摩訶不思議探偵局〜コンサートホール殺人事件〜
容疑者リスト
相上 育覧(あいうえ いくみ/もめん)…【アイドル歌手】
魚住 忠助(うおずみ ただすけ)…【育覧のマネージャー】
安口 彩(やすぐち あや)…【人気歌手】
Holy Knight(ホーリー ナイト)…【人気歌手(グループ・Kissリーダー)】
木村 国信(きむら くにのぶ)…【人気歌手(グループ・Kissメンバー)】
銀冶(ぎんじ)…【人気歌手(グループ・Kissメンバー)】

摩訶不思議探偵局〜コンサートホール殺人事件〜事件・推理編

 真解たち4人と兜、猫山が魚住の部屋の前まで来た。
真解〔まだ、証拠も何も無い。あるのは動機だけだ。とりあえず…それとなく、話を持ち出すんだ〕
 真解はドアをノックした。
 が、返事が無い
 もう一度ノックした。
 しかし、返事が無い。
真解「…? いないのか…?」
猫山「にしても、2人ともいないと言うのは…」
兜「“2人”? どういうことだ?」
猫山「あ、いや、『またアリバイが無いと困るから』と、魚住さんが自主的に相上 育覧と共に部屋に…」
兜「なんだと!?」
 兜はノブをひねった。カギがかかっている。当然だ。2人も殺されているのだから、カギぐらいかける。
兜「おい! 大至急、マスターキーを持って来い!」
猫山「へ、へいっ!」
 猫山がフロントへ走った。騒ぎに気がついて、周りの部屋からホーリーや銀冶、木村や安口が出てきた。ホーリーと銀冶、木村は隣の部屋から。安口は向かいの部屋から出てきた。
 猫山は信じられないぐらいの早さで戻ってきた。従業員と小鳥遊も一緒にいる。兜はマスターキーを奪い取り、カギを開けた。ピッという電子音がした。
 ガチャッと勢いよくドアを開けた。中にいたのは、魚住と育覧…。2人とも、ソファーに座ったままぐったりとしている。
真解「もめんっ!?」
 真解は育覧に駆け寄り、肩を揺すった。
 目を覚まさない。
 また揺すった。
「う…ん…?」と気だるそうな声を出して、育覧が目を覚ました。
真解「良かった…生きてた…」
 真解は向かいのソファー…すなわち、魚住が座っているソファーを見た。兜が魚住の手首を掴んでいる。脈を取っているのだ。そして、兜は呟いた。
兜「ダメだ…死んでる」
真解「え・・・そんな・・・ウソだろ…?」
真実「そんな…そんなことが…?」
――じゃぁ、さっきの動機はどうなるんだ?
 4人が、一斉に思った。
 そんな中、兜は育覧を睨みつけていた。
 部屋にはカギがかかっていた。これで、室内からカードキーが発見されれば…犯人は、あの娘だ。
兜「従業員さん、すぐに裏庭にいるはずの警官たちを数名、連れてきてください」
従業員「は、はいっ!」
 従業員が走っていった。
 小鳥遊が手馴れた手つきで、テーブルに置いてあったコップの指紋を調べている。ついでに、中に残っているジュースを一滴採っている。それを指につけ、なめた。
真解「もめん、あのコップは?」
育覧「さっきまで、魚住さんとジュースを飲んでたんです…」
 それを聞いて小鳥遊が言った。
小鳥遊「ジュースを?」
育覧「え、ええ」
 いきなり小鳥遊に話しかけられて、驚きながら育覧が答えた。
小鳥遊「おかしいな…キミは、こっちのコップでジュースを飲んだんだよね?」
育覧「え、ええ…」
小鳥遊「でも…こっちには、指紋は残っていないよ。それに、ジュースも」
育覧「えっ!? そ、そんな…」
小鳥遊「この形のコップなら、指紋が残らないことはまずない…現に魚住さんの指紋は残ってたしね。そして、ジュースが一滴も残ってないのもおかしい…」
育覧「そんな・・・」
小鳥遊「ついでに言うなら、魚住さんのコップから毒の痕跡があるけど、我々が部屋に突入したとき、眠っていたように見えたキミのコップには…睡眠薬は、入っていない」
育覧「え・・・・? でも、わたしは確か、それを飲んだら急に眠気が…」
真解「疲れてたんじゃないんですか? 単に」
兜「いや…この状況下だ。疲れていても、そう眠れるものじゃない。それは、お前が一番よくわかっているだろう」
 兜が急に入ってきて言った。真解は黙った。確かに、その通りだ…(たまに安口のような例外もいるが)。
 と、その時。
猫山「兜警部! 被害者のバッグの中から、この部屋のカードキーが発見されました!」
真解「なんだって!?」
猫山「このホテルに来たときに確認しましたが、このホテル、一つの部屋のカードキーは一つしかないはずです。そして、マスターキーは、従業員しか持ち出すことは出来ない…。無論、従業員は容疑者から除外されているこの状況下では、犯人は…」
兜「一緒の部屋にいた相上 育覧! お前しかいない!」
 兜が育覧に指を突きつけた。
育覧「え・・・そ・・・な・・・」
謎事「待ってくれ!」
 謎事が割って入った。
謎事「育覧は…犯人なんかじゃない!!」
兜「じゃあ、この状況をどうやって説明すると言うんだ・・・?」
謎事「ぐっ・・・」
兜「…最後に、真解。お前の意見を聞こう。どう思う? この電子キーと言う複製不可能な完璧な密室の中で起こった殺人…。犯人は、同室にいたもの以外で、ありうるか?」
真解「っ・・・・」
――ありえない!
 通常ならこんなことはありえない。100%、もめんが犯人だ。だが…本当に彼女が犯人なのか?
 ふと見ると、全員の視線が真解に集中している。
――さぁ、犯人は誰だ? 本当に、彼女が犯人なのか?――
 全員が、そう聞いているようだ。
 ありえない…。もめんが犯人? そんなバカな。だが、それならば犯人はどうやってこの密室を作ったんだ? しかもキーはバッグの中に入っていた…外から入れるのは、不可能だ! しかし、カギをかけるのにもあのキーが必要だ…。いったい、犯人は…。
 と、そのときだった。 真解の思考が、一瞬真っ白になった。
 そして次の瞬間……今回の一連の全てが、脳裏によみがえった。
 謎事の意外な告白。楽屋前での口論。楽屋に通された後、Kissのグループが入ってきた。次に、黒川や安口も。そしてそれからしばらくして、黒川が立ち上がった。全員立ち上がり、一部がトイレへ向かった。そして第一の殺人。警察が来て、育覧を疑った。ホテルに移動した。兜が雑誌を持ってきた。事情聴取が行われ、直後に黒川の告白。江戸川へ調査依頼もした。そして第二の殺人。また育覧が疑われた。江戸川の調査報告が来て、魚住の犯人説が浮上した。そして…今に至る。
 それまでの全ての流れが、一語一句逃さず、正確に、一瞬にして真解の脳裏を横切った。そして確実に必要な情報だけが残り、それらのデータを処理、分析し、積み上げられていった。徐々に徐々に、真相への階段が出来上がっていくのを、真解は感じた。そして…。
 そして真解は、ニヤリと笑った。口から、思わず言葉が漏れた。
真解「見えた…」

真実「え…? 見えた…? お兄ちゃん、どういう…」
 真実の問いかけを無視して、真解は育覧を見た。怯えている育覧に向かって、言った。
真解「安心しろ、もめん。お前は犯人なんかじゃない。犯人は別にいる。この事件、ボクらの勝利だ…!」
 変なタイミングで、従業員が警官を連れてやってきた。兜はそれに向かって怒鳴った。
兜「お前ら、これから真解が言うことを黙って聞いていろ。何も言うな」
下っ端「…? ヘイ…」
 わけもわからないまま、下っ端たちが返事をした。
兜「で、誰だ? 犯人と言うのは…。この娘以外に、考えられないが?」
 真解はまた、ニッと笑った。
真解「いいえ。犯人は、他にいます」

Countinue

〜舞台裏〜
育覧犯人説を無くすのは、ちょっと惜しかったかな…。まぁ、ともかく今回のゲストは相上 育覧です。
育覧「良かった…。無実だ…」
あ、やっぱ犯人にしときゃよかった。
育覧「な、なんでよ!?」

今回は、ラストのあの真解の思考。あそこにかなり力を注ぎましたねぇ。いやはや。
育覧「結構長いけど…」
うん、ホントはもっとかっこよくなる予定だったんだけど…どうもいっつも上手くいかないなぁ…。未熟なのかねぇ…。
育覧「や〜い、未熟者」
やっぱり犯人にするべきだったああぁぁ!!!

さて、今回はもちろん、推理を募集いたします。「遺産相続…」並みの長さでしたが、どうでしょうか?
真実「ってか、『遺産相続…』って問題編全5編なのに、こっちは7編…2編も多い」
殺される人数はこっちの方が少ないのにね…。 で、推理を募集します。今回は「遺産相続…」と違い、いたるところにヒントが散りばめられてますので、よ〜く読んでいただければ、すぐにわかるでしょう。
ちなみに、今回の募集内容は、犯人、動機、トリックの3つです。
育覧「メールアドレスは[kiguro2@yahoo.co.jp]です。なるべく犯人やトリックだけでなく、推理の過程も書いてください。動機も、どんどん推理してください」
やっぱ、アイドルは営業スマイルがうまいねぇ…殺人も。
育覧「だから、殺してなんかない!!」
では。

作;黄黒真直

真相編を読む

本を閉じる inserted by FC2 system