摩訶不思議探偵局〜死に際のメッセージ〜
容疑者リスト
萩原 直也(はぎわら なおや)…【1人目の客】
最上 卓三(もがみ たくぞう)…【2人目の客。通報者】
荒綿 浩幸(あらわた ひろゆき)…【3人目の客】

摩訶不思議探偵局〜死に際のメッセージ〜真相編

兜「それで…誰だ!? 犯人は!」
 兜が身を乗り出して真解に聞いた。
真解「まぁ、落ち着いてください。その前に、ダイイング・メッセージを解きますから」
 兜をなだめながら、真解が言う。
真解「そっちの方が、説明もしやすいですから」
兜「そうか…」
 兜は引き下がり、タバコを取り出した。
真実「兜警部! ここは禁煙ですよ!!」
兜「え? あ、ああ、そうか…」
 取り出しかけたライターをしまい、兜は火をつけずタバコだけ口にくわえた。
真解「…いいですか?」
兜「ああ、説明してくれ」
 言われると、真解は2枚の写真を全員の方に向けた。
真解「やっぱり、この4つの数字は、この小説のページ数だったんですよ」
謎事「それで…どこに隠されてたんだ? サブタイトルか?」
真解「ああ、その通りだ」
 真解はうなずいた。
真解「4つのページのサブタイトルはそれぞれ、『初デート』『女探偵・友紀』『疑惑の目』『ラブバトル&追跡調査』。この頭文字をつなげると、『はおぎら』…」
兜「なんの言葉にもならんぞ」
真解「並び替えるんですよ」
兜「な、並び替え…?」
 真解は立ち上がり、電話横のメモ用紙を1枚と、鉛筆1本持ってきた。そこに、『はおぎら』と書き、全員に見せた。
真解「この4文字…並び替えると、『おぎはら』」
真実「オギハラ? 荻原って事? …でも、容疑者に荻原なんていないよ…?」
真解「ああ、その通りだ。だけど…」
 紙に鉛筆を走らせる。『萩』と『荻』の2文字が、紙に書かれた。
真解「この2つの文字…そっくりだと思わないか?」
謎「…! まさか…」
真解「その通り。間違えたんだよ。容疑者の名前は『萩原』。だが、このダイイング・メッセージを残した人は…それを間違えて、『オギハラ』と読んだ。そして…間違ったダイイング・メッセージを残してしまったんだ」
謎事「な、なるほど…! じゃぁ、犯人は萩原!?」
兜「だが、待て真解。被害者と萩原は、そんな極端に短い付き合いじゃない。それなのに、相手の名前を知らないと言うのはおかしいぞ…」
真解「確かにその通りです。…これを残したのが、本当に被害者ならば…」
兜「?? どういうことだ?」
真解「これは、偽の証拠なんですよ。これはダイイング・メッセージなんかじゃない。犯人が残した、マーダリング・メッセージとも言うべき代物なんです」
兜「何だって…?」
 突然出てきた造語に驚き、兜は口にくわえていたタバコ(火無し)を落とした。…ここが禁煙で、本当によかった。
真実「と言うことは、犯人は…」
真解「ああ。通報者・最上 卓三だ」
 一瞬の間を置き、真解が続ける。
真解「兜警部。最上さんと萩原さんには、面識が無いんでしたよね?」
兜「ああ、そうだ」
真解「ならば、『萩原』を『荻原』と読み間違えてしまっても仕方ない。最上さんは被害者の手帳の中身…今日の予定を見てしまったんだ。そして、自分より先にここを訪れたハズの『荻原』さんに罪を着せようと考えた…」
謎事「それが…このダイイング・メッセージか!」
 謎事は思わず、血文字の写真を手に取った。
真解「ああ、その通りだ。後は警察に通報すれば、警察がこのダイイング・メッセージを解いて、萩原さんを逮捕する…ハズだった」
謎「しかし、仮にダイイング・メッセージを解いても、出てくるのは『オギハラ』と言う別人の名…。逮捕されるわけが無い…」
真解「運の悪いことに、この犯行が可能なのは最上さんだけだ。荒綿さんを含め、他の動機のある人たち全員には、アリバイがあったからね」
兜「だがしかし、そういう風に推理される事を予想して、萩原がそのダイイング・メッセージを残したと言う可能性は…?」
真解「それはありません。だったら『萩原』か、『荻原』と直接血で床に書きますよ。わざわざこんな回りくどい方法を使う必要はありません」
兜「う…む…」
真解「冷静に考えてみれば、死に掛けてる被害者がこんな面倒な暗号を残すとは思えない…。こんなことが出来るのは、犯人だけです。最上さんは、衝動的に殺人を犯した…それで動転して、その事に気付かなかったんでしょう。訪問時刻と通報時刻の差から警察に怪しまれないよう、おそらくは警察に通報してからこの暗号を作ったハズ…なら、この暗号は、フルスピードで作る必要がある。そんな苦労をしたのに、それが裏目に出てしまったわけですね」
「なるほど…」と、全員が納得したようだ。
兜「だが…証拠は何か、あるか?」
真解「証拠ですか…」
 真解はちょっと考えて、
真解「兜警部。被害者の持っていた本と手帳…指紋は調べました?」
兜「え? いや…」
真解「じゃぁ、指紋を調べてみてください。犯人は凶器の指紋を拭き取っています。と言う事は、手袋の類ははめていない…。おそらく、この2つには、指紋が残っているハズです」
兜「…わかった。調べてみよう」
 そう言って、兜は立ち上がった。


中華料理店 美上海(メイシャンハイ)
 ここは、兜の娘、蘭栖(らんす)の夫、常泉水 一人(とこいずみ かずと)がシェフを務める中華料理店。真解たちは兜に連れられ、ここに来ていた。
兜「本と手帳から、最上の指紋が出てきた」
 注文をチャイナドレスのウェイトレスに告げると、兜は水を一杯飲んで、そう言った。
兜「それを最上に言ったら、すんなり罪を認めた。あのダイイング・メッセージは真解の言った通り、奴の偽造だっただったようでな、事情聴取の際、『萩原』を『オギハラ』と読み間違えていた事に気付き、心底焦っていたそうだ」
真実「そして、お兄ちゃんに解かれちゃったって事ね」
兜「ああ」
真解「気になるのは…」
兜「なんだ?」
真解「何故最上はあんな面倒な事をしたんです? ストレートに、床に『オギハラ』と書けば良かった物を…」
兜「どうやら、推理小説が好きだったらしいぞ」
真解「は?」
兜「それで、自分も何かやってみたくなったらしい」
真解「…はぁ」
 なんだそれは、と真解は呆気に取られた。兜はそんな真解を見ながら、タバコを取り出した。
???「お義父さん、ここは禁煙ですよ?」
兜「え? あ…」
 兜が顔を上げると、若干背が高い好青年が立っていた。
兜「あ、一人くん…」
真実「え? 一人って…じゃぁ、あなたが蘭栖さんの旦那さん!?」
 真実が好青年に目を向けた。好青年ははにかみ、
一人「はい、そうです。ここのシェフやってる、蘭栖の夫ッス」
 と、頭をかいた。
真解〔シェフなのに、調理場抜け出して良いのか…?〕
一人「それは平気ですよ。今は、ご飯時じゃないから、客はあなた方だけだし」
 一人は、敬語とタメ口をごちゃ混ぜにしながら言った。「相手は子どもだから敬語を使うのは変だけど、同時に客でもあるから敬語を使わなければいけないわけで…」と言う思いが交錯しているようだ。
 しばらくして、料理が運ばれて来た。さっきと同じウェイトレスかと思ったら、今度は蘭栖だ。
蘭栖「こんにちは、皆さん。お久しぶりですね」
真実「あ、蘭栖さん!」
 真実はなんだか、嬉しそうだ。蘭栖は兜の娘とは思えないほど美人で…オマケに、女性らしさも感じる。
真解〔どうでも良いけど蘭栖さん…『常泉水 蘭栖』だと語呂が良いけど、『兜 蘭栖』だとあまり語呂が良くないのは何故…?〕
 そんな細かいことは置いておいて、真解はラーメンを口に運ぶ。運びながら、兜に聞いた。
真解「そういえば、最上の動機は? やっぱり、借金ですか?」
兜「ああ、そうらしい。返済期日の延期を頼み込んだそうだが、断られ、口論しているうちにカッとなり、ナイフを手に取ったそうだ。その時被害者も抵抗したが…結局、腹をザックリ切られた、と言うことだ」
真解「ふぅん…。手帳はどこにあったんですか?」
兜「殺してしまった後、誰かに罪をなすり付けようと思いついたらしい。そして、机の上の手帳が目に入り、何気なく開いたところ、今日の日付のところに萩原の名前を見つけたんだそうだ」
「後はお前の推理通りだ」と、兜はギョウザを口に放り込んだ。
一人「あの…ところでお義父さん?」
兜「なんだ?」
一人「すみません、悪いんですけど……人の料理店で、殺人事件の話しないでくれませんか…?? もっと味わって食べてくださいよ!!」
兜「ああ、すまんすまん」
 兜は冷静に返事をした。
兜「そう言うな。また今度、食べに来るから」
一人「あ、そうですか?」
兜「ああ…真解たちに、依頼をする時にな」
一人「…。頼みますから、1人で来てください!!」
 一人の怒声が店内に響き渡る。数秒後、この狭い空間に店員が全員集合した。

Finish and Countinue

〜舞台裏〜
うわっ! 今回短ッ!!
と言うわけで、今回のゲストは初登場蘭栖さん…と、一人さん。
一人「え? 2人?」
うん、まぁ…。舞台裏に使えるスペースがたくさんあるんで。
蘭栖「でも、何故わざわざ2人なのですか…?」
蘭栖さんだけだと、会話が進まなさそうだったから。
蘭栖「…え?」
そんでもって、小説内で蘭栖さんと一人さんの会話が出せなかったから。
一人「…舞台裏に登場させても、会話は出ないと思いますよ?」
ぐ…まぁ、そうなんだけどね…。

さて、では正解者の発表です。
…が、今回は、正解者無し!!
「『はおぎら』を並び替える!」と言うところまで行った方はいたのですが、それが何を意味するかは、わからなかったようです。
あと、「萩原(はぎわら)」を「オギハラ」と読み間違え、そのまま「オギハラが犯人だ!」と結論付けた方もいました。
一人「まぁ、『萩』と『荻』は、間違いやすい漢字(苗字)で有名だからね」
作者自身、書いてる途中でうち間違うと言う罠(マテ
「萩原(はぎわら)」と書きたかったのに「オギワラ」とうって変換して、しかも気がつかなかったり、
「原」を「わら」だったか「はら」だったか忘れたり。
一人「作者として、それはどうかと思うぞ」
ええ、自覚してます…。見直しの時も、混乱しながら見直したし。
勘違い物はやめよう。こっちが混乱する。

ほら、蘭栖さん、結局しゃべってない。
蘭栖「あ…すみません…」
いや、良いんですけど。
一人「蘭栖は、しとやかってイメージだから」
だから、ベラベラしゃべんなくていいんだよ。
蘭栖「そうですか…」
謎事「メイちゃんもしとやかだぜ」
あ、本当だ。被ってるわ、この2人。
蘭栖「あら…そうですね」
ふむ…じゃぁ、どっちか1人、消すって事(強制終了

ではまた次回。

おまけの珍句名言集(謎)「こ…こんの知能犯めええぇえぇ〜〜!!」
解説;那由他が澪菜に告白された後、澪菜が戦略的に那由他が澪菜をフルことが出来ないようにしていたことに気付き、那由他が叫んだ言葉。女は怖いと言う、良い見本か?

「摩探公式HP」⇒【http://page.freett.com/kiguro/makahusigi/index.html

作;黄黒真直

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