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水道管内部を流れる水の速さを求める
1;問題提起
ある日、普段と変わらずお風呂に入っていた時の事だ。ふと、水を吐き出す蛇口が目に留まった。
そして思った。
「この水は、どのぐらいの速さで出てきているのだろう?」
善は急げ。早速、計算してみる事にした。

2;公式導出
まずは、水流の速さを求める公式を作ってみよう。
水道管内部の水の速さを知りたいわけだが、そちらを計算するのは難しそうなので、蛇口から出てきた水の速さを求める。
まず、求める水の速さを、秒速メートルとしよう。
さらに、「蛇口から出た水は、蛇口の出口からお風呂の底まで、ずっと同じ太さで流れ続ける」と仮定し、その太さの半分をとする。
半分にするのは、後で計算がしやすいためである。
(この文章はいま考えながら書いているわけではなく、一度下書きしたものを清書しているので、こういうことができる)
また、1秒間に蛇口から出てくる水の量を、立方メートルとする。

図1 要するに、こう言う事である。

さて、ではここで、1秒間に蛇口から出てくる水の量を、水の速さと、水の太さだけで表してみよう。
蛇口から出てきた水は、綺麗な円柱をしている(実際には下に行くほど細くなる円錐形だが、計算を簡単にするため円柱とみなす。そうしても、おそらく結果に大差はないだろう)。
すなわち、1秒間に出てくる水の量(=体積)は、円柱の体積の公式で求める事ができるはずである。
円柱の体積は、(円柱の底面積)×(円柱の高さ)で求まる。
今回の場合、底面積は水の断面積であり、高さは1秒間に水が進む距離である。
蛇口から出た水の断面は円形をしているので、水の断面積は、円の面積を求める公式で出てくる。
(断面積)=(円の面積)=(円周率)×(半径)×(半径)=πr
である。
また、1秒間に水が進む距離は、(1秒)×(速さ〔秒速〕)=でいい。
以上より、(円柱の体積)=(円柱の底面積)×(円柱の高さ)を用いて次の式を立てられる。

よって、両辺をπr2で割れば、

となる。
この式は、一体何を意味しているか、と言うと、
1秒間に溜まる水が多ければ多いほど、水が細ければ細いほど、水は速くなる
と言う事だ。
言われてみれば極当たり前な事だが、この「当たり前」な事が、数学的な思考のみで導かれる所に、数学の素晴らしさがあるのだ。

3;実験
さぁ、ではいよいよ、水の速さを求めてみよう。
1秒間に溜まった水の量を、水の断面積で割れば良いのだから、簡単だ。
まず、実際に水を出し、その太さを測ると、約1cm。半径は半分の0.5cmだから、r=0.005mだ。

写真1 正確には1.1cm。が、計算しやすいように1cmとした。

そして1秒間、ビンに水を溜め、その水の量を計量カップで測ると……
なんと、ジャスト200ml! もしかして、そういう設計なのか?

写真2 ちなみに、ストップウォッチの値も正確に1.00秒にした。

200mlを立方メートルに直すと、10の4乗分の2。0.0002立方メートルである。
さぁ、これで必要な情報は出揃った。計算しよう。
π=3.14として計算すると……
v=約2.5478[m/s]!
時速に直すと、約9.17キロメートルである。

4;考察
時速9.17kmとは、結構速い。
人間の歩行スピードは、だいたい時速3km前後、と言われている。遅ければ2km、速ければ4kmだ。
水道水の速さは、速い人の2倍以上もあることになる。
蛇口を出てから洗面台の底まで、何秒かかっているのだろうか。
我が家の蛇口の高さを測ると、29.5cmだった。
ここを時速9.17kmで駆け抜けると、要する時間は約0.11秒である。

今回導出したデータを用いれば、色々な事が計算できるだろう。
例えば、我が家ではお風呂を沸かすには、だいたい8〜10分ほど要する。
10分とすれば、溜まる水の量は 0.0002〔立方メートル〕 × 600〔秒〕 = 0.12〔立方メートル〕とわかる。
120リットル、重さにして約120kgと言う事だ。
ちなみに、コップ1杯は200mlであるから、コップ1杯の水は1秒で溜める事が出来る、と結論できるようだ。
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2007年08月09日 レポート公開 inserted by FC2 system