摩訶不思議探偵局〜久が原高校殺人事件〜
容疑者リスト( )内は読み、【 】内は役
立花 真(たちばな まこと)…【監督】
戸津辺 百合太(とつべ ゆりた)…【子ども俳優】
清泉 悦男(きよいずみ えつお)…【演出家】
飯島 れい子(いいじま れいこ)…【育覧のマネージャー】

摩訶不思議探偵局〜久が原高校殺人事件〜解明編

澪菜「ねぇ、いつまでもこんな薄暗い所にいないで、そろそろ出ない?」
 薄暗い倉庫の中で、真新しい傷を眺めるのに飽きたのか、澪菜が言った。
真直「ホント、わがままだね、澪菜…」
澪菜「別にわがままじゃないわよ、わたしは」
 そう言って、澪菜は那由他の手をギュッと握り締めた。ギュッと。ギュギュッと。
育覧「って言ってますけど、出ますか? 真解お兄ちゃん…」
 育覧が、真解の顔を覗き込んで聞いた。それを、真実が引っ張った。
育覧「な、なんですか?」
真実「話しかけちゃダメよ。お兄ちゃんはいま推理中なの。周りの音はほとんど聞こえないし、テコでも動かないわ!」
「わたしの方が、あなたよりお兄ちゃんのこと知ってるのよ」と言わんばかりに、真実は育覧を見下しながら言った。育覧はそれを睨み返した。2人の間に、火花が散った。
澪〔モテる男はつらいねぃ…〕
 みんなが、2人を苦笑混じりで見守った。ただ1人、フルスピードで頭脳を稼動させている、真解を除いて…。
真解〔この倉庫の中は、演出上かなり汚れている。わずかな手がかりならば、汚れに混じって気が付かない可能性が高い。となると、やはりこの2つの傷から推理を展開するしかないのか…?〕
 突然、ハッとして真解が顔を挙げた。
真実「ど、どうしたの?」
真解「………可能性としては、無くは無いな」
 真解がポツリと呟いた。
育覧「どう言う事ですか!? 解けたんですか、ナゾ!」
真解「いや…まだ、確信も無いし、根拠だって希薄だ。だけど…可能性はあり得るな」
澪菜「どんなトリック? どんなトリック?」
「やっと変化があった」と、澪菜が身を乗り出した。
真解「まだ、これだとはわからない。仮にこれだったとしても、その証拠が無い…」
真実「それじゃぁ…どうするの?」
真解「どうしようか…」
澪「どうするかは、2通りじゃないか?」
真解「?」
澪「『ここで証拠を探す』か、『実際にやってみて、どんな証拠が残るかを考える』か…」
真解「…なるほどね。じゃぁ、実際にやってみるとしよう」
謎事「ここでか?」
小鳥遊「ここでは止めてくれよ」
真解「わかってます。どこか、適当な教室で………」
 ハタと、真解は止まった。
真実「どうしたの?」
真解「…いや、教室のドアって、接着剤で止めちゃっても良いのかなって…」
真実「構わないわよ! わたし達は、事件の真相を追究してるんだから!!」
 どこから、その底知れぬ自信は来るのやら…。真解は呆れ顔で、適当な教室を選ぶことにした。

B棟・多目的教室
 ここは、遊学学園小学校の校舎、B棟。ここの多目的教室は、今現在一切使っていないと、真澄が断言した。それならまぁ、もし仮にドアが開かなくなっても、謝れば何とかなるだろう。
江戸川「真解くん。接着剤、買ってきたわ」
真解「あ、ありがとうございます」
 江戸川が、何やら大そうな接着剤を買ってきた。それを、ドアの端っこに満遍なく塗る。たちまち、辺りは接着剤の臭いで一杯になった。塗り終わったらドアを閉め、乾くまで待つ。瞬間接着剤と言うことで、1分も待てば十分だろう。
 その間、真解がトリックについての説明をした。9人が、「なるほど」と言う顔でうなずいた。そして、そのために必要な道具を学校中駆け回り、集めて来た。
真解「よし…ドアも固定されたし、準備は良いかな」
 全員、真解を見守った。責任を持って、真解がトリックを実行することにしたのだ。
 そして…。
バァン!
 勢い良く、扉が開け放たれた。…トリック成功、だ。
謎事「おお、すげー!」
真実「どう、お兄ちゃん! 何か、証拠になりそうな物は残った?」
 目を輝かせて、真実が聞く。真解は、何故か顔を抑えながら、床に落ちたコンクリートブロックを拾い上げた。
真解「いや…まぁ、残った物と言えば、コンクリートブロックの破片か…」
 真解は、顔をさする。
育覧「? どうしたんですか、顔…」
 顔をさすりながら、真解は答える事にした。
真解「たぶん、ドアばっか見てて気が付かなかったと思うけど、顔を思いっきりぶつけた」
 可哀想に、よく見ると顔が赤くなっている。
江戸川「あら、大丈夫? 鼻血とか出てない?」
真解「ええ、まぁ…」
 かなり痛いらしい。その様子から、ヒシヒシと痛みが伝わってくる。
謎事「じゃぁ、今日、顔を痛がってる人が、犯人だな!」
 謎事があっけらかんと言った。全員の、白い目が集中した。
謎事「な…なんだよ?」
謎「謎事くん…確かに、このトリックでは顔を強打するようですが、犯人がトリックを行ったのは、昨夜遅く、深夜の事ですよ? そんな時間から、今日の朝まで、ずっと痛いわけがないでしょう。痛かったとしても、もうだいぶ痛みは引いているはずです」
謎事「あ、そ、それもそうか…ハハハ…」
 謎事が苦笑すると、ため息を付きながらメイがメガネを押し上げた。
真実「でもホント、痛がってる人がいたら、一発なのに…」
真澄「そうよねぇ」
真解〔『今日、顔を痛がってる人』…ねぇ…〕
 真解は、思わず全員の顔を思い浮かべた。
 若干小太り顔の立花、少し大人びてはいるが、まだ子どもっぽい顔の戸津辺、立花と同じく少し小太りで、目が細い清泉、特別特徴は無いが、少し面長な飯島…。
真実「あれ? ちょっと待って」
真解「ん? どうした?」
謎事「何か思い出したか、真実! やっぱり、痛がってた人が…!」
真実「……たぶん、ね」
謎事「ホントか!?」
澪菜「ウソ!? だって、たった今メイちゃんが…」
真実「うん、そうなんだけど…でも、痛がってる人がいたことも、事実」
真直「…? でもさっきみんなの顔を見たときは、絆創膏や包帯をつけてる人は…」
真解「どういうことだ? 真実…」
真実「あのね…」
 真実は、ある人物について、話した。
真解「そう言えば…そうだったな。と言うことは…まだ、倉庫に証拠が残っている可能性も…」
真実「あるかも」
真解「…よし、行ってみよう」
 そう言うと、真解はさっきから開けっ放しになっていたドアから、廊下へと歩み出た。

倉庫
猫山「あれ? 真解くん達、また来たのかい?」
真解「ええ、ちょっと、調べたい事が」
猫山「…? 何を調べるんだい?」
真解「もしかしたら…ですが、まだ証拠が残っている可能性があるんですよ。犯人が、見落としていれば、ですけど…」
 真解は、倉庫に入った。真実たちも後から続く。
真解「真実、懐中電灯貸してくれ」
真実「え、あ、うん」
 何故学校にそんな物を持ってきているのやら…。真実はカバンから懐中電灯を取り出し、真解に渡した。
 真解は、傷の周辺を調べるのかと思いきや、それよりももっと奥の床を調べ始めた。少しづつ、更に奥へと進んで行った。
 余談だが、「少しづつ」と言うのは、「づつ」か「ずつ」かで迷う所だが、基本的にどっちでも良いらしい。小さな辞書では「ずつ」の項しかないこともあるが、大きな辞書では「ずつ」の項に「『づつ』とも書く」などと書いてある事がある。結局どっちが正しいのか良くわからないが、まぁ、それは使う人のセンスだろう。
真解「あった…これか…?」
 真解は、床に落ちていた小さな何かを拾い上げた。
猫山「真解くん、それは?」
真解「ボクの推理が正しければ、おそらくこれは…」
 真解は、推理を打ち明け、猫山にそれを渡した。
真解「これ、調べてください。推理の裏付けになるんで」
猫山「ああ、いいよ。 …でもこれ、証拠になるかな…?」
真解〔そう…ボクも、それが疑問なんだよな…〕
 真解も、ちょっと考えたが、
真解「まぁ、一応調べるだけ、調べてください」
猫山「わかった」
 そう言って、猫山は外に出て行った。
真解「さてと…」
 真解は、少し離れた位置に立っている、9人に目を向けた。
真解「最後のナゾを、考えようか」

真解「『時計塔の罠』『噂の彼』『サーカス少年探偵団』『久が原高校探偵団』…本当に、この4つを並べたら面白い事があるって噂を聞いたんだね?」
 ここは、倉庫の真ん前。みんな、思い思いに外に出されたままのガラクタの上に座っていた。
育覧「ええ、チラリ、とですけど…」
 全員、頭を悩ます。一体、これのどこが…。
江戸川「こう言うのは、書き並べて見るとわかりやすいんじゃない?」
真解「そうかもしれませんね…誰か、紙とペン」
 メイが、即座にカバンからノートと筆箱を取り出し、真解に渡した。真解は、書きやすそうなガラクタを見つけて、その上にノートを広げ、4つの名前を書いた。
謎事「どうだ、真解」
 全員が、後ろから覗き込む。
 余談だが、白昼堂々白いノートを広げるのは危険だ。直射日光がノートによって反射させられ、目に多大な影響を与える。外で本を読んでいて、目が痛くなったことのある人はいるだろう。それでも構わず、全員それを覗き込む。
澪「一見した所、面白そうな所は無いけど…」
真直「内容はどうなの?」
謎「全て推理物です。『時計塔の罠』は、一昨年公開の映画で、時計塔で数年前から定期的に起こっていると言う怪事件を、私立探偵の神川(かみかわ)が解き明かす、と言うストーリーです」
 以下、映画『噂の彼』は最近新しい彼氏が出来た大学生の友紀(ゆき)が主人公の物語。しかし、付き合っていてもナゾが多く、様々な噂が耐えない友紀の彼氏。ついに友紀は、自分の彼氏を調査しようと思い立つ…と言うストーリー。
『サーカス少年探偵団』は、謎事とメイが見に行ったものだ。題名通り、サーカスで起こった不思議な怪事件を、サーカス団員になりたての3人の少年達が解き明かす、と言うストーリーだ。
謎「『久が原高校探偵団』は、説明するまでもないですよね?」
謎事「まぁ、そうだな」
 全員、またも頭を悩ます。
真解〔ストーリーにも一貫性は無い…。一体、何が面白いと言うんだ…?〕
 真解はうつむいて、ノートに書いた4つの名前を見た。時計塔…噂…サーカス…久が原高校…特に、関連性は無いように思える。
真解「…! 待てよ…」
真実「何かわかったの、お兄ちゃん!」
真解「…………ああ」
 真解は、小さくうなずいた。
真直「ホントに!?」
澪「で、で? 何が面白いんだ?」
真解「ああ、それは…………待てよ」
真澄「なに、どうしたの??」
 なんともじれったい真解に、全員が苛立つ。しかしそれでも、真解は気にしない。
真解「なぁ、メイ。皆藤さんが書いた作品、第1作品目から全部言えるか?」
謎「え? ええ、まぁ、たぶん…」
 突然の注文で少し驚いたが、すぐに冷静に答える。
真解「じゃぁ、言ってくれないか?」
謎「良いですけど…」
「えっと…」と、メイは記憶を探る。
謎「第1作品目が『危険なデート』、第2作品目が『予感』、以下『因幡(いなば)の白兎』『ずぶ濡れの殺人犯』『未知なる事件』『永遠の誓い』『津波のように』『億人の目撃者』『のちの被害者』…そして、あとは先ほどの『時計塔の罠』…と続きます」
 全員、真解の言った意味がよくわからないらしく、混乱した表情で真解を静かに見守った。
 …と、突然真解がニヤリと笑った。
真解「面白いじゃないか、十分」
真実「え…?」
育覧「わかったんですか?」
真実「噂の、意味が!」
真解「ああ…。そして恐らく…証拠なんか無くても、犯人は観念するんじゃないかな?」
真実「って事は…?」
 真解は、より一層ニヤリと笑った。
真解「見えた…」

Countinue

〜舞台裏〜
こんにちは。キグロです。今回のゲストは、高麗辺 澪菜さん。
澪菜「どうも、こんにちは」
最近、澪菜についてボク、気がついたことがあるんだよね。
澪菜「? 何?」
澪菜ってさ…。
澪菜「?」
…滅茶苦茶、発音し辛いんだ。「コマノベ ミオナ」って。
澪菜「……あんたが付けたんでしょうが!!」

と言うわけで、今回は推理を募集します。募集内容は、
澪菜「犯人と、トリック。そして噂の意味です」
あと、「事件編」に出てきた暗号の答えも、募集します(覚えてる人いるかなぁ〜?? ちょっと不安
澪菜「推理は、全てメールで。間違っても、掲示板等には書かないで下さい」
メールアドレスは【kiguro2@yahoo.co.jp】です。
澪菜「ちなみに、ヒントは?」
ヒントはそうだねぇ…「何気ない一言に、ヒントあり」って感じかな? ちなみに、「噂」の方は、もう暗号みたいなものだから。頑張れば、それほど難しくも無いと思いますよ。
ってか、むしろ正解者が続出しそうで怖いよ、って言う…。
澪菜「ダメじゃん」

それでは、頑張ってください。ではまた次回。

「摩探公式HP」⇒【http://page.freett.com/kiguro/makahusigi/index.html

作;黄黒真直

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