ放しになっていて、その目の前で2人の女性が抱き合って震えている。あそこだ。真解たちは走行スピードを上げた。美登理はその後から、早足で歩きながら着いて来る。
真解「大丈夫ですか!?」
 真解は震えている2人に聞いたが、震えているだけで収拾がつかない。仕方がないので放っておいて、中に入った。部屋の中央より、少し奥に、女性が1人、うつ伏せで死んでいる。首には男物のベルトが巻きついていて、死因は明らかだった。真解はそれだけ確認すると、部屋の外に出た。真実は部屋の奥を見て、
真実「荒らされてない?」
 と、真解に問いかけた。
真解「そうだな…。さっき、『泥棒に入られた』って言っていたからな…。おそらく、その女性は、泥棒の姿を見るか何かして、絞め殺されたんだろう」
 真実は「ひどい」と言って、部屋の奥へと入って行った。
真解「おい真実。何する気だ?」
真実「犯人の手がかりを見つけるのよ!」
真解「え?」
真実「大丈夫。ちゃんと手袋してるから」
 見ると、いつの間に用意したのだろうか、手に警察が使用するような白い手袋をはめている。
真解「…って、そういう問題じゃない」
真実「そういう問題よ。お兄ちゃん、いつもみたいにバシッと解いちゃってよ!」
真解「それは無理だ」
 真解がスパッと言うと、真実はキョトンとして
真実「え〜、なんでよ?」
 と聞き返した。
真解「いいか? いつもは推理小説みたいに、容疑者が決まっていた。だけど、今回は違う。犯人は泥棒。そしておそらくはとっくにホテルから逃げ出している。この事件は、警察の領分だ」
真実「う〜……でも、探す!」
 真実は諦めずに、部屋の捜索を再開した。それと同時に、パトカーのサイレンが、ホテルの外から聞こえてきた。

Countinue

〜舞台裏〜
文字数の都合で、ちょっと微妙な終わり方ですが…今回はここまで。
今回のゲストは、セリフの少ない解実さんです。
解実「こんにちは」
初めまして。今回は、初登場ですね。
解実「そうですね」
それにしても無口ですねぇ。
解実「無口なんじゃなくて、クールなんだよ」
……まぁ、真解はクールだけど。

さて、今回は事件が起こった物の…人物の名前が、「リユ」以外出て来てない…。
解実「お、ホントだ」
うう…ってか、本当は警察が捜査を開始するところまでやりたかったのに…。ちょっと、引き伸ばしすぎたかな?
解実「ふむ…確かに」
……お願い。もっと喋って。トークが続かない…。

では、次回。

「摩探公式HP」⇒【http://page.freett.com/kiguro/makahusigi/index.html

作;黄黒真直

事件編を読む

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