「ようこそ、毒物及び劇物及び覚せい剤及び麻薬等に関する雑学の部屋へ。 ここには、題名の通り毒に関する雑学が集められています。 …まさかそんな人はいないと思いますが、ここにある雑学を悪用したり、実践したりしないでくださいね?」 | |
「もしこの忠告に逆らって何かが起こったとしても、我々館一同及び管理人は、一切の責任を負いませんので、あしからず…。 ……ま、悪用できるような知識は、そもそもありませんが。 そもそも悪用できるって言ったら、むしろ法律とか人体とかの方が…。それ以前に悪用できる知識なら、公開しないでキグロの奴が自分で使ってるんじゃないのか…?」 |
ヘビの毒、主な成分
毒を持つ生物の代表、ヘビ。 その毒の主な成分は、ヴェペロトキシン。 もし噛まれた場合は、むやみにしばたったりしても、ヘビ毒はすぐ分散するのであまり意味はありません。 それどころか逆効果です。 日本のヘビの毒は、まわりが遅いので、気を落ち着けて病院へ行くのが賢明な対処法です。 何時間たっても、日本のヘビの毒ならば、死ぬこと滅多はありません(体質による)。 ただ、ちょっと組織が破壊されますが……。 |
ハチに刺されたとき、アンモニアをかけるのは意味が無い ハチに刺されたときアンモニアをかけると良い…と言う俗信があります。 が、これは間違いです。 だいたい、毒成分が違います。 毒成分はメリチン、アパミン、MCDペプチン、アミン、ヒスタミンです。 本当にハチの毒に効くのは「抗ヒスタミンステロイド軟こう」です。 ちなみに、ハチの毒の威力は、マムシの毒とほぼ同じ。 ですが、ハチは体が小さいので、一度に注入できる毒の量は、極微量。致死量を大きく下回る量なのです。 では何故ハチに刺されて死亡してしまうのかと言うと、アレルギー症状(ショック症状)が出るため。 短時間に数回も刺されると「アナフィラキシー・ショック」と言うショック症状を起こしますが、 このショック症状を起こすと呼吸困難に陥り、良くても1時間以内には死亡してしまいます。 なお、日本でのハチ刺されによる死亡数は、ヘビなどよりもはるかに多く、毎年50人近くが、ハチに刺されて亡くなっています。 参考文献;サザンアウト#RELOAD【http://nagoya.cool.ne.jp/arexarexarex/】 |
毒を持つ魚、ミノカサゴ 黒と白のしましま模様の豪華な魚、ミノカサゴ。 フサカサゴ科で、岩礁やサンゴ礁に住んでいます。 おおきな背ビレに毒を持っていて、刺されると激痛が走り、放置すると壊疽(えそ)を起こします。 心障害・吐き気・関節痛などが見られ、時には死亡することすらあります。 海で綺麗な魚を見つけても、むやみに触らないように。 綺麗な花にはトゲがある。いい例です。 |
ウルシでかぶれた時の対処法 漆(うるし/漆科の落葉高木)と言う植物があります。 この植物を触ると、かぶれます。 かぶれの原因はフェノール性化合物「ウルシオール」。 応急手当には、サワガニを潰した汁を塗るといいです。 このフェノール性化合物「ウルシオール」が含まれているのは、ウルシの樹液ですが、葉に触っただけでもかぶれます。 また、1度かぶれてしまうと、次からさらにかぶれやすくなってしまいます。 何度もかぶれていると過敏になり、ついには近寄っただけでもかぶれる危険性のあるもの。 ウルシを燃やした煙でも、かぶれる場合があります。 ちなみに、漆の葉っぱはとても滑々していて気持ち良いそうです。 が、かぶれますので要注意。 |
超身近にある麻薬物質 麻薬、と言う恐ろしい薬物があります。 初めの1、2回は気持ち良いのですが、だんだん取り付かれていき、ついには常に飲んでいなくてはならなくなってしまうような、猛毒です。 幻覚作用等があり、体験者の話によると、嫌なことをなんでも忘れられて、とても気持ちがいい物だとか(でも、絶対に服用してはいけません)。 さて、この麻薬。 麻薬及び向精神薬取締法で禁止されているのですが、実は身近に麻薬があるのです。 それは、バナナの皮。 バナナの皮には、幻覚作用のあるアルカロイドブフォテニンが含まれています。 これは、ベニテングダケにも含まれている物です。 どのぐらい食べれば麻薬みたいな症状が出るのかは、実際に食べてみないとわかりませんが……。 |
良く食べる、危険な食べ物〜銀杏〜 茶碗蒸しでお馴染みの銀杏。独特の臭みを持つ銀杏。 さて、この銀杏ですが、大量に食べると死ぬことがあります。 銀杏の実にはデンプン、タンパク質、脂肪、ミネラルの他に、ヒスチジンと言うアミノ酸が含まれています。 ヒスチジンは分解するとヒスタミンを生じ、大量に摂取した場合アレルギーを起こすので、短時間に多食するのは危険です。 上にも言ったように、死ぬこともありますから…。 |
良く食べる、危険な食べ物〜寒天(の原料)〜 刺身のつまや寒天の原料とするオゴノリ(海髪海苔/うご【海髪】とも言う)。 さて、海藻であるこのオゴノリですが、実はそのまま食べると危険です。 別に毒があるわけでは無いのですが、中毒を引き起こすことがあるのです。 中毒の原因はプロスタグランジンE2【prostaglandin】と言う不飽和脂肪酸の一種(略してPG)。 食後30分で食中毒のような症状が現れ、血圧低下などからのショック症状を起こし、やがて死亡してしまいます。 と言っても、石灰処理をすればこのプロスタグランジンE2は溶出されるので大丈夫。 市販されているものは、この処理をちゃんとしてあれば、死ぬ事はありません。 |
タバコには、ものすごい殺傷能力がある 最近、色々言われているタバコ。 さて、タバコは人体に害がある、と言われ続けていますが、なんとタバコを利用すればヒト1人簡単に殺せてしまうのです。 例えば、タバコをいっぱい買ってきて中身を水に浸します。 そしてニコチンが溶け出てきたら蒸留(じょうりゅう/液体を熱して蒸気にし、それを冷やしてふたたび液体にする事)をします。 そして出来た液体を針などに付け、ヒトをそれで刺します。 このとき、血管に針の先端(液体をつけた部分)が届かなければ意味がありません。 こうすると、ニコチンが直接血液に入り込み、刺された人は呼吸困難を起こし、やがて死亡します。 相手にも気付かれないように、こっそりと殺すことも不可能ではありません。 ですが、絶対にやらないように。殺人は犯罪です。 ちなみに、ニコチンの致死量は大人では50mg。幼児では10mg。 そして、タバコ一本のニコチン含有量は、10mg。 つまり、赤ん坊がタバコを飲み込んでしまうと、そのまま死亡してしまう可能性が非常に高いのです。 |
輸入レモンは紅茶に使ってはいけない 午後にいっぱいのレモンティー…。 おいしいことはおいしいですが、このとき輸入レモンを使うととんでもないことになります。 輸入レモンには「OPP」と「TBZ」と言う二種類の防カビ剤が使用されています。 詳しく説明しましょう。 「OPP」とは「オルトフェニルフェノール(綴りがわかりません。それにたぶんドイツ語です)」の略です。 これは、膀胱(ぼうこう)などに障害を起こします。 そして、「TBZ」とは「チアベンタゾール(綴りがわかりません。何語かもわかりません)」の略です。 これは、特に障害を起こす、と言うわけではないのですが、20〜30g摂取すると、死亡します。 つまり、TBZのヒト推定致死量は20〜30gってことです。 輸入レモンにはこれらの防カビ剤が使用されているため、輸入レモンを紅茶に浮かべると、これらが溶けだしてしまうので、非常に危険なのです。 ちなみに、果肉には皮に残留したOPPの数分の1から数百分の1の量が含まれてしまいます。 輸入レモンには、ご注意を。 |
天然添加物にも危険がいっぱい 近頃、化学調味料や化学添加物、と言ったようなものが増えています。 これらは「危険だ」と言うことで、天然添加物にこっている人もいます。 しかし、天然だからと言って安全とは言い切れないのです。 例えばカンゾウ(甘草)があります。 マメ科の多年草で、これの根から抽出した液は、甘味料としてビール、タバコ、しょう油に使われ、また粉末は漢方薬にも使用されています。 漢方薬に使ってるぐらいだから安全だろうと思いきや、多量に摂取すると血行障害や心臓・骨格筋などに障害をもたらします。 天然だからと言って、安全だとは限らないのです。 |
すごい毒を持つカエル 田んぼが似合う、カエル。 カエルも、森などに住むカエルは毒を持っているカエルがたくさんいます。 そんななか、とんでもない毒を持つカエルが存在します。 それは、ココイガエル。 ココイガエルはバトラコトキシン(C24H33NO4)と言う毒を持っています。 これは、触れただけで触った人を死におとしいれるほどのとんでもない毒性を持っているのです。 ただし、こんなすんごいカエルは日本にはいません。 いたとしても、まだ発見はされていません。ご安心を。 |
よく食べる、危険な食べ物〜梅干(の種の中身)〜 梅干の種の中身のことを、俗に「天神様」と呼んでいます。 昔はよく、梅干を食べ終わった後この種を歯で噛み砕き、中の「天神様」を食べる人がいました。 が、実はこの「天神様」は毒なのです。 梅干の種(種子)内の核にはアミグダリンと言う青酸配糖体が含まれています。 これは青酸カリと同じようなもので、胃の中で分解されると青酸と言う毒物を出します。 たくさん食べ過ぎると、死亡してしまう…つまり、本物の天神様に会うことになってしまいます。 ちなみに、これは種の中だけでなく、梅の葉っぱや青い実にも含まれています。 |
タバコには、実はこんなメリットがある 体に害のある物の代表(?)、タバコ。 タバコ好きの方なら「イライラした気分を解消できる」だとか、いろいろなメリットを上げそうですが、とりあえず、医学的に根拠のある物を(まぁ、イライラ解消も根拠があるっちゃあるのですが…)。 実は、タバコは便秘に効くのです。 腸の運動が衰え、便が腸内に溜まりすぎると、人体に非常に悪い影響を及ぼします。 腸は、それを防ぐために、便が腸内に溜まりすぎた場合、腸内に潤滑油のような物を分泌し、便を滑りやすくさせ、早く出すのです。 実は、タバコに含まれるニコチンが、この潤滑油の分泌を促す作用を持っているのです。 かといって、タバコの吸いすぎはやはり禁物。アロエにも同じ効果がありますので、そちらをお勧めします。 |
魚と大根を同時に食べる理由 焼き魚ですと、一緒に大根おろしが出てきます。 実はこの2つ、同時に食べるといい事が起こるのです。 焼き魚は、たいていどこかしら焦げています。 知っての通り、焦げは体に有害です。 これは、焦げにトリプP1、P2と言う毒が含まれているからです。 そこで登場するのが大根おろし。 大根おろしに含まれる硝酸塩は、唾液のバクテリアの作用で亜硝酸塩に変化し、この2つの毒を消去するのです。 と言うわけで、焼き魚には大根おろしが欠かせないわけです。 |
水道水は発ガン物質!? 生活に欠かせない物質・水。 現在では蛇口をひねれば簡単に水が出てきますが…実は最近、水道水に発ガン性物質が含まれていることがわかったのです。 最初にその存在が指摘されたのは、1972年のオランダ。そして1974年に、アメリカでの調査でその事が裏付けられました。 その物質は、トリハロメタンと言います。 トリハロメタンとは、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルムと言う4つの物質の総称です。 これらは有機ハロゲン化合物と言う、多量に摂取すると有毒な物質の一種なのです。 そして、特にこの中で最も発ガンの危険性をおびているのがクロロホルムと言う物質です。 しかしこれらの物質。自然の水には一切含まれていないのです。 いったい、何故でしょうか? 実はこれ、様々な病原体が入っている自然の水を、飲める「水道水」にするために行う、「塩素処理」が原因なのです。 先ほど最も危険だと書いたクロロホルム。これは、メタンと塩素から出来ています。 このメタン。これも普通は自然の水にはほとんど入っていないはずなのですが、近年、水質汚濁によって、どんどん増えているのです。 メタンは、生物の死骸や、し尿(排泄物)などから生成されます。 本来ならば、これらは水中の微生物達によって極限まで分解されるはずなのですが、近年、河川のコンクリート化によって、どんどんその力が失われているのです。 そのため、処理しきれなかったメタンが巡り巡ってまた上水処理場にやってきて、そこで塩素処理を受けます。 すると、メタンと塩素が化学反応を起こし、発ガン性物質クロロホルムに変化するのです。 このトリハロメタンは、気温が上昇すると、生成される量も増加。 さらに、沸騰させると化学変化で3倍にまで増えてしまいます(ただし、15分以上沸騰させれば消滅します)。 現在、このトリハロメタンは水道法や、建築物における衛生的環境の確保に関する法律、その他WHOなどによっても一応規制はされています。 ちなみに、トリハロメタンの中で2種類以上の動物に発ガン性が認められたのは、クロロホルムのみ。 しかし、他の物質についても完璧に安全とは言えず、いま、研究が進められています。 |
薬を飲むとき、絶対一緒に飲んではいけないもの 医者から処方、或いは薬局・薬店で購入する薬。 この薬はご存知の通り、水かぬるま湯で飲むのが一般的です。 しかし、これ以外の物と一緒に飲むと、場合によってはとんでもない事になります。 絶対に一緒に飲んではいけないものとして注目されているのは、グレープフルーツジュース。 まだ完全な理由はわかっていないのですが、グレープフルーツジュース内の「フラノクマリン」や「オキシソラレン」と言う物質がある作用をしていると言われています。 では、「ある作用」とはなんでしょう? その前に、服用された薬は体内でどうなるのか、説明しましょう。 全ての薬剤に共通するわけでは無いのですが、薬剤を飲んだ後は、普通の食べ物と同じように吸収されます。 そしてその後、肝臓や小腸にあるチトクローム P450 3A4(通称;CYP3A4)と呼ばれる酵素により、分解・吸収され、薬としての効果を発揮します。 しかし、グレープフルーツジュース内の「フラノクマリン」や「オキシソラレン」などは、このCYP3A4のの働きを妨害するのです。 つまり、分解するスピードを遅くさせるわけです。 そうすると、薬の成分が分解されずに血液中に溜まり、薬の血中濃度(血液内の量)が上昇してしまうのです。 するとどうなるかと言いますと、薬の作用が強く現れ、何らかの副作用が発現する可能性があるのです。 具体的な例をあげますと、降圧剤(血圧を下げる薬。血圧降下薬とも)とグレープフルーツジュースを同時に飲むと、血圧が必要以上に下がり、不測の事態を招きかねない、と言うわけです。 まだ完全に解明された訳ではないので、CYP3A4の働きを妨害する物質も、「フラノクマリン」以外に「ナリンジン」と言う物質が原因ではないか、と言う説もあります。 また、薬を注射した場合には、グレープフルーツジュースを飲んでもこのような現象は起こらないため、小腸にあるCYP3A4だけがこの現象に関係しているのではないか、とも言われています。 そして、このような現象が起こるのはCYP3A4により分解される薬だけで、それ以外の薬では一緒にグレープフルーツジュースを飲んでも平気な場合があります。 しかし、それでも油断は禁物。 薬とグレープフルーツジュースを一緒に飲むのは、絶対に止めましょう。 |
フグ毒は、干して消せ! 毒を持つ生物と言われて、サソリ、ハチに並んで即座に出てくる生物といえば、やはりフグでしょう。 フグは、ご存知の通り、食べ物としても有名です。 フグの毒の成分は、「テトロトドキシン(C11H17O8N3)」と言う致死量2〜3mgの成分(この致死量は、飲んだ場合の致死量)。 青酸カリの10倍の毒性を持ち、300℃以上加熱しても分解されない毒。 神経や筋(筋肉)に作用し、呼吸筋(横隔膜などの、呼吸に必要な筋肉)を麻痺。 それによって死に至る成分です。 これだけの猛毒を持つ魚を調理するわけですから、フグの調理には資格と、細心の注意が必要になります。 先ほど述べたように、テトロドトキシンは300℃以上加熱しても、分解されません。 そのため、フグの調理法としては、まずは毒を全て洗い流すことです。 フグの毒は、内臓(特に肝臓と卵巣)や皮に多く含まれ、更に水によく溶けるので、内臓と皮を綺麗に取り除き、十分に水洗いをしなければならないことになっています。 しかし、それでもフグ毒が恐ろしくて食べたくない、と言う方もいるでしょう。 実は、絶対安全なのが完全に干したフグ。 言ってみれば干しフグです。 何故かというと、テトロドトキシンは熱には強くとも、長時間干して乾かされると、分解されてしまうからです(その詳しい仕組みはよく知りません。どなかた、知っていたら情報提供お願いします)。 その証拠に、毎年数十件のフグ中毒事件が発生しているなか、干しフグを食べて当たったという人は、未だに1人もいないのです。 ちなみに、フグ毒にあたった場合の主な症状を紹介しましょう。 先ほども書いたように、フグ毒の主な症状はマヒ。最初は舌や唇がしびれ、指先までしびれてきます。 そして頭痛や腹痛、嘔吐(吐き戻し)などを起こし、歩いたり喋ったりすることが難しくなります。 重度の場合は、血圧の低下も起き、最終的に呼吸困難になり、意識を失って、死亡します。 また、急速に進行した場合は、24時間以内に死亡する事が多いようです。 最も有効な処置法は、すぐに吐き出させ、人工呼吸を行うこと(呼吸困難に陥るため)。 2004年現在、完全な解毒方法は発見されていませんが、処置さえ間違えなければ、助かる確率は高いと言われています。 フグを食べて、なんらかの症状が出た場合は、急いで救急車を呼びましょう。 ちなみに、テトロドトキシンは、イモリも持っており、また、鎮痛剤として医療に利用されています。 |
魚のアジは、猛毒を持っている! ご存知、夏に開きにされる魚、アジ(鯵)。 しかし、そのアジが実は猛毒を持っていると言うことを、ご存知でしょうか? その毒とは、「ヒ素(砒素)」。 無味・無臭・無色で、たった0.2グラム飲んだだけで死亡する、猛毒です。 何故、アジの中にこんな毒が入っているのでしょうか? そもそも、海水自体が1トンあたり3ミリグラム程度のヒ素を含んでいます(海水を7トン飲めば、ヒ素中毒で死ぬ計算になります)。 そのため、そのヒ素が海に住む生物(海中生物、と言う)の体内で濃縮され、アジは海水の1万倍のヒ素を含んでいるのです。 また、これはアジだけでなく、他のどの魚、ひいては海草にも同じことが言えます。 他に強力なのは、昆布。 昆布は海水の5万倍のヒ素を含んでいるのです。 では、何故昆布やアジを食べても、ヒ素中毒で死なないのでしょうか? その理由は、ヒ素の種類にあります。 実は、一口にヒ素と言っても様々な種類があり、海水に含まれるヒ素は「砒素糖(ひそとう)」や「ジメチルアルシン酸」と呼ばれるもの。 これらは、体内に入っても、消化されない種類の物なのです。 ちなみに、「死ぬヒ素」は「亜ヒ酸(あひさん)」と呼ばれるもの。 もしもこれが入っていたら、死んでしまいます。 ですので、アジや昆布などの海産物を食べても、ヒ素中毒で死ぬことは一切ないので、ご安心を。 もっとも、フグにはお気をつけて……。 |
ヘビに噛まれた時、毒を吸い出した人は死なないのか? 一般的によく知られている毒蛇に噛まれた時の対処法。 それが、傷口から毒を吸い出す、と言う方法です。 「毒が体に入ったのだから、吸い出せばいい」…実に単純明快なこの方法ですが、気になるのは吸った人。 噛まれて死ぬのに、それを吸ってしまって、吸った人は死んでしまわないのでしょうか? これは、飲み込まなければ基本的に大丈夫なようです。 飲み込むと、当然毒を飲む事になり、場合によっては死に至りますが、吸った直後にペッと完全に吐き出せば、ほぼ問題ないようです。 また、誤って飲み込んでしまった場合にも、ほとんど死なないようになっています。 と言うのも、人間の体内には、外から侵入してきた異物をチェック・撃退する機能が備わっているからです。 このおかげで、飲み込んだ毒は胃や小腸にある、酵素と言うものの働きによって、分解されるのです。 一方、噛まれて体内に入り込む毒は、血管から直接吸収されてしまうので、分解される事はなく、死に至る危険があるのです。 そのため、毒を吸いだす方法は比較的安全と言えば安全なのですが、虫歯や、口の中の小さな傷口など、思わぬ場所から毒が体内に入り込む危険性があります。 虫歯や口内炎があるときは、絶対に毒を吸い出そうとはせず、また、そう言う物が全くない状態で吸い出したとしても、すぐに吐き出し、口内をよくゆすぐように。 ちなみに、アウトドア専門店などでは、ヘビに噛まれた時のために、毒を吸い出す器具も売っています。 あらかじめ毒蛇がいるとわかっているところへ行く場合は、毒吸引器具の他にも、噛まれないように万全の準備を整えてから、出発してください。 |
毒キノコは意外と少ない キノコと言えば、毒キノコ。 なんて言っても冗談にならないぐらい、「毒キノコ」の名前はは一般に深く浸透しています。 ところで、実際はどうなのでしょうか? キノコは現在、4000種類ほどキノコが見つかっています。 が、このうち毒キノコはたったの20種類ほど。全体の0.5%でしかないのです。 その中で、最も危険なのがテングダケで、うかつに食べると激しい消化器系の障害や、瞳孔の収縮、心臓障害を起こす危険があります。 この他には、嘔吐(おうと/吐き戻すこと)や下痢などの症状が出やすいツキヨタケや、クサウラベニタケなどがあります。 つまり、これら数種類さえキチンとチェックしていれば、あとは少なくとも死ぬことは無く食べることが出来る、と言うわけです。 もちろん、味が良いとは限りませんが。 ちなみに今回出てきたテングダケ。 カサの表面は褐色系で、白っぽいイボがあるのが特徴です(ただし、表面が赤系の「紅テングダケ」と言うのもある)。 そして、毒キノコとは書きましたが、長野県や宮城県では毒抜き処理をして、食べています。 アミノ酸の一種、イボテン酸が含まれているおかげで、味もにおいもよく、強力な神経興奮作用もあります。 また、このイボテン酸にはハエを殺す作用があり、各地でハエ殺しに使っているキノコでもあります。 |
世界五大猛毒その1〜リシン〜 「世界○大○○」と言うのは意外に多く、なんと毒にも「世界五大猛毒」と言うものが存在します。 と言うわけで、シリーズ的に五大猛毒を紹介していきましょう。 まず1つ目が、リシン(Ricin)です。 リシンは、蓖麻子(ひまし)と呼ばれる物から、抽出される、たんぱく質の一種です。 蓖麻子とは、「蓖麻(ひま)」と言う植物の種の事です。 ヒマは「トウゴマ」とも呼ばれていて、高さ数メートルの植物です。 リシンは、体重1kgに対する致死量が、たったの0.03mg。60kgの人なら、致死量は1.8mg。 これは、コブラ毒の2倍に相当します。 では、リシンはどのような効果を人間にもたらすのでしょうか? リシンは、人体を2段階に分けて攻撃してきます。 リシン分子には、「A鎖」と呼ばれるところ「B鎖」と呼ばれるところがあるのですが、まず攻撃を仕掛けてくるのは、B鎖です。 体内に入って来たリシンは、体内の細胞に付着。 そこでB鎖は、細胞の表面にある「受容体(レセプター)」と言う物と結合します。 受容体とは、早い話が、外からの刺激を受け取る仕組みを持つ構造の事です。 一番わかりやすい受容体が、目の奥にある網膜です。 ここには、外から来る「光」と言う刺激を受け取る受容体が存在しており、そのおかげで、我々は物を見る事が出来るのです。 さて、この受容体と結合したB鎖は、何をするかと言うと、本来なら受け入れられないはずのA鎖を、細胞の中へと送り込むのです。 では、細胞内に入ったA鎖は、何をするのでしょうか? 人間の細胞内には、「RNA」と呼ばれるものがあります。 「DNA」と言うものが有名ですが、あれとはまた別のものです。 DNAには、大量の遺伝情報が書き込まれていますが、それだけでは全く意味がありません。 人間の体は知っての通りたんぱく質で作られており、DNAには、そのたんぱく質の作り方が書かれているのです。 しかし、DNAはあくまで「作り方」が書いてあるだけで、作るわけではありません。 そのたんぱく質を作るのが、「リボゾーム(あるいはリボソーム)」と言う、全ての細胞に備わっている構造。 このリボゾームへ、DNAにかかれた「たんぱく質の作り方」を運ぶのが、この「RNA」なのです(正確には、「rRNA」。RNAには、色々な種類がある)。 リシンのA鎖は、このrRNAを切断してしまうのです。 すると当然、たんぱく質が作られなくなり、たんぱく質が作られないと言う事は、生命維持が出来ない、と言う事です。 一昔前に流行った「O157」も、このタイプのものです。 また、現在リシンに対する解毒剤は、一切存在しません。 口から飲む場合よりも、注射など、口を通さずに体内に入れた方が、毒性が高くなるようです。 そして、このリシン。 戦争中は、浮遊粉塵(ふゆうふんじん)と言う手法(早い話が、霧のようにすること)を用いて、化学兵器としても使用されました。 ちなみに、この場合リシンを吸い込むと、4〜8時間で発熱、咳、吐き気、関節痛などが急に発症し、 18〜24時間後に気道壊死(えし/一部の細胞が死ぬ事)、肺浮腫(はいふしゅ/肺の「むくみ」)が出ます。 そして、36〜72時間後に、呼吸困難から低酸素血症になり、死に至ります。 また、食べ物などに混入していたものを食べた場合は、激しい胃腸症状を引き起こし、ショック死をする場合があるようです。 何しろ、たんぱく質を作れなくさせるわけですから、普通の生物なら、まずひとたまりもないわけです。 |
世界五大猛毒その2〜ボツリヌストキシン〜 シリーズ的に紹介している世界五大猛毒。2つ目は、「ボツリヌストキシン(botulinustoxin)」です。 ボツリヌストキシンは、原子がずら〜っとたくさん並んだ、とても大きな分子(高分子)で構成された、タンパク質です。 この毒は、「ボツリヌスト菌」と言う細菌が生み出し、「ボツリヌスト菌食中毒」を引き起こします。 「ボツリヌスト」とは、ラテン語で「ソーセージ」の意味。 19世紀のヨーロッパで、ソーセージやハムを食べた人が、ボツリヌスト菌食中毒になったため、この名がつきました。 ボツリヌスト菌は、汚染されたソーセージやハム、缶詰、魚介の塩漬けの中などで繁殖します。 さて、このボツリヌスト菌が生み出すボツリヌストキシンですが、これの致死量は体重1kgに対し、たったの1ng。 「n」とは「ナノ」と読み、1ngとは、0.000000001gと言う事です(10億分の1g)。 1gあればおよそ2000万人を殺害でき、500gで全人類を滅ぼす事も出来ると言われています。 そのため、細菌兵器として研究開発がされた事もあり、テロリストが使うのでは? と、心配されています。 ボツリヌストキシンによる中毒症状は、主に手足の麻痺。 ボツリヌストキシンは体内に入ると、脳に到達し、脳を攻撃します。 人間の脳は、たくさんの神経細胞によって構成されています。 これらの神経細胞は、その情報を、電気と、「神経伝達物質」と言う物質を用いてやり取りしています。 神経細胞と神経細胞の間には、ものすごく狭い隙間があり、この隙間があるため、神経細胞内を走る電気は、隣の神経細胞に移る事が出来ません。 そこで、神経細胞の末端(シナプス)に電気が来ると、シナプスから、隣のシナプスに「神経伝達物質」を放出するのです。 これにより、神経細胞間で情報がやり取りされ、人は体を動かす事が出来るのです。 そして、ボツリヌストキシンは、この神経伝達物質の放出を妨害するのです(そのため、ボツリヌストキシンは、「ボツリヌスト神経毒素」とも呼ばれます)。 すると当然、脳から体の各部位に命令を発する事が出来なくなります。 そのため、手足が麻痺してしまうのです。 ただ、ボツリヌストキシンは脳関門(脳の一番重要な部分に、危険物質が入り込まないようにする仕組み)を突破できないため、 その効果は末梢神経(まっしょうしんけい/脳と脊髄以外の神経)にのみ働きます。 末梢神経には、手足など体を動かすために、脳からの指令を筋肉へ伝える「運動神経」以外にも、 触覚、嗅覚、味覚、聴覚、視覚の5つの情報を外部から感じ、脳へ伝える「感覚神経」 汗をかいたり、心臓を動かしたり、呼吸をしたり、トイレに行きたくなったり、と言った、自分の意思とは関係なく働く「自律神経」 があり、ボツリヌストキシンは、この運動神経、感覚神経、自律神経全てを狂わします。 そのため、引き起こされる症状は、先ほどの手足の麻痺の他、視力障害、嘔吐、喉の渇き、発汗傷害、排泄傷害などがあります。 しかし、働くのが末梢神経のみなので、発熱は無く、意識もはっきりとしたままです。 ただ、現在の医学では、このボツリヌストキシンの効果を、医療に用いています。 ボツリヌストキシンが効果を発する病気の1つが、中高年女性に多く見られる「眼瞼攣縮(がんけんれんしゅく)」です。 「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」とも呼ばれ、早い話、目のまぶたが勝手に震える(痙攣する)病気です。 症状としては、まばたきが増えたり、光がまぶしく感じたりする事から始まります。 症状が重くなると、まぶたが開かなくなって、目が見えない状態にまで進んでしまう事もあります。 この病気の原因ははっきりとはわかっていませんが、まぶしい光やストレスは、この病気の症状を悪化させます。 放っておくと痙攣の頻度が上がり、日常生活に支障を来たすようになる病気です。 この病気の治療に、ボツリヌストキシンが用いられているのです。 痙攣している箇所にボツリヌストキシンを注射。意図的にその部分の筋肉を麻痺させます。 こうする事で、痙攣と麻痺がお互いに干渉しあい、症状が和らぐのです。 この治療の効果は、通常数日で現れ、1〜2週間でもっとも高まり、3〜4ヶ月続きます。 ですが、しばらくすると、ボツリヌストキシンで抑えられていた神経が復活するので、また症状が現れます。 そのため、3〜4ヶ月置きに、ボツリヌストキシンを注射してもらう必要があるのです。 また、副作用としては、まぶたを閉じにくくなったり、口元が下がったり、物が二重に見えたり、顔の表情が少し変わったり、と言った症状が現れる事もあります。 ですが、こちらも数ヶ月経つと、普通は薄れて行きます。 ボツリヌストキシンが治療に使用される病気は、他には「片側顔面けいれん」や「痙性斜頸(けいせいしゃけい/首や肩が勝手に動く)」があります。 ちなみに、ボツリヌストキシンにはA〜Gまでの7種類があり、一番毒性が強いものはB。 非常に強力で、もし体内に入ってしまったら、まず確実に死亡します。 中毒になった場合、中和剤はウマ血清しかありません。 ワクチンも、「ボツリヌストキソイド」と言うものが開発されていますが、中毒になってからでは効果がありません。 しかし、このように強力なボツリヌストキシンですが、熱や酸に弱いので、加熱してしまえば分解されて無毒化します。 そのため、実はボツリヌストキシン自体は、強酸性である胃液によって分解されてしまうため、生物には無害です。 ですが、汚染食品中に存在する物は、単独では存在せず、別のタンパク質とくっ付いて、複合体を形成しています。 これをプロジェニター毒素、あるいはボツリヌス毒素複合体と呼び、これは生体内では分解されません。 そのため、中毒症状を起こし、死に至ってしまうのです。 なお、乳児の場合、ボツリヌス菌の胞子を食べても、その胞子が体内で成長し、乳児を死に至らす事があります。 実は、この胞子が含まれている食品が、蜂蜜。 他にもいくつか考えられていますが、因果関係がハッキリしているのは、今のところ蜂蜜だけ。 ですので、乳児に蜂蜜を与えると、乳児が死亡してしまう恐れがあります。 決して、乳児には蜂蜜を与えないで下さい。 参考文献;眼瞼けいれん・片側顔面けいれん・痙性斜頸 患者さんのホームページ【http://www.btx-a.net/index.shtml】 |
世界五大猛毒その3〜テタヌストキシン〜 何故か五十音逆順に紹介している世界五大猛毒。3つ目の今回は「テタヌストキシン」。 テタヌストキシンは、とても大きな分子(高分子)で出来たタンパク質です。 「破傷風」と言う病気を知っているでしょうか。 実は、この病気の原因菌である「破傷風菌」が生み出す毒の1つが、この「テタヌストキシン」なのです。 実際に破傷風を引き起こすのは「テタノスパスミン」と言う別の毒ですが、テタヌストキシンも、テタノスパスミンと似たような中毒症状を引き起こします ちなみに、「テタヌス(tetanus)」とは破傷風の事で、「トキシン(toxin)」とは毒素の事です(そのため、テタヌストキシンは「破傷風毒素」とも呼ばれます)。 テタヌストキシンが体内に入ると、体が突っ張り、激しい痙攣(けいれん)を起こす「強直性痙攣」や、 眼球やアゴにつながっている「三叉神経(さんさしんけい)」を麻痺させる事で起こる「破傷風顔貌(がんぼう)」、 文字通り首が弓反りになる「弓反り反射」などが起こります。 また、この激しい痙攣により、骨折する事まであります。 そして最後には、呼吸に必要な「呼吸筋」が硬直してしまい、死亡してしまいます。 その致死量は体重1kg辺り30ng(30ナノグラム/0.00003mg)と極わずか。 テタヌストキシンを生む破傷風菌は、土やゴミの中に存在し、ちょっとした傷からすぐに入り込んできます。 そして体内に取り込まれたテタヌストキシンは、神経を逆流し、脊髄や脳にまで到達します(これを「逆行性輸送」と言います)。 脳や脊髄に到達したテタヌストキシンは、運動を司る神経細胞を興奮させます。 すると、別に頼んでも無いのに、神経細胞は勝手に体に「動け」と命令を下します。 また、神経細胞と言うのは、隣の神経細胞に情報を伝える時、「神経伝達物質」と言う物を使っているのですが、 あまり過剰にこの神経伝達物質が出ると困るので、神経伝達物質の分泌を抑制する「抑制性シナプス」と言うものが存在します。 「シナプス」と言うのは、神経細胞の先っちょ。 神経細胞は、「細胞体」と呼ばれる星型に近い部分と、そこから長く伸びる腕のような「軸索」と言う部分で構成されています。 この軸索の先端と、隣の神経細胞との接合部分を、「シナプス」と呼びます。 「接合」と言っても、実際は両者の間には極わずかな隙間が空いています。 そのため、神経細胞から神経細胞へ情報を伝えるために、「神経伝達物質」が必要になるのです。 で、先ほど述べたように、あまり過剰に神経伝達物質が出ても困るので、「抑制性シナプス」と言うものが存在します。 しかし、テタヌストキシンは、この抑制性シナプスの働きを抑制するのです。 「神経伝達物質を出さないようにする」と言う働きを「抑え込む」わけですから、 「神経伝達物質を出さないように出来ない」つまり、「神経伝達物質が出続けてしまう」状態になってしまうわけです。 これと、先ほどの運動を司る神経の興奮が加わり、激しい痙攣が引き起こされるのです。 また、逆に、神経の動きを止めて、体を麻痺させてしまう事もあります。 ただ、このような強力な毒であるテタヌストキシンですが、ホルマリンと言う薬品につけることで、簡単に失活、つまり毒としての働きが弱くなります。 この失活したテタヌストキシンを用いて、破傷風トキソイドを作り出す事が出来ます。 「トキソイド」とは、ワクチンみたいなもので、毒に対する抵抗力をつけるためのものです。 破傷風菌は土の中ならウジャウジャいる菌ですが、空気(酸素)に触れると死亡してしまう「嫌気性菌」と呼ばれる菌ですので、傷のある手で泥を触らなければ大丈夫。 人から人への感染もありません。 また、致死量が高い代わりに、トキソイドで簡単に予防が出来るので、発症する人は新生児などに限られています。 ただ、予防接種から10年以上経つと、効果が薄れてくるので、定期的に予防接種を受ける事が必要です。 参考文献;横浜市衛生研究所ホームページ【http://www.eiken.city.yokohama.jp/hp2/index.html】 兇器と蟲毒【http://www4.plala.or.jp/persimmon/index.htm】 国際感染症臨床情報【http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsb/infect/】 |
世界五大猛毒その4〜ジフテリアトキシン〜 そろそろ終わりが見えてきた世界五大猛毒。第4回目は、致死量0.2mgのジフテリアトキシン(diphteriatoxin)。 これは、ジフテリア菌と呼ばれる細菌が作り出す毒素で、「ジフテリア」と言う伝染病を引き起こす物です。 ジフテリアは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染法)」と言う法律によって、 その予防方法や、治療法などが定められている伝染病(法定伝染病)の一つです。 ジフテリア菌に感染しても、何日間か、ジフテリアが発症しない期間があります(この期間のことを、「潜伏期間」と言います)。 ジフテリア菌の潜伏期間は、何故か資料によってバラバラなのですが、最短1日、最長7日程度のようです。 ジフテリア菌が繁殖するのは、鼻、咽頭(いんとう/口、鼻、食道の間にある管)、喉頭(こうとう/咽頭の下の部分。声帯のあるところ)など。 それぞれ発症すると、鼻ジフテリア、咽頭ジフテリア、喉頭ジフテリア、と呼ばれます。 鼻ジフテリアが発症すると、鼻の粘膜がはれて、鼻で呼吸できなくなったり(鼻閉塞〔びへいそく〕)、鼻血が出たり(鼻腔出血)します。 咽頭ジフテリアが発症すると、発熱や、のどの痛み(咽頭痛)が起こります。 また、あごの下に「リンパ節」と呼ばれる器官があるのですが、ここには、体内に入ってきた病原菌などを退治する「リンパ球」と言うものがたくさん入っています。 咽頭ジフテリアが発症すると、このあごの下のリンパ節が、腫れ上がります(顎下リンパ節腫脹〔がっかりんぱせつしゅちょう〕)。 喉頭ジフテリアが発症すると、犬が吠えるような咳が出たり(犬吠え様咳嗽〔がいそう〕)、喉頭の粘膜が腫れる事で、息が吸いづらくなったり(吸気性呼吸困難)します。 この吸気性呼吸困難がひどくなると、のどが完全に塞がり、窒息死する恐れすらあります。 アメリカの初代大統領、ジョージ・ワシントンは、このジフテリアによる呼吸困難で亡くなったと言われています。 この他にも、激しい嘔吐や、神経の麻痺などの症状が現れ、後遺症として心筋炎や腎炎が生じます。 また、ジフテリアは冬に流行し、子どもが感染しやすい病気でもあります。 ただ、死亡率はさほど高くなく、5〜10%程度。 そして、感染しても発症しない場合も多く、感染者の90%は、発症しないと言われています。 しかし、それはただ発症していないだけで、菌自体は持っている、と言う事(これを「不顕性感染」と言い、このような人の事を「保菌者」と言います)。 ジフテリア菌の感染ルートは、人から人への空気感染や、飛沫感染(咳などで飛んだ唾液による感染。普通、この唾液は目にはほとんど見えない)です。 そのため、保菌者が町を出歩き咳をすると、近くにいる人にジフテリア菌がうつってしまう可能性があるのです。 ただし、現在は予防方法や治療方法が確立されていますので、感染・発症しても、すぐ病院へ行けば、死亡率はかなり抑えられます。 その治療方法は、ドイツのエミール・フォン・ベーリングと北里柴三郎が確立し、ベーリングはこの功績により、第1回のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。 ちなみに、このジフテリア菌。実は、ジフテリア菌だけでは、全くの無毒。 1951年、ジフテリア菌は実は、「バクテリオファージ」と言うウイルスに感染していることがわりました。 毒素(ジフテリアトキシン)を生み出す遺伝子は、実はジフテリア菌には無く、バクテリオファージの方にあったのです。 ジフテリア菌はバクテリオファージに寄生される事によって、ジフテリアトキシンを生み出すことが出来るようになる、と言うわけです。 ちなみに、学校では、ジフテリアに感染すると、治るまで出席停止状態になります(学校保険法第12条)。 つまり、ジフテリアに感染すれば、皆勤に傷をつけることなく、学校を休む事が出来るようになります。 参考文献;ジフテリア【http://www.forth.go.jp/tourist/kansen/30_diphte.html】(FORTH(FOR Traveler's Health) - 厚生労働省検疫所 海外感染症情報- 内) IDWR;感染症の話【http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_14/k02_14.html】 ジフテリア【http://www.naoru.com/jihuteri.htm】 |
世界五大猛毒その5〜グラミシジン〜 いよいよ今回で最後になりました、世界五大猛毒シリーズ。ラストはグラミシジン(gramicidin)です。 これは、土の中に生息する細菌(土壌細菌)の中の、「バシラス(バチルス)」と言うグループ(属)に分類される細菌が生産します。 バシラスは、酸素のあるところで繁殖し、細長い棒状をした細菌です(こういう細菌を、好気性桿菌(こうきせいかんきん)と言います)。 そして、グラミシジンは、「ペプチド系抗生物質」と呼ばれています。 「ペプチド」とは、数個のアミノ酸が、「ペプチド結合」と呼ばれる結合によって結びついた物を言い、 「ペプチド系抗生物質」とは、ペプチドを含む(あるいは、全てペプチド)の抗生物質を言います。 ペプチド結合とは、結合部分が「−CONH−」と言う形になっている結合… つまり、2つのアミノ酸が、炭素、酸素、窒素、水素を接着剤としてくっ付いている物を、「ペプチド結合」と呼ぶのです。 ところで、「抗生物質」と言う言葉は、よく薬の名前で耳にしますが、そもそも抗生物質とはなんなのでしょう。 抗生物質とは本来、自然界に存在しているもので、1941年、セルマン・アブラハム・ワックスマンと言う生物学者が発見しました。 彼の定義によると、抗生物質とは、 「微生物や他の生物により生産され、微生物の生育を阻止あるいは殺す活性を有する化合物」 早い話、「自然が生んだ、微生物を殺す化学兵器」です。 何か重い病気にかかった場合、抗生物質を飲むのは、抗生物質によって、病原菌を殺すためなのです。 グラミシジンも、そんな抗生物質のひとつ。 グラミシジンにはいくつか種類があり、それぞれグラミシジンA、B、C、D、Sと名付けられています。 A、B、Cは、アミノ酸が真っ直ぐ連なった物で、DはA、B、Cの混合物。 そしてSは、アミノ酸が円状(環状、と言います)に連なった物です。 致死量は、グラミシジンSで、体重1kg辺りたったの17mg(体重60kgなら約1g)です (この値は、ラットに腹腔注射(肝臓や胃があるところに注射する事)した時の値)。 では、グラミシジンを摂取してしまうと、どうなるのでしょうか。 グラミシジンは体内に入ると、体を構成する細胞を覆っている、細胞膜を変質させてしまいます。 どう変質させるのかと言うと、イオンと言う物が、細胞膜を通過できるようにしてしまうのです(これを、「チャンネルを形成する」と言います)。 イオンとは、物体を構成する「原子」と言う物が、プラスの電気を帯びたり、マイナスの電気を帯びたりした状態の事で、 この時通過してしまうイオンは、水素イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどです。 これらのイオンが通過すると、何故死んでしまうのでしょうか? 人間の体の中には神経が通っていて、神経が脳からの情報を体中の筋肉に伝達します。 普段は神経細胞の内部にはカリウムイオンが多く、神経細胞の外にはナトリウムイオンが多くなっています。 この状態では、細胞の内側が、外に比べて「マイナス」の状態になっています。 そして脳からの情報を伝える時は、内側にナトリウムイオンをどんどん取り入れていきます。 すると、今度は細胞内が「プラス」の状態に変わり、こうする事で、脳からの情報を伝えているのです。 ところが、ナトリウムイオンやカリウムイオンを素通りさせてしまうと、「ゼロ」の状態になってしまいます。 したがって、脳からの情報が筋肉に伝えられなくなってしまい、心臓や肺が止まって死んでしまうのです。 また、グラミシジンは、細胞内にあるRNAと言う物を作れなくしてしまいます。 RNAとは、体を構成するたんぱく質を作る上で非常に重要な役割を担っているものです。 細胞内には「DNA」と言う物がありますが、あそこにはたんぱく質の「作り方」が書いてあり、 「リボゾーム(リボソーム)」と言うところが、実際にたんぱく質を作ります。 そのDNAからリボゾームまで、たんぱく質の「作り方」を運ぶのが、RNA(正確にはrRNA)。 RNAにはたくさんの種類があるのですが、これらはどれも生物にとって重要な物。 グラミシジンは、このRNAを作らせないため、生命活動を維持できなくなり、死んでしまうのです。 ちなみに、今回出てきたバシラス属は、炭疸菌(たんそきん)やセレウス菌、枯草菌やバシラス・ステアロサーモフィラスなど34菌種を含みます。 炭疸菌は、2001年に起こったアメリカ同時多発テロ時、生物テロに利用されました。 セレウス菌は、土壌以外にも、水中、空中、植物表面、ヒトも含んだ動物の排泄物中など、あらゆる所に存在します。 普通にしてれば害はありませんが、食品に付着した菌が増殖すると、食中毒として、急性胃腸炎を起こす場合があります。 セレウス菌による食中毒は、下痢や腹痛を引き起こす「下痢型食中毒」と、吐き気、嘔吐、下痢を引きこす「嘔吐型食中毒」の2種類に大きく分けられます。 下痢型の潜伏期間は8〜22時間、嘔吐型は1〜5時間です。 下痢型は腸内でセレウス菌が増殖して引き起こされるため期間が長く、 嘔吐型は食品中で増殖した場合に引き起こされるため、食べた時には既に毒素があり、期間が短いのです。 下痢型は肉やスープ、野菜の煮物、プリン、ソースなどが原因となり、嘔吐型は焼き飯、ピラフ、めん類、オムライスなどが原因となります。 なお、炭疸菌と人間との付き合いは長く、1876年からの付き合い。 この年、ロベルト・コッホによって、「病気は細菌によって引き起こされる」と言う事が、炭疸菌(炭疸症)によって初めて証明されました。 参考文献;食中毒原因物質【http://www.ikagaku.co.jp/bac/bac.html】(株式会社いかがく【http://www.ikagaku.co.jp/index.html】内) スクエア最新図説生物(第一学習社) |
食べると笑う、「笑い茸」。そのメカニズムは!? 笑いダケ、笑いキノコ、などと呼ばれる、「食べると笑い出すキノコ」ですが、本当に食べると笑ってしまうのでしょうか? 実際に「笑いダケ」として知られるのは、テングタケやベニテングタケなどです。 これらのキノコには、「イボテン酸」と呼ばれる神経毒が含まれています。 この毒は、「神経毒」の名の通り、人間の神経を攻撃。 神経と言うのは、脳からの情報を筋肉に送ったり、逆に体中から脳へ情報を送ったりするために必要な、いわば回線のようなもの。 そこがやられるのですから、当然、脳は筋肉を操れなくなり、結果として、顔の筋肉が引きつってしまいます。 するとどうなるのか。答えは、「笑ったような顔になってしまう」のです。 つまり、「笑いダケ」とは、「笑ってしまうキノコ」ではなく「笑ったような顔になってしまうキノコ」なのです。 ちなみに、今回出てきたテングタケですが、食べると下痢や嘔吐、幻覚などの症状が現れます。 ですが、この毒成分であるイボテン酸は、旨味成分の1つであるため、とても美味しいキノコとの事。 フグは食いたし命は惜ししと言いますが、勇気ある方は、食してみては? ただし、どうなっても当館の管理人および住人たちは、一切の責任を負いません。 なお、テングタケの特徴は、「白色のイボがある(=白色のまだら模様がある)灰褐色の傘」と「白色でツバのついた柄」です。 |
毒ヘビが毒ヘビを噛むとどうなるか? コブラやマムシなど、ヘビには毒を持つものがいます。 その毒は、種類によっては非常に強力で、大きな動物でも簡単に死に至らせてしまう場合もあります。 では、毒ヘビが毒ヘビに噛まれた場合、噛まれた方は死んでしまうのでしょうか? これは、毒ヘビの種類によって、違います。 毒ヘビの毒には、大きく分けて「神経毒」と「出血毒」の2種類があります。 神経毒とはその名の通り、体中を巡る神経を攻撃する毒。 神経は脳からの命令を伝える器官ですので、ここがやられると、体が痺れ(麻痺)、呼吸困難に陥るなどして死亡してしまいます。 出血毒とは、名前の通り、傷口から血が出てきてしまう毒。 出血毒には「出血酵素」と呼ばれる物が含まれており、これは胃液など、消化液の仲間です。 噛まれてしばらく経つと内出血が広がり、筋肉などが壊死(細胞が死んでしまう事)を起こし、非常に危険な状態に陥ります。 神経毒より死亡率は低いですが、噛まれた後、激痛に襲われます。 コブラなどは神経毒を、マムシやハブなどは出血毒を持つ毒ヘビです。 では、コブラがコブラを噛んだ場合、噛まれたコブラはどうなるでしょう。 コブラの場合、噛まれると、量によっては死亡してしまう、と言われています。 一方のマムシやハブなどは、同種のヘビに噛まれても、体内に免疫があるため、まず死ぬ事はないと言われています。 ちなみに、フグがフグを食べても、死ぬ事はありません。 やはり、体内に免疫があるため、と考えられています(現在、この免疫を抽出する研究がされているそうです)。 |
酒飲みだけを狙う毒キノコ 「ヒトヨタケ」と言うキノコがあります。 普通の庭や畑、草地や公園、駐車場など、身近に生えるキノコで、高さは6〜12cmほど。 灰褐色ですが、胞子が熟すと傘が黒くなり、やがて溶けてしまいます。 成長するとあっという間に溶けてしまうところから、「一夜茸(ヒトヨタケ)」と名付けられました。 若いヒトヨタケは、そばやうどんなどの具に使われ、歯ざわりもよく、美味しいキノコです。 ところがこのキノコ。普通に食べると無害なのに、酒と一緒に食べると、毒キノコに変貌するのです。 アルコールと共にヒトヨタケを食べると、体内でコブリンという成分になります。 通常、アルコールは体内で、酵素により分解されますが、コブリンはこの酵素の働きを妨害。 分解されなかったアルコールは、二日酔いのもとになる「アセトアルデヒド」と言う有害物質に変わります。 すると、顔面紅潮、吐き気、嘔吐など、悪酔いに似た中毒症状を起こすのです。 たちの悪い事に、この症状は、ヒトヨタケを食べた当日はもちろん、食べた2〜3日後にお酒を飲んでも、現れます。 死亡する事はありませんが、重症の場合は、昏睡状態に陥る事もあるのです。 同じような性質を持つキノコは、ホテイシメジ、スギタケ、ウラベニイロガワリなど。 これらはどれも、よく食用にされるキノコたち。お酒を飲む方は、要注意です。 |
サリンとは何か? 第2次世界大戦中、あらゆる化学兵器(つまり毒ガス)が開発されました。 そのうちの1つが、通称「サリン」と呼ばれる物。 正式名称(和名)は、「O(オルト)‐イソプロピルメチルホスホノフロリダート」や「イソプロポキシメチルホスホリルフルオリド」と言います。 サリン(Sarin)と言う名前は、開発に関わったシュラーダー (Schrader)、アンブロス (Ambros)、ルドリゲル (Rudriger)、ヴァン・デア・リンデ (Van der LINde) の名前を取って名付けられました。 化学式は、(CH3)2CHOPOFCH3です。 無色無臭の毒ガスで、戦争用に開発されただけあって、ものすごい殺傷能力を持ちます。 「毒ガス」と言うと、普通、口から吸い込むものですが、サリンは皮膚から体の中に浸透する事もできるのです。 そしてすぐに、神経に障害を起こします。 自覚症状としては、まず最初に目がチカチカするなどの異常が起こります。 これは、瞳孔(目の黒い所。瞳)が収縮する事で起こる異常です。 次に涙が止まらなくなったり、くしゃみや鼻水などの障害が起こり、呼吸困難になる事もあります。 その他に、頭痛やめまいがしたり、吐き気を催したりし、 さらには意識がモウロウとして(意識障害)、言葉を上手く喋れなくなったり(神経障害)、錯乱状態になったり(精神障害)します。 また、よだれが止まらなくなったり(垂涎)、汗が止まらなくなったり(発汗)もします。 そして重度になると、全身痙攣を引き起こし、最悪の場合死に至るのです。 サリンは人体に入ると、どのような働きをするのでしょうか? 人間(動物)の体の中には、神経が通っています。 脳から体に対する「動け」と言う指令は、この神経を伝わって届きます。 その時使われるのが、「神経伝達物質」と言う物。 神経伝達物質のうちの1つに、「アセチルコリン」と言う物質があります。 アセチルコリンは指令を伝え終わった後は、コリンエステラーゼと言う酵素によって分解されます。 ところが、サリンはこのコリンエステラーゼと結合し、コリンエステラーゼの働きを邪魔します。 すると、アセチルコリンはいつまでも指令を伝え続けるため、筋肉がいつまでも動き続けたり、脳がパニックを起こしたりするのです。 そして引き起こされるのが、上記のような症状です。 サリンの致死量(人間)は、体重1kgあたり0.1〜0.001mgと言われています。 体重60kgの人なら、6〜0.06mgで死亡してしまう、と言う事です。 また、サリンは空気より重いため、風などで飛ばされにくく、その場に留まりやすい、と言う性質を持っています。 広範囲での殺傷は出来ない、と言えますが、逆に言えば、狭い範囲にいる大勢の人間を殺す事が出来る、と言うことです(ただし、濃度を小さくすれば広くばら撒く事も出来ます)。 ただし、サリンにも1つ弱点があります。 サリンは、化学的に非常に不安定な物質で、水と触れただけでその毒性を失ってしまいます。 その時出来る物質は、フッ化水素とメチルホスホン酸イソプロピルです(さらに後者は、メチルホスホン酸とイソプロピルアルコールになります)。 ですが、実を言うとフッ化水素も強力な毒物。スプーン1杯のフッ化水素を間違って飲んでしまい、死亡した事件もあります。 また、ほとんどの化学物質と反応しないガラスでさえ、フッ化水素となら反応し、腐食してしまいます。 どちらにせよ、サリンとは非常に危険な毒物で、日本では「サリン等による人身被害の防止に関する法律」によって、所持・生産が禁止されています。 |
生ガキは何故あたるのか? 「生ガキを食べて、お腹が痛くなる…」と言う話をよく聞きます。今回は、その解説。 結論から言うと、カキ(もちろん、貝の方です)を食べて腹痛になる(食中毒になる)原因は、カキの持つ毒(ウイルス)です。 カキに毒、と言うと少し意外な感じがしますが、カキの持つ特性によって、カキは毒を持ってしまうのです。 海の一部の生物には、「海を浄化する」と言う働きを持ったものがいます。 カキもそのうちの一種類で、カキは呼吸をする時大量の海水を飲み込み、海中の毒素やウイルスを濾し取り、 綺麗になった海水を吐き出すのです。 その量は、1分間に約2リットル。 それによって、カキの体内には、海中のウイルスがどんどんたまり、内臓の中にギュッと濃縮されてしまうのです。 これを人間がそのまま食べると、ウイルスが大量に体内に入り込み、食中毒を引き起こしてしまうのです。 普通のウイルスは、胃液や小腸液で死んでしまうのですが、カキが溜め込むウイルスは、このどちらでも死にません。 カキの体内に溜め込まれるウイルスは、SRSV(小型球形ウイルス)と呼ばれます。 実はこのウイルスは、2006年現在未だにナゾの多いウイルスです。 食中毒患者の糞便に大量に含まれている事はわかっているのですが、何故か未だに取り出す事ができないそうです。 ただし対処法はわかっており、普通のウイルス同様、SRSVも熱に弱く、十分火にかけるとあっけなく死んでしまいます。 また(これも普通のウイルスと同じ対処法ですが)、酢やショウガ、ワサビ、お茶、赤ワインなどの殺菌作用の強い食べ物と一緒に食べれば、食中毒を防ぐ事が出来ます。 ちなみに、SRSVは下水処理施設では殺せないウイルス。 そのため、下痢などと一緒にトイレで流されたSRSVは、下水処理場を素通りし、再び海に戻っていってしまうのです。 |