摩訶不思議探偵局〜コンサートホール殺人事件〜
容疑者リスト
相上 育覧(あいうえ いくみ/もめん)…【アイドル歌手】
魚住 忠助(うおずみ ただすけ)…【育覧のマネージャー】
黒川 仁美(くろかわ ひとみ)…【人気女優】
安口 彩(やすぐち あや)…【人気歌手】
Holy Knight(ホーリー ナイト)…【人気歌手(グループ・Kissリーダー)】
木村 国信(きむら くにのぶ)…【人気歌手(グループ・Kissメンバー)】
板垣 光(いたがき ひかり)…【人気歌手(グループ・Kissメンバー)】
銀冶(ぎんじ)…【人気歌手(グループ・Kissメンバー)】
独り言;っつーか、絶対新レギュラーが誰かばれてるし…。

摩訶不思議探偵局〜コンサートホール殺人事件〜事件編

舞台裏
魚住「遅いぞ! もめん! 開始まであと1分もない!」
育覧「ご、ごめんなさい…」
魚住「まぁいい。説教は後だ! 急げ」
育覧「は、はい!」
 育覧がスタンバイし、コンサートが始まった。
ホーリー「ん〜、ところで、遅いといえば板垣君も遅いぞ」
安口「あら、ホントだ…」
魚住「まだトイレなのか…? ちょっと、呼んでくる」
 魚住は舞台裏を出て、楽屋へと向かった。

舞台ホール
 ホール内は現在大熱狂。育覧のファンか、それとも後から出てくる人たちのファンか…どちらかわからないが、みな一様に大興奮している。
 育覧が1曲歌い終わると、司会が出てきて言った。
司会「さて、お次は…」
 と司会者がマイク片手に司会を始めたとき、舞台裏から誰かが顔を出した。…魚住だ。
 魚住は司会者に向かって手招きをした。司会者がそれに気づいて、魚住に近づいた。そして、なにやら話し始めた。
謎事「? どうしたんだ? 育覧も目をパチクリさせてるけど…」
真解「さぁ…?」
 なんとなく異様な雰囲気を感じ取ったのか、ホールの人々は次第にざわつき始めた。
 魚住と話していた司会者の顔が一変して青ざめた。そしてヨロヨロと舞台の真ん中に戻り、マイクを握り締めて、言った。
司会「会場の皆さんにお願いがあります」
真実「? 何だろ…?」
 その司会者の声ときたら…今までの張りは全くない。完全に震えている。
 会場が一瞬、静まった。
司会「……皆さん、今いる場所から絶対に動かないでください。そして、知り合いの方や隣の方と手をつないでください」
全「!?」
「なんだと!? どういうことだ!?」
「何が起こったの!?」
司会「静かにしてください! たった今、板垣 光さんが何者かによって殺害されました!」
 会場が、一気に凍りついた。次の瞬間、悲鳴が聞こえた。

兜「被害者の名前は板垣 光、28歳…。人気グループケーアイエスエスの…」
猫山「キッスです、キッス!」
兜「……人気グループKissの一員で、人気歌手…」
 兜はタバコをくわえながら、ざっと資料のようなものを読んだ。
兜「しっかしよくまぁ、出会うなぁ…真解」
 兜は資料から顔を上げ、真解たちを見た。もう、おなじみのシーンである。
真実「兜警部こそ、タバコ、止めたんじゃないんでしたか?」
兜「いや、それがな……。 余計なことは覚えていなくていいんだ、真実嬢」
 兜がギロリと真実を睨んだ。
黒川「そんなことより、捜査をチャッチャとやってくださらないかしら? 刑事さん…」
 黒川がまた冷めた声で言った。冷めた、というよりかったるそうな声でもある。
兜「わかってますよ」
 兜が殺害現場へと入っていった。
 殺害現場は楽屋内のトイレの中。個室の中で(と言ってもここには個室しかないが)便器に座ったまま死んでいる。腕をダランとさせ、目は白目を向いている。おそらく、毒殺だろう。
 ズボンはちゃんと履いているところから、用をたし終わって個室から出ようとドアを開けた瞬間、毒を飲まさせたのだろうと推測された。あらかじめ毒を水か何かに溶かしておけば、不可能ではない。
謎「ということは、計画的な犯行ということですね…」
謎事「え? なんで?」
謎「何でって…」
 メイははぁ、とため息をつき、メガネを押し上げた。
謎「いいですか? 計画的な犯行でなければ、毒なんて用意できませんし、待ち伏せも無理です」
謎事「ああ、そうか。そうだよな。ははは…」
 謎事がまた苦笑いすると、メイがまたため息をついた。もうすっかりおなじみのシーンだ。
真解「毒の種類はわかるか?」
謎「そうですねぇ〜…。さすがに、ちょっと…」
真解「そうか…」
 まぁ、じゃあ仕方が無い。真解は兜たちの方に歩み寄った。
真解「ところで兜警部」
兜「どうした?」
真解「今回の殺人…容疑者、多すぎません?」
兜「ああ、ホールだからか?」
真解「ええ」
兜「その点は大丈夫だ。いま、下っ端たちに全ての人間に聞き込みをして貰っている。ホールの入り口には、ずっと警備員がいたと言う話しだからな。まもなく、容疑者が絞れるだろう」
真解「あ、そうですか」
兜「話は、それからだ」

 30分ほどたって、全員の聞き込みが終わったらしい。とりあえず楽屋に待たされていた育覧とKissメンバー、それから黒川と安口のところに、兜がやってきた。ついでに猫山もいる。
兜「先ほど…死亡推定時刻である、午前10時から午前10時20分までのこのホールにいる人間、全員のアリバイ調査が終了しました」
ホーリー「ん〜、素晴らしい! で、結果は?」
 ホーリーのテンションに眉をひそめつつも、兜は話を進めた。
兜「あなた方以外は、全員立派にアリバイがありました」
銀冶「…ってことは…?」
黒川「わたし達の誰かが犯人…と言いたいのですか?」
兜「そうです」
安口「ちょ、ちょっと待ってください刑事さん! わたしにもアリバイがあります!」
兜「? そうでしたっけ…?」
猫山「そうですよ、警部。この人と、あちらの美人の黒川さんは、その時間帯、舞台裏に既にいました」
兜「あ? あれ? そうか」
真解「ということは、それ以外の方…ということですか」
兜「ともかく、あなた方の行動を順に言ってください」
 兜が警部の貫禄を見せ付けた。
 全員の話をまとめると、こうだった。
 例の「スタンバらないと」のあと、安口と黒川はとっとと舞台裏へ一緒に行った。その後、板垣、ホーリー、銀冶、木村、魚住の順にトイレに入り、銀冶、ホーリー、木村、魚住の順にトイレから出て行った。育覧はと言うと…。
兜「どうしていたんだ?」
育覧「え? えっと…ずっと、真解お兄ちゃんたちと話してました」
兜「どこで?」
育覧「え、あ、えっと…ど、どこでしたっけ…? あはははは…」
 育覧は謎事譲り(?)の苦笑いでごまかした。
兜「真解、どこで話していた?」
真解「楽屋の…入り口前ですけど…」
木村「入り口まエ? そんなバカナ。ぼくは最初にトイレから出たけど、そのとき既に君らはいなかったネ。しかも、舞台裏に最後に来たのは確かもめんだったネ」
兜「! どういうことだ?」
育覧「え? あ〜…じゃ、じゃぁ、ちょっと寄り道してたんですよ」
兜「『じゃぁ』…?」
猫山「怪しい…ですね」
謎事「育覧…正直に話せ」
 謎事が育覧を睨みつけた。従兄弟の貫禄か?
育覧「えっと、その…わ、わたしも楽屋出た後すぐにトイレに行きたくなったんですけど、でもなんか…戻るの、恥ずかしかったから、別なトイレ探して…」
兜「ふぅん…」
「怪しい」と言わんばかりに兜が育覧を見たが、今のところ反論するだけの材料がない。とりあえず、様子を見ることにした。
兜「しかし…今言った順番でトイレから出たのなら、一番怪しいのは魚住さん、あなたですね」
魚住「い、いやいやいや。ちょっと待ってくださいよ。そんな…」
真解「そうです。それはおかしいですよ」
兜「え? 何でだ?」
真解「確かに魚住さんは最後にトイレから出ましたが、この犯行は最後に出なくても十分可能です」
安口「どうやって?」
真解「『偶然』にかけることになってしまいますが、自分が個室から出た直後に板垣さんが出てくれば、誰にも気づかれずに犯行は可能ですし、最後だからと言って自分が個室から出た後に板垣さんが出てくるとは限らない…。つまり、『最後だから怪しい』とは言えないわけです」
安口「あぁ、なるほど」
 安口は何故か妙に納得した。
木村「それより…なんで君らは、ここにいるんだイ? 一般人のハズだロ?」
 木村は真解たちを見据えていった。
真実「あれ? 知りません? わたし達…」
ホーリー「ん〜、もめんの従兄弟とその友達だっけ?」
真実「いや、確かにそうですけど…」
 真実はコホン、と咳払いして、フッと微笑み、そして言った。
真実「わたし達、実は警察にも信頼されている探偵なんです」
黒川「たん…てい?」
安口「えっ!? すごいじゃない!!」
 安口が大はしゃぎしている。滅茶苦茶ハイテンションだ。 …人が死んでいるというのに。
ホーリー「ん〜、素晴らしいっ!!」
銀冶「って、そういう探偵、ホントにいるだねぇ」
木村「なるほどネ…」
謎事〔? 他の人は感心してるのに…黒川さんだけ、1人渋い顔をしている…何故?〕
 だが、その渋い顔も一瞬で元に戻った。
 気のせいだったのか? 謎事は思った。
兜「ま、そういうわけなので…彼らには、是非協力してやってください」
 兜はそう言いながら、またタバコを取り出した。いい加減、煙たくなってきた。一応換気扇はあるが。
魚住「そうだな…下手したら、もめんも危険にさらされる可能性があるわけですから。とことん、協力するぞ。もめんを、守り抜きたまえ」
真解「ええ、もちろんです。もめんを危険にはさらさせません。…絶対に」
 真解が言った。真解は、真実の殺気を感じた。嫉妬か?
魚住「ともかく、今回のコンサートは完全中止、ないしは延期…。ま、たぶん中止でしょう。みなさん、とりあえずホテルへ帰りましょう」
兜「ホテル?」
魚住「ええ。昨日から明日まで、泊まっていただくホテルです。車で20分程度のところです」
猫山「警部…いいんですか? 行かせて…」
兜「うむ…どちらかと言うと、行かせた方がいいだろう。そうすりゃ犯人は、このホールに残してしまった証拠を、隠滅することができないからな」
猫山「なるほど…。わかりやした」
 兜はまたタバコを取り出した。禁煙決断する前よりも、多く吸うようになってしまったらしい…。

Countinue

〜舞台裏〜
こんにちは。今回のゲストは久々に兜警部です。
兜「どうも」
最近兜警部、地味ですよねぇ…。
兜「なんだ、いきなり。警察ってな派手なら良いってもんじゃない」
う〜ん、ま、そうだけどさ。タバコだけは止めた方がいいよ、ホント。
兜「MASKにしてやられるかも知れんしなぁ…。だが、止められない」

さて、今回は1人殺されて終わり。次回は場面変わってホテルです。
兜「言ってどうする」
まぁ、最後にホテルに行くって言ってるし。大丈夫。
兜「いい加減だな…おい…」

う〜ん…ってか今回、真解の「絶対に」を言わせるの、早すぎたかな?
真実「そうよそうよ! だいたい、なんでお兄ちゃんにあんなセリフ言わせるのよ! 恋人みたいじゃない!」
気にするな。真解だってそろそろ恋人が欲しい頃だろし…。あ、でもそうなると謎事と真解が義理の従兄弟になるのか!?
兜「いや、結婚まで行くのか?」
どうなんだろうね? ってか、恋人になるのか? あの2人…。 あ、でもいいかも。
真実「良くない!!」
…何故2回出れる!?

ではまた次回。

おまけの名句珍言集(謎)「死んだかと思って、墓石まで買っちゃったわよ!!」
解説;「近未来体験ツアー…」で、真解たちが無事帰還したとき、美登理が言ったセリフ。まぁ、冗談だったが。

作;黄黒真直

ホテル編

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