摩訶不思議探偵局〜幽霊屋敷殺人事件〜
主な登場人物
実相真解(みあいまさと)…【探偵】
実相真実(みあいまさみ)…【探偵】
相上謎事(あいうえめいじ)…【探偵】
事河謎(ことがわめい)…【探偵】
兜剣(かぶとつるぎ)…【警部】(非登場)
猫山剣事(ねこやまけんじ)…【警部補】(非登場)
小鳥遊市医(たかなしいちい)…【鑑識】(非登場)
江戸川乱歩(えどがわらんぽ)…【ジャーナリスト】
橋口尚子(はしぐちなおこ)…【江戸川乱歩の友人】
橋口徹(はしぐちとおる)…【橋口尚子の夫】
島川涼子(しまがわりょうこ)…【江戸川乱歩の友人】
島川俊男(しまがわとしお)…【島川涼子の夫】
はしがき;今回、レギュラー陣が1人増えます。誰だか、推理してみてください。

相手のことを本当に好きだったら…その人の恋を素直に応援しなさい…

摩訶不思議探偵局〜幽霊屋敷殺人事件〜事件編

真実「いやぁ〜!本当に来ちゃったわねぇ」
真解「なんだよ。”来ちゃった”って」
謎「でも…本当にいいの?」
謎事「いいのいいの。気にすんなって」
 ここはとある遊園地。真解達は探偵局そっちのけで遊びに来ていた。
真実「でも気になる…。なんで謎事君がこんな高い遊園地の入園料4人分払えるわけ?」
謎事「う〜ん……。オレんちの会社、それほど景気が悪くないみたいだし…としか言いようがないなぁ」
真実「ふ〜ん」
 と、真解がふと気がついた。
真解「ん?おまえ、いまなんて言った?」
謎事「え?オレ?」
真解「ああ。確かいま、”オレんちの会社”って言わなかったか?」
謎事「言ったけど…それが?」
 真実がすっとんきょうな声で言った。
真実「え!?まさか謎事君、実は社長令息だったの!?」
謎事「あ…あれ??言ってなかったっけ?」
 真解と真実が声をあげて驚いた。
 何しろ、謎事は携帯電話やパソコンはもちろん、”社長令息”と言うイメージからわく物を何一つ持っていない。それどころか、外見だって貧相だ。
真実「全然気がつかなかった」
真解「幼稚園以来、11年間も付き合っていたのに…全く気がつかなかったな」
謎事「幼稚園と小学校低学年の時は、社長令息の息子だったけどな」
 いままで全く見抜けなかった真解は、少しプライドが傷ついたようだ。
謎「でも…社長令息と聞くと、なんかちょっと…見る目が変わるわね」
謎事「…ま、そんなわけだから、今日は全部オレのおごり。なんでも乗っていいし、見ていいぞ」
真実「やった☆じゃぁ、高いのから順に行こう♪」
 真実は周りを見渡した。
真実「メイちゃん、一番高いのどれ?」
謎「えっと…確か、あれ」
 謎が指差したのは、立体映画場。
真実「じゃ、行こう!」
 真実が映画場に駆け寄った。その後に、真解達も続く。
係員「あ、ちょっと待って。この映画、14歳未満は駄目ですよ」
謎事「え?なんで?」
係員「すっごく怖いから」
真解(13歳と14歳って、それほど変わらないと思うが…そうでもないのか?)
真実「大丈夫。わたし14歳だし」
 そう言うと、真解と謎も続いてそういった。
謎事「え?じゃぁ、オレだけ13歳?」
 全員が謎事を睨み付けた。
真実「え〜見たい」
謎「どうします?」
謎事「いいよいいよ。お前らだけで見てこい」
 謎事がそう言うと、真実が
真実「あ、じゃぁ、入ろうか」
 と言った。
謎事「え?」
 少しだけ同情を求めていた謎事は、ショック受けたようだ。しかも、真解も謎も入っていった。
 謎事はしかたなく外で待っていることにした。映画は約30分。見てると短いが、こうして待っていると異様に長い。
 眠くなりかけた頃、後ろから声をかけられた。
???「あ、もしかして謎事君?」
謎事「え?」
 後ろを振り向くと、ちょっと高価そうな革のスーツを着て、サングラスをかけ、20代前半ぐらいのサングラスをかけたキャリアウーマン風の女性と、その友達と思われる人達が立っていた。
???「あ、やっぱり謎事君だ」
謎事「え…?あ…あの…誰ですか…?」
???「あれ?覚えてない?」
謎事「は…はい…」
 相手はただのキャリアウーマン、と言った感じだ。だが、サングラスが異様に似合い、なんとなく外見が怖い。
???「駄目じゃん。ランポ。覚えられてないじゃん」
ランポ「え〜。そんなぁ」
 ランポと呼ばれたその女性は、ちょっと考え込んだ。
ランポ「ねぇ。本当に覚えてない?」
謎事「え…ええ…」
ランポ「やっぱり…まだ小さかったもんね。…そういえば、後の三人は?」
謎事「え?三人って…真解達?」
ランポ「そうそう」
謎事「あ…その…あの立体映画…見てます」
ランポ「あ、そう。あれ、14歳未満は駄目なのよね。あなた13歳?」
謎事「え…ええ…」
 謎事が脅えていると、真解達が戻ってきた。
真解「あれ?謎事。その人だれ?」
ランポ「あ、真解君と真実ちゃん、それにメイちゃん?大きくなったわねぇ」
真解「え…?誰ですか?」
謎「真実ちゃん…覚えてる?」
真実「覚えてない」
???「ランポ、駄目じゃん」
ランポ「やっぱ覚えてないかぁ。わたし、あなた達が小学3年の時に一度会ってるの」
真実「小学3年…?」
 桁外れの記憶力の持ち主、真実にもわからないようだ。
ランポ「駄目か…。わたし、江戸川乱歩(えどがわらんぽ)って言うの」
真解「江戸川乱歩…?変わった名前ですね」
江戸川「そう。親が江戸川乱歩のファンでね。それでこんな名前になったのよ」
真解(どっかで聞いたことのあるセリフだな…)
 と、真実が江戸川が誰だか解ったようだ。
真実「あ、もしかしてあなた、リポーターの江戸川さん?」
江戸川「そう!思い出してくれた!?ありがとう!」
 3人が口々に「そういえば…」と言い出した。
 リポーターの江戸川は、真解達が初めて事件を解決したとき、真っ先にリポートに来た人だった。その時の印象が強かったのかなんなのか、全員思い出すことが出来た。
真解「そのリポーターさんがどうしてこんなところに?」
江戸川「わたし、今はリポーター止めて、ジャーナリストになったのよ。だから、いつでも遊べるの。それで、みんなで遊びに来たってわけ」
謎事「ジャーナリスト?」
江戸川「ジャーナリストってのは、事件を個人的に調査して、それを雑誌や新聞会社に送る仕事よ。なかなか、生活が大変な仕事でもあるんだけどね」
真実「へぇ」
江戸川「あ、そうそう、それと、こっちの人はわたしの友達の橋口尚子(はしぐちなおこ)と島川涼子(しまがわりょうこ)。そして尚子の夫、橋口徹(はしぐちとおる)涼子の夫、島川俊男(しまがわとしお)」
橋口夫婦&島川夫婦「よろしく」
真実「え…じゃぁ、江戸川さんだけ行き遅れてるんですか?」
江戸川「………………♪雨、雨、ふれ、ふれ、もっとふれ。わたしのいい人、連れてこい♪」
真解(聞いたことない歌だな)
 乱歩は、なんとなく目に悲しみを浮かべていた。”行き遅れている”と言うことではなく、何か別なことに対する…。
 そんな乱歩の心境に気がついたのか、謎事が話題を変えようと、切り出した。
謎事「あの…こう言っちゃぁなんですけど、江戸川さん…外見ちょっと怖くないですか?」
江戸川「え〜。そう?」
尚子「乱歩、やっぱりそうなんだよ」
江戸川「やっぱりわたしは親指で後ろさして『あんた、あの子のなんなんだ』っていってる方が似合うのかしら?」
涼子「それもどうかと思うけどね…」
真解(また聞いたことのないセリフが出てきた…)
 しばらく話し込んでいたが、いつまでも立ち話してるのもなんだから…という理由で、2グループはそろそろ別れることにした。
 が、偶然にも、両グループとも、行く方向は同じだった。
俊男「偶然って、怖いな」
涼子「たしかに…」
 ついたところは「幽霊屋敷」と名の付いたお化け屋敷。
真解「謎事、怖くないか?」
謎事「な、なんでだよ!?」
真解「あれ?平気なのか?おかしいな…ボクらみたいな4人組みだと、おまえみたいなやつは大抵お化けとか幽霊とか苦手なはずだが…」
謎事「本物はともかく、これは怖くない」
真解「まぁ、中学生だからな。このぐらいは平気か」
謎「悪かったわね。怖くて」
 横から謎が言った。
真解「あ…苦手だった…?」
謎事「大丈夫だ。オレが守ってやる」
謎「結構です」
 謎事が言うと、謎がぷいと向こうを向いてしまった。
謎事「なぁ…オレって嫌われてるのかな?」
 謎事は真解に聞いた。
 以前、謎事は真解に自分が謎のことが好きだ、と言うことを言った。
 だが、謎事の言動を見ていれば、どんなに鈍感な人だって、謎事が謎のことを好きであることはわかる。当然、真解だって気が付いていた。
謎事「どうすりゃ好かれるかな?」
 真解は呆れながら「惚れ薬でも作れば?」と言った。
謎事「そうか…惚れ薬か………。惚れ薬ってどうやって作るんだ?」
「嫌われろ」と真解は冷たく言い放った。
江戸川「入るわよ?」
 乱歩が言った。
係員「大人は同時に1人まで、子供は同時に2人までです。間隔は5分間です」
 乱歩達は、橋口徹、橋口尚子、島川涼子、島川俊男、江戸川乱歩の順番で入っていった。
係員「君達、どうする?」
 係員が真解達に聞いてきた。
真実「2人ずつ♪」
 当然のごとく、真解・真実ペア、謎事・謎ペアに分かれた。
「ボクだけ1人って、駄目か?」と言う真解の意見は、当然のごとく却下された。
 まず先に真解と真実が入っていった。
真解「歩くタイプのお化け屋敷か…」
真実「幽霊屋敷のわりには、幽霊がいないんだけど」
 周りを見ると、首が取れた”お化け”やら、何とも形容しがたい、不気味な”お化け”、胸にナイフを刺し、そこから血が吹き出ているような、リアルな”お化け”までいる。
真実「どちらかって言うと、死体屋敷じゃないの?ここ」
 時々上や横から何か現れたり、不気味な声はするのだが…あまり、幽霊と言う感じはしない。

 一方、謎事・謎ペア。
 よほど苦手なのか、謎は謎事に寄り添っている。
謎事(う〜ん…なんか、寄り添われてると…周りのお化けやら幽霊やらを見づらい……)
 よほど動揺しているのか、謎事は目を泳がせている。
 普段はこういう雰囲気を期待しているが、いざそうなると、人間緊張するものだ。
 周りには得体の知れない不気味なお化けが大量にいる。
 時々周りから不気味な声が聞こえる。が、あまり脅そうとしている感じはない。
謎事(まだまだほんの入り口…ってことか?)
 と言うことは、まだまだ謎と寄り添っていられるわけだ。謎事はちょこっとだけ嬉しくなった。
 が、次の瞬間、その期待は無残にも破壊された。
ドサッ!
謎「キャッ!?」
 急に横から、変なものが倒れてきた。謎は驚いて、謎事にしがみついた。
 謎事もよほど驚いたのだろうか、固まっている。
 が、すぐに直った。そして、横から倒れてきた”変なもの”が、明らかに変と言うことに気が付いた。
謎事「ん?」
 謎事は”変なもの”に近づき、よ〜く見てみた。”変なもの”は人間の形をしている。
謎「相上君?」
謎事「これ…変だ」
謎「え?」
謎事「体が浮いている…。下に…何かあるのか?」
 謎事が下を覗きこんだ。そこにあったものは…
謎事「ナイフ?…それに…血がそこから大量に流れ出て…」
 謎事は死体らしきものに触ってみた。なんとも、気持ち悪い感触だ。だが、どこかで触れたことがある…。謎事はすぐに気が付いた。
謎事「これ…ほ…本物の…死体だ!まだ暖かいし…それに…この死体…島川俊男さんだ…」
謎「えっ!?」
「う……うわあああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
 謎事が叫んだ。その叫び声は、広い幽霊屋敷中に響いた。

Countinue

〜あとがき(舞台裏)〜
こんにちは、キグロです。
え〜、前回は序章でしたので、今回が第1回、と言った感じですね。
そんなわけで、第1回のゲストは実相真解君です!
真解「おい、なんだ”ゲスト”って。ここはあとがきだろ?」
だから、ちゃんとその後にカッコ書きで『舞台裏』って書いてあるじゃん。
真解「いいのか?」
あんまり文句が多いと、次回から登場させないぞ。
真解「確か、ボクが主人公じゃなかったか?」
大丈夫、君を殺して、真実を主人公にすることも可能だ。
真解「………わかった、文句言わない」
黄黒(自分が排除されることを恐れたのか、それとも真実が主人公になることを恐れたのか…。おそらく、後者だな)

さて、今回は遊園地での事件。
一応名前は『事件編』だけど事件って、最後のほんの数行だけじゃん。
真解「お前が言ってどうするんだよ。早く事件・推理編だせよ」
大丈夫、目茶苦茶速く書くから!
真解「誤字、脱字に気を付けろよ?」
グッ!?

真解「ところで、『あんたあの子のなんなんだ』ってなんだ?」
ああ、あれね。親にでも聞きな。ボクの口からはとても言えない。ついでに、『雨、雨、ふれふれ……』の方も。
真解(なんだそれは…)
では、また次回、会いましょう!

おまけの名句珍言集(謎)「大人はいつもいつもバカにして。あんたら大人に、自分の無力さを教えてやる!この事件、ボクらの勝利だ!」
解説;真解が兜警部に対し、怒って発した言葉。

作;黄黒真直

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