メビウスの輪
それは、裏と表がつながっている輪
表を辿っていても、いつのまにかに裏に来ている…
これは、我々の住んでいるこの世界も同じ
表の世界で生活していても、ちょっとした弾みで…………


メビウスの輪○良い学校、悪い学校×
ようこそ。キグロ作、メビウスの輪へ。
今回のテーマは題名の通り。
キグロがふと考えたことをそのまま小説にしたようだ。
この小説を信じる信じないはあなたしだい。しかし、どうなっても責任は取りませんとのこと。
それと、今回の主人公は2人。かわるがわるの同時進行だ。
メビウスの輪○良い学校、悪い学校×

「ほら、勉強しなさい」
 少年はいつも、親にそう言われていた。だが、別に反抗せずに言われた通りにしていた。
 少年の名前は伊集院雅司(いじゅういんまさし)13歳。勉強しろしろと言われ続けて13年。雅司は物心付く前から既に塾に通わされていた。
 そう、全てはいい学校に行かされる為に。いい会社に行かされるために、親から。
 雅司は別に、勉強好きではなかった。むしろ、嫌いだった。だが、「勉強して、いい学校、いい会社に入れれば幸せになれる」と、親から言われたことを真に信じ、勉強を続けてきた。そのため、中学は超エリート学校といわれる学校に入った。しかも、そこでもテストはいつも満点。成績も学年1位。
 雅司は、幸せになれる、そう信じて勉強を続けている。

一方、遠く離れたところにも、勉強しろ、と親に言われ続けている少年がいた。
 少年の名前は北藤男(きたふじお)。同じく13歳である。
 藤男はとても反抗的な少年だった。その為、親からは毎日のように叱られていた。だが、そんな事はお構いなし。藤男は反抗し続けた。
 もちろん、親が「勉強しろ」などといったって、聞くわけが無い。
「やだね」
 そういって、反抗を続けた。
 藤男の親も、雅司の親と同じように「幸せになれる」と言って、勉強をやらせた。しかし、藤男は
「勉強したからといって、幸せになれるわけないじゃん!オレは、勉強せずに幸せになってやる!」
 そういって、いつまでも反抗を続けていた。

 そんな2人の少年がいた。

 雅司はいわれるがままに勉強をした。しかし、時々不安になることがある。本当に幸せになれるのか?
「本当よ」
 親はそういって励ました。
「おまえ、頭いいよなぁ」
「すげぇよなぁ」
「塾、毎日行ってんだって?」
「それじゃぁ、頭いいよ」
 毎日、友達からそんなことを言われ続けた。
 だが、雅司はその上を行こうとしているのだ。そう、いい会社へ行こうとしているのだから、こんな言葉、誉め言葉でも何でもない。
「普通だよ」
 雅司はそういった。
「いいよなぁ。おれも、そんな風に言って見てぇよ」
「この学校、超エリート学校ってこと、おまえら忘れてるだろ?」
 雅司は言ってやった。そして、去った。
 雅司にとっては友達なんていらない。勉強の邪魔だ。勉強は己との戦い。自分を誉める友達などいらない。いるのは励ます親だけで十分だ…。

 反抗を続ける藤男を、親も学校も見捨てなかった。
 しかし、実際には、親が自分の名誉の為に、子供をいい学校に入れたいだけなのだ。だから、いつまでも絶対に見捨てない。
 当然、中学も義務教育ではいる公立の学校。
 親、教師からとことん叱られては反抗し、叱られては反抗し、の繰り返しだった。
 だが、藤男にとってはそれがまた楽しくてしかたがなかった。強いものに反抗する。叱られるかもしれないスリルを味わう。なんてスリリングで楽しい毎日なんだろう。藤男は心からそう思った。
(まったく。勉強ばっかりしてる奴の気がしれねぇよ。毎日楽しいのか?あいつら…)
 そう考えては藤男は、勉強をする人達を見下していた。
 勉強が出来ても、毎日がつまらなければ意味が無い。しかし、自分は毎日が楽しい。楽しくてしかたがない。楽しければ、それでいいんだ。そう、考えていた。こんな簡単な事にも気が付かないガリ勉野郎より、この事に気が付いたオレは頭がいいんだ。そして、あいつらは勉強ばかりしているただのバカだ。
 そう思っては見下していた。

 早いもので、中学に入って早3年。雅司は超エリート高校に入学した。それも、学校始まって以来の高成績での入学だった。
「おめでとう!おめでとう!」
「すばらしい!」
 周りの人は、みんなそう言ってくる。だが、雅司は別にうれしいとも思わなかった。まだ、幸せになっていない…。もっと…もっとうえへ行くんだ。
 雅司はそれだけを考えた。
「お宅のお子さん、すごわねぇ」
 と、いわれては
「まぁね。ほほほ…」
 と、雅司の親は言い返した。
「おまえすごいなぁ」
 と、言われては
「そうか?普通だろ」
 そう、雅司は言い返した。
「普通なのか?」
「普通だろ。じゃ、オレは勉強するから…」
 雅司はそういった。
 勉強ばかりする、そんな奴を誰も好きになるわけが無い。雅司はだんだん友達がいなくなり、ついには全くいなくなった。
 だが、雅司は別に後悔する様子はなかった。それどころか、むしろその状態を喜んでいた。
(これで、勉強に集中できる)
 雅司は、とことん勉強した。

 藤男も、中学を卒業した。だが、全く勉強をしていないのだから、高校に入れるわけが無い。
 親の強制により、いくつもの高校を受験したが、どれにも落ちた。いや、自ら落ちたのだ。藤男は、わざとすべての受験答案用紙を白紙で提出したのだ。
「はぁ…。まったく…。全滅なんて…」
 藤男の親は落胆したが、藤男はそんなことは全くおかまいなしだった。
「ほら!来年高校に入るんだから、勉強しなさい!」
 藤男の親は、きつく言いつけたが、藤男にはそんなもの関係なかった。
 藤男の親は、よほど高校に行かせたいのだろう。いつまでも見捨てなかった。
「勉強しなさい!」
「うるせぇ!」
 藤男あくまで反抗した。抵抗を続ける事に疲れを感じ始めて来たが、いまさら勉強する気になんかなるわけが無い。勉強をする気が無くても、親は見捨てない。そんな家庭に、藤男はしびれを切らした。

 雅司は超エリート高校でも、いきなり学校一の成績になり、それを維持し続けていた。だが、当然友達などいなかった。恋人だっているわけが無い。
 だが、雅司はそれも将来、エリート会社に入って幸せになるためだ、と自分に言い聞かせ…いや、既に言い聞かさせられて、もはや、何を言っても勉強を続ける体になっていた。
 幸せになるんだ。
 その一身で、勉強を続けた。
「おれ、留学したい」
 雅司がそう言いださないわけが無かった。
「え?本当?」
「うん。だって、日本は簡単すぎるんだ…」
「そう…」
 もちろん、雅司の親はOKした。そして、雅司はアメリカに行くことになった。
 雅司は、英語もペラペラだったため、全く困らなかった。
「You well〜〜〜〜〜〜〜(君は、日本人なのに英語が上手いね)」
 アメリカに行っても、雅司は誉められた。
「This〜〜〜〜〜〜〜〜〜(普通ですよ)」
 まさに、非のうちどころの無い子供だった。

 非のうちどころがありすぎる子供、藤男は、一向に親に見捨てられなかった。
(とっとと見捨てろよな…)
 藤男は、本気でそう思っていた。
(うざってぇんだよ…たく…)
 そして、藤男はふと思いついた。
(そうか…。おれが出て行けばいいんだよな…)
 藤男は、夜逃げのように家出した。
(家出して…金だな。一応家からある程度盗んできたけど…バイトでもすっかぁ…めんどくせぇ)
 藤男は、バイト探しを始めたが、家出をして、身分証明所も無く、学校にも行っていない不良を買うところがあるわけが無い。
(ちっ…。まぁ、この家から盗んできた金でなんとかするか)
 余談ですが、子供は親の金を盗んでも、罪にはなりますが、罰せられないとのことです。だからと言って、やっていいというわけではありません。

 雅司は、当然アメリカでもトップだった。そして、友達がいなかった。
「Wonderful!(すばらしい!)」
「This〜〜〜〜〜〜〜〜〜(普通ですよ)」
 教師が誉めても、とりつく島もない返事をした。
 そんな雅司を、誰もが嫌った。そして雅司も、みんなを嫌った。
(勉強勉強)
 それでも、雅司は全く気にせず、勉強だけをしていた。好きでもない、勉強を…。
(幸せになるために…)

 そして、数年の年月がたった…。
 藤男は、中卒で、しかも家出をした。そのため、就職には付けなかった。それどころか、アルバイトすら出来なかった。
(ちっきしょう…バイトもできねぇのか)
 藤男は怒っていた。
「ああ!くっそう!もう金もねぇしよう!」
 苛立ち、財布を叩き付けた。藤男はいま、金も無ければ就職先も無く、家も、何も無かった。
「……………ホームレスなんてやだぞ…」
 だが、藤男にはもうそれしか残っていなかった。

 雅司は日本に戻って来た。そして、超エリート会社とされる会社に就職した。
「おめでとう!!」
「ありがと…」
 雅司はとりあえず言っておいた。
(おれが目指しているのはこんなものじゃない…。もっと上の…幸せだ!)
 雅司はそれだけを考えた。
 会社に入り、しばらくたったが、雅司は一向に幸せにならなかった。雅司は会社に入ってもずっと勉強をしていた。そのためか、会社でも同僚から離れられた。
「………」

 藤男も、ホームレスとなりはや数ヶ月。
 藤男は、幸せではなかった。
(くそぅ…なんで…こんなことに…)
「はぁ…」
 藤男はため息をついた。
 雅司も同様にため息をついた。どちらも幸せになれなかったようだ…。
「こんなことなら、ちゃんと勉強しておくんだった…」
「こんなことなら、あんなに勉強するんじゃなかった…」
 2人は同時につぶやき、そして自分を恨んだ。

教訓;勉強と幸せの間にはなんの因果関係もない。

    〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜
久しぶりにメビウスの輪を書きました。
今回のテーマは勉強。
勉強って、もともとの意味は『嫌なことを無理矢理やる』って意味だそうで(まぁ、もともとの意味って言うより、中国での意味)。
うちの親もねぇ…勉強しろ勉強しろってうるさくて…(グチかい)。
ってなわけで、ちょっと小説にしてみました。なんか、思ったより短くなったな…まぁいいか。
このプログラム(HTML Project2)だと、どんぐらい書いたんだかがよくわからない。
でも負けない。
閑話休題
さて、なぜかこんな題材になってしまいましたけど、よければ掲示板に感想かいてください。
誰でもいいです。どんなことでもいいです。苦情でもいいですから、おねがいです。
感想書いて下さい!
それだけです。おもしろかった、つまらなかった、それだけでもいいですから。
人気があるのか否かを知りたいだけですから。
というわけで、感想をレスしてくださ〜い!

         作;黄黒真直 inserted by FC2 system