メビウスの輪
それは、裏と表がつながっている輪
表を辿っていても、いつのまにかに裏に来ている…
これは、我々の住んでいるこの世界も同じ
表の世界で生活していても、ちょっとした弾みで……


メビウスの輪≪滝登り≪
ようこそ、メビウスの輪へ。わたしは語り手のメビウス。
もしあなたがタイムマシンを持っていたら、どこに…いつに行きますか?
過去か、未来か…。古今東西のSF小説で取り扱われてきた題材です。
そしていずれに行っても避けられないのが、「タイムパラドックス」。
未来へ行き、未来の科学技術を現代に持ち帰る。過去へ行き、タイムマシンを作った人を殺す。
今回の物語の主人公は、いったいどんなパラドックスをもたらすのでしょうか…?
メビウスの輪≪滝登り≪

チッ、チッ、チッ、
 静かな研究室に、時計の音が響いていた。夜明け前…しかし、点けっぱなしの電気のせいで、部屋は明るい。そして彼女は、ふと目を覚ました。
「……あれ…?」
 上体を起こして、周りを見た。自分が横になっていたのは、ソファーだった。自分がいるのは、見慣れた研究室。昨日、研究に疲れて「一休み」したつもりが、そのまま眠ってしまったらしい。
「いたた…」
 変な姿勢で寝ていたのか、体が痛い。ソファーから降りて、体を伸ばす。パキパキと関節が鳴った。
 シャワーでも浴びたい気分だが、残念ながら、この研究室にはそんなものは無い。彼女は…井上ミナミ(いのうえみなみ)は、とりあえず手櫛で髪を梳いて、研究室にある自分のデスクに座った。デスクの上に載っている紙とパソコン、そこに書かれた膨大な数式と図形。ミナミはそれを見て、ため息をついた。
「何か、あと少しで行きそうな気もするんだけど…」
 バキバキ背骨を鳴らしながら、エビゾリになった。あまり整理されていない研究室が、天地逆さまに見えた。
 ミナミがいるのは、U大学の物理学研究室。様々なテーマで研究する学生がいる中、彼女の研究テーマは、学生の中で一番難航していた。
 タイムマシン。
 多くのSFで用いられてきた題材だが、近年その現実性が濃くなってきていた。
 20世紀末、21世紀初頭から、宇宙論や量子力学など、いわゆる「近代物理学」と呼ばれる分野が発達していった。それと同時に発達し始めたのが、「タイムマシン」である。しばらくの間は、絵空事の気配が強かった。いくら理論上は可能でも、現実問題として難しいだろう、と。ところが2115年、タイムマシンの現実性を一気に濃くする理論が、発表されたのだ。当時11歳だった彼女は、すぐさまタイムマシンに興味を持ち、研究を始めた。それから10年…彼女は現在、タイムマシンの研究を行っている。

 しばらく黙々と、計算や参考資料の検索を行っていると、研究室の扉が開いた。入って来たのは、物理学教授の武藤明義(むとうあきよし)だった。
「相変わらず早いね、井上くん」
「あ、先生…。いえ、今日は早いというか、帰ってないんです」
「それは……お父さんが心配しているのでは?」
「…いえ、多分父も研究中ですから」
「そうか」
 それだけ言うと、武藤教授がミナミのデスクを覗き込んだ。パソコン画面には、相変わらず難解な数式が並んでいるし、紙にも同じような式が書かれている。一般人が見ても理解できないであろうその数式たちも、武藤が見れば、何を意味しているのかわかる。
「だいぶ、苦戦しているようだね」
「そうなんです。もちろん、そんな簡単に出来るもののわけ、無いんですが…」
 こういう研究は、大学でやるより、卒業後に研究所で本格的にやった方が…と武藤は言いかけて、止めた。もう何度も言っているが、彼女の決意は変わらなかった。
 大学では、単位とか、卒論とか、そう言う物も必要になってくる以上、実らない研究を続けるわけには行かないのだが、ミナミはこれ以外、やりたがらないのだ。
「…君は何故、タイムマシンの研究を?」
「あれ? 前に言いませんでしたっけ?」
「いや、聞いていない。タイムマシンに興味を持つ学生は多いから、君もその口かと思ったんだけど…」
「その口?」
「例えば、銀行に100万円預けるだろ? それで100年後の世界で引き下ろしてみろ。利子だけで遊んで暮らせる。宝くじの当選番号もわかるし、逆に過去に行って歴史を変えたり、昔の自分にアドバイスしたりも出来る」
「その程度の事なら、私もたまに考えますけどね」
「でも、君の熱意と言うか、そう言うものを見ていると、そんな事のために研究をしているようには見えない。君はタイムマシンで、何をしたいんだ?」
「…先生もご存知の通り、私には母がいないんです」
 パソコンをちょこっといじって、ミナミは言った。複雑な式を入力して、一気に計算させる。
「私を産んだ時、死んでしまったそうです。私の願いはただ1つ…母に会いたいんです」
 計算結果が出た。それを、紙の上の数式に代入する。
「お母さんに…?」
「ええ。写真ぐらいなら見せてもらいましたけど、あまり詳しい事は、父も教えてくれなくて。名前はミナと言うらしいんですが」
「そうか…。でも、何故詳しく教えてくれないんだ?」
「さぁ…それも教えてくれません。ただ、父も母も科学者で、今父がいるのと、同じ研究所に勤めていたそうです」
「何の研究を?」
「遺伝子関連の研究を。詳しい事は、よく知りませんけど」
「ふぅん…」
 新しい数式を、パソコンに入力した。今度は、やたらと時間がかかりそうだ。
「井上くん、朝ごはんは?」
「あ、食べてないです。…ちょっと、食べてきます。学食、もう開いてますよね?」
「ああ、たぶん」
 ミナミは立ち上がって、研究室を出た。その時、お腹が鳴った。

 それから数日経ったある日の事だった。いつもどおり、武藤が午前7時に大学に来ると、ミナミが興奮した表情で、研究室の前で武藤を待っていた。落ち着かない様子で、ずっと飛び跳ねている。
「痙攣でも起こしたか?」
「ちが、違います! 先生! 出来た! 出来ました! タタイムマシシン!!」
「え…? 本当か!?」
「見てください!!」
 もちろん、「出来た」と言うのは、「タイムマシンが完成した」と言う意味ではない。理論が組み立てられた、と言う意味だ。この理論どおりに設計し、理論どおりに動かせば、過去へも未来へも自由自在に行ける…そんな理論が、ついに完成したのだ。武藤も興奮し、2人で理論を整理し直し、完璧な状態に仕上げた。
 これで…タイムマシンが、作れる!

 それからも、ミナミたちの苦労は続いた。物理学部、工学部、数学部と、教授や学生たちが集まって、タイムマシン作りを始めた。
 そして、試験運行はミナミが行う事になった。要するに、ミナミは人類で初めてのタイムトラベラーとなるのだ。ミナミはその事を、父親に告げた。
「ほ、本当か!?」
「本当よ! 過去も未来も、自由自在! ついに出来るかもしれないのよ、タイムマシン!」
「それで…どこに、いや、いつに行くんだ?」
「まずは、過去。30年ぐらい前の過去に行く予定よ」
「30年前? なんでそんなところに?」
「私…お母さんに会いたいの」
「お母さんに?」
 ミナミの父は、一瞬困ったような顔をしたが、すぐに表情を変えた。
「そうか。でも、お母さんにはミナミの事、どう紹介するんだ? そもそも、どうやって探す?」
「私の事は言わないわよ。見れればいいの。探すのだって簡単よ。お父さんの研究所に入ればいいんだから」
 でも、とミナミの父は考えた。
「『ミナミ』なんて人、30年前にうちの研究所にいなかったぞ」
「じゃぁ、偽名を使ったのよ。あるいは、お父さんには会わなかったか」
「…そうかもな」
 ミナミの父は、また困ったような顔をして、首をかしげた。
「だが、お父さんたちの研究所は、生物関係だぞ。ミナミは物理じゃないか。どうするんだ?」
「今からやればいいじゃない。生物の勉強。お父さん、教えてね」
 ミナミの父は、やはり困ったような顔をした。

 ミナミが数式を完成させてから…タイムマシンの理論を完成させてから、5年余りが過ぎた。26歳になったミナミに、最高の誕生日プレゼントが与えられた。
「これが、タイムマシン…」
 ついに出来たのだ。この5年間、ミナミは大変だった。一度完成したかに見えた理論でも、若干の修正を迫られる場合は多い。また、その理論だけでは完全に解ききれないナゾもある。ミナミは5年間、それらと格闘を続けた。
 同時に生物、特に遺伝子の勉強も、平行して進めた。なかなか大変だったが、今この瞬間、それらが報われた……いや、本当に報われるのは、これからだ。35年前の過去へ行き、母親に会う必要がある。
「それでは皆さん…行って参ります」
「行ってらっしゃい」
 5年間でだいぶ白髪の増えた武藤がそう行った。彼も共同開発者として、様々な苦労を追ったのだ(それと白髪が、関係あるかどうかわからないが)。
 球体状の乗り物に、ミナミは乗り込んだ。ドアを閉めると、中はかなり狭い。操縦桿を握り締めると、それをゆっくり倒した。
 大きな音がして、球体が激しく振動する。誰も聞いたことが無い音が鳴り響き、球体が、タイムマシンが薄れていく。
「3、4、5…」
 カウントアップが取られた。計算ならば、10秒足らずでタイムマシンは消えるはずだ。そして行くのだ、過去の世界へ。
「8、9、10…!」
 消えた。何事も無かったかのように、後には何も無くなった。

 計器の針が動く。今、20年前だ。速度計を見る。あと1分ほどで、30年前の過去にたどり着く。自分が生まれる4年前の世界。
「今だ…!」
 ミナミは操縦桿をゆっくり起こした。速度計が遅くなり、止まる。年代は…西暦2095年8月24日。来たのだ、ついに。過去の世界へ。
 このタイムマシンには窓が無い。外がどうなっているか、出るまでわからない。一応、ミナミの母親がいた研究所(「いる」と言うべきか)のすぐ近くのはずだが。
「とにかく出てみよう」
 そう言って扉を開けて、すぐにミナミは仰天した。
 滝のような雨、怒り狂ったような風。この日は、記録的な暴風雨が起こった日だったのだ。
 慌てて扉を閉めたが、もう遅かった。ミナミはプールに飛び込んだかのように全身がびしょ濡れで、タイムマシン内部も水浸しになっていた。
「ど、どうしよう…」
 このタイムマシンは、試験品だ。内装が、まるで整っていない。防水加工など、考えもしなかった。まさか、到着した先が土砂降りだとは、夢にも思わなかったのだ。そして、
バチン!
 と火花が方々で飛んだ。「大変!」と、ミナミは急いで外に出た。感電したら、死んでしまう。叩きつける雨の中に飛び出した瞬間、ボンッとタイムマシン内部から音がした。雨に濡れたせいで、どこかがショートし、爆発したようだ。
「ウソ…ちょっと待ってよ。それじゃ、帰れないじゃない…!」
 タイムマシンの壁を、ミナミはバンバン叩いた。それがいけなかったのか、全く関係ないかはわからないが、突然タイムマシンが振動を始めた。大きな音がして、その振動は激しさを増す。次第にタイムマシンが薄れ、姿を消してしまった。
 何も無い空間を見つめ、呆然と立ち尽くすミナミ。タイムマシンは、勝手にいつかへ飛んでいってしまったようだった。

 悲しんでいても仕方が無い。幸いなのは、ここがどこだか、自分ではっきりわかっている事だ。周りを見渡すと、ここは公園のようだ。そしてすぐ近くに、研究所らしき建物がある。とりあえず、あそこに逃げ込もう。
「すみません! 開けてください!!」
 ベルを鳴らして、ミナミが叫ぶ。すぐにドアが開き、ミナミは中に転げ込んだ。
「どうしたんですか!?」
 研究員の女性は驚き、何人かがタオルを持ってきてくれた。ミナミはそれで体を拭いた。
「ちょ、ちょっと…。あの、とりあえず、雨宿りをさせてください…」
「ど、どうぞ…」
 相手の女性は、30歳ぐらいに見えた。ちょうど、現在のミナミの母ミナの年齢と、同じ頃のはずだ。しかし、顔が似ていない。
「あなた、名前は?」
 ミナミは研究室に案内され、椅子に座ると、研究員たちから質問を受けた。
「あ、井上ミナ…」
 と言いかけて、ミナミは口をつぐんだ。まずい。この時代、この研究所に「ミナミ」と言う女性は存在しないのだ。
「ミナ?」
「え、ええ、そうです」
 奇しくも、母親と同じ名前になってしまった。
「井上さん、ですって」
 女性の研究員が、男性に言った。男性は苦笑して、
「初めまして、井上さん。井上研二(いのうえけんじ)です」
 と言った。「あっ」とミナミは思った。言うまでも無く、ミナミの父だ。若い。ミナミは笑いそうになったが、グッとこらえた。
 タオルで拭いてもラチが明かないだろうから、とミナミはシャワールームに案内された。温かいお湯の雨をかぶりながら、ミナミは考えた。
 自分はこの先、どうなるのだろうか。タイムマシンは、どこかへ消えてしまった。当然、行く当てはない。自分のいたU大学は、この時代もまだあるし、武藤は既にU大学で教えているはずだ。だが、こっちは相手を知っていても、相手はこちらを知らない。事情を説明しても、信じてもらえるかどうか…。
 仮に信じてもらえても、それでは歴史を変える事になってしまう。いや、この研究所に転がり込んだ時点で、歴史は変わってしまっただろうか。「タイムパラドックス」と言う言葉が、ミナミの脳裏を過ぎった。
 自分はこの先、どうなるのだろうか。

 気がつくと、ミナミはその研究所で働いていた。勉強した甲斐があったのだろうか、ミナミは時々研究を手伝わせてもらいながら、雑務をこなして行った。ミナミの素性を気にする者は多かったが、数年も経てば、誰も聞いて来なくなった。一時はスパイ疑惑も上がったが、いつの間にかに聞かなくなった。
「あの、ミナさん?」
「? なんでしょうか、研二さん」
 そんなある日、研二がミナミに話しかけてきた。同じ研究所にいるのだから、話しかけるぐらい普通の事だが、その日の雰囲気は何か違った。
「頼みごとがあるんですが…」
「なんでしょう?」
「いえ、僕としてはこんな事、ミナさんに頼みたくは無いんですが、他に適任者と言うか、その、出来そうな人がいなくて…」
「??」
「実は、うちの研究所が、人間のクローンを作る事になったんですよ」
「人間のクローン?」
 研二が言うには、国際科学研究組合で人間のクローンを世界で1人だけ、作ってみようと言う事になったのだそうだ。解決できていない倫理問題もあるが、解決できた倫理問題もいくつかある。あくまで秘密裏にだが、やってみたらどうだろうか、と言う話になったのだ。
「多数決で、うちの研究所に決まった」
「な、なんで…?」
「クローン技術が一番進んでいたのが1つ。誰もやりたがらず、我々が拒否する前に他の人が全員拒否したのが1つ」
「強制じゃないですか」
「で、うちの研究所で一番若い君に、クローンを産んでもらおうと…」
「え、私のクローンを作るんじゃなくて、私が産むんですか!?」
「いや、君のクローンを作って、君に産んでもらう。……もちろん、嫌なら良いよ。他に探すだけだし、別に無理に実行する必要は無いんだ。元々秘密裏だから、やってもやらなくても誰も問題にしないし…」
「クローン……」
 ミナミには妊娠経験が無い。初産が実験、と言うのは…かなり抵抗がある。しかし…世界で初めての体験でもある。そう言えばミナミは、世界初のタイムトラベラーなのだ。世界初のクローン妊婦になるのも、悪くないか……?
 結局、ミナミの好奇心が勝った。抵抗もあるが、「やります」と思わず言ってしまった。
「そうか…わかった。じゃぁ、やろう。今すぐ、所長に言いに行こう!」
 早速、ミナミのクローンが作られた。ミナミのクローンとなる卵細胞が、ミナミの体に入れられた。今から10か月後…人類初のクローン人間が誕生する事になる。

 出産までの10か月間、ミナミは色んな事を考えた。未来に残してきた大学のみんなは、今頃どうしているだろうか。自分が戻ってこなくて、心配しているだろうか。
 また、母親のことも考えた。母親に会いに来たつもりなのに、未だに会っていない。もしかして、自分がここに来た事で歴史が変わり、母親が別な研究所へ行ってしまったのだろうか。でも、だとしたら、父と母は会わないことになり、自分は生まれないことになる。でも、自分は今ここにいる…。
 歴史が変わっても、「今自分がここにいる」と言う事実は変わらない…案外これが、タイムパラドックスの答えなのかもしれない、とも思った。
 色々な事を考えた10か月間も、あっという間に過ぎて、ついに出産日になった。あくまで普通の病院の、普通の産婦人科で出産する事になった。
 看護師も助産婦も、これから産まれてくる子どもについては、何も知らない。普通の赤ん坊として、この子は産まれてくるのだ。
 21世紀末にもなれば、出産も楽だ。痛みも苦労もほとんど無く、すんなりと出産は終わる。ミナミの場合もそうだった。しかし、少しだけ違っていた。
 甲高い産声。人類初のクローン人間が、力の限り、第一声を発した。
 その瞬間…ミナミは、その声に吸い込まれるような気がした。その声を聞いているうちに、スゥッと意識が薄れていった。
「可愛い女の子ですよ、井上さん」
 助産婦が話しかけたが、ミナミの耳には届かない。
「井上さん? 井上ミナさん?? 井上さん!!」
 助産婦がいくら話しかけても、ミナミは答えない。
 いつの間にかに、ミナミは死んでいた。
 人類初のクローン人間は、「ミナ」の名前にちなんで、「ミナミ」と名づけられた。
 クローン人間ミナミは、“ミナ”と親しかった研二の娘として育てられる事になった。やがて彼女は科学を志すようになり、母親に会いたい一心で、タイムマシンの研究にのめり込んだ。そして26歳になったその日、ついにタイムマシンを完成させ、30年前の過去へ遡った。そのままその時代に留まり、自分自身のクローンを妊娠、出産する。
 その出産の時、我が子の産声を聞きながら、ミナミは意識が遠のいていった。そしてまさにその時、ミナミは全てを悟った。
 自分の母親は、自分自身だったのだ。
 父が、母の事をあまり話さなかったのは、ミナミに自分がクローンだと気付かせないようにするためだったのだ。母親に会えなかったのは、自分自身が母親だったからなのだ。
 この世界には、同じ人間は2人として存在しない。だから、同じ人間がもう1人誕生した時、自分自身は消滅しなければならないのだ。だから、母親は原因不明の死を遂げたのだ。
 全てを悟った直後、ミナミの命の時間は止まった。しかし、彼女の命は途絶えても、彼女の遺伝子は、時のループの中で“永遠”に生き続ける。
「自分自身を出産する」と言う、究極のタイムパラドックスを残して。

教訓;タイムマシンには、窓をつけるべきである。

〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜
こんにちは、久々に『メビウスの輪』を書いたキグロです。
小説を書く事事態久々なので、ところどころ文章に詰まったり、書いててなんとなく変な感じがしたりしましたが、
クソ忙しい最中に、一本書き上げました。楽しんでいただけたでしょうか?
久々に書いたせいか、今回はいつもより、1.5倍ぐらいの長さになっていますが。

さて今回は、『メビウスの輪』初のSF物です(と言うと、SFファンが怒りそうですが…)。
それも、昔から良くあるタイムパラドックスです。
先日、タイムマシンについて色々考えていた時、ふと「自分自身を出産する」と言うパラドックスを思いつきました。
それを突き詰めて、小説にしたのが、今回の物語です。
これが「究極の」タイムパラドックスかどうかは、キグロにはわかりませんが…。
今回の小説のストーリーをうちの高校の先生に言った所、「じゃぁ、ミナミの遺伝子は、どこから出てきたわけ?」と突っ込まれました。
考えた事が無かったので、「そこがパラドックスなんですよ」と切り替えして、逃げ切りました。
でも言われてみると、どこから出てきたんだろう……?

ちなみに、タイトルの「滝登り」は、あまり深い意味はありません。
よく、時間を「時の流れ」などと言うので、「流れを遡る」→「川を上る」→「滝登り」としました。

では、次回作がいつになるかわかりませんが、またお会いしましょう!

作;黄黒真直

本を閉じる inserted by FC2 system