摩訶不思議探偵局〜殺人ラブデート〜
はしがき;今回は、謎事とメイちゃんのラブデートです☆(そんなわけで、「主な登場人物」は次回に繰り越し)

摩訶不思議探偵局〜殺人ラブデート〜ラブデート編

謎「お2人が家族旅行に出かけた日、わたしと謎事くんは、謎事くんの提案で一緒に出かけることにしたんです」
「それって、やっぱりデート!?」と、真実はやはり期待の目をメイと謎事に向けている。
謎「とりあえず、お話しましょうか。わたし達の遭遇した、事件を…」
真実「あ、待って!」
 と、真実が制止をかけた。
謎「なんですか?」
真実「2人のデートのところから話して!」
謎事「だ、だから別にデートってわけじゃぁ…!」
 謎事は顔を真っ赤にしたが、メイは冷静に、
謎「わかりました。では、わたしが謎事くんから誘われたところから、話しましょう」
 と言った。
 そしてメイは話し始めた。謎事が誘い、メイが承諾し、そして…。

5日前 昼過ぎメイちゃんち前
 正確な現在時刻は昼12時17分。謎事はかなり早く「メイちゃんち前」にやって来た。これで、ちゃんと昼食は食べてきたというのだから、驚きだ。
 謎事は何度か訪れたことのある(と言っても、中に入ったことは残念ながらないのだが)、事河家の門の前にボケッと突っ立っていた。特に大きいというわけでもないが、周りの家と比べると、若干広い家のように見える。目の錯覚か、本当に広いかは測ってないのでわからないが。
 門ごしに中を覗いていると、大きな黒白の犬が駆け寄ってきた。2年ほど前から飼い始めた、メスのハスキー犬、タマだ。犬なのに「タマ」と言う名前なのは、どうもメイの義父、賢太郎のギャグらしい。もうちょっと小型犬なら「タマ」でも似合うけど、デカいハスキーではなぁ…と、謎事は見るたびに思う。たまに、この犬の散歩に付き合うので、ある程度なれているのだ。タマはワンワン、と低い大きな声で吠えた。
 謎事が門越しにタマをあやしていると、玄関が開いてメイが出てきた。普段と大して変わらない、地味とも派手ともつかない服装だが、謎事にとって、メイは何を着ていても似合うし可愛い。最近、長髪を短髪にしたようだが、それでもメイの可愛さは変わらない。
謎事「よ、よう、メイちゃん」
 若干緊張しているのか、謎事の声は上ずっていた。
謎「こんにちは。謎事くん」
 メイは、ほとんど無表情で謎事に返事をした。
 余談だが、「こんにちは」とは「今日(こんにち)は良いお日和ですね」の略らしい。と言うことは、雨の日には言ってはいけないのか?
 メイが、跳びかかってくるタマを落ち着かせ、門を開ける。そしてタマが出て来る前に閉めた。
謎「それでは…『映画とか』に行きましょうか?」
謎事「あ、ああ。そうだな」
 うまい具合に、ここから歩いて20分程度のところに、ちょっとした映画館があるのだ。謎事は、そこへ向かって歩き出した。
謎「そういえば、何か見たい映画、あるんですか?」
謎事「え? あ、ああ。えっと…『サーカス少年探偵団』…とか」
謎「ああ、あの推理物ですね。じゃぁ、それにしましょう」
謎事「え…? いいのか?」
謎「ええ。それに、わたしも見たいと思っていましたし…」
「じゃぁオレら、結構趣味合う!?」
 謎事はそう言うと思ったが、メイが先に口を開いた。
謎「一応、探偵団の一員ですから」
「なんだ…」それが、謎事の正直な感想だっただろう。
 どうでもいいが、なんとも奇妙な題名ではある。謎事は、テレビでCMを見たときからそう思っている。サーカスで事件でも起こると言うのか?
 メイが歩き出すと、慌てて謎事も後を追った。
謎事〔だけど…〕
 と、謎事はメイを追いかけながら、思った。
謎事〔なんでメイちゃん、オレとのデート、してくれるんだろ…?〕
 もしかして…と、密かな期待が謎事の胸に膨らみ、思わず謎事は顔をにやけさせた。
謎「どうしたんですか? ニヤついて…」
 メイが、謎事の顔を見て、聞いた。
謎事「い、いや、別に何でも…」
 謎事は慌てて、顔を元に戻した。でも、やはり思わず期待をしてしまう。少し考えてはいたもののすんなりとデートに乗ってくれる…。いつもは嫌ってるみたいだけど、もしかして、本当は…? それとも、ただの友達感覚で、自分を男として見ていないのだろうか…?
謎事〔やっぱり、真解の方がカッコイイしなぁ…〕
 せっかくメイと2人っきりなのにも関わらず、謎事はあれこれ考えを巡らしてしまい、会話が無いまま映画館についた。

映画館
謎事「『サーカス少年探偵団』のチケット、中学生2枚…」
 謎事はそう言って、チケットを2枚購入した。この映画の上映時刻は午後2時からだと言う。まだ1時間半もある。
謎事「ちょっと、どっかで暇つぶそうか?」
謎「そうですね」
謎事「…そういえばメイちゃん、昼飯食ってきたのか?」
謎「ええ、一応少しは」
謎事「あ、そう…。ならいいけど…」
 なんとなく、2人っきりだと会話が成立しにくい。また、話が途切れた。
謎事〔な…なんか気まずいって言うか…話しにくいって言うか…。な、なんか話してくんねぇかな、メイちゃん……〕
 あれこれ悩んで、謎事はふと話題を思い出した。
謎事「そうだメイちゃん。ちょっと、これ見てくれ…」
 謎事はポケットからチケットを2枚、取り出した(謎事はカバンを持っていない)。
謎「? それは…?」
謎事「いや…その、実は…」
 謎事はそこで口ごもった。メイが首を傾げている。
謎事「その……夕飯まで、一緒に、いられ…るか……?」
謎「………はい?」
 メイは意味がよくわからないらしい。首を傾げて、聞き返した。
謎事「いや、その…このチケット、実はオレの父さんが会社の関係で貰ってきた、高級レストランのディナーチケットなんだ。それも、半額になるらしい」
謎「ディ…ディナーチケット…ですか…?」
 メイは驚いて、そのチケットを見る。確かに、メイも聞いたことのある有名レストランの名前が書いてある。
謎「それは…ありがとうございます。でも…」
謎事「あ、ダメ…か?」
謎「……」
 メイは、やはりまた考えて、
謎「いえ…うちに連絡を入れれば、大丈夫だと思います」
と答えた。
謎事「え、あ、そうか? あ、ありがとう」
 謎事は心の中で、ガッツポーズを作った。
謎「…でも、謎事くんの家って、何の会社なんですか? 一度も聞いたことがないのですが…?」
謎事「あ、あれ? そうだっけ…? えっと…確か……えい・あい・ゆう・いい…何とか、とか言った気が…」
謎「えい・あい…? A.I.U.E.コーポレーション!?」
 メイが驚きのあまり声をあげた。はっきり言って、かなり珍しい事だ。謎事は逆に驚いて、
謎事「な、なんだ、知って…るのか…?」
謎「知ってるも何も…。まだ、さほど大きくはなってませんが、これからきっと世界を担う大企業になりうる、と日本中の注目を浴びているIT企業ですよ?」
謎事「へ…へぇ…。そうなんだ」
 謎事は間の抜けた声で答えた。
謎「謎事くん…。自分の家の会社なんですから、ある程度知っていてください…。謎事くん、そのうち、跡を継ぐのでは…?」
謎事「え? い、いやぁ…ハハハ…」
 謎事は、その質問に苦笑いで返した。
謎事「‥あれ? でも…IT企業が、なんでレストランと関連持つんだ…?」
謎「知りませんよ」
謎事「そ、そうだよな…ハハハ…」
 謎事はまた苦笑いをした。メイはそれをため息混じりに冷ややかな目で見た。

謎「そろそろ、映画が始まりますよ。行きましょう」
 しばらく会話をしていると、メイがチラリと時計を見て、言った。
謎事「あ、ああ。わかった」
 謎事とメイは、劇場へと入っていった。


映画館外
 映画を見終わり、2人は外へ出てきた。時刻は現在午後4時過ぎ。2時間ちょいの、一般的な映画だったらしい。
謎事「いやぁ、なんか難しい事件だったなぁ」
謎「やっぱり、実際居合わせるのと映画とでは、だいぶ感覚が違いますね」
謎事「そうだなぁ。実際の事件だと、見たいところは何度も見れるけど…」
 なんてことを話しながら、謎事たちはすぐ近くの公園へふらりと寄った。
謎「こんな所で、何する気ですか?」
謎事「え? う〜ん……暇つぶし? ほら、夕飯にゃまだ早いだろ?」
 メイは腕時計を見て、「そうですね…」と言った。
謎事「ここから、電車で30分程度のレストランだったはずだ」
謎「最後の『はず』が気になりますが…。わかりました。それでは、5時頃まで、1時間ほど暇をつぶしましょう」
謎事「え? メイちゃんちって、5時半に夕飯なのか?」
謎「いえ。迷うといけないので」
謎事「あ……そう……」
 それほど、頼りにされていないってことか!? 謎事は、少し悲しくなった。

 それほど広い公園でもなく、滑り台やらブランコやら、一般的な遊具がチラホラと置いてあるような少し寂しい公園だ。それでも、子ども達はワイワイと楽しそうに遊んでいる。鬼ごっこなのだろうか、1人の子どもが、しきりに他の子を追いかけている。キャーキャーと言う楽しげな声が、謎事たちにも聞こえてくる。
謎「…遊ぶ子ども達をこうやって見てると、微笑ましい気持ちになってきますね」
謎事「そうか…? …そうか…」
謎「なりませんか?」
謎事「いや…なる…かな? ハハハ…」
 ここは、メイに合わせた方がいいんだろうけど、なかなかウソはつけない謎事。言葉を濁しながら、メイに合わせた。
謎「あの子達は…10歳ぐらい、でしょうか…?」
謎事「え? あ〜…そんな感じ、だな」
謎「……真実…」
謎事「え? マサミ…?」
 真実がどうした? と謎事は聞き返しそうになり、止めた。聞く直前に、メイの妹、事河 真実のことを思い出したからだ。メイには実は、妹がいた。「いた」と言う以上、もういない。6年前に殺されたのだ。しかも、メイの義兄に。もしも生きていれば、今は丁度10歳だろう。メイは、未だにその記憶から抜け出せていないようだ。
「悲しむことはない。オレがついてる」
 普段なら、サラリとこういうセリフを言う所だが、いまはとても言えない。メイの哀しげな顔を見ていると、そんなある種冗談じみたことなど、言えるわけがない。
謎「…あっ、ごめんなさい。せっかくのデートなのに、突然暗くなっちゃって…」
謎事「あ、い、いや、大丈夫だよ。気にしなくて…」
 謎事は慌てて言い返した。言い返して気付いた。
謎事〔…あれ? いまメイちゃん、なんて言った? 『せっかくの“デート”』…?〕
「デート」…ってことはあれだよな?? 恋人同士が一緒に出掛けるって言う、あれ…。まさかメイちゃん、やっぱりオレのことを実は…?
謎事〔いや、でももしかしたらオレがメイちゃんを好きだってことに気付いてて、わざと…?〕
 ああ、ますますわからない! 謎事は、混乱した。

謎「そろそろ、行きましょうか?」
 メイが腕時計を謎事に見せながら、言った。ただいま午後5時過ぎ。レストランに出かけるのに、丁度いい時間だ。
謎事「そ、そうだな」
 謎事とメイは、駅へと向かって歩き出した。

Countinue

〜舞台裏〜
はい、と言うわけで謎事とメイちゃんのラブデートはこれで終了です。今回のゲストは…誰にしよう? いいや、謎事で。
謎事「え、い、『いいや』…?」
だってほら、メイちゃんにすると何を話していいのやら…。
謎事「ああ、まぁ、確かに…」

さて、今回は「ラブデート編」。と言うわけで、事件のさわりすら一切なく、とことんデートだけに注ぎ込みました。いかがでした?
謎事「い、いかがって…。メイちゃんの気持ちが、ますますわからなくなった」
そうか…。つまらんな。
謎事「な、なんだそれ!?」
いや、「嫌われているということがわかった」と来るかと思ったのに…。
謎事「!? ちょ、ちょっと待て、キグロォ!!」

と言うわけで、結構恥ずかしい内容だった今回。でもご安心を。次回はちゃんと、事件編。たぶん。
謎事「なんだ、最後の『たぶん』は」
気にしない、気にしない。ハッハッハッ。
謎事「なんだよ、その笑いは…」
「ハハハ…」の方がいいか?
謎事「それ……オレじゃねぇかよ!!」

ではまた次回。

「摩探公式HP」⇒【http://page.freett.com/kiguro/makahusigi/index.html

作;黄黒真直

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