摩訶不思議探偵局〜殺人ラブデート〜
容疑者リスト
高雅 鵡誄(こうが むるい)…【従業員】
高岡 満里子(たかおか まりこ)…【客】
長崎 恭助(ながさき きょうすけ)…【高岡の部下】
藤井 愛(ふじい あい)…【高岡の部下】
浜谷 和(はまや かず)…【高岡の部下】
長谷 愛斗(はせ あいと)…【客。田辺の恋人】
田辺 沙耶華(たなべ さやか)…【客。長谷の恋人】

摩訶不思議探偵局〜殺人ラブデート〜停電編

高岡「たっく! ロウソク入ってる金庫が電気仕掛けで開くってどういうことよ!?」
 真っ暗なので、とりあえずロウソクを集めている謎事たち。高岡は手伝いもせず、1人怒鳴り散らしていた。
高雅「も、申し上げございません、お客様…」
 高雅は、先ほどからこればかりだ。
謎事〔つべこべ言ってねぇで手伝えやいいのに…〕
 謎事は心の中でそう思いながら、ロウソクを集めていた。と言っても、ロウソクは客のいる席にしか出されない。謎事とメイのテーブル、高岡達のテーブル、そして長谷たちのテーブルの3つのロウソクしかない。
 3つを1つのテーブルに持ってきて、並べた。そして、各々持っているライターを取り出し、それもテーブルの上に出した。火をつけた後、田辺の持っていたヘアゴムでスイッチを固定し、火を出っ放しにする。そこまで明るくは無いが、無いよりましだ。相手の顔はわからないが、動きならおよそつかめる。
 ホントは、1本1本時間差で明かりをつけるのが最も長時間明かりを得られるのだが、なるべく明るい方が良いと、全部1度につけることにした。
長谷「ふぃ〜、これで落ち着けるかな?」
 長谷は椅子を引き寄せて、ドッカと座った。田辺もその横に椅子を持って来て、座る。「隣にいるのは愛斗よね?」と確認をとる。謎事も、マネしてメイのすぐそばに立っ…たが、即座に逃げられた。
謎事〔なんでだよ、メイちゃん…〕
 そうしている間にも、高岡はテーブルの目の前の椅子に座り込み、3人の部下をすぐそばに座らせた。3人は完全に言いなりになっている感じだ。暗闇が苦手なメイも、必然的にテーブルの目の前に座り、謎事もここぞとばかりにすぐ隣に椅子を持ってきて、座った。高雅も、遠慮がちにちょっと遠目の席に座る。こうしていると、降霊術か黒魔術でもやっているかのような気分になってくる。
浜谷「しかし…このロウソクが消えたら、どうするんです?」
高岡「そん頃にゃ電気回復して警察が来るに決まってんでしょ!」
浜谷「そ、そうですね…」
 浜谷は、気弱そうにしょげた。
藤井「でも、他のビルの非常灯の明かりが漏れてきても、いいようなものですけどねぇ」
長崎「そう言われりゃ、そうですね」
長谷「なんでこねぇんだ?」
謎事「まぁ…非常灯なんて、そんな明るい物じゃないスからね」
謎「それに、他のビルは全部ここより低い物ばかり…。届かないのも無理ありません」
藤井「なるほどねぇ…。頭いいね、2人とも」
謎事「い、いやぁ、ハハハ…」
田辺「ねぇねぇ、そういえば気になってたんだけどさ」
謎事「なんスか?」
 田辺が謎事に聞いた。
田辺「2人って、付き合ってんの? その…アイウエオ君と、事河ちゃん」
謎事「え!? い、いやいやいや、別に付き合ってませんよ!!」
 謎事は顔を真っ赤にした。…もっとも、暗くてわからないが。
謎事「それに、『アイウエオ』じゃなくて『アイウエ』なんスけど…」
謎「ある意味、覚えやすい名字ではありますけど、誤解も多いですよね」
田辺「そうよねぇ。…でも、じゃぁなんでこんな所に2人っきりで? そもそも、どういう関係?」
謎事「え? いや…」
 今の、この状況を正確に第三者に伝えるのは難しいだろう。まず、探偵局から説明しないと、2人の関係は説明できない。まぁ、電力がいつ回復するかわからないから、ちょっとぐらい長くても別に構わないだろうが。
謎事「どうする? どこから説明しようか、メイちゃん」
謎「わたしに聞かれても困りますが…。まぁ、単刀直入に言えば、わたし達は『探偵団』の一員、と言うことでしょうか?」
田辺「探偵団?」
謎「ええ…。真解…実相 真解くんを中心にした、4人組みの探偵団です。真解と、真解の双子の妹の真実ちゃん、そしてわたしと謎事くんの4人組です」
藤井「じゃぁ、今日は探偵の2人組みで、遊びに来たってわけね」
田辺「でも、じゃぁあとの2人は?」
謎事「家族旅行中です」
藤井「あぁ…。だから、そのうちに、彼女をゲットしちゃおうっていう…」
謎事「ですから、違います!!」
 謎事は叫んだ。それを、ニヤつきながら2人が見る。はて、メイはどのような心境なのやら…。
長崎「でも、探偵ってあれだろ? 浮気調査したり、人捜しするヤツだろ? 子どもが出来るのか、そんなの」
謎「特別な資格は一切要りません。ですが、資格が無い以上、あくまで『民間人』として調査することしか出来ません」
長谷「へぇ。やっぱそうなんだ。じゃぁ、子どもでも頭さえよけりゃ出来るわけだ」
謎「ええ、そうです」
謎事「いやいや、待ってくれ、メイちゃん!!」
 謎事が止めた。メイは謎事を見る。
謎「なんですか?」
謎事「何で勝手に浮気調査の話になってんだよ。オレたちはそんなつまんねぇ探偵じゃないだろ? 殺人事件や怪盗事件を解決してきた、警察の上を行く名探偵だろ?」
田辺「さ、殺人事件!?」
 田辺が素っ頓狂な声をあげる。
田辺「愛斗、すごいよ、この子達!!」
長谷「あ、ああ、そうだな…」
浜谷「すごい子達みたいですよ? 高岡さん」
高岡「知らないわよ。でもまぁ、頭がいいならうちの会社にも欲しい所ね」
 高岡は足を組んで、
高岡「電気はまだ回復しないみたいだし…そうね。あなた達のホラ話にでも付き合いましょうかしら。どんな事件に出会ったの? 業績次第じゃ、将来は保障してあげるわ」
 なんだか、無茶苦茶な事を言う人だ。
浜谷「わたしは、ちょっとトイレに行ってきます」
謎事「あ、じゃ戻ってきてから話します?」
浜谷「あ、いえいえ…どうぞ、お構いなく…」
田辺「ロウソクはいらないんですか? …何とかさん」
浜谷「ハマヤです。ええ、ロウソクはいいです。手探りで何とか行って来ます…」
 それはそれですごいぞ。しかし、誰もそのすごさに気付かず、浜谷は1人トボトボとトイレへ向かった。
田辺「このロウソクももうすぐ切れそうね」
長崎「わたしのライターも、燃料がだいぶ減ってきてましたからねぇ」
長谷「ああ、オレのもだ。弱ったな…こんなことなら、満タンにしとくべきだった…」
 既に、両方とも炎が小さくなりつつある。
藤井「ま、いいわ。2人の話でも聞いてましょ。暗い方が、サスペンスっぽくて良いじゃない」
長谷「豪く前向きな姉ちゃんだな」
藤井「わたし、ミステリー好きなのよ」
長谷「ほぅ」
藤井「さ、2人とも、早く話して話して」
 藤井が、2人を急かした。
謎事「ど、どれから話すよ?」
謎「まぁ、最初に出遭った事件でいいのではないですか?」
謎事「そうか。じゃ、それから」
 謎事が話し出した。

高岡「話の腰を折って悪いけど、ロウソクがついに消えたわよ。ライターも」
 謎事が話し始めて5分ほど経って、高岡が言った。部屋は、完全に真っ暗になっている。微妙に星や月の明かりが窓から降り注いでくるが、どちらもあまり強い光ではない。
浜谷「本当ですねぇ」
 浜谷が、戻ってくるなり言った。
田辺「あ、浜谷さんお帰りなさい。こっちまでこれますか?」
浜谷「え、ええ…声がしてれば」
 そう聞くと、田辺が息を吸い込んで、
田辺「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
浜谷「あ、ありがとうございます。も、もう大丈夫です」
 浜谷は恥ずかしさのあまりか、慌てて椅子に座った。
田辺「そう、よかった」
謎事「で、どこまで話しましたっけ?」
藤井「警察が出てきたところ」
謎事「ああ、そうでしたね」
 と、その時だ。
「グッ!?」
 と、誰かの低い声が聞こえた。
長崎「おお、なんだなんだ?」
高雅「ど、どうなされましたか? どなたですか?」
「ガハッ…」
田辺「なに、ちょっと…?」
藤井「いや、誰よ、不気味な声出して…」
謎事〔女性の声…? それも、首を絞められている!?〕
 そして今、田辺と藤井が喋った。と言うことは…?
謎事「高岡さん!?」
藤井「え、た、高岡様!?」
浜谷「ど、どうしました…?」
長崎「高岡様…?」
 3人が、慌てて高岡がいるはずの所を見た。しかし、暗くてよく見えない。高岡が何か立ち上がっているような、いないような…?
長谷「おいおい、どうしたんだ…?」
 そして、ドサリと言う音がしたが、何が起こったか全くわからない。全員が混乱の中、恐怖に陥った。
謎「な、何が起こったんですか…?」
謎事「……………さぁな」
 だが、謎事はうっすらわかっていた。メイもわかっているはずだ。今の感じは…人が窒息死する時に似ていた。と言うことは…?
謎事「くそっ! 暗くてやりづれぇ!!」
 謎事は手探りでライターを取り、バチッバチッと何度も火をつけようと試した。が、火花が散るだけでどうしようもない。
謎事「くそっ、無理か!?」
謎「……いえ、ちょっと待ってください」
 メイは手探りでバッグから手帳を取り出し、数枚破った。それをビリビリに破き、手探りで、肉の食べかけが載っている皿の上に載せた。
謎「ウェイターさん、少しお皿を汚してしまいますが…構いませんね?」
高雅「え? ええ、どうぞ…」
 本当は、よくないと思うが…。
謎「謎事くん、ライターを貸してください」
謎事「あ、ああ…」
 謎事はメイのいる方へとライターを持つ手を向けた。メイは手探りでそれを探し、謎事の手を掴んで、ライターを受け取った。そして、皿の上の紙に、ライターの火花で火をつけた。皿の上の紙は、油を吸収して、端から徐々に燃え始めた。小さな炎は次第に皿全体に行き渡り、大きな火の塊となっていった。それは、部屋中…とまでは行かないが、何が起こったかを明確に照らした。
 その火の塊が照らした物…それは、高岡の絞殺死体だった。

Countinue

〜舞台裏〜
グハッ! 雑談が長すぎた!!(爆
なんか最近、どうも自分の世界に入りすぎて、「摩探」を書いていると、事件と全く関係ないこともバンバン書いてしまって、どうにもこうにも話が進まない…。
自分の世界と言うよりは、「摩探」の世界でしょうかねぇ?
うん、きっとあれだな。
このまま突き進めば、「摩探」オタク…?
うわぁ、やだぁ。ってか、なんで自分の作ったもののオタクに…(でも何気に、これを書いている時に摩探のHPを作っていたりする

さてさて、やっとこさ人が死んだと言うことで。しかし、この時点で既に3編目。
クッ! 次回中に解決まで持ち越さねばっ!!
でないと、「殺人家族旅行」を超えてしまう…。
ってか、「摩探」って通常3〜4編で1話が終わるんですよね。
なのに、今回は既に3編…。まぁ、ラブデート編があったわけだから、微妙に話は違ってくるけど…。
まぁいいや。では、次回会いましょう。

おまけの珍句名言集(謎)「恋人のためならなんでもする…と褒めたんだ」
解説;「巨大真珠紛失…」で、犯人が真珠を盗んだ動機が何かを考えている時、「彼女へのプレゼント」と謎事が言い、真解が「お前じゃないんだから」と言い返した後に付け加えたセリフ。ちなみに、謎事はこのあとメイをチラリと見るが、メイには目が合うと同時にソッポを向かれた。

「摩探公式HP」⇒【http://page.freett.com/kiguro/makahusigi/index.html

作;黄黒真直

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