「
こちらは日本が見えてくる法律の雑学の部屋です。 『日本が見えてくる』と言いつつ、目標は世界中の法律に関する雑学の収集です。 …まだ日本しか集められてませんけど」 | |
「法律はネタが多いので、更新頻度の高い部屋となっています。 なお、『銀行内で盗られたお金。銀行は返してくれるか?』以上の50個の雑学は、全て2階へ移動させていただきました」 |
口約束でも婚約は成立するのか? 「婚約」とは、男女が「いずれ結婚しよう」と言う約束、つまり法律的に言う「契約」の事です。 大抵、法律の契約と言うと契約書が付きまといますが、婚約の場合はどうなのでしょうか? 実は、過去の最高裁判所の判例に基づいて考えますと、口約束だけでも婚姻は成立します。 男女が誠意をもって夫婦になる約束をした場合、例外を除いて慣習上の儀式や結納をしなくても、婚約は成立する、とされたのです。 ただ、口約束でも成立はするものの、もしその婚約を破棄されるなどのトラブルがあった時、大変です。 婚約を一方的に破棄され、相手に慰謝料を請求したい場合は、「婚約した」と言う事を証明しなければなりません。 ですが、口約束の場合、証拠がないので、立証がとても困難になり、 「婚約していないので婚約破棄にはならない」とされ、慰謝料の請求などが出来ないのです。 かと言って、信頼して婚約した相手に契約書を書かせると言うのも、気がひけます。 そこで、わざわざ契約書を書かなくても、こんな方法があります。 例えば、第三者のいる所での婚約。 誰か、2人の共通の知人など立ち会いのもと婚約を行えば、その知人が2人の婚約を証明してくれます。 よくドラマである「娘さんを僕に下さい!」と言うのは、こういった面から見ると、とても理にかなった行動なのです。 また、婚約指輪などを交換することも有効で、一方的に婚約を破棄された場合は、それが多きな効力を持つことになります。 ちなみに、先ほど「男女が誠意を持って夫婦になる約束をした場合、例外を除いて…」と書きましたが、 この例外とは、例えば2人が若すぎたり、正常な精神状態ではなかった場合、などです。 具体例をあげれば、幼稚園生ぐらいの子ども同士で結婚云々言っても、当然そんなものは婚約として認められませんし、 酔っ払ってベロベロになったおっさんが「結婚しよう」などと言っても、それも婚約とは認められにくいことになるのです。 もっとも、何かトラブルが起こったとき、それが婚約として認められるかどうかを判断するのは、裁判所の仕事。 どの程度なら婚約として認められるかは、実際に訴えてみなければ全くわかりませんのであしからず。 一番良いのは、契約書を書かせることなのですけどね……。 |
「こどもの日」の本当の意味 知っての通り、5月5日は端午の節句、「こどもの日」です。 当たり前といえば当たり前ですが、この「こどもの日」は法律で定められた国民の祝日です。 そして、国民の祝日には実は細かい意味が込められています。 さて、ではこの「こどもの日」は、どんな意味かと言いますと、結構意外な意味だったりします。 「こどもの日」と言う言葉から受ける印象では、子どもが幸福に、健康に育つことを祈る日のような気がしますが…。 確かに、そういう意味も込められてはいるのですが、「国民の祝日に関する法律」の第二条にはこう書かれています。 「(前略)こどもの日 五月五日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。(後略)」 つまり、こどもの日はただ単に子どもの健康を祈るだけでなく、子どもを尊重して、かつ子どもは母に感謝をしなければならないのです。 と言ってももちろん、感謝しなかったからといって何か罰則が科せられることは無いと思いますが…。 ちなみに、「国民の祝日」の定義は、同法律の第一条にあります。第一条には、 「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを『国民の祝日』と名づける。」 つまり、国民の祝日は本来、日本をいい国にするためにみんなで何かを祝って、何かに感謝し、何かを記念する日だ、と言うわけです。 なお、5月4日も「国民の祝日」ですが、これは同法律の第三条第三項に基づき設けられた「特別な祝日」。 第三条第三項には、「その前日及び翌日が『国民の祝日』である日(中略)は、休日とする。」とあります。 5月4日は、「その前日及び翌日が『国民の祝日』である日」なのです。 5月4日の前日(5月3日)は、憲法記念日と言う「国民の祝日」。 5月4日の翌日(5月5日)は、こどもの日と言う「国民の祝日」。 つまり、「国民の祝日と国民の祝日が1日置きにあると、『休んで、働いて、休んで』と逆に面倒だから、いっその事3日連続で休みにしちまおう」と言うもの。 これによって、5月4日は休みとなったのです。 ちなみに、ピンと来た人もいるかも知れませんが、もしも5月1日が国民の祝日になった場合、 4月29日から5月5日までの1週間、全部休みになります(4月29日はみどりの日)。 国民は国民の祝日のたびに、5月1日に天皇がお生まれになることを祈った方が、良いかも知れません(?)。 |
警察の職務質問に答えないと、どうなるのか? 警察官は、不審な人物を見つけた時や、犯罪を行った(或いはこれから行おうとしている)らしき人物を見つけた時、「職務質問」をすることができます。 これには、「犯罪に関わっている可能性のある人に質問をして、もしも犯罪を行っていればその場で逮捕してしまおう」と言う意図があります。 例えば、盗難届けの出ている車に乗っている人や、人のカバンから財布をすり取った人などに、職務質問をすることができます。 また、何もしていなくても「挙動不審」と言うだけで職務質問をされてしまう場合があります。 さて、ではもしも警察官から職務質問をされて、それに全く答えなかった場合、どうなってしまうのでしょうか? 結論から言うと、どうにもなりません。 一見、交番や派出所などに連れて行かれてしまいそうですが、実は我々一般人には、職務質問に答える義務はありません。 また、「任意同行」と言って、逮捕とまでは行かなくとも、「詳しく調べたいので交番、或いは派出所へ来てくれ」と言われることもあります。 しかし、「任意」と言うぐらいですから、これも我々一般人には、警察に従う義務は無く、わざわざ交番まで一緒に行く必要はないのです。 何故かと言うと、これは憲法に定められた「身体の自由」と言うものがあるため。 逮捕状も無しに、無理矢理交番に連れて行かれると、それは憲法第33条に違反する行為とみなされ、警察官の責任が問われてくるからです。 ただし、気をつけなければいけないのは、こちらが職務質問を無視したり、「交番に行かない」といくら言っても警察官が聞かず、何度も質問したり、同行を求めた場合。 この場合、カッとなって警察官を殴ったりすると、刑法第95条第2項「公務執行妨害罪」が適用され、3年以下の懲役、または3年以下の禁錮(きんこ)に処せられる可能性があります。 禁錮とは、刑の期間、牢屋から一歩も外に出してもらえない刑。懲役の場合は、刑務所内で働けますが、禁錮はそれすら無い刑です。 答えたくないことを何度も質問されたり、行きたくも無いのに同行を求められても、絶対に殴らず、ひたすら拒否し続けてください。 少なくとも、拒否するだけならば法に触れることはありません。 ちなみに、これには例外もあって、例えば犯行の現場を警察官に目撃された場合。 この場合は刑事訴訟法第213条「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」と言うものが適応され、強制的に交番などに連れて行かれることになります(「現行犯逮捕」と言います)。 また、刑事訴訟法第210条には、 「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。(後略)」 と言う条文もあります。噛み砕くと「明らかに重い犯罪をしている人間を見つけ、今すぐ逮捕しなきゃいけないような場合は、逮捕状なしでも逮捕して構わない」と言う意味です(こちらは「緊急逮捕」と言います)。 この2つの条文に引っかからない場合は、逮捕状なしで逮捕される事は絶対にありませんし、職務質問に応じる必要もありません。 ただ、何もしていないのなら、素直に職務質問に応じた方が良いでしょう。素直に応じれば、すぐに解放してくれるはずです。 なお、もし職務質問を無視して警官を怒らせ、警官が殴ってきた場合。 この時は、刑法第95条第1項「職務強要罪」になりますので、すぐに裁判所に訴えかけましょう。 職務強要罪も公務執行妨害も、全く同じ、3年以下の懲役、または3年以下の禁錮に処されます。 |
ホテルの備品は、本当に持ち帰ってもいいのか? 旅行などで泊まるホテル。 ここで、かなりの人が歯ブラシや歯磨き粉、シャンプーやリンスと言った類の物を持ち帰ることでしょう。 しかしこれ、勝手に黙って持ち帰って、法には触れないのでしょうか? これは、ホテル側が黙認しているため、特に法に触れると言う事は無いようです。 しかし、バスタオルや浴衣といった布製の物(布団なども)や、コップや魔法瓶などは持ち帰る事はできません。 これらを分ける基準は特にありませんが、常識の範囲内、と言う言葉で片付きそうです。 ですので、常識の範囲を越えてしまうと、後日代金を請求されたり、窃盗罪で訴えられる可能性もあります。 持ち帰っていい物かどうか迷ったら、フロントに問い合わせてみるのもいいでしょう。 そこまでして持ち帰りたければ、の話ですが。 なお、ホテルとしては、サービス業なのであまりお客を疑うような規則を設ける事は出来ないようです(例えば、チェックアウトの際の持ち物検査など)。 |
もしもお釣りが多かったら? 買い物をして、お金を支払った際、お釣りが多い事に気が付く…。 さてこの時、もしも黙ってお金を持って行ったらどうなるのでしょうか? 一見、間違って多く渡した向こうの方が悪いように見えますが、実はこれ、犯罪なのです。 我々には、お釣りが多い場合、それを知らせる義務があります。 それをせずに黙ってお金を持っていく行為は、積極的に嘘をついて相手を騙し金品を奪う行為と同じことだとみなされているので、 刑法第246条「詐欺罪」が適用され、10年以下の懲役に処せられる事になります。 では、もしも支払いの時点では気が付かず、家に帰る途中、または帰ってから気がついた場合は、どうなるのでしょう? 上の詐欺罪は、受け取った時点で気が付いた場合のみ適用されます。 つまり、帰る途中や帰った後で気が付いて、そのまま持って帰っても詐欺罪にはなりません。 が、今度は刑法第254条「遺失物等横領罪」が適用され、1年以下の懲役、又は10万円以下の罰金、もしくは科料(かりょう/罰金より軽い罰金。トガリョウとも)に処されます。 遺失物等横領罪とは、落し物を拾ってそのまま自分の物にするような行為の事。 「落し物」とは、法律上「元の持ち主の占有を離れた物」とみなされています。 今回のお釣りの場合、お釣りの「多い分」はこの「元の持ち主の占有を離れた物」とみなされ、それを黙って自分の物にしてしまうと、遺失物等横領罪が適用されてしまうのです。 もしもお釣りが多かったら、黙って自分の物にせず、良心を持ってキチンと返しましょう、と言う法律でした。 |
国外で犯罪をしたら、どっちの国の法律で裁かれる? これは、例えばこんなケース。 日本人が海外(国外)へ行き、誰かを殺してしまいました。 さて、その日本人はその国の法律で罰せられるのか、日本の法律で罰せられるのか? と言うことです。 この場合、その日本人は日本の法律で裁かれる事になります。 つまり、死刑制度の無い国(フランスなど)で殺人をした場合、結局罰せられるのは日本の法律なので、死刑もアリ、と言うことになります。 では、もし既に外国の法律で罰せられていたら、どうなってしまうのでしょうか? 日本の法律では、このような場合も2重に処罰する、と言うのが一般的な見方です。 ただ、既に外国で罰を受けているので、ある程度軽減はされます。 ですが、このように外国での犯罪に日本の法律が適応されるのは、実は例外的な場合。 ほとんどの刑罰は、国外犯(国外で罪を負った人)には適応されません。 つまり、行為によっては日本の法律では罪になるのに、外国であるため罪にならなかったり、その逆も十分ありえます。 例えばアメリカのハワイでは飲酒は21歳から許されているので、20歳の日本人がハワイでお酒を飲むと、ハワイの法律で罰せられることになります。 このように、他国の法律で裁く事を「治外法権」といいます。 国外犯にも適応される罪は刑法第3条第1項の第1号から第16号までに記されている、次の犯罪。 放火(未遂も)。現住建造物等侵害(他人の家の中に水を入れる)。文書偽造(未遂も)。私印偽造及び不正使用(未遂も)。強制わいせつや強姦、重婚。殺人(未遂も)。傷害、傷害致死。堕胎。遺棄。逮捕及び監禁。誘拐。名誉毀損。窃盗や強盗。詐欺や恐喝、その未遂。業務上横領。盗品譲受け。 です。 なお、宇宙でのこれらの犯罪にも、日本の刑法が適応される、と解釈されています。 |
電車内で銃をぶっ放しても、罰金はたったの30円! 「電車内や駅で銃を撃っても、30円の罰金で済む」 と言うと、「そんなバカな」と言う気もしますが、実は、あながちウソでもないのです。 鉄道営業法第39条には、 「車内、停車場其ノ他鉄道地内ニ於テ発砲シタル者ハ三十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス」 と、あります。 噛み砕くと、「電車内や駅などで発砲した人は、30円以下の罰金に処する」と言う意味です。 ますます「そんなバカな」と言う感じですが、と言うのもこの法律、実は作られたのが明治33年のこと。 当時の大手銀行の銀行員の初任給が35円でしたから、そう考えると30円と言うのは大変な金額です。 では、現在も30円払えば良いのかと言うと、もちろんそんなバカなことはありません。 平成3年に作られた、「罰金等臨時措置法」と言う法律の第3条には、 「法律で命令に罰金の罰則を設けることを委任している場合において、その委任に基づいて規定することができる罰金額の最高限度が二万円に満たないときは、これを二万円とする。」 とあります。 これは、今回の鉄道営業法のように、昔に作られ、その金額があまりにも少ない法律を対象とした法律で、噛み砕くと 「その法律で決められた罰金額が2万円以下の場合、その罰金は2万円にする」 と言う意味です。 ですので、電車内や駅なので発砲した人は、2万円の罰金に処する、と言う事になるのです。 実は、鉄道関係の法律は、このようにものすごく古い物が多く、中には現在では考えられないようなものもあります。 例えば、鉄道運輸規程第23条の4には、電車に持ち込んではいけないものとして「死体」と書かれていますし、 電車内で牛が死亡した場合、鉄道会社側に1頭に付き25万円を請求できます(鉄道会社側に責任がある場合。同規程第73条の3)。 他にも、時刻表を駅内に置く事も規程で決まってますし(同規程第4条)、 実包(じっぽう/火薬の詰まった弾丸)は200個まで、拳銃用の火薬も特定の容器に詰めておけば1kgまでなら黙って持ち込んでも構いません(同規程第23条の1)。 ただし、普通の火薬は1グラムでも持ち込んではいけません(同規程同条)。 このように、普段我々の生活に密接な物でも、法的に意外な一面を持っていたりもするのです。 |
他人に送ったメールで相手がウイルス感染。賠償責任は? 「コンピュータ・ウイルス」の名前ぐらいは、パソコンをやっていればたいてい知っているでしょう。 さてこのウイルス。ご存知の通り、メールによって相手に送りつける事が可能です(でもやらないでください)。 しかし、わざと送らなくても、まれに知らずに他人に送ったメールのせいで、相手がウイルスにやられる場合があります。 この場合、果たして法的な賠償責任は生じるのでしょうか? まず、そもそもコンピュータ・ウイルスを送りつける事は、どのような罪になるのでしょうか? 現在は、コンピュータ・ウイルスを送りつける事は、民法上の「不法行為」になると解釈されています。 民法第709条には「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」とあります。 噛み砕くと、 「わざとだろうが、わざとじゃなかろうが、他人の権利を侵害し、損害を負わせた人は、それに対し責任を持て」 と言う事。 「コンピュータ・ウイルスを送りつける(=相手のパソコンを壊す)」と言う行為は、 この「他人の権利を侵害し、損害を負わせ」る事、と解釈されています。 さて、この条文で注目したいのが、「過失」…つまり「わざと」じゃなくても、相手の権利を侵害し、損害を負わせた人は、それを賠償しなければならない、と言うところ。 つまり、コンピュータ・ウイルスをわざと送りつけたのではなくとも、自分が送ったメールが原因で相手のパソコンが壊れた場合、 そのメールを送った人は、それによって相手が被った損害を賠償しなければならない、と言うわけです。 自分のパソコンを守るだけでなく、下手に賠償責任を負わないようにするためにも、ウイルス対策はしておいた方がよさそうです。 |
ものすごく古いお札は、使用可能なのか? 古いお札の代名詞として、「聖徳太子」なんてよく言いますが…。 こういった、ものすごく古いお札と言うのは、現在使ってもいいものなのでしょうか? 結論から言うと、いくらでも使用可能です。 お札と言うのは、主に偽造防止の為に、しょっちゅう新しくなります。 しかし、だからと言って直前まで使用されていたお札が使えなくなると大変なので、どんなに古いお札でも、使用可能です。 歴史の教科書に出てくるほど古いお札になるとさすがに使えませんが、そうでなければ、使用は可能です。 例えば、今は1円と言えば全て硬貨ですが、昔はお札でした。 現在(2004年11月1日)使える最も古いお札は、この1円札。 ちなみに、描かれているものは大黒像で、1885年から1958年まで、発行されていました。 ただし、もちろん現在発行はされておらず、入手するのは困難です。 また、こうした古いお札と言うのは、どんどん回収され、処分されていきます(詳しくは、「古くなったお札は、その後どうなるのか?」参照)。 そのため、マニア間ではものすごい値がつくわけです。 こうした旧紙幣は、日本銀行も急いで回収します。 言うまでも無く、簡単に偽造が出来てしまうからです。 下手に最新のお札の偽札を作るよりも、100円札辺りの偽札を作った方が、逆に儲かるかもしれません。 ただし、もし作って捕まったとしても、当方は一切の責任を負いません。 また、「一覧の雑学の部屋」に、「現在使える紙幣一覧」を載せました。併せてどうぞ。 |
列を乱すと犯罪になる! 「割り込み」と言う行為があります。 例えば、遊園地やレストランの前で大行列になっているときに、待ちたくないがために列の前の方に入り込む行為です。 割り込みを見ても、「無礼な奴だ」でたいていの人が終わってしまいますが…実はこれ、立派な違法行為なのです。 軽犯罪法第1条第13号には、 「公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者」 とあります。 長い上に、「若しくは」や「又は」だらけで読みづらいですが、噛み砕くと、 「何かを待って並んでいる人たちの列に割り込んだり、列を乱してはいけない!」 と言うことです。 法律違反である以上、もちろん刑もちゃんとあります。 軽犯罪法違反ですので、「拘留又は科料」になります(同法第1条)。 拘留とは、1日以上30日未満、犯罪者を拘留場にぶち込んで置くこと。 科料(「かりょう」又は「とがりょう」)とは、1000円以上1万円未満のお金を、犯罪者から取り上げる事です(「罰金」より軽い、「財産刑」)。 もし、列の割り込みを見て頭に来たら、「軽犯罪法違反だ!」と言って、警察に突き出してしまうのも1つの手です(?)。 |
風邪をうつすと罪になるのか? 風邪にかかった人のすぐそばにずっといると、風邪をうつされてしまう…。 そんな事は、常識です。 では、もし、「わざと相手に風邪をうつした」ら、法的にどうなるのでしょうか? 実は、過去にこのような事件(詳しくは不明ですが…)が起こり、昭和27年6月6日に、最高裁判所で判決が下されています。 「本罪は、暴行によらず、病毒を他人に感染させ場合にも成立する」 この「本罪」とは、傷害罪のこと。 つまり、噛み砕くと、「病気を感染させても、傷害罪にする」と言う事なのです。 ですので、「わざと相手に風邪をうつした」場合は、刑法第204条傷害罪が成立し、 10年以下の懲役又は30万円以下の罰金、もしくは科料(1000円以上1万円未満の罰金)に処されてしまうのです。 よって、誰かに風邪をうつされた場合、裁判所に訴え出れば、相手に傷害罪を着せる事が可能となるのです。 ただ、そのためには、「自分が今ひいている風邪が、確実に相手からうつされた物である」と言う事を証明する必要があります。 実際にはこんな事を直接証明する事は不可能ですので、間接的に証明する事になります。 例えば、「わたしは風邪をひく前日、風邪をひいているこの人とずっと一緒にいた」と言う事を証明したり、 狭い部屋で相手と長時間一緒にいた、相手の看病をしていた、など、「風邪をうつされてるかもしれない状況」にいた事を証明できればいいのです。 実際にそれで証明になっているかどうかを判断するのは、裁判長の役目。 裁判長がそれで「その風邪は相手からうつされた物だ」と判断すれば傷害罪になりますし、判断しなければ傷害罪にはなりません。 ちなみに、今回の文章で「わざと」と書いてありますが、実際には別にわざとである必要はありません。 風邪を引いたときは、あまり他人に近付かない方が身のため、と言う事です。 |
刑罰の種類 現在の日本では、刑法に触れた人には、刑罰が下される事になっていますが、刑罰は全部でいくつあるのでしょうか。 現在の日本には「死刑」「懲役」「禁錮」「罰金」「拘留」「科料」「没収」の7つの刑があります(刑法第9条)。 順番に見ていきましょう。 刑法第11条「死刑(しけい)」。言うまでも無く、「死んで罪を償ってもらう」と言う刑です(このような刑を、「生命刑」と言います)。 ちなみに第11条第1項には「死刑は、監獄内において、絞首して執行する。」と書いてあります。 次は、刑法第12条「懲役(ちょうえき)」。 懲役とは、早い話が刑務所にぶち込む刑。こうした刑を、罪人の自由を奪うので、「自由刑」と言います。 懲役には、「無期」と「有期」があります。 無期とは、「期間を決めずに刑務所に入れる」と言う意味です。 よく、この「無期懲役」を、「一生刑務所から出て来れない刑」と考えている人がいますが、それは間違い。 無期懲役は期間を決めないだけで、出られないわけではありません。 裁判所の方が、「もう刑務所から出しても大丈夫だろう」と判断したら、外に出る事ができます(詳しい判定基準はわかりません。どなたか知っていたら、教えてください)。 そして「有期」は、無期の逆。つまり、期間が決まっている懲役刑。 この期間は、1か月以上20年以下とあらかじめ決まっています(第12条第1項)。 ただし、死刑、無期懲役、無期禁錮のどれかの判決を下された後、有期懲役に減じられた場合は、最高期間が30年になります(第14条第1項)。 逆に、刑を重くする場合も、30年まで引き上げる事が出来ます(第14条第2項)。 次は刑法第13条「禁錮(きんこ)」。こちらも「自由刑」の1つ。 懲役とほぼ同じで、無期と有期があり、その期間、刑務所に入れられる刑です。 期間もあらかじめ1か月以上20年以下と決まっています。 では懲役と禁錮は何が違うのでしょうか。 懲役とは、「監獄に拘置して所定の作業を行わせる(第12条第2項)」、つまり、刑務所の中で働いてもらう刑です。 それに対し禁錮とは、「監獄に拘置する(第13項第2項)」、つまり、刑務所にいるだけで働かない刑(働く事を強制されない刑)です。 働く方と働かない方。どちらがつらいかは人によって違うかもしれませんが、刑法第10条には、どちらがつらいか明記されています。 それによると、基本的に重いのは懲役の方。 ただし、無期禁錮と有期懲役では、無期禁錮の方が重くなります。 また、犯罪はそれぞれ「刑の最高期間」が決められていますが、禁錮の最高期間が、懲役のそれの2倍以上の時は、禁錮の方が重くなります。 次は刑法第15条「罰金(ばっきん)」。言うまでも無く、お金を払う刑罰です。 このように、お金を払う刑罰の事を、「財産刑」と言います。 財産刑は罰金以外にもう1つ、刑法第17条「科料(かりょう/トガリョウとも言う)」があります。 両者がどう違うかと言うと、罰金は1万円以上の財産刑で、科料は千円以上1万円未満の財産刑です。 罰金は、場合によって刑が減じられ、1万円以下の「罰金」になる事もあります。 ちなみに、罰金や科料を支払うだけのお金が無い場合。 この場合は、罰金ならば1日以上2年以下、科料なら1日以上30日以下、強制労働をさせられます(第18条第1項・第2項)。 罰金・科料の一部だけを支払った場合は、その分を差し引いた日数、途中で支払った場合は、残りの日数を、その金額分減らします(同条第6項・7項)。 1日分に満たないお金は、支払う事ができません(同条第8項)。 そして次が第16条「拘留(こうりゅう)」。これは「自由刑」の1つです。 拘留が、懲役や禁錮と決定的に違うのは、入れられる場所と期間。 懲役と禁錮は刑務所に入れられますが、拘留は拘置所に入れられます。 そして、その期間も1日以上30日未満と非常に短いものになっています。 最後の第19条「没収(ぼっしゅう)」ですが、これは「付加刑」と言って、没収だけを受ける事はありません。 没収とは、 「犯罪に利用したか、利用しようとした物(同条第1項第2号)」 「犯罪によって手に入れた物や、その報酬として得た物(同条同項第3号)」 などを、強制的に取り上げ、国の物にする事です。 ただし、これは、犯人が持っているものに限り行う事ができます。 つまり、犯人以外の人間が持っていた場合は、没収できません。 しかし、犯人以外の人が持っていても、その人が、それが犯罪に関連していると知っていて手に入れたものである場合は、没収できると定められています(同条第2項)。 また、没収しようとした物全部を没収する事が出来ない時は、それに見合う分のお金を、犯人から没収する事が出来ます(これを「追徴」と言います。第19条の2)。 なお、これらの刑罰を重い順に並べると、基本的に、 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、(没収) の順番になります(最初に書き並べた順番です)。 ただし、これらの刑は全て「刑法上の」刑。他の法律には、他の刑が待ち構えています。 なお、今回は、わかりやすいように、一覧の雑学の部屋に「刑罰一覧」を載せました。併せてご利用下さい。 |
「最高速度」がある。「最低速度」もある! 車には「制限速度」と言って、「このスピードまでなら出してもOK」と決められた速度があります。 道路標識に書かれている、「赤い丸で囲まれた青い数字」や、道路に直接書いてあるオレンジ色の数字が、その道の最高速度。 「制限速度」と言うと、この「最高速度」を連想しがちですが、実は、「最低速度」と言うものも存在するのです。 道路交通法第75条の4には、 「自動車は、法令の規定によりその速度を減ずる場合及び危険を防止するためやむを得ない場合を除き、高速自動車国道の本線車道(政令で定めるものを除く。)においては、道路標識等により自動車の最低速度が指定されている区間にあつてはその最低速度に、その他の区間にあつては政令で定める最低速度に達しない速度で進行してはならない。」とあります。 噛み砕けば、「自動車は、最低速度の指示がある場合は、その最低速度より速く走らなければならない(ただし、緊急事態を除く)」と言う事。 この最低速度の指示を出す標識(規制標識)は、高速道路にあるようです。 高速道路(正しくは「高速自動車国道」)は、「速く走れる」事を目的としているので、チンタラ走っている人がいると、邪魔になります。 そのため、このような「最低速度」の規制を作り、「高速」を促しているのです。 ただし、言うまでもありませんが、渋滞でも止まらずに、突っ込んだ場合は、大惨事が起こるため、「やむを得ない場合」と考えられます。 つまり、渋滞している場合は、最低速度を下回ってもいいわけです。 この「最低速度」の標識は、「赤い丸で囲まれ、青い下線が引かれた青い数字」です。 道路にも直接書いてあるのかも知れませんが、調べても見つかりませんでした。どなたか知っていたら教えてください。 ちなみに、渋滞など「やむを得ない場合」でもないのに最低速度を下回ってチンタラ走っていた場合は、 道路交通法第120条第12項により、5万円以下の罰金に処されます。 かと言って、スピードを出し過ぎると事故を起こしてしまうので、くれぐれも安全運転を心がけてください。 参考文献;社団法人 全国道路標識・標示業協会【http://www.zenhyokyo.or.jp/】 |
親の金を盗んでも、罪にならない!? 刑法第235条には、「窃盗罪」として、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する。」とあります。 早い話、「他人の物を盗んだら、10年以下の懲役だよ」と言っているわけです。 人の物を盗んじゃいけない、と言うのは、幼稚園・小学校で習う事で、ごく当たり前の事ではありますが…。 実は法律上、親の物を盗んでも、刑罰はくだらないのです。 刑法第244条第1項には、 「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。」 とあります。 早い話、「家族間では、窃盗や第235条の2の罪を犯したり、犯しかけても、刑罰は与えないよ」と言う事。 刑法第235条の2とは、「不動産侵奪」と言って、手っ取り早く言えば、他人の家を乗っ取る事です。 これらの罪を犯しても、「罪」にはなりますが、刑は受けなくて良いのです。 また、「同居の親族」とありますが、「では、別居中だったらどうなる?」と言う質問には、同条第2項が答えてくれます。 「前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」 これが同条第2項。「相手が訴えない限り、裁判は起こさない」と言っているわけです。 ただし、同条第3項には、「前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。」とあります。 これは、「もし共犯者がいて、それが家族じゃなかった場合は、刑罰を受けてもらう」と言う事です。 何故こんな法律が出来たのか、その由来は知りませんが(どなたか知っていたら、教えてください)、日本にはこういう法律も存在するのです。 ただ、これは「刑」を受けないだけであって、「罪」にならない、と言うわけではありません。 もっとも、刑を受けないのならば、罪になっていないのと、なんら変わりはありませんが…。 |
国旗の色は、赤じゃない!? 日本の国旗と言えば、ご存知「日の丸」。あの、白地に丸が描かれたアレですが…。 あの丸の色は、何色だと思いますか? 思わず「赤」と答えたくなりますが…「国旗及び国歌に関する法律」には、こうあります。 「日章 紅色」 そう、あの丸は、実は赤色ではなく紅色なのです。 赤色は●ですが、紅色は●です。 見た目にはわずかな差ですが、法律上は赤ではなく紅なので、国旗を描く際、赤で書くと、それは日本の国旗ではなくなってしまいます。 この法律の第1条第2項には「日章旗の制式は、別記第一のとおりとする」とあり、「別記第一」には、他にも国旗に関する事が定められています。 まずは縦横比。縦の長さは、横の長さの3分の2、と決められています。 また、日章(丸)の直径は、縦の5分の3。丸の中心は、旗の中心です。 そして、旗は白地に紅色の丸、と定められているのです。 ただ、これには特例があって、附則の3には、 「日章旗の制式については、当分の間、別記第一の規定にかかわらず、寸法の割合について縦を横の十分の七とし、かつ、日章の中心の位置について旗の中心から旗竿側に横の長さの百分の一偏した位置とすることができる。」 とあります。 早い話が、「縦の長さは、横の長さの10分の7。丸の中心は横の長さの100分の1だけ、支柱側によってもよい」と言う事。 ただし、「当分の間」とあるように、いつかはこの特例がなくなる…かもしれません。 ちなみに、この法律が出来たのは、平成11年(1999年)8月13日。 それまで、実は国旗と国歌を厳密に定めた法律は無かったのです。 今度、国旗を描く機会があったら、法律通りの寸法で描いてみるのも、面白いかもしれません(?)。 |
南極へ行くのに、パスポートは必要か? 普通、日本から海外(外国)へ行こうとする場合、パスポートが必要になります。 では、地球の最南端、南極の場合は…? これは、「いらない」とも言えますし、「いる」とも言えます。 1961年、「南極条約」と言う国際条約が発効されました。 この条約は、「南極はどこの国にも属さない」と言うもので、「どこの国の人でも入って良い」と言い換えられます。 パスポートとは、その人の国籍や身分を証明し、「この人は貴国に入れても安全な人です」と本国が相手国に伝えるものです。 南極は、どこの国のものでもないため、南極に入るのに、パスポートはいらないのです。 ですが…現実問題としては、「いる」が正解になります。 何故ならば、日本から南極に行くためには、様々な国を通過する必要があるから。 そのためにはパスポートが必要になるので、結果として、南極へ行くにも、パスポートが必要になるのです。 まとめると、「南極に入るにはパスポートはいらないが、南極へ行く途中にパスポートが必要になる」と言うことです。 では、反対に北極はどうかと言うと…調べたところ、よくわかりませんでした。 どなたか知っている方、教えてください。お願いします(たぶん、いらないと思うのですが…)。 |
駐車と停車。どう違う? 道路標識や道路標示には、「駐車禁止」と「駐停車禁止」があります。 「駐停車」と言うのは、「駐車と停車」と言う意味なのですが、では、駐車と停車の違いはなんでしょう? この答えは、道路交通法第2条第1項の第18号と第19号に載っています。 この2つにはそれぞれ、駐車と停車の定義が書かれているのです。 まず、第18号「駐車」。 「車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。」 やたら長いですが、これが「駐車」の定義。噛み砕くと、 「車が、何らかの理由でずっと止まっている状態。または、運転手がどこかへ行ってしまっている状態を『駐車』と呼ぶ。ただし、荷物を5分以内に積んだり下ろしたりするか、人が乗り降りする場合は、『駐車』と呼ばない」 と言う事です。 要するに、「(運転手無しで)長時間その場に居続けること」を「駐車」と呼ぶわけです。 そして「停車」の定義は、逆に短く、「車両等が停止することで駐車以外のものをいう。」とあります。 噛み砕くまでも無く、「駐車してないけど止まってる状態」が停車状態です。 5分以内に荷物を積む場合や、人が乗り降りする場合は、「停車」と呼び、車が故障して止まっている場合は、「駐車」と呼ぶわけです。 なお、2006年6月1日に法律が改正され、駐車違反の取り締まりが強化されました。 これにより、仮に「停車」中でも「駐車違反」として取り締まられるようになったので、 「駐車違反」で捕まった時にこのページを見せて、「これは停車だ!」と言い張っても無駄ですので、あしからず。 |
SFのような条約がある! 科学技術が進歩し、日進月歩でSFのような世界が現実の物へと変わり続けている昨今…。 実は法律(条約)にも、SFのような物が存在するのです。 その名も、「宇宙条約」。 正式名称は「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」です。 この条約の成立は意外に早く、1966年12月19日に、国際連合総会第21会期で採択され、67年10月10日に発効されました。 日本で発効されたのは、その次の日。10月11日です。 条約とは、簡単に言うと「地球の法律」なので、その国の政府が認めれば、条約はその国の法律よりも強い効力を持ちます。 つまり日本では、この法律を守らなければならないのです。 この条約には、第17条までありますが、主な内容は次の4つ。 1;宇宙空間の探査・利用の自由 宇宙条約第1条【基本原則】にて明言されている物で、月や火星などの星や宇宙空間の探査・利用は、全人類が自由に行ってよい、と言うもの。 ただ、「すべての国の利益のため」や「国際法に従つて」などの制限が、若干あります。 2;領有の禁止 第2条【領有の禁止】で謳われている事。 第2条には、「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によつても国家による取得の対象とはならない。」とあります。 噛み砕くと、「どこの国も、宇宙に自分の土地を持っちゃいけない」と言う事です。 3;平和利用の原則 第4条【軍事的利用の禁止】に書かれている事。 宇宙空間に、核兵器を始めとした、あらゆる大量破壊兵器を持って行ってはいけない、と言う原則です。 また、軍基地や軍事施設、防衛基地なども造ってはいけない事になっています。 ただし、平和利用に軍隊を動員させることは、禁止しておらず、科学調査のための基地を造る事も、禁止していません。 4;国家への責任集中原則 第6条【国家の責任】と、第7条【国の賠償責任】にて規定されている事。 もし、将来、民間企業などが宇宙進出を始めた時、その責任は国が負わなければならない、と言う原則です。 宇宙条約には、これ以外にも、 宇宙飛行士を人類の使節とみなし、宇宙飛行士を全面的に援助する、第5条【宇宙飛行士に対する援助】や、 「どのような調査を行うか?」「どこで行うか?」「結果、何が得られたか?」を国連と国際科学界に連絡する義務を定めた、第11条【宇宙活動の情報提供】などがあります。 ただ、この条約にはいくつか問題点があり、「軍事的利用の禁止」には、 「大量破壊兵器」を宇宙に持っていくことは禁止されていますが、大量じゃない、ただの「破壊兵器」については禁止していません。 そのため、「大陸間弾道ミサイル」や「部分軌道爆撃システム」などが、この条約に引っかかるのかどうか、議論が分かれています。 また、地球上の領域(国が所有する土地)として、領地、領海、そして領空の3つがあります。 この「領空」の範囲は、昔は「空高く、宇宙の果てまで」でしたが、この宇宙条約が作られたため、話が変わってきました。 第2条【領有の禁止】によって、宇宙の領有が禁止されてしまったからです。 そのため、「地球の上空」と「宇宙空間」との間に境界線を引く必要が出てきたのですが、 まだ議論が分かれている状態で、ハッキリとは定まっていません(一番有名なのが、「地上100km案」です)。 ちなみに、宇宙条約のような、「宇宙」に関する条約は、これ以外にもまだまだ存在し、 宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定(通称;宇宙救助返還協定) 宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約(通称;宇宙損害責任条約) 宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約(通称;宇宙物体登録条約) 月その他の天体における国家活動を律する協定(通称;月協定) があります。 これらは「宇宙条約」が基礎となって作られた条約で、全部まとめて「宇宙法」と呼ばれています。 宇宙空間で行われる活動は全て、この宇宙法に則って行われているのです。 |
壊さなくても器物損壊罪 刑法第261条【器物損壊罪】 「(前略)他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」 この条文を噛み砕くと、「人の物を壊したら、3年以下の懲役か、30万円以下の罰金か、科料にする」となります。 この文章だけ読むと、「他人の物を壊さなければ、器物損壊罪にならない」という気がしますが、実はそうでもありません。 少し下品な話になってしまいますが、例えばこんな場合。 カレーを食べているAさんのところに、友人のBさんがやってきました。 するとBさんは、Aさんの目の前で「下痢をした」と言う話を始めます。 頼みもしないのに、Bさんはその状況を事細かに説明し、最後にAさんのカレーを指差して、 「そう、ちょうどこんな感じの下痢だった!」と言い放ちました。 Aさんは当然、まだ食べかけだったカレーを食べる気がすっかりうせてしまったのです…。 実はこの時、Bさんは「器物損壊罪」を犯した事になるのです。 「器物損壊罪」は、物を実際に壊さなくとも、「それ本来の使い方が出来なくなった場合」にも適用される、と解釈されています。 AさんはBさんのせいで自分のカレーを食べる事が出来なくなりました。 これは、「『食べる』と言うカレー本来の使い方が出来なくなった」と考えられるので、Bさんに「器物損壊罪」が適用できるのです。 |
心中は、罪? 今回書くことは、全て法律に基づいた事で、倫理や宗教、哲学には一切関係ありません(念のため書いておきます)。 さて、現在(2006年)の日本の法律(刑法)では、自殺は罪になっていません。 では、複数人で自殺する心中は、罪になるのでしょうか? これは、場合によって違ってきます。 心中をして、全員が死んでしまった場合。この時は、誰も罪にはなりません。 ところが、偶然にも誰かが生き残った場合。 この時、この生き残った人は、罪になってしまうのです。 適用される法律は、刑法第202条【自殺関与罪】。 自殺関与とは、読んで字のごとく、誰かの自殺に関わった人に適用される罪です。 主に、「自殺しよう」と持ちかけたり(自殺教唆〔きょうさ〕)、自殺の手伝いをしたり(自殺幇助〔ほうじょ〕)すると、適用されます。 「心中しようとした」と言うことは、「自殺の手伝いをした」事になるので、自殺関与罪になってしまうのです。 自殺関与罪は、6か月以上7年以下の懲役、または禁錮に処されます。 ちなみに、刑法第202条は、 「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。」 と言う条文です。 後半部分にある「人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者」と言うのは、要するに、 「『殺してくれ!』と頼んできた人間を殺した人や、『殺しても良いよ』と言った人間を殺した人」と言う意味です。 これは「同意殺人罪」と呼ばれる罪で、6か月以上7年以下の懲役、または禁錮です。 ちなみに、「殺人罪」の刑罰は、死刑、無期懲役、または5年以上の懲役。 殺人罪と比べると、自殺関与罪・同意殺人罪の2つは「軽い罪」とされているのです。 |
正月二日は死刑が無い! 「監獄法」という法律があります。 この法律では、懲役や禁錮などで監獄(刑務所など)に入れられている人を、どの様に扱うか、を規定しています。 そして、監獄法第71条第2項に、こんな条文があります。 「大祭祝日、一月一日二日及ヒ十二月三十一日ニハ死刑ヲ執行セス」 「大祭」とは、早い話、皇室で行われるお祭りの事。 これは皇室祭祀(さいし)とも言い、現在も行われています(「祝祭日」の「祭日」とは、この日の事です)。 噛み砕くまでもありませんが、この条文は、祝祭日と、1月1日、2日、12月31日には、死刑を行ってはいけない、といっているのです。 大祭自体は現在も行っていますが、1948(昭和23)年、大祭日を定めていた「皇室祭祀令」と言う法律が廃止されたため、 監獄法の「大祭(中略)ハ死刑ヲ執行セス」には効力がなくなりました(と言っても、一部の祭日は、そのまま祝日に置き換わりましたが)。 これらの日は、要するに「おめでたい日」です。 これは、「おめでたい日は死刑をするな」と謳った条文なのです。 これが良い事か悪い事かはわかりませんが、少なくとも「おめでたい日に死刑をやれ」と謳うよりは、良い事でしょう(?)。 |
家族を殺すと罪が重くなる? 刑法第119条には、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」と書かれています。 言うまでもなく「殺人罪」の事です。 そしてその隣の刑法第200条に目を移すと、そこには「削除」とだけ書かれています。昔はあったのに消されたのです。 ところで、刑法第119条の「人を殺した者は」の「人」とは、誰の事でしょう。もちろん、「自分以外の他人」の事ですが…。 実は、過去にこれが大きな論争を巻き起こした事があります。刑法第200条には、こんな条文があったのです。 「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス」 読みやすくすると「自分や結婚相手の直系尊属(父母、祖父母など)を殺した者は、死刑又は無期懲役にする」となります。 つまり刑法第119条の「人」とは、「直系尊属以外の人間」の事を指しているのです。 (なお、「直系尊属」とは父母や祖父母など、自分と直接血の繋がった上の世代の人たちの事で、おじ・おば、子どもなどは含みません) そして200条では、直系尊属を殺すと119条の「殺人」よりも罪が重くなる、と言っているのです。 この200条の罪を「尊属殺人罪」と呼び、これに対し119条の罪を「普通殺人罪(又は通常殺人罪)」と呼びます。 しかし、何故これが大きな論争を巻き起こしたのでしょうか。 日本国憲法第14条には、全ての日本人が「法の下に平等」であると謳われています。 尊属殺人は「直系尊属」を「特別扱い」した物、すなわち「平等ではない」法律ではないのか、と指摘されたのです。 似たような法律が205条2項(傷害致死)、218条2項(遺棄)、220条2項(逮捕監禁)にもあり、同じ指摘を受けました。 最初に問題が起こったのは第205条第2項。 父親に窃盗の嫌疑をかけられた上、父親に鍋や鉄瓶を投げつけられた被告人が、カッとなってそれらを投げ返したところ、父親が死んでしまった、と言う事件が起こりました。 昭和25年1月9日。本来ならば第205条第2項「尊属傷害致死」で裁かれるはずのところを、 裁判所が「第205条第2項は『法の下の平等』に反しているので、適用しない」と判断。 第1項の普通の傷害致死で裁いたのです。 ここから、論争が始まりました。 直系尊属を「特別扱い」している点が違憲(憲法に反している)と主張する人がいる一方で、 「誰だっていつかは誰かの親になるのだから、平等である」と合憲性(憲法に合っている)を主張する人もいました。 尊属殺人違憲派の主張は上記の他に、「直系尊属を殺すような事情は、たいてい同情すべき事情なのだから、罪が重くなるのは可哀想だ」 「そもそも119条で死刑宣告が可能なのだから、わざわざ200条を設ける必要はないだろう」「考え方が古い」 などです。 合憲派の主張は上記の他に、「親を殺して罪が重くなるのは、道徳的な考え方だ」 「英米以外のほとんどの国でも、尊属殺人は重く罰せられている」 「憲法14条1項には『人種、信条、性別、社会的身分又は門地により』差別されないとあるだけで、親子関係まで平等だとは言っていない」 などです。 この論争は20年以上も続きましたが、昭和48年4月4日。ついに最高裁判所が「違憲である」判断。 これらの法律は平成7年5月に刑法から削除されました。 こうして、現在はただ「削除」とだけ記された条文が残ったのです(ちなみに、他のところは項目すら残っていません)。 なお、当時は英米以外のほとんどの国でも尊属殺人は重く罰せられていたようですが、現在では日本同様、削除されています。 また200条が消えた事で119条の「人」は直系尊属も含む事になったので、親を殺しても罪にならない、と言う事にはならないのであしからず。 参考文献;注釈刑法(5)(団藤重光/責任編集) 刑法各論〔新版〕(団藤重光・平川宗信/共著) |
カツラを被ったまま運転免許証を作れるか? 運転免許証の証明写真には、メガネやサングラスを外した「素顔」が写っている必要があります。 では、カツラは? 基本的に「素顔」は、「それ以上剥がせない状態」を言うので、着脱可能なカツラは不可、とされています。 要するに、カツラは「帽子」とみなされてしまい、外さなければ運転免許証の証明写真を撮ってはいけないのです。 が、実際にはOKとされているそうです。 明らかな変装目的の場合を除き、カツラを被ったままでも証明写真を撮影できます。 「カツラは見て見ぬふりをするもの」と言う社会通念的なものが、ある程度通用するようです。 …なお、パスポートはどうなるのか不明です。どなたか知っていたら教えてください。 |
天皇に選挙権はあるか? 日本国民には全員に「基本的人権」が憲法によって保障されており、その中に参政権の1つ「選挙権」があります。 日本人なら、二十歳を過ぎれば選挙権が与えられ、投票に行けることは周知の通りです。 では、同じ日本人でも、天皇は? 天皇は特別な地位の存在で、普通の国民に出来ないことが出来ます。 「国事行為」と呼ばれる行為で、憲法改正や法律を公布したり、内閣総理大臣を任命したりできます。 ところが、逆に普通の国民に出来ることでも出来ない場合があります。 その1つが選挙です。 日本国憲法第4条には「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とあります。 「国政に関する権能」とは参政権のことで、参政権を持たない天皇には選挙権も認められません。 何故でしょう。 日本国憲法第1条によると、天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」です。 「象徴」というのは「ある物を別な物を使って表すこと」なので、天皇は「日本を表す(意味する)人物」と言うことになります。 そんな天皇が選挙に行ったらどうなるでしょう。 天皇の行為は日本の意思を表すのですから、その天皇が票を入れるということは、日本国民全員が同じ票を入れたことになってしまいます。 と言うわけで、天皇に選挙権はおろか、参政権すら認められていないわけです。 ちなみに、天皇が国事行為を行う際には、必ず内閣の助言と承認を必要とします。 内閣は内閣総理大臣を「リーダー」として構成されます。 その内閣総理大臣は、国会議員の中から国会議員が選んだ人物で、その国会議員は国民の中から国民が選んだ人物です。 よって、天皇の国事行為は「国民が選んだ人物たち、が選んだ人物、をリーダーとする集団、の承認が必要」なので、 天皇の国事行為は日本国民の意思を象徴している、と言うことになります。 |