摩訶不思議探偵局〜魅惑の恋人たち〜
容疑者リスト
ユーマ(ゆーま)…【南の恋人】
南 百子(みなみ ももこ)…【ユーマの恋人】
恩田 悠(おんだ ゆう)…【二階堂の恋人】
二階堂 絵真(にかいどう えま)…【恩田の恋人】
天木 大地(あまぎ だいち)…【ペンションオーナー】
天木 空恵(あまぎ そらえ)…【オーナー夫人】

摩訶不思議探偵局〜魅惑の恋人たち〜真相編

真解「以上が、ボクの考える『真相』だ」
 歩きながら手短に話した真解の言葉を聞き、真実たちは脱帽していた。
謎事「待てよ…。あの人が犯人なら…」
真解「なんだ?」
謎事「いや、ちょっと、気になる行動をしてて…」
 謎事はその「気になる行動」を手短に話した。真解は軽く頷くと、
真解「それも…『事件』のひとつだな…。とりあえず、急いでラウンジに行こう。時間が無い」
 真解は階段を駆け下りた。

ラウンジ
 ラウンジには、まだ南と恩田がおり、ベランダにはユーマと二階堂がいた。
南「あら、みんな。どうしたの?」
 真っ先に南が気付き、声をかける。恩田が振り向き、軽く手を挙げた。
恩田「やぁ、どうした?」
真解「いえ、少し…」
 と、真解はゆっくりと……南 百子に近付いた。
南「? なに?」
真解「南さん…その…。ちょっと、来ていただけません? ボクらの部屋に」
南「…なんで?」
真解「…来ればわかります」
南「…でも…」
 しばらくお互いを見る2人。南が立ち上がる気配は無い。
 と、そこに兜が入ってきた。
兜「お? どうした? なんでこんな所にいる?」
 手には缶コーヒーが握られている。兜はそのまま、ソファーに座り込む。
恩田「こんばんは、兜さん」
兜「こんばんは」
 挨拶の後、2人は話し始めた。それを見て、南は立ち上がった。
真解「来てくれますね?」
 南は黙って頷いた。

真解・謎事の部屋
「で?」と南が聞いた。
真解「ちょっと…話がありましてね…」
 少し目を泳がせながら、真解が言う。心臓が高鳴る。
真解「南さん。あなたは…」
 そこで軽く深呼吸…。真解は、こんな事は初の試みだ。いつもと勝手がまるで違う。真解は、ストレートに切り出した。
真解「あなたは、二階堂 絵真さんを殺害しようとしていますね?」
南「…え?」
 空気が凍る。その場が静まり返る。しくじったか…!? 真解の心臓がさらに高鳴る。
 いつもは、目に見える事件が起こってから事件を解決する。だが今回は…「目に見える事件」はまだ起こっていない。何一つ。
真解〔だけど…〕
 真解自身、半信半疑だが、無理矢理信じた。「目に見えない事件」は、既に起こっているハズなのだから。
南「言ってる意味が、よくわからないんだけど…?」
 しばらくして、南が問い返した。
真解「そのままです。今回の『事件』…犯人は、あなたですね?」
南「事件…犯人…? ちょ、ちょっと、何言ってるの? 事件なんて、なんにも…」
 南は真解に少し歩み寄り…ハッと気付いた(フリをした?)。
南「あ、もしかして、さっき事河ちゃんの上に花びんが落ちてきた事件?」
真解「…それも、今回の『事件』のうちのひとつです」
南「ひとつ?」
真解「あなたは今回…3つの殺人未遂事件を起こしたんですよ。その対象を、二階堂さんに絞って!」
 またも沈黙…。どうにもうまく行かない。仕方なく、真解は南の出方を待たず、話を切り出した。
真解「まず最初の事件は、ボク達がここに来た、まさにその日に起こっていました」
 最初の日…真解たちがこのペンション空に来て、南たちと出会い、和風料理店へ行き、戻ってきた後、トランプ大会。夕食を食べ終わり、部屋へと戻った。
真解「あの日の、夕食の時。最初の事件は起こっていました。あの時、南さん…あなたは、ある行動をしていましたね?」
南「な、なに?」
真解「砂糖です。あなたは、砂糖を自分のポシェットへ大量にしまい込みましたよね?」
南「え、ええ…それが?」
真解「その直後。あなたは、『自分の砂糖まで入れちゃった』と、ポシェットから砂糖を1つ取り出して、コーヒーへと入れた。そして、二階堂さんから『コーヒー、ダメなんじゃ?』と言う指摘を受け、その事を思い出した…」
「この後、最初の殺人未遂が起こりました」と、真解は続けた。
真解「二階堂さんから指摘を受けたあなたは、二階堂さんにこう言いましたね? 『ねぇ、エマ、飲んでくれない?』」
南「そ、それが? コーヒーがダメなんだもの。エマに飲んでもらっても、不思議は無いんじゃないの?」
真解「その通りです。これだけなら、全く不思議なところはありません。しかし…明らかに不自然な点が2ヶ所、あるのです」
南「2ヶ所…?」
真解「まず第一に、あなたが自分のポシェットから砂糖を取り出した事です」
南「別にいいじゃない。ポシェットにたくさん砂糖が入ってるんだから」
真解「ええ。しかし、あなたは砂糖を、『持ち帰る』つもりで、ポシェットにしまい込んだ。だったら、ポシェットの中の砂糖は使わず、まだテーブルの上に残っていた、別の砂糖を使うハズです」
 あの時、テーブルの上の入れ物には、まだ砂糖の袋(そう、この名前のわからないやつ)は残っていた。その証拠に、直後で二階堂がその砂糖を使用している。
真解「では、何故あなたは自分のポシェットから砂糖を取り出したか? それは、そう…その砂糖が、毒入りだったからです」
南「…」
真解「あなた達は、去年もここに来たと言っていましたね? あなたは今回の計画を思いついた時、去年、ここに置いてあったのと同じ砂糖を事前に購入し、毒を仕込んでおいたんですよ」
 あとはそれをさり気なくカップに注ぎ、さり気なくそれを二階堂に勧めるだけ。
真解「しかし、ここでひとつ手違いが起きた。二階堂さんは、コーヒーが嫌いだった。そのため、この計画は失敗してしまったのです」
南「っ…」
 南の表情が、一瞬変わった。「ちょっと待ってよ!」と声を上げる。
南「なんでそんな事がわかるわけ? ポシェットから砂糖を出したのは、ただの偶然よ。あの時はまだ、手がポシェットの中にあったんだもの」
真解「その通りですね。ですが、だとしたら、もうひとつの不自然な点はどう説明しますか?」
南「?」
真解「二階堂さんがコーヒー嫌いだと発覚した直後の事です。あなたの恋人であるユーマさんが、あなたにこう言っています。『俺が飲もうか? この紅茶やるから』」
南「っ!」
真解「しかしあなたは、これを拒否。わざわざ立ち上がり、別の飲み物をもらってきています。もし毒入りでなければ、素直にユーマさんの好意に従うハズです。違いますか?」
南「……」
 南は黙り込んでしまった。真解は気にせず、「以上が、最初の殺人未遂事件です」と締めくくった。

真解「そして、次の事件。今度は、ボクは直接見てませんが、謎事とメイが目撃しています」
 チラリ、と真解は2人を見る。今度は、謎事とメイが説明を始めた。
謎「あれは、今日の午前中…わたし達が、山に登った時です」
 今日(2日目)…真解たちは、二階堂の提案で、絶景が見えると言う山の頂上へ登った。そこで、一同は自由気ままにのんびりと過ごした。
謎「あなたは、わたしと謎事くんの横で、二階堂さんと一緒にいましたよね?」
謎事「その時、第2の事件が起こりました」
 謎事が切り出す。メイがチラリと謎事を見た。
謎事「二階堂さんがそこで、何かをじっと見ていると、あなたに尋ねました。この花は、何か、と…」
 結局それはスズランだったわけだが、花が咲いていなかったので、二階堂にはなんだかわからなかった。しかし、高山植物に詳しいらしい南は、それを見て、即座にスズランだと答えた。
謎事「その直後です。二階堂さんが、生っている実を見て、『食べられるかな?』と言ってきた…。そうッスよね?」
 南は思わず「ええ…」と答えた。
 普通、大人はあまりそこらに生えている植物の実を食べようとは思わないが、二階堂は別格だったようだ。
謎事「そしてその質問を聞いて…あなたは、瞬間的に二階堂さんを殺す方法を思いついたんスよ。しかも、うまくいけば…いや、ほぼ確実に、自分は罪に問われない方法を」
謎「その方法とは、『二階堂さんが実を食べるのを、黙ってジッと見ている』と言う物でした」
 謎事のセリフに、メイが続けた。謎事がチラリと、メイを見る。
謎「南さん、あなたは二階堂さん曰く、高山植物に詳しいようですね。だからあなたは、スズランが猛毒だと言う事も知っていたのです。そして、実を食べたがっている二階堂さんに、『食べてみたら?』と、さり気なく言ったのです。好奇心とあなたの言葉につられ、二階堂さんは恐る恐る実を口へと運びましたが…」
「そこに、わたしの妨害が入りました」と、続けた。
謎事「メイちゃんも、スズランは毒だって事、知ってたんスよ。メイちゃんは、知識には誰にも負けないッスからね」
 嬉しそうに笑う謎事。チラリとメイを見たが、メイは一瞬でそっぽを向いた。
「まぁ、とにかく…」そっぽを向いたまま、メイが言う。
謎「こうして、あなたの第2の計画は、失敗してしまったのです」
 一瞬の沈黙。南が何かを考えるように、目を泳がせる。そしてすぐに、口を開いた。
南「ちょっと待ってよ。わたしは、スズランが毒だなんて知らなかったわ。本当よ。だから、『食べてみたら?』って言ったのよ。そんな、エマを殺そうなんて…そんな事、考えてないわ!」
 声高に反論する南。「ところが」と、謎事が言った。
謎事「そうは行かないんスよ。あの後、南さん、ちょっと口を滑らしちゃったッスからね」
 真解のマネなのか、ニヤリと笑う謎事。「滑らした…?」と鸚鵡返しに南が聞いた。
謎事「そう。メイちゃんは、スズランを食べると『最悪、心臓麻痺で死亡します』とだけ言いました。でも、あなたは、二階堂さんが投げ捨てた実がオレの口の中に入った後、こう言いました。『心不全とか、頭痛とか、目まいとか、吐き気とか、しない!?』 …スズランが毒だって事を知らなかったら、なんでこんなに知ってるんスか?」
南「あ…」
謎「確かに、スズランの毒…コンバラトキシンを飲むと、心不全や頭痛、目まい、吐き気などの症状が現れる事もあります。しかし、『スズランが毒だなんて知らなかった』人間のセリフとしては…明らかに、不自然です」
南「それは…」
 南が考えている間に、真実がとっとと言った。
真実「以上が、第2の事件の真相ね」

Countinue

〜舞台裏〜
真相編前編、終了。今回のゲストは…じゃぁ、真解くん。
真解「2回連続?」
いや、3回連続やってもらう。
真解「…止めてくれ」

今回は、事件編も長かったですが、真相編も前・後編に分かれるとあって、やや長め…。
真解「事件らしい事件はほとんど起こっていないのに」
まぁ、でも、ほら。「連続殺人」が起こったと思えば。それも、毎回トリックが使われて。
真解「実際には『連続殺人未遂』だけどね…」

ちなみに…真相編は次回まで続きますが、推理募集は締め切りました。正解者発表は、次回やります。
では。

「摩探公式HP」は、更新が面倒なので、閉鎖致しました。

作;黄黒真直

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