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逆立ちしたまま水を飲んでみる
1;問題提起
1950〜60年代、宇宙開発が活発だった頃。
「重力の無い場所で、食べ物はちゃんと胃まで届くのか?」と言う疑問が出た事があったらしい。
結果はイエス。無重量状態の宇宙船内でも、食べ物を食べる事はできた。
では、これが逆さまだったらどうか。
天が地になり、地が天になっても食べ物を食べる事ができるのか?
要するに、人間は逆立ちした状態で飲食する事が可能なのか、と言う事だ。
以前、何かの本で「可能」と読んだ気がするが、実際に自分の体で実験してみよう。

2;準備
今回の実験は簡単である。逆立ちして、飲み食いして、終わりだ。
しかし、言うは易いが行う難し。逆立ちした状態で、水を口の中に送り込むのが至難の業だ。
コップに注いだ水を、こぼさずに、逆立ちした状態で口まで運ばなければならない。
しかもその間、片腕で逆立ちをしなければならない。
私にはそれは無理なので、以下のような道具を買ってきた。

直径3mmのゴムチューブ
写真1 1m34円を、70cm購入し、23円。


(今回、撮影をいつものデジカメではなく携帯電話に変更したため、画質や表示サイズがいつもと異なります。
 また、クリックしても拡大しません)
さぁ、これで準備は整った。早速、実験開始である。

3;実験その1〜横〜
先ほども言ったとおり今回の実験は簡単なので、寝ながら飲み食い可能かどうかも調べてみる事にした。
というわけで、早速寝っ転がってパンを食べてみた。

行儀が悪い
写真2 ネット初公開。私の横顔。


写真はブレてしまったが、実験は大成功。全く支障なく、パンを食べる事ができた。
強いて難点を言えば、パンを食べようとあごを動かすたびに、頭が床ですれて痛い事だろうか。
地球に重力があるのが恨めしい。
では、次。水を飲んでみる。
横になったまま、ビンに注いだ水をチューブで飲んでみた。

チューブで水を吸う
写真3 ちなみにビンは、「マヨネーズから真珠を作る」「水道水の中の水の速さを求める」
及び「ティッシュペーパーとトイレットペーパーを水に溶かす」で使用したものである。


こちらも、特に支障はない。ほぼ問題なく水を飲み込む事ができた。
ただし、少し油断すると鼻の方に水が行ってしまうので、飲み込む際には注意する必要がある。
舌を意識的に動かし、水を喉の奥に追いやるイメージで飲み込めば、全く問題なく水を飲む事ができた。

4;実験その2〜縦〜
さて、次は逆立ちした状態での飲食である。
先ほど同様、まずはパンを食べてみる事にした。

食べているのは食パン
写真4 ネット初公開。私の顔。


やはり、全く問題ない。
若干、唾液が鼻の方に流れていくような違和感があったが、飲み込みに関しては普通だった。
一度喉まで到達してしまえば、あとは食道がパンを胃へと運んでくれる。

さあ、ではいよいよ本命、逆立ちした状態での水飲みである。
チューブの一端を口にくわえ、他端をビンに突っ込む。その状態から壁倒立をして…飲む!

飲む!
写真5 ちなみに、着ているのは白衣。


おお、成功!
(写真では暗くなっていてわかりにくいが、床に置いたビンから口までチューブが伸びている)
本で読んだとおり、本当に逆立ちしたままでも水が飲めた!

…が!
突発的なことだったので写真は取れなかったが、やはり重力が逆さまになっている以上、油断は禁物である。
横になっていた時同様、気をつけて飲まないと、鼻に水が逆流する。
写真がないのが本当に残念だが、油断した私の鼻を、水が襲った。
とは言え、注意さえすれば全く問題ない。
舌で水を喉の奥に押しやるイメージで、意識的に飲み込めば、普通に飲む事ができる。
あまりにもあっ気ないが、これで今回の実験は終了だ。

5;結論
既に書いているが、
寝ても、逆立ちしても、パンを食べたり水を飲んだりする事は十分可能である。
ただし、水の鼻への逆流だけはご注意いただきたい。

6;考察
そもそも今回の実験の動機は、宇宙船内での飲食の話である。
無重力空間で物が食べられるのなら、逆さまなら…? と言う考えだったわけだが、見事成功した。
ところで、パンはとにかく、水を飲む際は横になっていても逆立ちしていても、意識的に舌を動かす必要があった。
そうしないと、鼻に水が行ってしまうのだ。
これは重力のせいだろうが、無重力空間ではどうなのだろうか。
地上では重力のおかげで鼻の方に水が行かないが、無重力空間ではそれがない。
そのため、油断した状態で水を飲むと、水の一部が鼻の方に行ってしまうのではないだろうか。
よって、宇宙飛行士も意識的に舌を動かして水を飲んでいるのではないだろうか。

7;感想
何度も言うように、今回の実験そのものは簡単だった。
だがなにを隠そう、私は腕力が低い。そもそも力が弱い。
実験そのものよりも、逆立ちする事に体力を使った。
「学者に一番必要なのは体力だ」という言葉を聞いた事があるが、本当だと思った。

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2008年03月20日 レポート公開 inserted by FC2 system