メビウスの輪
それは、裏と表がつながっている輪
表を辿っていても、いつのまにかに裏に来ている…
これは、我々の住んでいるこの世界も同じ
表の世界で生活していても、ちょっとした弾みで…………
メビウスの輪¥第三者$
ようこそ。黄黒真直著、メビウスの輪へ。わたしはこの小説の語り手、メビウス。
別に、この小説の題名でもあるメビウスの輪を造った(考えた)メビウスとはなんの関係もない。
今回の話しは、ある借金取りと、金を借りている人物のはなし。
金を借りている人物にとって、金を貸している人は嫌な存在…。その関係を引き裂くのは…?
メビウスの輪¥第三者$
男の名前は、浅間亮一。現在知人から金を借りている。始めはほんのすこしづつだったが、借り続けているうちに、300万にものぼってしまった。
「くっそ〜…。あいつめ…。金を返さないからって、暴力に訴え始めやがった…」
浅間はそういって、布団をかきむしった。
「このままじゃ、金を返す前に殺される…。いや、いっそそっちの方があいつが損するだけだからいいかもしれない…。くそっ。あんな奴…殺してやる…」
浅間はそんな事を考えながら、眠っていた。いや、眠ろうと努めていた。しかし、がんばれば頑張るほど眠れなくなり、そのうえ、借金取りに対する怒りが増え続け、とうとう眠れなくなってしまった。
「たしかに、金を返さないおれのほうが悪いが…暴力は行き過ぎだ。あいつめ…殺してやる…」
浅間はそういって睡眠薬を取り出し、飲みこんだ。
次の日、浅間は朝早くに目が覚めた。
「ふぅ。昨日は、睡眠薬のおかげで眠れたな…」
そういって、何気なく手を見ると、そこにはなんと、大量の血がついていた。
「!?なんだこれは?」
いそいで洗面所に行き、浅間は手を洗った。そして、鏡を見た時、パジャマにも大量の血が付いていることがわかった。
(どうなってんだこれは…)
浅間は動揺し、とりあえずパジャマを洗濯機の中に詰め込み、洗濯機を動かした。そして私服に着替えた。
(幸か不幸か、おれは職に就いていない。ゆっくり何があったか考えられる…)
浅間はそう考え、ゆっくり事のおこりを考えた。しかし、考えたってわかるものではない。
浅間は先に腹ごしらえをしようと台所へたった。そして、料理をしようと包丁を手に取ると、何かぬるぬるしている。見てみると、包丁も血だらけだった。これで、浅間には事のおこりがよ〜くわかった。
(おれは、誰かをこの包丁で殺した……!?)
だが、浅間にはそんな記憶は一切ない。一体、なぜこんなことになったのだろう?そう考えていると、ドアの呼び鈴が鳴った。
「なんだよ…この朝早くに…」
浅間はそういって、寝ぼけ眼をこすりながらドアを開けた。そこに立っていたのは警官だった。
「浅間亮一、おまえに殺人容疑がかけられている。ちょっと署まで来てもらう」
警官は浅間がドアを開けるなりいきなり言った。
「な、なんですか!?おれは殺人なんてやってないぞ!」
しかし、今の警官の一言で、さっきの推理がはずれていなかった事がわかった。
「詳しい話しは署で聞こう!ともかく来い」
警官は抵抗する浅間を無理矢理車に乗せ、署に連れていった。
署
浅間はあせった。警官はおそらく、自分の家を調べるに違いない。包丁の血は洗ってないし、パジャマだって、ルミノール液で調べれば、一発で解ってしまう。こうなったら、事を全て話すか…。浅間はそうも考えたが、こんなこと、警察が信じる訳がない。なんとか、誤魔化し続けようと決心した。
浅間が署につくと、警察が事件の説明をしつつ、浅間に質問をした。
「浅間亮一。おまえは、近勿啓介(きんもちけいすけ)から、借金をしている?」
警察はそう聞いて来た。浅間は、嘘をついてあとで嘘が発覚しても面倒なので、「はい」と答えた。
「そうか。実は今朝、と言っても、夜中なのだが、近勿が殺害された」
「ええ!?」
浅間は、動揺が隠せなくなった。近勿とは、周りから好かれ、人もいい。殺す動機があるのは浅間ぐらいだからだ。だからこそ、警察も浅間を尋ねたのだろう。
「おまえにとってはラッキーだが、動機の線で考えると、犯人はおまえしかいない。しかし、証拠がない。そこで、家宅捜査をさせてもらいたい」
警察は、なぜか丁寧に聞いた。
浅間は正直、動揺が隠せなかった。家宅捜査なんてされたら、100%犯人にされてしまうからだ。しかし、断わっても怪しまれるだけなので、しかたがなしに承諾した。
「そうか。よし!じゃあ、警官を集めて、家宅捜査に行ってこい!」
浅間を尋問している警官は、部下らしき人物に命令した。
「さて、今日の午後、早速裁判だ。弁護士を急いで呼べ。知り合いにいなかったら、こちらで決める」
「いや、知り合いに弁護士がいますので…」
「そうか」
こういう時に、知り合いに弁護士がいると便利だ。浅間は正直、そう思った。
さて、ついに裁判が始まった。検察側の証拠品は、ルミノール液をかけたら、光るパジャマと化したパジャマ(と言っても、特別な光を当てなければ光らないのだが)と、血まみれの包丁。
しかし、こちらには何もない。
「おい。なんかないのかよ?」
「そうだなぁ」
浅間は考えた。もし、こちらに何の武器もなければ、確実に浅間の有罪は決まってしまう。
「あ、そうだ」と、浅間は言った。
「おれ、昨日眠れなくて、睡眠薬飲んだんだ。だから、朝までぐっすり」
「そうか、それはいい事を教えてくれた」
浅間の知り合いの弁護士はそういって、自信満々に裁判所に入っていった。
そして…
「これより、浅間亮一に対する、裁判を始める」
色々と裁判は始まる前に、いろいろやるのだが、面倒だし、詳しく知らないから飛ばす。
「今回の事件は、目撃者がいないので、証拠だけでとなる。証拠品はこれです」
検察側はそう言い、血まみれの包丁と、パジャマを出した。
「この包丁は、被告の物で、被告の指紋しか付いておりません。それと、パジャマにも、被告の指紋しか付いておりません」
この発言に、弁護士は、
「しかし、それは被告以外の人物が手袋をはめ、盗み、犯行を行ったのかもしれません」
と、言い返した。
「しかし、被告以外に殺す動機を持つものはいない!」
と検察。
「しかしですね、被告は事件前夜、睡眠薬を飲んでいるのです!」
「なに!?本当か?被告!」
検察は、浅間に尋ねた(普通はこんなことはない)。
「はい」
浅間は、そう答え
「なんなら、血液採取して下さい。そうすれば、ボクが犯行時刻、睡眠薬で眠っていた事がわかるはずです」
と、付け加えた。
検察側は、すぐに医者を呼びだし、血液検査を行った。その結果、浅間が昨晩睡眠薬を飲んだことがわかった。
「ということは、被告にアリバイは出来ますね?」
弁護士は、勝ち誇ったかのように、いった。
浅間は弁護士にも、警察にも、手に付いた血の事は話さなかった。手にルミノール液をつける訳が無いので、ばれもしなかった。それが勝因となり、浅間は殺人容疑から逃れることが出来た。
とは言ったものの、借金取りが死ぬと、殺したいと願っていてもやはりいい気分ではない。
(しかし…)と、浅間は考えた。
(一体、誰があいつを殺したんだ?特に、うらまれるような奴じゃないし……)
浅間は、考えながら、家路へ急いだ。
家につくと、借金から開放された喜びと、借金取り殺人事件の謎が頭の中を回り続け、興奮がなかなかおさまらなかった。その興奮状態の中、浅間はとりあえず夕食をとり、入浴もすませた。
(やれやれ…。裁判所の緊張で疲れて今日は早く眠りたいのだが……眠れそうにも無い…)
浅間はそう考えて、また例の睡眠薬を取り出し、飲みこんだ。
(これからどうしよう。就職口を探さなければな…。しかし、金の借りてがなくなってしまった。………探せば他にもいるかな?………金……どこか…に………無いかな……………)
浅間は、意識がもうろうとなり、眠りに入った。
次の朝、浅間は目を覚ましリビングに来ると、目を疑った。なんと、部屋の中が荒されているではないか!
(な、なんだこれは…!?)
浅間は絶句した。だが、とりあえず冷静になり、なくなった物が無いかどうか調べた(本来は、この前に警察へ連絡しましょう)。
(おれはいま、金をもっていなければ、金目のものも持っていない。おそらく何も盗まれてはいないとは思うが…。念の為、調べるか)
浅間は、部屋の中を調べはじめた。しかし、荒されてはいるものの、なくなったものは何も無い。やはり、金目の物がないと気が付いたのかな…?浅間はそうも考えた。だが、念の為と、もう一度調べた。
調べているうちに、一枚の紙切れを見つけた。それは、昔受けた人間ドッグの診断書であった。
(なんだこれ?こんなもんまだとってたのかおれは…。5年ぐらい前のじゃねえか?)
そんな昔のものにもかかわらず、浅間は妙に気になり、それを読んでみた。するとそこには、こんなことが書いてあった
『その他;浅間様は、睡眠薬を飲むことによって夢遊病になる、特異体質の持ち主です』
それを読んだ瞬間、浅間には借金取り殺人事件の犯人、そしてこの部屋を荒した犯人が解った。
次の日から、浅間はすぐに暴力に訴える知人から、金を借りた。なんどもなんども、大金を借りていった。そして借金がたまり、知人が暴力に訴えだすと、
「あんな奴め…暴力に訴える事ないじゃねえか…。殺してやる!」
と、恨みながら睡眠薬を飲み込んだ…。
教訓;自分の体質は有効活用しましょう。
¥第三者$END
あとがき
どうも、こんにちは。黄黒真直です。
いかがでしたか?新作第一作、第三者。暇つぶしに書いたものなのですが、どうせ書いたのならもったいないので…と言う訳で、ちょこっと加工してみました。
え?ところであの教訓はなんだ?教訓ですよ。え?全然教訓になってない…。そうですか。ま、世の中使えるものは使えって訳ですよ(謎)。じゃあなに、金を貸す時は相手の体質を考えろってか?(そうじゃないだろ)
(ま、それは置いておいて)読んでわかったかと思いますが、この小説は、あのテレビ番組を真似してます。え?どれかって?ほらあの、レ・ミ・ファ・ソ・アス・アス・ソ・ファ・ミ・レ・レ・ミ・ファ・ソ・アス・アス・アス・ソ・フィ・ファ・ミって曲のやつですよ。DEFGG#G#FEDってやつですよ。
ま、それはおいておいて、暇つぶしに書いたんでなんかつじつまがあわないところがあるかと思われますが、気にしない気にしない。
ちなみに、せっかく名前まで決めちゃったんだから。という訳で好評だったら第二作も出します。
そんな訳なので、感想お願いします。
ではまたいずれ。
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