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ティッシュペーパーとトイレットペーパーを水に溶かす
1;問題提起
「ティッシュペーパーとトイレットペーパーの違いは?」と誰かに聞けば、ほとんどの人が「トイレットペーパーの方が早く水に溶ける」と答えるだろう。
しかし、実際にティッシュペーパーを水に溶かしたり、トイレットペーパーが水に溶けるまで見つめ続ける人はいない。
つまり、本当にティッシュペーパーよりトイレットペーパーの方が早く溶けるのか、実際に見た者はいないのである。
(にもかかわらず、何故みなその事を知っているのか、と言う疑問が浮かぶが、この疑問はまたいずれ考察する事にする)
と言うわけで、「トイレットペーパーの方が水より早く溶ける」が真実かどうか、実際に実験してみる事にした。

2;準備
まず、水を入れる物が必要だ。
「マヨネーズから真珠を作る」及び「水道水の中の水の速さを求める」で使用したビンがあるので、それと同じ物をもう1つ買ってきた。


写真1 全く同じ物(実はフタの色が違うのだが)


一見形が同じだが、100円ショップの製品なので化学実験専門店で買ってきたビーカーには精度が劣るだろう。
だが今回の実験では、ビンの形が結果に影響するとは思えないので、気にしないことにする。
そしてティッシュペーパーとトイレットペーパーだが、次のように用意する事にした。
1;まず、トイレットペーパーをミシン目からミシン目まで綺麗に切り取る
2;次に、それと同じサイズにティッシュペーパーを加工
3;最後に、2枚組みのティッシュペーパーを1枚にする
これで、両者全く同じ条件になるはずである。
では、実験開始だ。

3;実験
実際にティッシュペーパーとトイレットペーパーを比べてみると、意外な新発見がある。
まず、ティッシュペーパーはトイレットペーパーに比べて非常に大きい事。
そして、ティッシュペーパーよりもトイレットペーパーの方が厚い事、などだ。

今回は、今までの中で一番簡単な実験である。
まずティッシュペーパーを加工し、ビンに水を300ml入れ、そしてトイレットペーパーとティッシュペーパーをそれぞれ水に沈めればよい。
早速ビーカーに300mlの水を入れ、そこに4つ折りにしたティッシュペーパーとトイレットペーパーを投入した。


写真2 ティッシュペーパー(左)をトイレットペーパー(右)サイズに加工し…



写真3 それを4つ折りにして…



写真4 投入!


どちらも一瞬にして水を吸い、水面に浮かんだ。
この時水を吸う速さにも注目してみたが、どちらもほぼ同じぐらいだった。
現段階では特に違いは見受けられない。
水に入れる前は、表面の質感などでどちらがどちらかわかったが、今はそれすらわからず、むしろ違いは減ったと言えよう。
で、この状態で1時間半ほど放置してみた。


写真5・6 1時間と32分経過(左ティッシュ、右トイレット)


見た目の変化、全くなし。ビン内側に気泡が付いたが、それだけである。
「トイレットペーパーの方が早く溶ける」と言うから、水に入れてしばらく放っておくと溶けてなくなってしまうのかとばかり思っていたが、どうやらそうではないようだ。
と、ここでデジカメの電池が切れたので、このまま丸1日放置する事にした。

4;実験その2
さて、1日が過ぎ、電池の充電が終了したところで、実験再開である。
およそ23時間と30分放置した2つの紙だが、いくら見てもほとんど変化がない。
強いてあげれば、ティッシュペーパーの方が隅がややほつれてきている、と言うぐらいだろうか。
しかしこれは、ティッシュペーパーをハサミで切ったためであり、水につけたことによるもの、とは考えにくい。
このままじっと見ていても埒があかない。と言うわけで、強硬手段を取る事にした。
よくよく考えてみれば、塩を水に溶かすにしたって、水に入れただけではなかなか溶けない。
割り箸か何かで掻き混ぜて、初めて全部溶けるのだ。
と、言うわけで。


写真7 下の白いのは記録用紙、右の手の後ろにあるのは腕時計、中央下の黒い沁みはレンズの汚れ


割り箸で掻き混ぜる事にした。
ビンの中に徐に割り箸を突っ込み、掻き混ぜる事約10秒。
ここで、両者に明らかな違いが出た!


写真8・9 お分かりいただけるだろうか(左ティッシュ、右トイレット)



写真10・11 真上から見るとこんな感じ(左ティッシュ、右トイレット)


両者の違いは一目瞭然。トイレットペーパーはボロボロに千切れ、ティッシュペーパーはほぼ原型を留めたのだ!

5;結論
さて、今回の実験は「トイレットペーパーはティッシュペーパーより早く溶ける、は本当か?」を検証する物であった。
と言うわけで、結論は以下のようになる。

「トイレットペーパーはティッシュペーパーより早く溶ける」はウソである。
確かにトイレットペーパーは粉々になったが、水に溶けたわけではないからである。

また、「トイレットペーパーはティッシュペーパーより早く溶ける」と言う文章は、「ティッシュペーパー水に溶ける」と解釈できるが、実際にはそんな事はなさそうである。

6;ちなみに
「もしかしたら溶けるかも」と思い、トイレットペーパーの入った水を10分ほど掻き混ぜてみたが、
溶けきれない量の塩を水に加えたときのような状態(全体的に白いモヤがかかり、ビンの底に白い塊が沈殿する状態)になるだけで、予想外と言うか、予想通りと言うか、溶ける事はなかった。
また、試しに水に入れた直後に掻き混ぜてみたが、結果は全く同じだった。
…1日放置したのは、無駄だったのだろうか。


しかし、トイレットペーパーが粉々になる早さには目を見張るものがあった。
割り箸で軽くつつくだけで穴が開き、掻き混ぜるとあっという間に散り散りになってしまったのである。
ところが、水に濡らさない状態では少し引っ張った程度では破れないし、あれで体を拭いている時に指が突き抜けた、と言う経験もない。
にもかかわらず、水に濡らすだけでああも脆くなってしまうのだ。
濡れないと強く、濡れると一気に弱くなる、アンパンマンのような性質を持っているのが、あの紙なのである。
一体どのようにして作っているのか、研究する余地がありそうだが、今回の実験はこれにて終了である。

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2007年08月14日 レポート公開 inserted by FC2 system