メビウスの輪
それは、裏と表がつながっている輪
表を辿っていても、いつのまにかに裏に来ている…
これは、我々の住んでいるこの世界も同じ
表の世界で生活していても、ちょっとした弾みで…………


メビウスの輪!とある誤解?
ようこそ、キグロ作メビウスの輪へ。
わたしは語り手のメビウス。
今回の話は、とあるいたずらっ子の物語り。
このいたずらっ子は親の言うことを全然聞かずに遊び放題、いたずら放題。
ところがある日……。
今回の話は、女性といま現在交際している、その中でも交際を始めたばかりという男性諸君に、お送りする。
メビウスの輪!とある誤解?

 河口健太(かわぐちけんた)は近所でも評判のいたずらっ子だった。
 と言っても、近所の人に迷惑をかけているわけではない。迷惑をかけるのは、身内だけ。どうも、「他人に迷惑をかけてはいけない」と言うルールは守っているようだ。
 健太は何気なく冷蔵庫を開けた。
(ん?珍しく、コーラが入ってらぁ。よぅし…)
 健太はコーラビンのふたを取り、砂糖を中に入れた。
(ケケケ……)
 そして、テーブルの上に置いておいた。
 母親の美佐子(みさこ)がリビングにやって来た。
(あら?コーラが外に出てる…。冷蔵庫にしまっておいたはずなのに…。健太が飲んだのかな?まったく、出しっぱなしで…)
 そして美佐子はコーラのビンを持った。
 と、その瞬間「スポーン!」と快い音を出して、コーラの蓋が吹っ飛び、同時にコーラも一気に吹き出た。
 言うまでもなく、美佐子にとって、この「スポーン」という音は、全く快くなかった。
「な……け…健太ぁ!!」
 隠れて見ていた健太は、耐え切れなくなって笑い出した。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
 そして逃げ出した。
 コーラに砂糖を入れると、急激に炭酸ガスが出る。そこで蓋をしておくと、中に炭酸ガスが充満し、そのうち爆発するのである。
 健太はその事を思い出してこのいたずらを行ったのだ(注;実際にやると、蓋が吹っ飛ばずにビンが割れたり、タイミングよく割れずに冷蔵庫の中で爆発する危険もあるので、絶対にやらないように)。
「ハァ…ハァ…。全く…なんて逃げ足の速い……ハァ」
 体中コーラ臭くなりながら、美佐子は健太を追いかけたが、追いつくわけもなかった。いや、既に見失っていた。
「ハァ…ハァ…せっかく人が買って来てやったのに……ハァ…」
 仕方無しに、家に戻った。
 家の中には、ちゃっかり健太が居た。
「お帰り、母さん」
「け……健太ぁ!!!」
 健太は怒りをかう前に、とっとと家を飛び出した。
「遊び行ってきまぁす」
「どこ行くの!?」
「川かなぁ?」
「かわぁ!?昨日、雨だったんだから、気を付けなさいよ!」
 健太は無視してとっとと川へ行った。
 なんでまた川なんかに…と、健太は自分でも思ったが、なんとなく川に行ってみたかった。
 川には人はいなかった。
 今日は肌寒いし、無理もないだろう。
 釣竿を持ってきたわけでもないし、かといって川に入ると風邪ひくし、と言うことで健太は川の岸に腰掛けた。
 昨日の雨で増水したのか、川の水の量は結構多いし、流れも速い。それに、濁っている。
(川なんか来たって、しょうがなかったかな…?)
 健太はそう思いながらも川を見ていた。
 健太は平べったい石を広い、川に向かって投げた。
 水切りをやろうと思ったのだ。
 だが、普通水切りとは湖でやるものであって、川ではやらない。と言うか出来ない。
 それを知ってか知らぬか、川へと石を投げ続ける健太。水切りがなかなか出来ず、だんだんムキになって来ているようだ。
(くそっ!このっ!!なかなか跳ねない!!何故だ!?何故なんだ!?やっぱ、川じゃ無理ってか!?こんちくしょう!馬鹿野郎!!バッキャヤロー!!!)
 どんなに罵声をあびさせたって、出来ぬ物は出来ぬ。いつのまにかに薄暗くなって来たし、健太は諦らめて帰ることにした。
(ちっ。帰るか…)
 と、川に背を向けた瞬間、下流の方から悲鳴が聞こえた。
(!?な、なんだ!?)
 健太は慌てて下流へ駆けた。
 するとそこには、小学1、2年生程度の少女がオロオロとしていた。
「どうした!?」
 健太が聞くと、少女は川を指差した。
 そこにはなんと、同じく小学1、2年生程度の少女が溺れているではないか!
 どうやら、滑ったか何かして、川へ落っこちてしまったらしい。
 川の水はとても冷たい。おまけに流れは速い。
(くそっ!助けを呼びに行っている暇はないし、オレが呼んだところで信用して来る人間がいるかどうかわからねぇ!ちっ、しゃあねぇ。オレが……)
 健太は服を脱ぎ捨て、川に飛び込んだ。
「今行く…!!」
 健太はあまりの川の冷たさに言葉を失った。そういえば、慌てすぎて準備運動一つしていない。かなり危険である。
 だが、そんな悠長なことは言っていられないとでも考えたのか、健太は泳いでいく。
 少女は川のほぼ中央にいる。流れは速い。当然、なかなかたどり着かないし、少女の方だってどんどん流されていく。
(やべぇ…流されていくぞ、オイ…)
 健太は一生懸命泳いだ。流れの速い川を泳ぐことは、とんでもなく危険なである事ぐらい、健太だって知っていた。だが、そんな悠長なことは言っていられないのだろう。
 少女は徐々に動きが鈍くなっていった。当たり前だ。冷たい川の水、速い流れ、そして沈まないようにもがく……小学1、2年生の子が、そんなに長い間耐えていられる訳が無い。
(頑張ってくれ…もう少し、もう少しだ……)
 耐えられる訳が無い。女の子は沈んだ。
(!?やべぇ!!)
 健太は川に潜った。そして、目を開け、必死に捜した。まだ、この辺にいるはずだ…。川の中はひどく濁っていて、少し先も見えない。濃霧の中にいるようだ。
 だが、それでも諦らめずに探した。捜して捜して捜し続けた。
 そして、腕に人の体のような物がぶつかった。
(いた!!)
 健太は夢中でそれを抱きかかえ、水面に出た。抱きかかえていた物は、ぐったりとした少女だった。
(やべぇ、死ぬぞ、おい!!)
 健太は急いで岸に上がった。
 そして、大声で助けを呼んだ。


 30分後、健太の母親が慌てて病院に駆けつけた。
 その病院のベッドには、少女の他にも、何故か健太もいた。
 どうやら、体が冷えすぎ、さらに川の水を飲み込み過ぎたため、念の為こうしてベッドに寝かされたらしい。
「健太!!」
 健太の母は、病室に着くなり言った。
「やぁ」
「やぁ、じゃないわよ!全く。わたしが『気を付けなさいよ』って言ったのに、聞かないからこういう事になるのよ!?」
「いや、オレ、溺れたんじゃなくって…」
「言い訳しないの!!溺れたんじゃないんだったら、なんだっていうの!?」
「人命救助だよ、人命救助」
「………もうちょっと、ましな嘘、考え付かないの?」
「なんだよ、子供の言うこと信じねぇのかよ!?」
「当たり前でしょう」
「あ……当たり前…。と、ともかく、オレは本当に人命救助をだなぁ…!」
「嘘おっしゃい!」
「あの…健太くんのお母さん…?」
 看護婦が、半ば脅えながら、健太の母に声をかけた。
「健太くんは、本当に人命救助だったんですよ?それも、小学1、2年生の女の子…」
「えっ!?そうなんですか!?」
 健太の母は、驚いて看護婦を見た。
 看護婦が、健太の母に説明を始めた。
 その間、健太の脳裏には、ふと、あることが浮かび上がった。
 母さんは、なんと言うのだろうか?
 自分のミスで川に落っこちて川の水を飲み込みすぎ、病院に担ぎ込まれた、と勘違いし、自分に説教をした。
 しかし、それは勘違いだとわかった。
 だとしたらば、謝るのが当然だろう。
 ならば、なんと言って謝るのだろうか?
 よく考えてみれば、健太は自分の母親の謝る姿を見るのは初めてである。それも、自分に対して、なんて……。
 健太は、急に楽しみになった。一体、なんと言うのだろうか?どんな顔をするのだろうか?
 健太は、口元が緩みそうになるのをこらえながら、母親が振り向くのを待った。
 そして、その時が来た。
 母親が、すまなさそうな顔で振り向いたのだ。
 さぁ、何と言うのか…?さぁ、さぁ……………。
 健太の母は、重そうな口を開いて言った。
「まったく、あなたがいつもイタズラばかりするから、こういう時に誤解されるのよ?わかった?これからは、気を付けるのよ?」

教訓;男性諸君は、これに落胆せずに、女性と付き合って欲しい。

    〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜
こんにちは。キグロです。
いかがでしたでしょうか?前作からだいぶ間が開いてしまいましたが、メビウスの輪、とある誤解。
題名はとある誤解でありながら、誤解はほんの一回。
う〜ん…健太と母親の口論、もうちょっと伸ばしたかったな(でもネタがなかったんだよな…)。
それと、今回はなんとかまぁ、こういう笑いがとれる(とりたい)形式に終わることが出来たけど、なんか真面目な内容ばっかり思い浮かぶ……。
本当は、当初の設定としては第三者(一番最初のやつ)や、夢、夢、夢みたいなやつを書こうとしていたんだよね…。
でも、どうも最近思いつかない……。スランプかなぁ??
と言う訳で、メビウスの輪、しばらくお休みです。
いままでも不定期だったけど、次回はいつ出るかわかりません。
もしかしたら、出ないかも知れません。
それでは、運が良ければまた次回、お会いしましょう。

作;黄黒真直

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