メビウスの輪
それは、裏と表がつながっている輪
表を辿っていても、いつのまにかに裏に来ている…
これは、我々の住んでいるこの世界も同じ
表の世界で生活していても、ちょっとした弾みで……
メビウスの輪▲人生は、何度でも▼
ようこそ、メビウスの輪へ。わたしは語り手のメビウス。
あなたは、「あの時ああしていれば」「あのときに戻ってやり直したい」と思ったことはありますか?
今回の話は、ゲーム好きのある少年の話。
少年はある日、なんとゲームの世界に入り込んでしまった。
そこで出会った人々は、全て不自然な行動を取った。
それを見ているうちに、少年はあることに気付いたのだった…。
今回の話は、人生をやり直したいと思っている人に告ぐ。
メビウスの輪▲人生は、何度でも▼
少年の名は海老沢遊戯(えびさわゆうぎ)。何故か近所でも評判のゲーム好き少年である。
ちょっと前までは遊戯の親もゲームをやりすぎるなと言っていたが、つい最近とあるゲーム大会で優勝し、賞金を貰ったのだ。
こうなってしまうと、親としても一概に叱りきれない。ほどほどに叱っている。
遊戯は今日もゲームで遊んでいた。いまやってるのは、「クリスタル・バトル」と言う冒険物のアクションゲームだ。いろんな街を周って「クリスタル」を集め、ラスボスを倒すのがこのゲームの目的だ。まぁ、良くあるゲーム設定だ。
主人公は華麗に画面を動き回り、敵を蹴散らしていた。武器を振り回し、走り回っていた。
時々画面に「Hit!」だとか「Great!」だとか出る。連続技や特殊技がうまく当てられた証拠だ。
主人公はやっと敵のいっぱいいる草原を越えて、街へ入った。BGMが変わった。近くの看板の前でボタンを押す。「カーボン街。ダイヤモンドがたくさん採れる」と書いてあった。
〔おっ、じゃあここでなんかいい剣でも見つかるかな…?〕
遊戯はそうにらんだ。
〔ま、その前にセーブだな。それに今日はもう遅いし…セーブして寝るか〕
主人公は近くの宿に入った。BGMがまた変わった。
中にはちらほらと人がいる。カウンターの前に行き、受け付けに話し掛けた。
「どうしますか?
>話す
>宿に泊まる」
ボタンを操作して、「宿に泊まる」を選んだ。
主人公は部屋へ行き、中にあるベッドに寝た。これでセーブ完了である。
遊戯は電源を切り、眠りに入った。
次の日の朝。遊戯はいつもより早く目が覚めた。外ではスズメがチュンチュンと楽しげに鳴いている。
〔珍しいな……〕
と思った瞬間、もっと珍しいことが起こった。なんと、音楽がなりだした。
〔!? な…なんだぁ!?〕
そして、遊戯は気付いた。自分が寝ているのは、いつものベッドではなかった。それどころか、部屋からしてガラリと違う。
〔ど…どこだここは…?〕
しかし、どこかで見たことがある気がする。どこだろう…? 遊戯は落ち着いて回りを見渡した。そして、どこで見たか思い出した。信じられないことだが、思い出した。
〔ここ………クリスタル・バトルの宿だ……〕
信じられないことだ。どうしても。だが、紛れもない事実だ。
〔いったい…何故…?〕
遊戯がベッドから降りると、ガシャンと音がした。
見ると、なんと自分はよろいを着ているではないか。
〔これは…これも、クリスタル・バトルに出てきた…〕
もしやと思い見てみると、思った通り武器もあった。
〔ゆ…夢…だよな? そうだよな…。うん。そうだ。夢だ、夢…〕
遊戯はほっぺたをつねった。その瞬間、恐怖を覚えた。
痛い。
試しに、武器の1つ…ナイフで、ちょっと手の甲を突っついてみた。
痛い。
もう少し突いてみた。
切れた。
傷口から、血が出てきた。
〔夢じゃない…?〕
すなわち…自分は、何らかの原因でクリスタル・バトルの世界に入り込んでしまった、と言うわけか。
遊戯はもう一度自分の体をよく見た。近くに鏡があったから、それに映してみた。
顔は元のままだ。体のラインも、ほぼ元のままだ。しかし、服はよろいを着ている。それも、自分がゲームの中で選んだ組み合わせだ。そういえば、武器もそうだ。
〔そういうことか…。つまりなんだ? オレにこの世界を救えと? ようし、やってやろうじゃないか〕
遊戯は、もうヤケになった。
宿から出ると、ゲームの中で最後に入ったカーボン街だった。ここは二つ目の街だ。本物のゲームなら、ゲームの操作方法なんかがまだ聞けるところだ。
近くにいる人に話し掛けてみた。
「あの…」
話し掛けると、すかさず相手が返事をした。
「もう操作にはなれたかな? この街でも、いろいろ聞き込みをするといいよ」
「え…?」
「もう操作にはなれたかな? この街でも、いろいろ聞き込みをするといいよ」
どうやら…本当にここはゲームの世界らしい。この人々は、同じことしか喋れないのだろうか?
遊戯は慌てていろんな人に話し掛けた。
「もうセーブはした? セーブをするときは、宿に泊まってね。泊まったら、セーブになるから」
「装備武器を変えたい時は、スタートボタンを押してメニュー画面を開いて。その中で、装備したい武器にカーソルを合わせてAボタンだ」
「すぐそこが武器屋だよ。敵も強くなってくるから、強い武器を装備した方がいいよ」
「ダンジョンの中では、スタートメニューの中にある『クイックセーブ』機能を使うと、宿に行かなくてもセーブができるよ」
考えてみると、実際の生活の中でこんなことを言っていたら不気味でしょうがない。しかし、言っているのだ。やはり、ゲームの世界らしい。
こうなりゃ、冒険をするしかない。考えようによっては、面白いことではないか。
遊戯はまずは武器屋と防具屋に寄り、より強い武器と防具を手に入れた。
〔とりあえず、いま装備してる武器を外して…〕
と、ふと街の人のセリフを思いだした。
≪装備武器を変えたい時は、スタートボタンを押してメニュー画面を開いて。その中で、装備したい武器にカーソルを合わせてAボタンだ≫
遊戯はスタートボタンを押した。
別に手になにか持ってるわけでもない。目の前にスタートボタンがあるわけでもない。しかし、なんか押したような気がした。なにか押しているような気がした。
目の前に、メニュー画面が表れた。自分は動けなくなり、目の前のカーソルだけ動かせた。
とりあえず、ロングソード≪攻撃力/13 重さ/17≫と、カーボンガード≪防御力/50 重さ/20≫を装備した。
そして、街を出た。
街を出ると、いきなり敵のギ―ス≪攻撃力/5 体力/10≫の大群が現れた。
〔ザコだな…〕
遊戯はロングソードを構えた。
「ハッ!」
敵に斬りつけた。
いつもゲームをやっている感覚だ。
コントロールスティックを倒し、Bボタンをタイミングよく押す。
まず一振りで3体はやっつけた。そして、振り向きざまにもう2体。ジャンプして1体。その状態から剣を振り下ろして1体。と同時に回転して回りの敵を一掃した。
「Great!」
どこからともなく声がした。
遊戯は、そこからいろんな街を旅した。さまざまな敵と戦った。
宿でセーブをしてから、外を周り、敵にやられそうになったらすかさずリセット。これで宿からまた始められる。
なにかに失敗しても、すぐにリセットボタンを押した。直前にセーブしたところから始められるのだ。
〔便利だ…。これなら、いくら失敗しても大丈夫だ!〕
遊戯はそれをなんども繰り返した。
ついに、最後のダンジョンまでやってきた。
中に入ると、音楽がドロドロしいものに変わった。
遊戯は一旦セーブした。
敵も既にかなり強くなっている。
遊戯はそいつらをお気に入りの武器、ハルバード≪攻撃力/50 重さ/28≫で倒して行った。ヤリとオノを合わせたような武器で、これなら、敵を突くことも斬ることも敵の攻撃を払うこともできる。
ちなみに、防具はマジックローブ≪防御力/70 重さ/0≫だ。
突き進んでいくと、ついにボス部屋にまで辿りついた。
〔この奥に…魔王がいるのか〕
遊戯はクイックセーブを行った。これで、やられてもここから始められる。よくある、ちょっとズルイ手だ。
〔さぁ、入るぞ〕
ギギギギギギ・・・・・
ドアがいかにも、と言った感じで開いた。
中には魔王がいた。人間の形をしている。
「よく来たな…」
「お前が、この世界を脅かしていた魔王か?」
遊戯の口は勝手に動いた。
魔王が二言三言話した。
「この俺に、かなうかな…?」
魔王の目が光ると同時に、字幕のようなものが出た。
「 魔王
デドルフ 」
と表れた。
「ハアァァァァ… ハァッ!!」
デドルフの目から、ビームのようなものが出た。
それを遊戯は避け、デドルフに斬りかかった。
「ウワアァッ!?」
斬ったと同時に自分がダメージを受けた。体力ゲージが目の前に表れ、減っていった。
「貴様なぞに、俺が斬れるか」
ならば、と遊戯はサブマシンガン≪攻撃力/20 重さ/8≫を取り出した。他にもいいのはあるが、とりあえず様子見だ。
「クラエッ!」
パララララララララと軽快な音を出して、弾がデドルフに向かって飛んでいった。
が、あたってもデドルフはびくともしない。
「そんなのが、効くか」
デドルフはサブマシンガン≪攻撃力/20 重さ/8≫を取り出して、遊戯に撃った。
「グッ…」
だが、まだ死にはしない。
〔どうやら奴は…こっちが使った武器をコピーするみたいだな…。厄介な奴だ〕
一撃で決めなければ。
遊戯はいきなりバズーカー砲≪攻撃力/100 重さ/50≫を取り出した。
こいつは、使うと自分もダメージを食らう上に、弾が同時に1個しか持てない。
「クラエッ!」
ドオォン!
「Hit!」
撃つと同時に体力が減り、直後どこからか声がした。
「当たったぞ!」
「・・・・・・・」
「どうなった…?」
デドルフは死んだか…? いや、生きていた。
バズーカー砲を取り出し、遊戯に向かって撃った。
ボォオン!!
「グハァッ!?」
遊戯は後ろに吹っ飛んだ。
「ガハッ…」
残り体力が減り、「ドクン、ドクン、ドクン…」と言う体力が残り少ないことを知らせる警告音が、どこからか鳴った。
遊戯はスナイパーライフル≪攻撃力/70 重さ/50≫を取り出した。人体ぐらいならラクに貫通する銃だ。
「クラエッ!」
バンッバンッバンッバンッバンッ!!
何発も撃ったあと、今度は急いでガトリングガン≪攻撃力/80 重さ/75≫を取り出した。別名「回転式機関銃」。その名の通り連射式の銃だ。ターミネーターにも出てきた奴だ。
「クラエッ!」
ババババババババババババババババババババババババ!!
最後にショットガン≪攻撃力/60 重さ/40≫をぶっ放した。
ドォン!
「Hit!」
「ど…どうだ?」
遊戯は恐る恐る近づいた。
まだ生きていた。
「!?」
デドルフはショットガン≪攻撃力/60 重さ/40≫を取り出し、遊戯に向かって撃った。
ドォン!! ドォン!! ドォン!!
「ガハッ……ア……ガ…ァ……」
遊戯は力尽きて倒れた。
〔で…でも…大丈夫だ…さっきセーブしておいたし、リセットボタンを押せば……〕
しかし、やられたから体が動かない。
〔まぁ、死んだあと再スタートすりゃいいな。ゲームだし〕
そう思ったが、遊戯の頭の中に、一つの疑問が現れた。
〔………ん? でも、オレが死んだあと、誰が再スタートさせるんだ?〕
遠のく意識の中、デドルフの高笑いが聞こえた。
遊戯の目の前に、「GAME OVER」の文字が表れた。
教訓;たった一度の人生、悔いの無いように…。
〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜
ワタクシ自身、まだ15年弱しか生きていないので、まだ人生語るには早いのですが…いかがでしたか? 久々のメビウスの輪。
最後の方は銃ばっかで「セコッ」と思わず言ってしまいましたが…(自分で!?
ってか、なんでもありなんですな、このゲーム。銃も剣も…意外と「コブシ」とかありそうだし。
得にネタも無いのでこの辺で。またいつか、お会いしましょう!
作;黄黒真直
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