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自動販売機の金額表示をMAXにする
1;問題提起
どこだったか忘れてしまったが、以前とあるホームページの掲示板で、こんな書き込みを発見した。
「自動販売機の表示金額をMAXにしようとして千円札を入れたら、1枚しか入らなくて断念しました」
この人は「表示金額をMAXに」と言っているが、そもそもアレは、最大でいくつまで表示できるのだろうか?
桁数的には4桁、つまり9999円まで表示できそうだが……?
よし、早速実験してみよう。

2;事前考察、及び事前調査
近所にある自動販売機に行ったところ、入れられる硬貨は10、50、100、500円玉の4種類。
と言う事は、9999円入れる事は出来ず、最高で9990円だ。
また、お札は千円札のみで、確かに1枚しか入らなかった。

さて、ここで心配事が1つある。実験終了後、果たしてお金が全額戻ってくるのか、と言う事だ。
例えば、1万円分のお金を投入した時、表示される金額が仮に「9999」だったとしよう。
ここで「返却レバー」を引いた時、果たして返ってくるお金は1万円なのか、9999円なのか、と言う事だ。
9999円返ってくればまだいいが、表示金額が「0000」になり、しかも1円も返ってこなければ、1万円が無駄になる。
もっとも、1万円分入らなければ、こんな心配は無用になるわけだが……。

3;準備
さて、まずお金を用意する必要がある。とりあえず、貯金箱に1万円札があったので、以下のように両替しようとした。

表1 合計1枚と31枚

1000円札  1枚

500円玉   16枚

100円玉   9枚

50円玉    1枚

10円玉    5枚



が、銀行の両替機で両替しようとしたところ、10円玉を50枚単位でしか両替してくれず、しかも一度に1回しか両替できない。
さらに1日に1回までしか両替ができないなど、諸々の障害があったため、以下のように修正した。

表2 合計1枚と26枚

1000円札  1枚

500円玉   16枚

100円玉   9枚 10枚

50円玉    1枚

10円玉    5枚




幸い、財布の中に10円玉が9枚と、あと100円玉が1枚あった。
そこで郵便局に行き、財布の中の100円玉を50円玉2枚に交換して貰った(なお、郵便局でも表1のように両替する事はできない。郵便局は両替を積極的に行っていないので、表1のような面倒な両替はしてくれない…と、郵便局のお姉さんに言われた)。
もしかしたら銀行の窓口で直接頼めば表1のようにしてくれたのかもしれないが、他に客が大勢いたので遠慮した。
さて、これで準備が整った。いざ、出陣!

4;実験
自宅近所の自動販売機の前に行き、お金を入れ始める。まずは1000円。
普通にジュースを買うだけなら、1000円入れれば事足りる。すなわち、これ以上硬貨を入れる必要は無く、1000円以上を表示した画面と言うのは、理論上誰も見た事がないはずである(いや、実際にはたくさん居そうだけど)。
1000円の次は500円玉だ。今回の計画では、500円玉16枚⇒100円玉9枚、のように徐々に低い値段の硬貨を入れていく。
投入!


写真1 通常なら決して見る事の無い画像


そこからさらに500円玉を2枚投入して2500円になり、さらに3枚目を投入したところ…


写真2 2500円。
ここで突然、500円玉を受け付けなくなった!


別な500円玉を取り出して投入するが、やはり受け付けずに返却口に落ちてくる。
そうこうしているうちに、強制返却。500円玉3枚が返却口に落ちてきて、1000円札が吐き出された。
むむ…構造上なのかどうか知らないが、500円玉は3枚までしか受け付けないようだ。
(この実験の後、試しに1000円札を投入せずに500円玉を投入したが、やはり3枚1500円で受け付けなくなった)
となると、自販機で表示できる最高金額は9990円でも9999円でもない可能性が出てきた。
いや、そう結論付けるのはまだ早い。10円玉が無限に入れられるかもしれないからだ。
とりあえず、気を取り直して1000円札1枚と500円玉3枚を投入した後、100円玉の投入に取り掛かった。
すると今度は、2900円で受け付けなくなった。


写真3 よくよく考えたら、わざわざ写真に撮る必要なかった。


すなわち、100円玉は4枚しか受け付けてくれない、と言う事だ。
この後、50円玉を2枚、10円玉を9枚入れたところで、小銭が切れた。

5;実験その2
しかし、これで諦めてはアマチュア科学者の名が廃る。
準備段階では、窓口で両替するのを遠慮したが、今回は遠慮せずに頼む事にした。
51枚以上必要になる両替は手数料がかかる、と言う事なので、
1000円を10円玉40枚、50円玉10枚、そしておつりの100円に両替してもらった(おつりの100円は両替枚数に数えないようだ)。
さて、では実験再開である。
先述の通り、1000円札を入れた後500円玉を入れても、いきなり500円玉を入れても、入る枚数は同じだった。
ここから、自動販売機に入る硬貨の枚数は、合計金額ではなく、硬貨単位での枚数で決まっている、と推測できる。
2900円を投入するのが面倒くさかったので、いきなり50円玉を投入することにした。
今回手に入れた50円玉10枚と言えば、500円である。
100円玉は4枚しか入らなかったのだから、500円あれば足りるだろう…と思ったらなんと。
あっさり500円飲み込んでしまったではないか。
さらに財布に入っていた50円玉2枚を投入したところで、50円玉が切れた。再び実験中断である。

気を取り直して、今度は10円玉だ。10円玉は全部で40枚、400円である。
次々と10円玉を入れていくが、止まるところを知らず飲み込んでいく。
両替した40枚を入れきってしまい、財布から10円玉を取り出して入れたところ、ここで受け付けなくなった。

6;実験その3
さぁ、気を取り直して再び銀行へ行き、2500円を50円玉50枚に変換。さすがにこれだけあれば足りるだろう。
そして50円玉を次々と投入していく。
12枚を楽に越え、どこまで入るかと思ったら、最終的に入ったのは900円。すなわち、18枚である。
と、言う事は、である。
自動販売機が受け付けるのは、1000円札1枚、500円玉3枚、100円玉4枚、50円玉18枚、10円玉40枚!
そしてこれらを矢継ぎ早に投入し……遂に実験完了!!

4200円
写真5 見よ!
これが、自動販売機の表示金額の最高値だ!!



写真6 そしてこれがおつりである。写真では分かりにくいが、かなり取り出しにくかった。

7;実験その4
さて、思いのほか時間がかかってしまった今回の実験。だが、実際にはまだ完全に終わったとはいえない。
科学の世界において重要な事の1つに、「一般性」と言うものがある。
これは、「より広い場合に適用できる」と言う意味であり、科学の世界において、一般性の無い物(低い物)は法則として受け入れられない。
例えば、2人の人物が似たような法則を発見したとする。
たいていの法則には「その法則が成立するための条件」が存在するのだが、その条件が、
片方は「1気圧、1Gの中で呼吸を止め、ドーナッツを早食いしながら盆踊りをしている時」であり、
もう片方は「1気圧の時」だけであったら、前者より後者の方が科学の世界に認められ、法則として受け入れられるのだ。
(ただし例外はある。例えばニュートンの重力方程式は「地球程度の弱い重力圏内」と言う条件付で、アインシュタインの一般相対性理論には一切の条件が付いていない。だが、ニュートンの重力方程式の方が式が簡単なので、条件の範囲内であればこちらが用いられる)
そう言うわけで、一般性を示すために別な自動販売機でも実験してみなければならない。
早速別所に赴き、自動販売機に小銭を入れる。全部やるのは少々面倒なので、まずは500円玉で試してみよう。
500円玉は3枚しか入らないはずである。まず3枚までは順調に入り、そしていよいよ4枚目を投下すると……


写真7 ………。
あれ!?


もう1枚500円玉を投入すると、今度は受け付けない。
むむ…どうやらこの自動販売機は500円玉を4枚受け付けるらしい。もしや、会社が違うのか?
自動販売機に付いているプレートを見てみると、どちらも「サンデン株式会社」と書いてある。どうやら、機種が違うようだ。
さらにプレートを見てみると、最初に実験した方には「形名 D6CRU25T5PBSC3」と書いてある。
一方、あとに実験した方には「形名 BD0125U」と書いてあった。


写真8 プレートには、このように表示されていた。


このあとさらに別な自動販売機でも試したところ、2台が3枚、2台が4枚まで受け付けた。
うち3台はサンデンのもので、残り1台は富士電機株式会社の物だった。
物はついでと見てみたところ、近所の自販機はだいたい、サンデン、富士電機、ナショナル、クボタ、東芝の物だった。

8;結論
と、言うわけで結論!
サンデン株式会社のD6CRU25T5PBSC3形自動販売機には、4200円まで入る!
……全然一般性成立してねぇ。

9;ちなみに

写真9 今回投入したお金


今回使用した1万円は全て、


写真10 いとうるわし


2000円札5枚に両替いたしました。

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2007年08月09日 レポート公開 inserted by FC2 system